日本の潮流 2001 -4つの視点 - Unisys ·...

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ユニシス・ニュースのバックナンバーは、日本ユニシスのホームページに全文が掲載されています。 http://www.unisys.co.jp/users/unisys_news/index.html 日本がバブル崩壊の余波にとらわれ、「失われた 10年」において茫然自失に陥っていた間にも、世界 は情報化とグローバル化の奔流に洗われて驚くべき 変貌を遂げた。千変万化が加速され、時代が稠密化 する一方、そこかしこで起こる変革の声とは裏腹に、 日本が未来を自ら切り拓こうとする足取りは依然重 く遅いように思われる。 以下では時代の潮流を捉え、新たな世紀に向けた 創造的変革を促すために日本に必要な方途を、『共 創の戦略』、『やわらかな絆』、『モラル再考築』、『寛 容な個人主義』という4つの視点から探る。 視点1:共創の戦略 20世紀の大きな特徴として、二度の大戦と続く冷 戦、激しい経済競争など、それが過酷なまでのコン ペティションの時代であった、ということが言えよ う。しかし90年の冷戦の終焉と90年代の情報化、 そしてそれらが促進したグローバル化は、そうし たメガ・コンペティションの流れに変化の圧力を加 え、パラダイムは競争から『共創』へと転換しつ つある。 例えば、国家間ではグローバル化した経済が生む 金融危機や環境破壊、あるいはルールが後追いを余 儀なくされている情報やバイオといった技術分野に おける諸問題に対する国際的な協調やグローバル ルール構築の必要性が、一層強く求められている。 また企業においても、市場のグローバル化や競争激 化に対応するための、かつて凌ぎを削った競合相手 との合従連衡が近年のトレンドとなっている。 21世紀を迎え、日本は共創の流れの中でいかに自 らのポジションを定め、戦略を描くかを強く求めら れているように思われる。 視点2:やわらかな絆 情報化は、社会における従来の絆のあり方を大き く変えつつある。情報化がもたらした効率化と最適 化を指向するフレキシブルなネットワークの広がり は、社会におけるヒト・モノ・カネ・情報・組織など、 あらゆるレベルの関係性に影響を与えている。効率 化と最適化という特徴こそが、自由競争化した社会 を勝ち抜く上で情報ネットワークを不可欠の資源と している。 また情報化が喚起した『やわらかな絆』は、一方 でリアルな空間への還流をももたらし始めている。 例えば企業が情報化を取り込むことで、従来の縦割 りやヒエラルキーを越えた自由でフレキシブルなつ ながりが生まれ、創造性や生産性を高めている。サ イバー空間とリアル空間における関係性が相互に影 響しあうのが新たな時代の社会における絆の姿であ り、今後さらに絆は多層化・多重化していくだろう。 視点3:モラル再考築 20世紀における先進国の繁栄は「自由主義」と「科 学技術の発展」によりもたらされたが、近年そうし た自由と発展のひずみが『モラルの危機』やモラル に端を発する諸問題として露呈し始めている。例え ば象徴的なのが、サイバー空間でのプライバシー侵 害やハッカーといった諸行為だ。サイバー空間はア クセスの自由や匿名性の自由といった諸権利により 急速な進化を遂げた。野放しな自由への法的な規制 を求める声がある一方、そうした負の部分はより大 きなメリットのためにはやむを得ないという議論も あるが、情報化により、あらゆる個人が肥大化した 力を与えられる以上、サイバー空間上でのモラルに 基づくフォーマルないしインフォーマルなルールを いかに構築し啓蒙するかという観点が必要であろう。 例えば、サンマイクロシステムズの創設者の一人 で技術者のビル・ジョイ氏はコンピュータがGNR(遺 伝子、ナノ、ロボット)技術と結びつき進化が加速 され、情報ネットワークにより悪意ある個人がそう した技術情報を悪用するリスクに強い懸念を示し た。新たな科学技術が善悪両方の側面を持つ以上、 最終受益者である生活者を含めた幅広いモラルに関 する客観的な議論が今後大きな課題となるだろう。 視点4:寛容な個人主義 「失われた10年」と呼ばれた停滞と混沌の90年代、 日本においてはさまざまな旧来的価値観見直しの議 論が起こった。そして見直しが必要とされたものに、 「ムラ社会的な他者への非寛容さ」や「なれあいの集 団主義」といったものが挙げられた。戦後日本の発 展を支えたこれらのある種工業的な価値観は、21世 紀の情報資本主義社会においては齟齬を生まざるを えない。情報資本化した社会においては、情報や知 識をいかに活用・生産するかがカギとなるが、付加 価値のある新たな知を創造する社会システムを実現 する上では、異質な考えや文化を受け入れる寛容さ と個性・創造性がある個人の存在が不可欠だ。歴史 をひもとけば、そうした多様な文化のモザイク的な 都市が創造性の源泉となった例は数多く見られる。 情報化は個人の考えや生き方を多様化しうるとい う意味で、『寛容な個人主義』という価値基軸を実 現する追い風になるだろう。加えて個性や多様性を 育み支える教育や制度の整備が官民問わず促進され ることが、新たな時代の日本が活力を生むための要 諦となる。 日本の潮流 2001 創造的変革のために-4つの視点 電通総研 副主任研究員 高村 ◆特集:金融新時代のIT戦略 *新基幹系システム(朝日信用金庫)、「FBA Navigator」(碧海信用金庫/青木信用金 庫/伊那信用金庫/静岡県労働金庫)、 インターネットバンキングシステム構築 に着手(しんきん情報システムセンター)、 アウトソーシング/システム共同開発(殖 産銀行・福島銀行/広島銀行・福岡銀 行)、「DOCS」(広島銀行/中国銀行/ 百五銀行/肥後銀行) (2面~9面) ◆ユーザ事例 *イズミヤ-従業員活性化のための人事 情報システム構築 (10面) *全日空商事-通販事業の基幹系/情報 系(総合顧客分析)システム刷新 (16面) UN ◆IT最前線 *バランス・スコアカード (11面) *システム開発技術の動向(9) (12面) *Windows Data Center(6) (13面) ネットワーク・ソリューション(9) (14面) 特集:金融新時代のIT戦略 -最新 IT活用事例とユニシスの支援体制

