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The Japan Public Choice Society 公共選択学会 13回全国大会 日時:2009年7月4日(土)・5日(日) 場所:中央大学多摩キャンパス 192-0393 東京都八王子市東中野 742-1 多摩モノレール「中央大学・明星大学駅」から徒歩 5

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The Japan Public Choice Society

公共選択学会

第13回全国大会

日時:2009年7月4日(土)・5日(日)

場所:中央大学多摩キャンパス

〒192-0393 東京都八王子市東中野 742-1

多摩モノレール「中央大学・明星大学駅」から徒歩 5 分

1

スケジュール

2009 年 7 月 4 日(土)

09:50~12:00 セッション A、B、C、H

12:00~12:20 総会

12:20~13:30 昼休み(理事会)

13:30~14:00 総会

14:00~14:30 会長講演

14:30~14:50 休憩

14:50~17:10 シンポジウム A「不況と公共選択」

17:30~19:00 懇親会

2009 年 7 月 5 日(日)

09:50~12:00 セッション D、E、F、G

12:00~13:00 昼休み

13:00~15:20 シンポジウム B「政権交代と公共選択」

会場

摘 要 場 所

セッション A、D 11410(11 号館 4 階)

セッション B、D 11420(11 号館 4 階)

セッション C、F 11210(11 号館 2 階)

セッション H、G 11220(11 号館 2 階)

総会、会長講演、シンポジウム A、B 8208(8 号館 2 階)

理事会 11240(11 号館 2 階)

休憩室・会員控室 11440(11 号館 4 階)

懇親会場 生協食堂

2

2009 年 7 月 4 日(土)

午前:セッション A、B、C、H

午後:会長講演、シンポジウム A

セッション A 「投票と民主主義」

座長 三船 毅(愛知学泉大学)

第1報告(9:50-10:30)

報告者 福元健太郎(学習院大学)

Extension of the "SNTV=d'Hondt" Theory:

Multiple, Limited, Cumulative Vote and Disproportionality

討論者 和田淳一郎(横浜市立大学)

第2報告(10:35-11:15)

報告者 庵原さおり(東京大学・大学院)

「公共サービスの無駄・不足と投票者の評価をめぐる政治経済学」

討論者 谷口尚子(東洋大学)

第3報告(11:20-12:00)

報告者 鎌原勇太(慶應義塾大学・大学院)

「内戦の発生構造の時代的変容」

討論者 森 正(愛知学院大学)

セッション B 「人口動態変化の諸問題」

座長 矢口和宏(東北文化学園大学)

第1報告(9:50-10:30)

報告者 矢尾板俊平・丸山真名美(三重中京大学)

「自治体の子育て支援政策に関する考察」

討論者 川野辺裕幸(東海大学)

第2報告(10:35-11:15)

報告者 岩本千晴(中央大学・大学院)

「地方自治体による乳幼児医療費助成事業の負の外部性」

討論者 中野英夫(専修大学)

第3報告(11:20-12:00)

報告者 長瀬勇人(三井不動産)

「都市・地域における人口の社会増減に大学の与える影響」

討論者 駒井正晶(慶應義塾大学)

3

セッション C 「環境におけるステークホルダー」

座長 中村まづる(青山学院大学)

第1報告(9:50-10:30)

報告者 坂本純一(中央大学)

「地域環境基本計画の数値目標によるガバナンス機能の分析」

討論者 久下沼仁笥(京都学園大学)

第2報告(10:35-11:15)

報告者 米田篤裕(中央大学・大学院)

「グローバル社会におけるネットワークコミュニケーション」

討論者 田中敬文(東京学芸大学)

セッション H 「ガバナンス・行政・地方自治」

座長 佐々木信夫(中央大学)

第1報告(9:50-10:30)

報告者 金 宗郁(香川大学)

「ネットワーク分析によるローカル・ガバナンス構造の分析

-2 県の事例から-」

討論者 石上泰州(平成国際大学)

第2報告(10:35-11:15)

報告者 羅 一慶(中京大学)

「市民社会におけるガバナンス構造の違い」

討論者 名取良太(関西大学)

第3報告(11:20-12:00)

報告者 中谷美穂(明治学院大学)

「政治的代表の役割に対する認識比較」

討論者 池田豊彦(聖学院大学)

4

会長講演(14:00~14:30)

公共選択学会会長 川野辺裕幸(東海大学)

「公共選択の教育プログラム」

シンポジウム A 「不況と公共選択」(14:50~17:10)

コーディネーター 長峯純一(関西学院大学)

参加者 奥井克美(追手門学院大学)

土居丈朗(慶應義塾大学)

富崎 隆(駒澤大学)

