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千葉医学会雑誌 巻第 1 ⢏몘a 5日発行〉 原著 猫の皮質連合領および周囲の皮質から起こる投射線維群 千葉大学大学院医学研究科内科系 神経精神医学科⢎ 䎏벖箒刹뎎 堀江 呁䭅午䤠 䡏剉䔠 ⢏몘愠 日受付) はしがき 精神作用のうちでも一層高次なものを大脳皮質 の特定部位に結びつけようとする試みは,既に 䙬散桳楧 ⠱㠹5 ⤱めにはじまり,彼は髄鞘発生の遅 い皮質をこの機能に結びつけて連合中枢と称した。 この連合中枢は,その後,細胞構築あるいは視床皮 質結合 ⡒潳攠 坯潬獥礠 ✴9 ) 䍨潷 䡵瑴 ✵3 䑩慮楯湤 啴汥礠 ✶3 1 りの面から研究さ れるようになった。また近時,電気生理学的な方法 を用いた人々によってもはなはだ、興味がょせられ た。特に 䅭慳獩慮 ⠧㔴⤳) 䉵獥r 䉯牥湳瑥楮 䉲畮敲 ⠧㔹⤹) 周潭灳潮 卩湤扥牧 ⠧㘰⤧ 浅井 ⠧㘱) りおよび 䵯物汬o ⠧㘱⤳㐩 などの一連 の人々は,猫の身体知覚領,聴覚領および視覚領の 3者の聞にはさまれた域を連合領ないし,皮質連合 領と称し,この領域から身体知覚,聴覚ないし視覚 に関してそれぞれの一次領野と異なる反応がえられ たと述ぺている。彼らの多くは,これらの反応を視 床皮質結合のみから説明しようと試みている。しか し,このような反応をさらに高次な立場から理解す るためには,皮質からの下行路に関する知識も無視 するわけにはいかない。他方,最近の 乡畴a 染色 標本によって, 身体知覚・運動領 ⡁略爠 ✵6 5 ) 䭵祰敲猠 ✵8 ) ,草間ら ✶0 ) ,川名 ✶3 2 ㄩ⦁䎒꺊澗찠 ⡒慳浵獳敮 ✶0 4 ㄩ,大谷⚔夠 ✶3 ))および視 覚領 ⡂敲敳景牤 ✶1 7 ) 䅬瑭慮 ✶2 2 九大谷 ✶4 )) などの各域および若干の隣接部から起こる投射線維 材料および研究方法 群が詳細に報告された。しかし上記の連合領から生 rずるものについては,ほとんど知らされていない。 そこで本研究では,猫の連合領および周囲の脳回に 限局的な小傷を与え,それぞれの傷から起こる投射 線維群を 乡u阻染色標本でしらべることにした。 匹の成猫を用い, そのー側ないし両側の大脳 半球に限局的な傷を与えた。これにはベントパルピ タール・ソーダ ⠳0 浧⽫g 腹腔内注射〉の麻酔下 で無菌的に目的の脳回を露出し,先が径 ㍭m の球 形をした歯科用ドリルを高速度で回転し,この球が 皮質内に埋れるまで静かにあてがった。こののち除 去した骨のかわりにスポンゲルをあて皮膚を縫合 この 万単位の水性ペニシリンを注射した。 手術後 7 ないし 日をへてからペントパルピター ノレ・ソーダ麻酔下で胸腔を開らさ, 心臓から % フォルマリン液でかん流し,脳をさらに 日以上 ▃璃䢃泣綃潟悼璂얌 떂북B 標本の作製には,水洗後 ㈵% ゼラチンに包埋し た材料から ㌰μ の凍結切片を作り,その 4 枚に 1 枚の割でとり,この後者を 慣に従って 3 群にわけ, それらのうちの 1 群に 乡畴愭䱡楤汯w 改良染色, 残りの 2 群については必要に応じて追加ないしクレ ジール・バイオレットによる細胞染色を行なった。 本研究では上記の実験例中,傷が深くて目的の脳 回以外にさらに他の脳回からの投射線維群を傷つけ ているおそれのあるものが 2 例あったのでこれを除

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千葉医学会雑誌 第41巻第1号

(昭和 40年� 5月28日発行〉

原 著

猫の皮質連合領および周囲の皮質から起こる投射線維群

千葉大学大学院医学研究科内科系

神経精神医学科(主任松本貯教授)

堀江 武�

TAKESHI HORIE

(昭和 39年� 12月22日受付)

は し が き

精神作用のうちでも一層高次なものを大脳皮質

の特定部位に結びつけようとする試みは,既に

Flechsig (1895)1めにはじまり,彼は髄鞘発生の遅

い皮質をこの機能に結びつけて連合中枢と称した。

この連合中枢は,その後,細胞構築あるいは視床皮

質結合� (Rose & Woolsey '4943),Chow & Hutt

'5311日Dianiond & Utley '631りの面から研究さ

れるようになった。また近時,電気生理学的な方法

を用いた人々によってもはなはだ、興味がょせられ

た。特に� Amassian('54)3),Buser,Borenstein & Bruner ('59)9),Thompson & Sindberg ('60)'<17),