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ユニシス・ニュースのバックナンバーは、日本ユニシスのホームページに全文が掲載されています。http://www.unisys.co.jp/users/unisys_news/index.html

日本がバブル崩壊の余波にとらわれ、「失われた10年」において茫然自失に陥っていた間にも、世界は情報化とグローバル化の奔流に洗われて驚くべき変貌を遂げた。千変万化が加速され、時代が稠密化する一方、そこかしこで起こる変革の声とは裏腹に、日本が未来を自ら切り拓こうとする足取りは依然重く遅いように思われる。以下では時代の潮流を捉え、新たな世紀に向けた創造的変革を促すために日本に必要な方途を、『共創の戦略』、『やわらかな絆』、『モラル再考築』、『寛容な個人主義』という4つの視点から探る。●視点1:共創の戦略20世紀の大きな特徴として、二度の大戦と続く冷戦、激しい経済競争など、それが過酷なまでのコンペティションの時代であった、ということが言えよう。しかし90年の冷戦の終焉と90年代の情報化、そしてそれらが促進したグローバル化は、そうしたメガ・コンペティションの流れに変化の圧力を加え、パラダイムは競争から『共創』へと転換しつつある。例えば、国家間ではグローバル化した経済が生む金融危機や環境破壊、あるいはルールが後追いを余儀なくされている情報やバイオといった技術分野における諸問題に対する国際的な協調やグローバルルール構築の必要性が、一層強く求められている。また企業においても、市場のグローバル化や競争激化に対応するための、かつて凌ぎを削った競合相手との合従連衡が近年のトレンドとなっている。21世紀を迎え、日本は共創の流れの中でいかに自らのポジションを定め、戦略を描くかを強く求められているように思われる。