アイウエオ順

2009 年 7 月 5 日(日)

午前:セッション D、E、F、G

午後:シンポジウム B

セッション D 「公共財と起業家の役割」

座長 小澤太郎(慶應義塾大学)

第1報告(9:50-10:30)

報告者 上田良文(広島大学)

「One-for-All モデルとリーダー・シップ問題」

討論者 飯島大邦(中央大学)

第2報告(10:35-11:15)

報告者 本田 光(広島大学)

「耕畜連携型『エコ農業』と社会起業家の役割」

討論者 横山 彰(中央大学)

第3報告(11:20-12:00)

報告者 金野和弘(島根県立大学)

「公共財供給における社会起業家の役割に関する研究

-IT 産業の事例研究とゲームモデル分析-」

討論者 瀧澤弘和(中央大学)

5

セッション E 「医療・福祉の諸問題」

座長 堀 真奈美(東海大学)

第1報告(9:50-10:30)

報告者 尾和弘朗(横浜市役所)

「政令指定都市における病院事業の効率性について」

討論者 湯之上英雄(千葉商科大学)

第2報告(10:35-11:15)

報告者 中澤克佳(東洋大学)

「訪問介護市場への営利・非営利事業者の参入行動」

討論者 和泉徹彦(嘉悦大学)

セッション F 「参加、合意形成、地域活性化」

座長 西川雅史(青山学院大学)

第1報告(9:50-10:30)

報告者 羅 一慶(中京大学)

「生活協同組合における市民参加のメカニズム」

討論者 河村和徳(東北大学)

第2報告(10:35-11:15)

報告者 宮下量久(PHP 総研)

「なぜ合併の合意形成はなされなかったのか」

討論者 中島正人(大東文化大学)

第3報告(11:20-12:00)

報告者 関口駿輔(法政大学・大学院)

「容積率の変更は地域活性化に寄与するのか」

討論者 大岩雄次郎(東京国際大学)

6

セッション G 「財政・金融政策」

座長 林 宏昭(関西大学)

第1報告(9:50-10:30)

報告者 舟島義人(青山学院大学・大学院)

「GDP ギャップ安定化に向けた金融政策:

バブルに対するフォワード・ルッキングな政策の検証」

討論者 亀田啓悟(関西学院大学)

第2報告(10:35-11:15)

報告者 宮崎智視(名古屋学院大学)

Does Fiscal Reform Change the Revenue-Expenditure Nexus?

Evidence from Some OECD Countries

討論者 畑農鋭矢(明治大学)

シンポジウム B 「政権交代と公共選択」(13:00~15:20)

コーディネーター 原田博夫(専修大学)

基調講演 小林良彰(慶應義塾大学)

参加者 森 正 (愛知学院大学)

和田淳一郎(横浜市立大学)

アイウエオ順

7

【会長講演】 公共選択の教育プログラム

川野辺裕幸(東海大学)