浅井� ('61)りおよび� Morillo('61)34) などの一連

の人々は,猫の身体知覚領,聴覚領および視覚領の

3者の聞にはさまれた域を連合領ないし,皮質連合

領と称し,この領域から身体知覚,聴覚ないし視覚

に関してそれぞれの一次領野と異なる反応がえられ

たと述ぺている。彼らの多くは,これらの反応を視

床皮質結合のみから説明しようと試みている。しか

し,このような反応をさらに高次な立場から理解す

るためには,皮質からの下行路に関する知識も無視

するわけにはいかない。他方,最近の� Nauta染色

標本によって, 身体知覚・運動領� (Auer '565),

Kuypers '5824),草間ら� '6023),川名� '6321)),聴覚領

(Rasmussen '6041),大谷&樋浦 '6338))および視

覚領� (Beresford'617),Altman '622九大谷� '6437))

などの各域および若干の隣接部から起こる投射線維

材料および研究方法� 1.

群が詳細に報告された。しかし上記の連合領から生�

rずるものについては,ほとんど知らされていない。

そこで本研究では,猫の連合領および周囲の脳回に

限局的な小傷を与え,それぞれの傷から起こる投射�

線維群を� Nau阻染色標本でしらべることにした。

15匹の成猫を用い, そのー側ないし両側の大脳�

半球に限局的な傷を与えた。これにはベントパルピ

タール・ソーダ� (30mg/kg腹腔内注射〉の麻酔下

で無菌的に目的の脳回を露出し,先が径3mmの球

形をした歯科用ドリルを高速度で回転し,この球が�

皮質内に埋れるまで静かにあてがった。こののち除

去した骨のかわりにスポンゲルをあて皮膚を縫合

この万単位の水性ペニシリンを注射した。10し,�

手術後7ないし� 10日をへてからペントパルピター

ノレ・ソーダ麻酔下で胸腔を開らさ, 心臓から� 10%

フォルマリン液でかん流し,脳をさらに� 10日以上�

10 %フォルマリン液で後固定した。

標本の作製には,水洗後� 25%ゼラチンに包埋し

た材料から� 30μ の凍結切片を作り,その� 4枚に� 1

枚の割でとり,この後者をjl慣に従って� 3群にわけ,

それらのうちの� 1群に� Nauta-Laidlow改良染色,

残りの� 2群については必要に応じて追加ないしクレ

ジール・バイオレットによる細胞染色を行なった。

本研究では上記の実験例中,傷が深くて目的の脳

回以外にさらに他の脳回からの投射線維群を傷つけ

ているおそれのあるものが2例あったのでこれを除

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-2- 千葉医学会雑誌 第 41巻

図1. 大脳半球表面および前額断面からみた各例の傷

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:第 1号� 堀江:� 猫の皮質連合領および周囲の皮質から起こる放射線維群 -3-

E

C G

第� 2図の説明�

α: 皮 質 � の 傷�

c :尾状核

d:視床網様核�

h:外側中心核�

i:外側膝状体核

r:外側膝状体核腹側核�

j:視床枕核

包b:内

:視床背外側核e

f:視床前腹側核�

:視床後外側核g

た:大 脚目白

1:不 帯確

正中中心核1n:

H 野n:

。:深視蓋前核�

赤 核p:

中脳網様体q:

中間灰白層r:

:橋核s

図� 2. 連合領破壊時の変性線維群

外し,代りに他の研究目的で使用した若干例をつけ

均口えた。

なお,所見の記載にあたって諸核の名称は大部分�

Jasper & Ajmone-Marsan ('54)1 に従った。9)