●視点2:やわらかな絆情報化は、社会における従来の絆のあり方を大きく変えつつある。情報化がもたらした効率化と最適化を指向するフレキシブルなネットワークの広がりは、社会におけるヒト・モノ・カネ・情報・組織など、あらゆるレベルの関係性に影響を与えている。効率化と最適化という特徴こそが、自由競争化した社会を勝ち抜く上で情報ネットワークを不可欠の資源としている。また情報化が喚起した『やわらかな絆』は、一方でリアルな空間への還流をももたらし始めている。例えば企業が情報化を取り込むことで、従来の縦割りやヒエラルキーを越えた自由でフレキシブルなつながりが生まれ、創造性や生産性を高めている。サイバー空間とリアル空間における関係性が相互に影響しあうのが新たな時代の社会における絆の姿であり、今後さらに絆は多層化・多重化していくだろう。●視点3:モラル再考築20世紀における先進国の繁栄は「自由主義」と「科

学技術の発展」によりもたらされたが、近年そうした自由と発展のひずみが『モラルの危機』やモラルに端を発する諸問題として露呈し始めている。例えば象徴的なのが、サイバー空間でのプライバシー侵害やハッカーといった諸行為だ。サイバー空間はアクセスの自由や匿名性の自由といった諸権利により急速な進化を遂げた。野放しな自由への法的な規制を求める声がある一方、そうした負の部分はより大きなメリットのためにはやむを得ないという議論もあるが、情報化により、あらゆる個人が肥大化した力を与えられる以上、サイバー空間上でのモラルに基づくフォーマルないしインフォーマルなルールを

いかに構築し啓蒙するかという観点が必要であろう。例えば、サンマイクロシステムズの創設者の一人で技術者のビル・ジョイ氏はコンピュータがGNR(遺伝子、ナノ、ロボット)技術と結びつき進化が加速され、情報ネットワークにより悪意ある個人がそうした技術情報を悪用するリスクに強い懸念を示した。新たな科学技術が善悪両方の側面を持つ以上、最終受益者である生活者を含めた幅広いモラルに関する客観的な議論が今後大きな課題となるだろう。●視点4:寛容な個人主義「失われた10年」と呼ばれた停滞と混沌の90年代、

日本においてはさまざまな旧来的価値観見直しの議論が起こった。そして見直しが必要とされたものに、「ムラ社会的な他者への非寛容さ」や「なれあいの集団主義」といったものが挙げられた。戦後日本の発展を支えたこれらのある種工業的な価値観は、21世紀の情報資本主義社会においては齟齬を生まざるをえない。情報資本化した社会においては、情報や知識をいかに活用・生産するかがカギとなるが、付加価値のある新たな知を創造する社会システムを実現する上では、異質な考えや文化を受け入れる寛容さと個性・創造性がある個人の存在が不可欠だ。歴史をひもとけば、そうした多様な文化のモザイク的な都市が創造性の源泉となった例は数多く見られる。情報化は個人の考えや生き方を多様化しうるという意味で、『寛容な個人主義』という価値基軸を実現する追い風になるだろう。加えて個性や多様性を育み支える教育や制度の整備が官民問わず促進されることが、新たな時代の日本が活力を生むための要諦となる。

日本の潮流 2001 創造的変革のために-4つの視点電通総研副主任研究員 高村 敦氏

主な記事

◆特集:金融新時代のIT戦略*新基幹系システム(朝日信用金庫)、「FBANavigator」(碧海信用金庫/青木信用金庫/伊那信用金庫/静岡県労働金庫)、インターネットバンキングシステム構築

に着手(しんきん情報システムセンター)、アウトソーシング/システム共同開発(殖産銀行・福島銀行/広島銀行・福岡銀行)、「DOCS」(広島銀行/中国銀行/百五銀行/肥後銀行) (2面~9面)