経済学部や法学部、政治学部等の授業科目の中に公共選択論が定着するようにな

ってから時日が経った。それと同時に、経済政策論、財政学、政治学、総合政策論、

公共政策論、公共経済学等の教科においても、公共選択論が触れられるようになっ

ている。

これらの科目に登場する公共選択論は、政治過程を説明する分析用具として紹介

され、多くの場合、民主主義的政治過程のトピックスを挙げる形で展開される。

投票のパラドックス、単峰性、中位投票者定理、有権者の合理的無知、不投票の

パラドックス、レント・シーキング、キャプチャード・セオリー、地方補助金にお

けるフライペーパー効果、政府のリバイアサン仮説に基づく税制選択、政治的景気

循環、民主主義下での財政赤字不可避論など、その例には枚挙にいとまがない。

さらに、プリンシパル・エージェント理論、情報の非対称性、不完備契約、制度

の経路依存性等々、新制度学派経済学をはじめとするいくつかのグループが提起し

た不完全情報下での人間行動に関する知見と相まって、政府のポジティブな分析が

紹介され、現実の政治過程に対する説明力をもたらす学問分野として紹介されるこ

とが多い。

学部カリキュラムの中に公共選択論が定着するようになったのは、研究分野とし

ての公共選択論の認知度が上昇したこともあるが、経済学系の学部においては、公

共選択論の分析上の前提が、市場を分析する経済学と同じ方法論的個人主義に立脚

していて、市場と政治過程をシームレスに分析することが可能である利点がある。

それと同時に、教科としての公共選択論の普及は、グローバル化と大学のユニバ

ーサル化の中で、問題発見解決型の人材育成が要請され、政策系学部が普及したこ

とと期を一にしている。利害の異なる合理的主体間の合意形成、という公共選択論

のテーマが、こうした要請に合致していたからであろう。

しかし実際には、政策系の教科において、政府のパフォーマンスに関する実証的、

説明的分析の紹介を超えて政策提言を検討する段になると、公共選択論の基本前提

を逸脱して、私的利益を追求する政治主体という今までの議論の前提を切り替えて、

中立的で公平な政府に、あるべき政策の遂行を期待する政策論が展開されることが

多い。

教科の要請に対応する政策提言を、公共選択論の方法論的前提を一貫させた形で

行うには、どのようにしたらいいのか。講演では、タロックの政府観とブキャナン

の方法論を参考にしながら、学士課程における公共選択の教育プログラムを考えた

い。

8

【シンポジウム A】 「不況と公共選択」

米国の主要銀行・証券会社の経営危機が表面化し、世界最大の自動車メーカー

GM が国有化による経営再建をめざすなど、1930 年代の大恐慌以来の世界金融危

機という「大津波」は今なお世界経済そして日本経済に暗い影を落としている。こ

うした状況下にあって、政治と経済の相互作用を研究テーマとしてきた公共選択は、

社会に向けていったい何を発言できるのか。学界をリードする若手研究者たちが、

政治、経済、財政、政治経済などの各専門分野をベースとして、「政治経済の今」

について討論していただく。

コーディネーター 長峯純一(関西学院大学)

参加者 奥井克美(追手門学院大学)

土居丈朗(慶應義塾大学)

富崎 隆(駒澤大学)

アイウエオ順

【シンポジウム B】 「政権交代と公共選択」

昨年来、総選挙の実施時期については何度も噂されてきたが、まだ実施に至って

いない。もし総選挙が実施されれば政権交代が確実に生じるかのような報道がなさ

れてきた。では政権交代とはいったいどういうことなのだろうか。国民生活はそれ

によってどう変わるのだろうか。このシンポジウムでは、政権交代の見方・捉え方

について、前・日本政治学会理事長の小林良彰先生に基調講演をしていただいたあ

と、学界の重鎮・若手俊英を交えてご議論いただく。

コーディネーター 原田博夫(専修大学)

基調講演 小林良彰(慶應義塾大学)

参加者 森 正(愛知学院大学)

和田淳一郎(横浜市立大学)

アイウエオ順

9

セッション A 「投票と民主主義」

福元健太郎(学習院大学)

Extension of the ``SNTV = d'Hondt" Theory:

Multiple, Limited, Cumulative Vote and Disproportionality

キーワード:

要旨:Cox (1991) shows that, under the rationality assumption, SNTV and

d'Hondt allocate the same seats to parties. This paper extends the theory to

electoral systems of the multiple, limited and cumulative vote and gives

plurality rules their corresponding PR systems which are equivalent to

plurality rules.

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庵原さおり(東京大学大学院・日本学術振興会)

「公共サービスの無駄・不足と投票者の評価をめぐる政治経済学」

キーワード:各種公共サービス,投票者の評価,マスメディア,政治経済学,確率

投票モデル

要旨:各種公共サービスに関するマスメディアの報道を振り返るとき,「無駄な公

共事業」といった,ある公共サービスに対する政府支出の規模が一般大衆にと

って最適な規模より過大であることを予想させる内容もあれば,「看護師不足」

や「医師不足」といった,あるサービスに対する政府支出の規模が最適な規模

より過小であると予想させる内容もあることがわかる.そこで本稿ではまず,

各サービスに対する政府支出の規模と最適な規模との乖離を生み出す要因に

ついて検討した.具体的には,政府支出の規模は二大政党の政治的競争過程を

経て実現するものと考え,政治経済学的な分析手法,特に確率投票モデルを用

いた分析を行った.また本稿では,あるサービスの無駄・不足を伝える報道量

の増加・減少と政策変更の時期にも注目した.特に,ある時期に報道量が大き

く増えると,その後政府は政策変更を行い,そしてそれに伴うように報道量は

減るという現象が実際に観察されることを受け,同じモデル構造のもと,特に

報道量と投票者の評価態度の関係性に注目することで,この現象が起こる仕組

みの説明にも試みた.