所 見

1.連合領の投射線維群

傷が連合領の主要部,すなわち中 S上回� CG.su圃�

prasylvius medius)の前� 2/3域内に限局したのは,�

1号,� 2号,� 3号,� 4号,� 5号および6号の計6例

であった(図� 1)。 これらの例で傷から生じた投射

線維群は, その傷の大小および局在の相違に従っ

て,量および終止部内の局在に多少の相違はあった

が本質的な点ではほとんどかわりなかった。そこで

各例の所見を総合して述べる。

傷から生じた変性線維群はまず放線冠を通過し,�

f同側の内包に移行するが,この際図� 2-Aのように

;尾状核 CNucl.caudatus: Cd)に最初の終止前線維

を与える。 この終止前線維は核の中� 1/3を中心と

して前後に多少広がった高さでみられ,また核内で

は背外側� 1/3域に限局する。上記の線維がみえな

くなるころ,新たに内包から著明な変性線維が視

床網様核� CNucl.reticularis: R)に移る。この線維

群は前方高で核の背側,尾方高で腹側に多いが,い

ずれの場合もそのほとんどが次の諸核に至るための

通過線維である。すなわち,それらの中の一部は背

外側核� CNuc1.lateralis dorsalis: LD) の腹側部に

終わり, イ也は� LD核と前腹側核� CNucl. ventralis

anterior: VA)ないしその後に出現する後外側核�

CNucl.lateralis posterior: LP)らの諸域を通過した

後,� LP核内側部および外側中心核� CNucl.centralis

lateralis : CL)に終わる(図 2ιB,C)。上記の線維群よ

りやや遅れて� LP核に入り,その外側部で背側から

次第に腹側に広がる(ただし,腹倶H1/3域には広がら

ぬ〉終止前線維帯を作るものもみられる。この終止

帯はその後に,その位置に出現する視床枕核� CNucl.

pulvinaris: Pul)に移ってそこに終わる場合もある。

次に外側膝状体核� CNucl.geniculatus lateralis : GL)

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-4- 千葉医学会雑誌 第� 41巻

の出現により� R核が背側亜核� (Rd)ど腹側亜核(Rv) ない。しかし,それらのうちのかなりのものは,大:

に2分される頃の高さで,既にR核をへて� GL核 脳脚外側部から加わる若干の変性線維を伴って一層

の内側にきたもの,および新たに内包から� Rvに移 内側に局在するH野の外側部に進む(図� 2-C,D)。

るものなどがみられる。これらのうち前者は� LP核� H野の変性線維群のうち一部はここに終止し,残り

腹側部を内側に向って走り,尾高で出現する正中中 は赤核� (Nucl.ruber: NR)の前部の高さで,その守

心核� (Nucl.田ntrummedianum: CM)に至る。し 外側,特に背外側にある主として中等大の神経細胞

かし, これが� CM核に終止する所見は乏しく,あ に関係しく大細胞にはほとんど終わらぬ),さらに

るいはその尾方に出現する視蓋前域� (Pretectal 一層多くのものが隣接の� FRmesの同質の細胞に終-

region:針。に終わるものが含まれているかもしれ わる。この後者には背側から上述の� Nppを経由し

ない(図� 2-D)。後者についてみると,� Rv核に終 てきたものも加わり,これらのものはNRの尾端の

わるものもあるが,さらに次の� 3方向に至るものも 高さまでにみえなくなる(図� 2-E,F)。

含まれている。� (1)Prt.域に向うもの,� (2)外側に 上述の� ZIおよびH野に向う変性線維を放出した

出現する� GL核の腹側核� (GLv)に至りその内側部 後の大脳脚内の疎大な変性線維群は一層尾高に至ー

に終わるもの,および� (3)不確帯� (Zonaincerta: り,ことごとく同側の橋核� (Nucleipontis: Pon)に�

ZI) に向うものである。これら� 3者のうち� (1)と 終わり,その他の諸核および域に終わるものはみら�

(3) とは,さらに複雑な経過をとるので,それぞれ れない(図� 2-G)。

について説明を補足する。まず前者をみると上述の 以上の所見は傷が,中S上回の前2/3域内に限局

CM核に至るものの後を追い� Rv核から� LP核腹 した� 6例の総合所見である。しかし,これらの� 6例s

側部および膝状体上核� (Nucl. suprageniculatus: では前にもふれたごとく,その傷の位置に従って変�

SG) を経由して� Prt域にいくもの,およびそれよ 性線維の局在および量について若干の差があった。

りやや遅れて内側膝状体核� (Nucl.geniculatus me固 まず終止核内の局在であるが,一般に傷が前方にあ�

dialis: GM)背側部,� SG核をへて同じく� Prt域に る場合には終止核の前部で終わり,尾方にある場合

至るものとになる。� Prt域ではそれらのほとんどが には尾部が対応した。この対応関係が特にはっきり

深視蓋前核� (Nucl. pretectalis profundus: Npp, したのは� Cd核,� LP核および� Pul核である。これ�

Bucher &Nauta '548))に集まり,かなりのものがそ らのうち� LP核に終わるものは傷が前方にあると核

こに終わる(図� 2-E)。しかし,一層尾方の高さにな の前方の高さで内側部に終止した。しかし,傷の位

ると, そこから背内側と腹内側に向ラ� 2群が現わ 置が尾方になると変性線維は一層尾方の高さで外側

れ, 背内側に向うものは上丘の中間白質層� (Str. 部に終止するようになった。また� Pul核とは特別�

album intermedium: SAI)および中間灰白層� (Str. な関係をしめし,皮質の傷の位置がさらに尾方に移�

griseum intermedium: SGI)に至り,その尾端付近 ると� LP核外側部に終止した線維群の残りは,新た

を除いてほぼ全高で終わる。腹内側に向うものは後 にその位置に出現した� Pul核の前端に終わり, つ

述の� ZIをへて中脳網様体� (Formatio reticularis いには後述の後S上回の傷の例のように� Pul核のみ�

mesencephali: FRmes) に終わるものに背側から加 に終止し� LP核に終わるものはみえなくなる。した

わってし、く(図� 2-E,F)。なお,小量の念珠状変性 がって傷の位置が最も前方にある� 1号,� 2号では

が狭義の後交連核� (Nucl.commissuralis posterior: LP核に終止するもののみであり, 中央部の傷であ�

NCP)および内側視蓋前域� (Areapretectalis medi- る5号では� LP核のみならず� Pul核にも終わり,�

alis: Apm)付近に散在するが,これらの中の一部は さらに尾方の傷である� 6号では'LP核よりも� Pul

後交連を介して対側の� Npp核に至るようにみえる。 核に終わるものの方が明らかになる。

次に後者についてみると,上述のように内包およ 次に変性線維の量的関係を傷の大きさが同じであ

び� Rv核をへて� ZIに至るもののほかに,一層多く る1号,� 2号,� 5号および6号でくらべてみると,

の変性線維群が� Rv核をへることなく,内包から大 前方の傷で多く尾方の傷で少いもの(Cd核,� LP核,�

脳脚に移動してきた疎大な変性線維詳からわかれて CM核,� Pon核),逆に尾方で多く前方で少いもの�

きた。これら� ZIの変性線維群は大脳脚外側部から (Pul核,� GLv核)などの別があった。�

放出される線維群の減少につれ一層帝国かな穎粒群に II. 周囲の皮質から起こる投射線維群なるので,ここに終わるものがあることはまちがし、

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第� 1号 堀江: 猫の皮質連合領および周囲の皮質から起こる放射線維群� -5ー�

A 前側回の投射線維群�

投射線維群の質からみると,この脳回は前� 1/3域

とそれより尾方の域とに� 2分する必要があった。ま

ず前� 1/3域に傷が限局した� 7号および� 8号では,そ

こから起こる投射線維群は前述の中� S上回の前� 2/3

域からのものとかなりよく一致し,� Cd核,� LP核,

:Npp核,� SG1,Rv核,ZI,H野;� NR,FRmesお

よぴ� Pon核に投射した。しかし, それらの量はー

般に少く,また� LD核,� CL核,� CM核,� Pul核,

GLv核に終わるものはみられなかった。�

次にそれより尾方になると,これまでみられた投�

射線維群のうち� LP核,� Pon核の� 2種に終止する

ものはなお出現したがその他は全くみられない。

Pon核に終止するものは� 9号では僅かに出現した

片む� 10号ではもはや出現しない。また� LP核に至

るものは� 9号,� 10号までは出現したが� 11号になる

ともはや明らかでなく, 入れかわって� Pul核に至

るものが生じた。

上記の諸変化の他に,これまでみられなかった線

維群,すなわち上丘の浅白質屑� (Str.album super-

ficiale: SAS)をへて, 主として浅灰白層� (Str.

griseum super五ciale:SGS) に終わるものが出現す

る。 またこのものは経過の途上, 視蓋前核� (Nucl.

pretectalis : Npt)にも少量の終止線維を与えた。な

お� 11号のみであるが� GLd核に終わるものが若干

みられた。�

B 中S上回尾部および後S上回の投射線維群�

12号および� 13号の傷(図� 1)から起こる投射線

維群は� Pul核,� GLv核,� Npt核および� SGSに終

わり,前に述べた中� S上目前の� 2/3のそれと著し

ぐ異った。

C 前・中・後S外国の投射線維群

この領域が傷つけられた� 14号および� 15号(図

1)では,被殻� (Putamen:Put)のみが確実な終止核

であった。しかもその変性線維の量はそれほど多く

ない。次の� 16号(図� 1)では� Put核に終わるもの以

外に下丘核� (Nucl.colliculi inferioris: Ci)に終わる

ものが若干みられた。残りの� 17号,� 18号〈図。で

は,新たに� GM核に終わるものが加わり,また� Ci

〆核では著明な向側性以外に僅少な対側性の線維もみ

られた。

D 冠状回およびS字状回の投射線維群

19号,� 20号の傷は冠状回の中央および背側部

に,� 21号,� 22号のそれは後S字状回にそれぞれ限

A局した(図� 1)。これらの� 4例では� Cd核および�

Put核に投射する線維群が出現し,一般に傷が背側

にあれば� Cd核に多く,腹側にあれば� Put核に至る

ものが増加した。また� 4例では終止核内での局在に

多少の相違があるが,大脳脚からR域を横切って後

腹側核に至り, ついで� Pon核および反対側の三叉

神経知覚核に終わるものが著明に出現した。また疑�

わしい程度であるが� CM核に投射するものもある

ようにみえた。なお傷が冠状回の中央部に限局し

た� 19号では上記の投射線維群の他に同側の上丘の�

SGrおよび深灰白層� (Str. griseum profundum:

SGP)に至るものがみられた。また後S字状回の背

側部に限局した� 22号の傷からは,大脳脚の変性線

維群から直接わかれ,大細胞赤核の主に腹外側部に�

至るものもあった。

残りの� 23号(図� 1)では傷が小さくて見のがす

恐れのある投射線維群を明らかにするため前S字状

固から後S字状回にかけて大きく壊した。この例か

ら起こった投射線維群の一部は前の� 4例のそれに似

て� Cd核,� Put核,後腹側核,� Pon核および反対

側の三叉神経知覚核に終わった。しかし,新たに外�

腹側核に終わるものが著明に現われた。なおCM核�

に終わるものは僅少であるが明らかに存在した。ま

た� ZIの尾端頃から黒質の中央部に至る高さで大脳

脚から背方に走る変性線維群が明瞭になり,それら

は主として大細胞赤核および中心灰白質に終わっ�

7こ。

考 按

所見の項で述べたように,連合領の主部および周

辺部,すなわち中� S上回の前� 2/3および前側回の

前� 1/3域からはなはだ多種多様の投射線維群が起�

こった。これらの投射線維群のうち,一部のものは

連合領内あるいはそれにほぼ一致する領域から起こ�

った。しかし,他のものはむしろ連合領以外の領域

を主な起始領野としさらに連合領に全面的あるいは

部分的に重なっていた。したがって,これらの投射

線維群を一括して三号按することは図難なので,各投

射線維ごとにそれぞれ従来の報告と比較検討するこ

とにした。

皮質線条体路

1)(1872)3Mey~ert本投射路の存否については,�

以来多数の人々によって論ぜられてきたが,研究方�

法が不適当なため明瞭な結論がえられなかった。し

かし,その後の� Glees('44)16),Smith ('56)44),

('60)および秋葉52)56)(' Whitlock & Nauta 1)が

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-6ー 千葉医学会雑誌 第� 41巻

特殊な鍍銀標本ないし� Nauta標本を用いて本投射

51), Webster('61)路の存在を実証し,また近くは

三橋� ('62)32)および� Carman,Cowan & Cowell

('63)1 がそれぞれラット,猫,兎の大脳皮質と線0)

条体との局在的対応関係を� Nauta標本で詳細にし

らべるに至った。本投射路に関する著者の所見は,

猫を用いた三橋のそれにほぼ一致し,中� S上回の前

2/3域および前側回の前� 1/3域内に傷がある時に

は尾状核に終わるものが出現した。また周囲の脳回

の傷では前方の身体知覚領および運動領に傷がある

と尾状核と被殻に終わるものが出現し,腹側の聴覚

領の傷からは被殻に投射するものがみられた。以上

のように本投射路の超始領野は大脳半球外側面の広

い域をしめ,その一部に連合領も含まれているもの

と考えられた。

皮質視床外側根路

視床外側核群は背外側核と後外側核とにわかれ

る。� Rose &羽Toolsey ('49)43), Chow & H utt

('53)11),Diamond & Utley ('63)14) らは,これら

の2核,特に後外側核から投射線維をうける皮質が

連合領であると規定している。また� Hanbery& Jasper ('53)17),Buser,Borenstein &Bruner ('59戸,

浅井� ('61戸および� Morillo('61)34)らは,電気生

理学的にこれらの核が連合領の機能に特別に関与す

ることをしらべ, これらを後述の視床枕核と共に

specific elaborative systemsないし� associationtha-

lamic nucleiと称した。他方,� Auer ('56)5)および

川名� ('63)21) らによれば身体知覚領,� Rasmussen

('60)41)および大谷&樋浦 ('63)38)らによれば聴

覚領,� Beresford ('61)7)および大谷� ('64)37)によれ

ば視覚領等はそれぞれの視床特殊核と相互的に結合

している。したがって大脳皮質から外側核群に投射

する線維群があるとすれば,連合領から起こること

が期待された。ところが,猿を用いた従来の報告に

よると,本投射路は連合領をこえたはるかに広い領

域から,すなわち前頭葉� (Hirasawa & Kato '3518ヒ� Levin '35-'3625うVerhaart & Kennard '4050)),側