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10

鎌原勇太(日本学術振興会特別研究員、慶應義塾大学大学院)

「内戦の発生構造の時代的変容」

キーワード:内戦の発生、時代的変容、民主主義、計量分析

要旨:本研究は、内戦の発生構造が時代的に異なることを計量分析によって検証す

るものである。多くの先行研究は、大規模データセットを用いたカントリー・

イヤーモデルにもとづいて分析したものであり、時代および地域を問わない世

界で共通の一般モデルの構築を目指したものとなっている。しかし、内戦の発

生構造は時代にかかわらず同じものであるとは限らない。そこで、本研究では、

内戦の発生に関する統計データなどから、その発生構造が変化したと考えられ

る分岐点を推測し、その分岐点を境にデータセットを分割し、共通の発生モデ

ルを分析・比較することで、発生構造に違いが見られるかどうかを検証する。

例えば、内戦の発生に影響を与えると考えられる要因のなかで、民主主義を表

す変数は、実際に影響を及ぼしているのか、そうであるならば、その影響は変

化しているのかどうかを検証したい。

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11

セッション B 「人口動態変化の諸問題」

矢尾板俊平・丸山真名美(三重中京大学)

「自治体の子育て支援政策に関する考察」

キーワード:子育て支援、ソーシャルサポート、児童福祉、出生率

要旨:本研究の目的は、少子化が進展する中で、有効な子育て支援策について検討

することである。現在、多くの自治体で、子育て支援に関する政策が行われて

いるが、その多くは財政的支援によるものである。しかしながら、心理学分野

の研究では、こうした財政的支援よりもソーシャルサポート(夫の育児参加や

地域の子育て環境の充実)を高める支援の方が有効であるという分析結果が出

されている。

そこで、本研究では、国勢調査の結果や市町村財政のデータ(児童福祉費、

教育費など)に基づいて、子育て支援の現状を把握し、自治体間の比較を行う

とともに、今後の支援策に関する検討を行う。

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岩本千晴(中央大学大学院)

「地方自治体による乳幼児医療費助成事業の負の外部性」

キーワード:乳幼児医療費助成事業、地方自治体、外部性

要旨:この論文は,乳幼児医療費助成制度がもつ負の財政的外部性を理論的・実証

的に分析する。乳幼児医療費助成制度は、地方自治体(地方公共団体)によっ

て施行される子育て支援政策の一つである。現在は100%の自治体で実施さ

れ、その内容は自治体ごとに差があるものの、対象年齢範囲は拡大の傾向があ

る。自治体が乳幼児医療費助成制度を設けると,患者負担が減少することによ

り,医療需要が増加すると考えられる。これによって,医療保険の給付費も増

加して,国および保険者の財政負担が増加する。自治体は国及び保険者への財

政負担を考慮せずに意思決定することから,負の財政的外部性が発生する。

論文では,垂直的外部性に関する先行研究をふまえ、医療費助成制度がもつ

負の外部性を表現するモデルを提示する。つぎに,自治体別のデータを用いて,

自治体による制度の違いが乳幼児医療費に与える影響を推計し,制度が医療費

増加効果をもつことを検証する。そして,外部性の数量的影響を試算する。

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長瀬勇人(三井不動産㈱ S&E 総合研究所)

「都市・地域における人口の社会増減に大学の与える影響」

キーワード:人口の社会増減、大学、進学、就職

要旨:日本社会は少子高齢化にともない人口減少が始まっているが、都市・地域社

会における人口変動は自然増減に加え社会増減の影響が大きくなっている。

人口の地域間移動は若年期の進学、就職、結婚の機会に発生する割合が高い

ことが指摘されており、大学は進学と就職に深いかかわりがあり、地域におけ

る人口社会増減に少なからず影響を及ぼしている。

本報告では、地域の人口社会増減に大学がどのような影響を及ぼしているか、

また地域によりどのような特性の違いがあるかを分析し、人口移動の側面から

みた大学の地域社会における役割について検討を試みる。

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セッション C 「環境におけるステークホルダー」

坂本純一(中央大学経済研究所客員研究員)

「地域環境基本計画の数値目標によるガバナンス機能の分析」

キーワード:地域環境基本計画、ガバナンス、自主指標、基準指標

要旨:本報告は、地域の環境基本計画のガバナンス機能を解明するため、数値目標

に基づく分析手法の開発を目指す。田中(2009)は、都道府県の環境基本計画内

の数値目標に着目し、それをその地域が自主的に掲げる目標に関連するもの

(自主指標)と、国が定めた一律の環境基準に基づくもの(基準指標)に区別

し分析を行っている。自主指標は地域のプロジェクトの実施主体から見て、ス

テークホルダーとなる主体の評価に関するものと見なされているのに対して、

基準指標は地域の環境リスクに関するものと見なされている。そうした研究に

引き続く形で本報告は、 (1)八王子市環境診断指標での環境指標の分類を用い

て、それら 2 つの指標の性質を検討し、(2)環境指標のさらに詳細な分類に従

ってそれらの指標を分けると、どのような傾向が見られるかということを明ら

かにする。

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米田篤裕(中央大学大学院)