頭葉� (Mettler '35-'363ベ Whitlock & Nauta

'5652)),頭頂葉� (Mettler'3529),Uesugi '3749)) お

よび後頭葉� (Mettler'3527))から生ずるといわれて

いる。また猫を用いた報告は少いので十分明らかで�

ないが,� Probst ('02)'.[@)および� Altman('62)2)は,

有線領もその起始領野に含めている。しかし,著者

の所見によれば背外側核に投射する起始領野は中� S

上回の前� 2/3域にほぼ限局した。 また後外側核へ

の起始領野は前者と同じく中� S上回の前� 2/3域をし

めたのみならず,さらに前側回の前半域にも広がっ

た。すなわち,この起始領野は連合領と一部の視覚�

領をしめ,前者から起こる変性線維群の量は後者の

それに比して著明であった。したがって連合領は,

一連の電気生理学的な研究によって述べられたごと

く後外側核から影響されるのみならず,逆に後外側�

核にも強い影響をおよぼしうる。さらに視覚領のー

部の刺激が後外側核に軽度の影響をおよぼす可能性

のあることも無視できないと思う。

皮質視床祝根路

後頭葉が視床枕核に密接な結合関係を有すること

を提唱したのは� Monakow(1899)33)である。つい

で� Probst('02)40)および最近の� Altman('62) ら

がこの結合関係を視覚領,特に有線領から視床枕核

に投射するものであるとした。また視床枕核に投射

する線維群の起始領野を一層詳細にしらべた大

谷('64)37)はこれが後側回,後S上回をしめ,さらに�

中S上回の尾半および前側回の尾� 1/3域に広がるの

をみた。著者の所見もそれにほぼ一致した。本核に

ついては,前項で述べたごとく,視床皮質結合ある�

いは電気生理学的な研究から連合領に密接に結びつ J

けられている。しかし,著者および大谷の所見から

すれば,連合領よりむしろ視覚領と関係するところ

が多いように推測される。�

皮質髄板内稜路�

Morison & Dempsey ('41-'42)35)および� De-

mpsey & Morison ('41-:42)12)以来髄板内核群は�

recruiting responseに結びつけて,視床皮質結合の

面から極めて注目されるようになった。しかし,逆

方向の皮質視床結合に関する研究は意外に少なく,

僅かに� Auer('56)5¥ DeVito & Smith ('59)13)お

よび川名� ('63)21)を数える程度である。そのうち猫

を用いた� Auerによれば前頭葉から外側・芳・内側

および正中の各中心核に至る線維が起こり,また川

名によると� S字状回および冠状回のどちらも外側中

心核の下部および正中中心核に投射するとしヴ。し

かし,著者が後S字状回および冠状回の一部に限局

的な小傷を与えた限りでは,外側中心核の変性をほ

とんどみることができず,正中中心核において僅か

に認めたにすぎない。次に傷の位置を一層尾方にう

つし,中� S上回の前� 2/3域をこわすと外側中必核に

は少量ではあるが明らかな変性線維がみられた。こ

のものは背外側核腹側部と前腹側核ないし後外側核

前背側部などを通過したのち本核に達した。また中

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第� 1号 堀江: 猫の皮質連合領および周囲の皮質から起こる放射線維群� -7-

S上回の前半域がこわされた時には後外側核腹側部 ら深視蓋前核lといたる線維群のあたかも一部である

を経由し,正中中心核尾部に投射するものも僅かに ような経過を� lとり,上正の前端部および尾端部を除

出現した。しかし,このものは核の尾方に出現する くその他のいずれの高さでも認められた。一方,大

視蓋前域に至る可能性もあった。以上のことから髄 谷および樋浦� ('63)320)は聴覚領の� Am域から� Nucl.

板内核群のうちでも連合領と密接な関係にあるのは paralemniscalisの域を経由して上丘の尾半の高さで

外側中心核であることが推測された。 中間灰白層に投射する線維群をみたと述べている。

皮質視蓋前域路 著者の例でも冠状回の中央部から起こる投射線維群

有線領および有線芳領から上正に投射する線維群 に同様の経過をとるものがあった。したがって経過

の一部が視蓋前域の諸核中,特に視索核に終わるこ に相違があるが上丘の中間灰白層に投射する起始領

とを� Barris,Ingram &Ranson ('35)6)が見出した。 野は,連合領をこえてさらに腹側にも広がるように

この所見はその後の� Beresford ('61)7) によって支 みえる。

持されている。しかし,� Nauta & Bucherぐ54)36) 皮質外側藤状体路

および大谷� ('64)37) らによれば,問題の線維群め終� Barris,Ingram & Ranson ('35)6) によれば猫の

止核は視索核でなく,むしろその腹側に接した視蓋 視覚領は外側膝状体腹側核に投射線維を与えないと

前核である。著者の所見も後者らと同じく後S上 いう。しかし,ラットの有線領を傷つけた� Nauta &

回,中� S上回尾部および前側回尾� 2/3域内に傷が限� Bucher (' 54) 36) は外側膝状体の背側核よりも腹側

局した場合には主として視蓋前核広終わる変性線維 核の方で著明な変性線維をみたといい,猫を用いた

群をみることができた。しかし,さらに前方で中� S Altman (' 62)2)も前側回および後側回の傷で腹側

上目前� 2/3およば前側回前� 1/3域に限局した傷, 核に終止する変性線維をみたと述べている。さらに

すなわちほぼ連合領と一致した領域内の傷の場合に この腹側核に投射する線維群の起始領野をしらべた

は後外側核および膝状体上核の比較的腹側部を通過 大谷� ('64)37)は,これが後側回,後S上回および

して深視蓋前核に至る変性線維群が出現した。この 中S上回尾半をしめるとした。著者の所見は大谷の

変性線維群は視覚領から起こる前者と異り,線維が それとほぼ一致し,本投射路については先の皮質視

太く,存在も一層明瞭であった。なお,この変性線 床枕核路とよく似て視覚領および連合領のそれぞれ

維群の大部分は深視蓋前核に終わるが,一部は上丘 一部から生ずるのをみることができた。

の中間灰白層に,また他の一部は中脳網様体の背外 皮質不確帯路

側部に至った。 大脳皮質から不確帯およびH野に投射する線維に

皮質上丘路 ついて,これまで猿では前頭葉� (Hirasawa & Kato

皮質上丘路の存在は� Monakow (1889)33) により� '3518),Levin '35"'" '3625), V erhaart & Kennard