「グローバル社会におけるネットワークコミュニケーション」

キーワード:グローバリゼーション、ステークホルダー、コミュニケーション

要旨:グローバル化した社会における企業の社会的責任行動として、日本企業と中

国企業の社会環境報告書・CSR報告書等から得られた社会貢献活動の事例を

整理し、同じ活動分野における特徴を、ステークホルダーコミュニケーション

の視点から整理する。また、モデルを利用しつつ、グローバル社会における企

業が各ステークホルダーとのコミュニケーションを意識した活動の有用性に

つき検証し、逆に、グローバルなネットワーク社会において、利他係数が小さ

く、リスク係数が実際より小さく想定された場合には、企業による過剰な生産

活動水準が、社会的厚生の損失を生むこととを検証し、これより、企業がステ

ークホルダーを認識して、適切なコミュニケーションを図ることは、社会的費

用に関して企業が認識できる外部評価の割合である利他係数を改善するとと

もに、企業にとってのリスク係数を適正な水準に想定させることを示す。

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セッション H 「ガバナンス・行政・地方自治」

金 宗郁(香川大学法学部准教授)

「ネットワーク分析によるローカル・ガバナンス構造の分析

-2 県の事例から-」

キーワード:ローカル・ガバナンス、ネットワーク、政策過程

要旨:90 年代以後、政治・行政学においては「ガバメントからガバナンスへ」と

表現が一般に使われるようになった。しかし、ガバナンスの概念に対して一致

した見解が存在するのではない。にもかかわらず、社会問題の解決にあたって、

意思決定過程に関与するアクターが限定的でなく、アクターの多様性が強調さ

れており、何を行うべきかという方向性そのものがアクターの間から抽出され

る過程がガバナンスということについては異論がないようである。いずれにせ

よ、「ガバナンス」が広義の統治パラダイムの変化をもたらすことであれば、

単なる分析的概念にとどまらず、民主主義との関連性を含む規範的価値も視野

に入れて検討しなければならない。このことは「ローカル・ガバナンス」とい

う側面からすれば、「我々の町は民主的であるか?」という地域権力構造研究

の復興を意味するかもしれない。また、日本の文脈からすれば、戦後民主主義

がローカル・レベルにおいてどの程度実現され、機能しているかという問題意

識に立ち返ることになるだろう。

そこで、本報告では、二つの県から得られたデータを用いてネットワーク分

析を試みることにより、「ローカル・ガバナンス」の現状を探りたい。今回の

分析では、今後の「ローカル・ガバナンス」の解明にあたって叩き台として期

待しながら、自治体の政策過程に関わっているアクター間の相互関係を示すこ

とにしたい。

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15

羅 一慶(中京大学総合政策学部准教授)

「市民社会におけるガバナンス構造」

キーワード:市民社会、ガバナンス、良きデモクラシー

要旨:本報告の目的は、第一に、市民社会におけるガバナンス構造が、都市部と農

村部や県レベルと市町村において、どのように違うのかを、第二に、その違い

が良きデモクラシー(good democracy)とどのような関連性を持っているのか

を、実証的に検討することである。

具体的には、次のような問題に焦点を当てる。つまり、第一に、政治家と市

民社会団体及び有権者との相互作用のあり方はどうなっているのか、第二に、

行政と市民社会団体及び有権者との相互作用のあり方はどうなっているのか、

第三に、市民社会団体間のガバナンス構造はとうなっているのか、最後に、市

民社会におけるガバナンス構造が都市部と農村部や県レベルと市町村レベル

においてどのような違いを示しており、その違いが良きデモクラシーとどのよ

うな関連性を持っているのかについて検討することにしたい。

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中谷美穂(明治学院大学)

「政治的代表の役割に対する認識比較」

キーワード:地方議員、役割認識、政治的代表性、良きデモクラシー

要旨:現在、地方分権の進展により自治体の自己決定権が拡大する中、議事機関で

あり住民の代表機関である地方議会の重要性が高まっていることは言うまで

もない。ここで、「代表」という時、有権者の側は何を託しているのであろう

か。言い換えれば、代表者にどのような活動を望んでいるのであろうか。一方、

当事者である議員は、どのような役割を果たすべきと認識しているのであろう

か。

政治的代表の役割認識に関する先行研究としては、地方自治研究資料センタ

ー(1982)、村松・伊藤(1986)をはじめ、近年では、小林・中谷・金(2008)