極めて早くから提唱され,彼は大脳半球の外側面を� '405d),De Vito &Smith '5913))および側頭葉,(Me-

大きくこわした猫および犬の標本から視覚領が上丘� ttler '35---'3630¥ Whitlock & Nauta '5652))から起

の中間白質層に投射すると述べた。この見解は,そ こるといわれた。しかし,猫を用いた人々はむしろ

の後の� Poljak ('27 _. '28)仰により部分的に支持さ これを否定する空気が強く,� Kariya ('36)2d)によれ

れた。しかし,� •Probst ('02)4d),Barris,Ingram & ば運動領,大谷&樋浦� ('63)38)によれば聴覚領,�

Ranson ('35戸,� Nauta'& Bucher ('54)36),Altman さらに大谷� ('64)37)によれば視覚領からはこのよう�

('62)2)および大谷� ('64)37) らによれば視覚領から な線維が起こらない。著者の例でも,傷が� S字状

上正にいたるものは主として浅白質層および浅灰白 回,冠状回,中� S外回および後S上回にある限りこ

層に終わり中間白質層にいたるものはない。著者の のような線維は生じなかった。しかし,中� S上回の

例でも後者らと同じく前側回の尾2/3および後S上 前� 2/3および前側回前� 1/3をしめる域,すなわち

回より起こるものは主として浅白質層および浅灰白 連合領がこわされた時には,この投射線維群に著明

層に終わった。しかし,これより前方の領域,すな な変性が現われた。 この変性線維群の経過をみる

わち中� S上回前� 2/3域を主としてさらに多少前側 と,外側膝状体背側核の前半高で内包から大脳脚に

回の前� i/3域を加えた領域からは浅白質層,浅灰白 移るより疎大な変性線維詳から別れ,はじめは視床

層にいたるものは生ぜず,むしろ中間灰白層に終わ 網様核の腹側部に入って,一部のものはここに終わ

るものが見られた。この線維群は,前述の連合領か るが,残りは内側にある不確帯に向って走る。次に

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-8- 千葉医学会雑誌 第� 41巻

大脳脚から直接不確帯に入るものが現われ,かなり

のものがそこに終わった。なお本投射路の最も尾方

のものはH野に終止するのみならず,そのかなりの

ものがさらに尾方の赤核の一部および中脳網様体に

至っていたが,このことについては後述する。

皮質被蓋赤稜路�

Metter ('35)2汽� Levin ('35--'36)25),Kariya

('36)20),Uchishima ('36)48)および� Uesugi('37)仰

らは猫ないし猿の� Marchi標本を用い,これらの動

物の運動および知覚領から赤核および中脳網様体に

投射する線維群が起こるとした。しかし,この投射

線維の量はあまり多くなかった。元来� Marchi法は

それほど鋭敏な染色法ではないので,このように量�

が少い時には変性の存否を判定するのにとかく主観

的になりやすい。恐らくそのためと思うが上記の諸�

家の聞でも本投射路の経過にかなりの相違があり,

また� Lewandowsky ('04)26)および� Verhaart &

Kennard ('40)50)らは本投射路の存在を否定してい

外側, 特に背外側で主として中等大の細胞に関係

し,またそれより著明に隣接の中脳網様体で同質の

細胞に終わった。換言すれば, 視床網様核, 不確

帯,� H野,中脳網様体および赤核にある一連の同質

の細胞に終わるものの一部であるようにみえた。

皮質構接路

Hirasawa &Kato('35)18),Mettler ('35--'36)27-30),

および('40)45)Sunderland >,('35--'36)25Levin

Kuyp2rs ('58)24)らによれば,猿の皮質橋核路は.

前頭葉および側頭葉のみならず頭頂葉および後頭葉

からも起こる。また猫の本投射路についてみると船

Uchishima >,20'36(Kariya字状回S首状回および前�

'364め),前側回 (Barris,Ingram & Ranson '356)),

中Sと回� (PoljaJ王� '27--ラ2839),Barris,Ingram &

Ranson '356)),前S外国(大谷&樋浦� '6338)) など

の多数の脳回から起こるといわれている。著者の所

見によれば本投射路の起始領野は連合領を含み,さ�

らに視覚領の前方部にも重なるようにみえた。

る。しかし,最近の特殊な鍍銀ないし� Nauta標本結

=0. 酉問�

を用いた� [Szentagothai & Rajkovits ('58)46),Rinvik

& Walberg ('63)42)および草間� ('63)22) らによれ 電気生理学的方法を用いた一連の人々によって提

ば,猫の運動領ないし知覚領からは確実に本投射路 唱された猫の皮質連合領およびその周囲の脳回に限

が起こる。彼らのうち� Rinvikらは運動領の上肢域 局的な小傷を与え,それぞれの傷から起こる投射線

が赤核の主として背側部に,下肢域は腹側部に投射 維群を� Nauta標本でしらべ,以下の結果をえた。

皮質連合領から起こる投射線維群は,傷側の内包大部分がまた知覚領から一部が赤核の前部,し,

それに隣接した中脳網様体に終止する線維が起こる を通り,次の� 4主要路にわかれた。

と述べている。他方,草間は運動・知覚領の上肢� (1) 尾状核に終止する線維群。�

'6名I[川(ο域 治かミら赤核のおお、もに背内側部に,知))2ω1ο3臼 (2) 視床網様核をへて� (a 〉心〉視床背外側核,� (bゆ

川川l (ο覚領の下肢域

るとのべている。 著者の場合は, この領域をこわ 尾方の高さで後外側核外側部および視床枕核に終わ

した例が少いので,上記両者の所見の相違を批判す るもの。

ることはむずかしいが, 前後の� S字状回を合せて� (3) 外側膝状体核が出現し視床網様核が背側と

大きくこわした例で赤核の特に大細胞に終わる著明 腹側の亜核に� 2分される頃,� (a)外側膝状体腹側核

な変性線維群をみたこと, および後� S字状国内側 に終止するもの,� (b)視床網様核腹側亜核および後

部の小傷(川名の下肢域に相当〉でもなお赤核の腹 外側核腹側部を通過して正中中心核に至るもの,

外側部に終わるものをみたことからすれば,� Rinvik (c)上記の� b群の後を追い後外側核腹側部および膝

より草間の所見に一致しそうにみえた。また中脳網 状体上核を経由し,主として深視蓋前核に終止し,

様体に主として終わり,一部赤核の背外側部におよ 残りが上丘の中間灰白層および中脳網様体に終わる

ぶものは� Rinvik らの記載と異なり, 上記の知覚 もの,� (d)内包ないし大脳脚から視床網様核腹側亜

領の傷ではほとんどここに投射するものがなかっ 核,不確帯,� H野に至って終止し,さらに尾方に向

た。これを生ずるのはむしろ連合領に一致した領域 って赤核の背外側部からそれに隣接した中脳網様体

である。 この投射路は, 運動領から赤核に至るも にかけて存在する同質の細胞,すなわち主として中

のより一層前方高で大脳脚をはなれ,視床網様体腹 等大の細胞に終るもの、。

側亜核, 不確帯および� H里子に終止前線維を与える� (4) 上記の諸投射線維群を放出した残りで,同

と共に, ここを通過し赤核の前部の高さで, その 側の橋核に終わるもの。

臼l名� '6321りカか込ら腹外側部に投射す 心心核およびび、隣接の後外側核内側部,(c外側中J の〉やや

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第� 1号 堀江: 猫の皮質連合領および周囲の皮質から起こる投射線維群� -9-

以上の諸投射線維群のうち,線状体,橋核,正中

中心核および上丘の中間灰白層に至るものは皮質連

合領のみならず,その前方あるいは腹方を囲む脳回

からも等しく,あるいはそれ以上に生じた。視床枕

核および外側膝状体腹側核へ投射する線維群の起始

領野は,尾方から皮質連合領の一部に重なる。後外

側核へのそれは, 大部分が皮質連合領と一致する

が,厳密にいえばJ多少それよりも広い。

残りの視床背外側核,外側中心核,深視蓋前核さ

らに視床網様核腹側亜核,不確帯,� H 野,赤核お

よび中脳網様体の一連の領域に至る線維群が皮質連

合領にほぼ一致する起主的頁野をしめした。

筆をおくに当り,終始懇切な激励と御校閲を賜わ

った主任松本教授,第� 1解剖学福山教授および直接

御指導賜った大谷助教授に対し深甚なる謝意を表じ

ます。なお標本の作製を援助して下さった松井千代

子氏にも深甚なる謝意を表したいと思います。

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-12 堀江論文附図 第 41巻

写真1. 視床背外側核の変性線維群 写真 5. 深視曹前核の変性線維群

(500X) (500X)

写真 2. 視床後外側核の変性線維群 写真 6. 不確帯の変性線維群

(500X) (500X)

写真 3. 視床枕核の変性線維群 写真 7. 赤核の変性線維群

(500X) (500X)

写真 4. 外側中心核の変性線維群 写真 8. 中脳網様体の変性線維群

C500X) C500X)