が存在するが、いずれも議員の役割認識にとどまっており、有権者との比較は

行われていない。しかしながら、議員は有権者の「代表」であり、有権者側の

視点から代表に対する役割認識を検討し、議員の認識と比較することは重要と

考える。

そこで本報告では、2009 年に 2 県を対象として行われた地方議員に対する調

査、ならびに当該都道府県内の有権者を対象に行われた意識調査を用いて、代

表の役割に対する認識の比較分析を行う。議員と有権者における違いを比較す

るとともに、2 県での違いが見られるか否かについても検討することにしたい。

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セッション D 「公共財と起業家の役割」

上田良文(広島大学)

「One-for-All モデルとリーダー・シップ問題」

キーワード:起業家、共通利益、進化

要旨:各社会組織の共通利益は「調整ゲーム」あるいは「ネットワークゲーム」の

分析枠組で定式化される。その際、組織者や調整者として機能する起業家型リ

ーダー・シップが不可欠であるが、それが「ただ乗り」の対象になる場合には

起業家やリーダーの問題を無視できない。政治的リーダーの理想的タイプやそ

の育成問題は古代ギリシャ以来、政治哲学の課題であるが、リーダー人材の存

在自体は暗黙的に仮定されてきた。また、シュンペーター的伝統に従うビジネ

ス・リーダーシップ論(起業家理論)も、起業家人材の存在自体は仮定してお

り、起業家の効用関数や彼らが登場する条件は明らかにされていない。他方、

近年の進化生物学や認知科学は、人間のタイプや行動を分析するための新たな

知見を提供している。これら近年の科学的知見に基づいて、本報告はリーダー

型プレーヤーの定式化と分類を行い、彼らの登場条件を明らかにする。

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本田 光(広島大学大学院)

「耕畜連携型『エコ農業』と社会起業家の役割」

キーワード:公共財、社会起業家、耕畜連携、

要旨:農産物に安全な品質と信頼の回復を求める消費者が増加しており、有機農産

物や特別栽培農作物の市場が広がりつつある。一方、産地では、慣行の農法に

起因する環境汚染によって、農業の土台である自然生態系の維持が危ぶまれて

いる。このような状況において、本稿では、畜産農業による汚染に焦点を当て

るため、「社会起業家の非営利ビジネスモデル」を十勝に応用し、両課題の解

決を目指す耕畜連携型の「エコ農業」を「選択的誘因」ビジネス・スキームの

実行を通じた公共財の私的供給モデルとしてヒエラルキー型提携形ゲームの

枠組みで設計し、その成立条件を明らかにする。そして、自然生態系の保全と

農業や食品産業の再生に同時に取り組む人材が不足しているという問題、すな

わち、組織化のリーダーシップ問題を解くために、消耗戦ゲームの枠組みで農

業地域における社会起業家の条件を検討する。

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金野和弘(島根県立大学)

「公共財供給における社会起業家の役割に関する研究

-IT 産業の事例研究とゲームモデル分析-」

キーワード:社会起業家、IT 産業、公共財、ゲームモデル

要旨:IT 産業において、起業家によって公共財が供給される事例がしばしば見られ

る。たとえば、無償で提供される高性能ソフトウェアや優れたソフトウェア開発

キットなどである。これらは、その利用者に対して共通利益をもたらすと同時に、

起業家に私的利益をもたらすものが少なくない。このような起業家は、社会起業

家の一類型であると見做すことができる。

他の業種と比べて、IT 産業では広告収入や他の有償製品の販売促進など、間接

的・副次的効果を見込んで公共財が提供される場合が多い。その理由は、IT 産業

がもつ特性によるものであると考えられる。その特性により、IT 産業は公共財を

供給するインセンティブを生み出しやすい性質を備えていると考えられる。

本研究の目的は、公共財供給における社会企業家の役割を研究することである。

とくに本研究では IT 産業に焦点を当てる。

本研究の構成は以下のとおりである。まず、IT 産業における公共財供給の事例

を整理し、その結果をもとに社会起業家が果たす機能について仮説を立てる。次

に、仮説を検証するためにゲームモデル分析を行う。最後に、分析結果から得ら

れた含意をもとに、IT 産業における社会企業家支援のための環境整備に関して政

策提言を示す。

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セッション E 「医療・福祉の諸問題」

尾和弘朗(横浜市役所)

「政令指定都市における病院事業の効率性について」

キーワード:財務体質 経営の効率性 持続可能な経営

要旨:本研究報告では、政令指定都市の病院事業に範囲を限定し、事業の効率性に

ついて整理検討を行う。地方公共団体が経営する自治体病院は、地域住民の健

康に責任を持つ地方公共団体が開設するもので、一定の役割が求められている。

しかしながら、さまざまな問題を抱えているため地域における医療提供体制が

困難となっている一方、地歩公共団体の財政状況も悪化しており、公立病院を

取巻く状況は大変厳しくなっている。

事業経営の指標として、経常損益は損失事業の割合が約8割(H18)から約

7割(H19)と改善されているものの依然として厳しく、また、累積欠損金等

その他の項目についても同様に厳しい状況である。

そのため地方公共団体は公立病院改革プランの策定、経営の効率化、経営形

態の見直しなどに取組んでいるが、今後とも引き続き、地域において真に必要

かつ持続可能な病院事業の推進に向けて取組む必要があると考える。

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中澤克佳(東洋大学)

「訪問介護市場への営利・非営利事業者の参入行動」

キーワード:訪問介護、地域政策、高齢者福祉

要旨:2000 年の介護保険制度施行を契機として,わが国の介護供給体制は大きく

変化した。介護保険以前の措置制度下では行政に委託された社会福祉法人や社

会福祉協議会が主要な介護供給主体であったが,介護保険施行に伴い訪問介護

サービス市場などへの営利事業者の参入が原則的に自由化され,介護供給量の

増大,供給主体の多様化が進展してきている。既存研究においては,営利事業

者と非営利事業者という供給主体の差異に注目し,供給するサービスの質,賃

金格差,利用者の選択行動に注目が集められてきた。しかし,各運営主体が「ど

のような地域に」,「どのような要因で」参入するかという観点からの分析は筆

者の知る限り存在していない。そこで本稿では,営利事業者,非営利事業者,

特定活動非営利事業者(NPO)の訪問介護事業者が,どのような誘因で地域

介護市場に参入するかを定量的に考察を行い,参入行動の差異性を検証する。

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19

セッション F 「参加、合意形成、地域活性化」

羅 一慶(中京大学)

「生活協同組合における市民参加のメカニズム」

キーワード:生活協同組合、ソーシャル・キャピタル、市民参加

要旨:本報告の目的は、生活協同組合と市民参加との相互作用のメカニズムを解明

することである。具体的には、第一に、生活クラブ生協内の自発的な市民活動

がどれほど活性化しているのかを考察し、第二に、そのような自発的な市民活

動に影響を与える要因を実証的に分析し、第三に、生活クラブ生協の自発的は

市民活動と信頼や協力規範などの規範的なソーシャル・キャピタルとの関連性

を実証的に分析する。第四に、社会ネットワーク、信頼、協力規範などのソー

シャル・キャピタルが政治参加に与える影響についての検討を実証的に行う。

最後に、生活協同組合に自発的な市民活動を活性化するための方策について論

じる。

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宮下量久(PHP 総合研究所)

「なぜ合併の合意形成はなされなかったのか」

キーワード:地域間の合意形成、市町村合併、地域内所得分布

要旨:本稿では,市町村合併の協議期間を地域間の合意形成コストとみなして,そ

の違いが生じるカニズムについて定量的に検証する.宮下・中澤 (2008)では,

合併成立のケースについて検証しているが, 本稿では合併不成立のケースに

着目して分析を行う.その理由は,「なぜ地域間の合意形成が行われたのか」

という合意形成要因を明確にするよりも,「なぜ地域間の合意形成が行われな

かったのか」という合意不成立の要因を特定することのほうが,合意を成立さ

せる上での障害や問題を克服するのに有益と考えるためである.

交通インフラ整備が進んだことで,市民の行政需要も広域化し,複数の行政

区域にわたる諸問題に公共部門は直面しつつある.公共部門における枠組みは,

市民の行政需要の広域化と合わせて再編・見直しに迫られているといえる.市

町村間における合意形成コストの違いが生じる要因について分析しておくこ

とは,今後の地域政策の決定過程のあり方を検討する上で,極めて重要である

と考える.

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関口駿輔(法政大学大学院)

「容積率の変更は地域活性化に寄与するのか」

キーワード:容積率、地域活性化、中心市街地、GIS、弾性値

要旨:内閣府の中心市街地活性化基本計画の認定をはじめ、基礎的自治体による中

心市街地活性化の為の取り組みが広がっている。本稿はこうした現状を踏まえ、

中心市街地のポテンシャルを測定することを目的としている。ポテンシャルの

測定では都内及び神奈川県内主要都市の中心市街地を対象とし、町丁目別小売

業年間販売額に対する売り場面積と従業者数の弾性値を計算することによっ

て導出した。導出されたポテンシャルの規定要因を探るため実証分析を行うと

ともに、容積率規制が拘束的であるか非拘束的であるかを町丁目別に検証する。

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セッション G 「財政・金融政策」

舟島義人(青山学院大学大学院)

「GDP ギャップ安定化に向けた金融政策:

バブルに対するフォワード・ルッキングな政策の検証」

キーワード: バブル、 期待需要ショック、 フォワード・ルッキングな政策

要旨:本稿では、 バブル的な需要ショックを背景とし、「期待需要ショック」をモ

デルの変数として明示的に扱うことを試みた。その結果、 持続的な需要ショ

ックが発生した場合を想定したシミュレーションを行うことにより、 金融政

策当局が平常の金融政策ルールに基づいた政策と「フォワード・ルッキング」

な政策を行った場合の比較・検討を行った。シミュレーション結果は、「フォ

ワード・ルッキング」な政策に基づいた方が、 金融政策が GDP ギャップ・物

価の安定に寄与することを示すものとなった。また、 Structural VAR モデルに

よる実証分析では、 日本における 90 年代以降の金融政策が、 景気(GDP ギ

ャップ)・物価に対するコントロール力を持ち得なかったことが明らかとなっ

た。理論モデルによるシミュレーション結果と合わせて考えると、 バブル崩

壊後において、 より早期の大幅な金融緩和を行うことにより、 金融政策の影

響力を上げることができた可能性が示唆される。

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宮崎智視(名古屋学院大学)

Does Fiscal Reform Change the Revenue-Expenditure Nexus?

Evidence from Some OECD Countries

キーワード:Fiscal reform, Expenditure ceiling, Gregory-Hansen cointegration test,

Dynamic OLS

要旨:In the 1990s, some OECD countries revised the legislation in order to introduce

“permanent” expenditure ceilings or targets for deficit reductions. Such fiscal reforms

might change the revenue-expenditure nexus after legal amendments were made and

could render fiscal management sustainable.

To the best of our knowledge, however, no earlier works have examined the

relationship between fiscal reform and the sustainability of fiscal deficit. Therefore, in

this paper, we examine whether or not fiscal reform enhances the sustainability of

fiscal deficits in some OECD countries that introduced “permanent” expenditure

ceilings.

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22

座長・報告者・討論者・参加者の方へ

* 報告の時間配分について

・報告者による報告 25 分以内

・討論者によるコメント・質問 5~10 分以内

・その他(フロアとの質疑含む) 5~10 分以内

計 40 分

* 食事について

・土曜日は、大学内の食堂(学生食堂、教職員食堂)が開いております。

・日曜日は、大学内の食堂は休みなので、各自でご準備をお願いします。

* 交通アクセスについて(最終ページの地図をご覧ください)

・多摩モノレール「中央大学・明星大学駅」改札から会場までは徒歩 5 分です。

・東京駅からの所要時間 80~90 分、新宿駅からの所要時間 60 分

<新宿から>

・京王線「新宿駅」→(京王八王子行特急・準特急)「高幡不動駅」下車・乗換

→ 多摩モノレール「高幡不動駅」→「中央大学・明星大学駅」下車

・JR 線「新宿駅」→(中央線特別快速・快速)「立川駅」下車・乗換

→ 多摩モノレール「立川南駅」→「中央大学・明星大学駅」下車

<多摩センターから>

・多摩モノレール「多摩センター駅」→「中央大学・明星大学駅」下車

* 宿泊施設について

・新宿、立川などの周辺にビジネスホテルがあります。必要な方は、各自で手配

をお願いします。

* 学内では、指定場所以外では禁煙です。

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公共選択学会第 13 回全国大会

<実行委員会>

委員長 横山 彰(中央大学)

事務局長 飯島大邦(中央大学)

委 員 岸 真清(中央大学)

瀧澤弘和(中央大学)

田中廣滋(中央大学)

谷口洋志(中央大学)

中澤克佳(東洋大学)

中野 守(中央大学)

長谷川聰哲(中央大学)

細野助博(中央大学)

御船 洋(中央大学)

矢尾板俊平(三重中京大学) 敬称略、アイウエオ順

<プログラム委員会>

委員長 谷口洋志(中央大学)

委 員 飯島大邦(中央大学)

川瀬晃弘(東洋大学)

久下沼仁笥(京都学園大学)、

鷲見英司(新潟大学)

谷口尚子(東洋大学)

中村匡克(高崎経済大学)

西川雅史(青山学院大学)

林 宏昭(関西大学)

本間 聡(九州産業大学)

三船 毅(愛知学泉大学)

矢口和宏(東北文化学園大学)

湯浅墾道(九州国際大学) 敬称略、アイウエオ順

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多摩キャンパスへのアクセス

多摩モノレール『中央大学・明星大学駅』下車、改札口を出て右方向へ

※モノレールは下記の駅から接続しております。

・JR 中央線「立川駅」

・京王線「高幡不動駅」「多摩動物公園」

・小田急線・京王線「多摩センター駅」