◆ユーザ事例*イズミヤ-従業員活性化のための人事情報システム構築 (10面)

*全日空商事-通販事業の基幹系/情報系(総合顧客分析)システム刷新 (16面)

UN

◆IT最前線*バランス・スコアカード (11面)*システム開発技術の動向(9) (12面)*Windows Data Center(6) (13面)*ネットワーク・ソリューション(9) (14面)

特集:金融新時代のIT戦略-最新IT活用事例とユニシスの支援体制

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LAN

勘定系サーバ� 統計�サーバ�

運用管理�サーバ�

印鑑ファイル�サーバ�

イントラネット�サーバ�

ネットワーク�サーバ�

(メインフレーム) (Windows)

(Windows)

(Windows)

(Windows) (Windows) (Windows) (Windows/UNIX)

本部�

営業店�

日 銀�

SSC�

CAFIS�

提携企業�

外部機関・提携先�インターネット�

対外システム� ファイアウォール�

顧客チャネル�(検討中含む)

渉外員�

テレホンバンキング�

PCバンキング�

携帯電話�

ネットワーク�(コミュニケーション・ハブ)

2

金融業界の再編が加速される中、地域金融機関も

生き残りをかけ、顧客サービス・戦略商品などへの

迅速な対応が求められている。

朝日信用金庫では、“お客様とともに、地域とと

もに発展する信用金庫”として特色を活かした独自

戦略を迅速に実現することを目指し、次世代勘定系

システム「SBI 21」を採用し、1月4日より「第4次オン

ライン・システム」の稼働を開始した。

第4次オンライン・システムは、勘定系システム、

営業店システム、ネットワークをも一斉全面更改し、

24時間365日稼働を実現している。

朝日信用金庫では、82年1月に日本ユニシスとの共同開発によりFAST1100をベースとしたオンライン・システムを稼働させ、以後、数次にわたり機能強化を図ってきた。しかしながら、本システムは規制金利時代の業務・枠組みに基づいたものであり、また本番後長期にわたる経過の中で、以下のようなシステム課題が顕在化してきた。*諸機能の追加によるシステムの複雑化と透明性の低下を招き、システムの制度的疲労の顕在化*システムの複雑化・肥大化に伴う開発生産性低下*オンライン終了後の業務処理の長時間化(時間延長の足かせ)また日本版ビッグバンに代表される今後の金融環境の変化に対し、競合優位を確保し続けるためには、*多様化する顧客ニーズ(行動)への的確かつ迅速な対応*低コスト・チャネルの創出*上記を支えるシステム部内の開発力(開発スピード)の強化などを必須要件とし、次期システムの検討を行ってきた。次期システムにおいては、次のような点をポイントとして検討した。*「営業店システムの戦略化」、「情報武装のためのデータベース構築」などの独自戦略を具現化する

ための最適な情報システムの実現*①24時間365日稼働、②オブジェクト指向技術とPCベースの開発環境による高生産性の確保、③統計バッチシステムのオープン化による勘定系システムのスリム化、④営業店端末システムの汎用化(Windows NTベースの新営業店システム「FBANavigator」など)の実現*次期システム構築時にシステム要員の大幅なレベルアップが望めること*メーカーの信金業界に対する姿勢(パートナーベンダとしての信頼度)こうした要件および将来性・投資対効果を総合的に判断した結果、日本ユニシスの次期勘定系システム「SBI21」を採用した。

SBI21導入の目的および第4次オンライン・システムの特徴について、次の点を挙げている。①戦略商品・サービスへの迅速な対応

21世紀に飛躍する地域金融機関であるために、独自の経営戦略を迅速かつ柔軟に具現化できるシステムが不可欠である。この実現のために、基幹勘定系業務の分野では業界で初めて分析・設計工程にオブジェクト指向技術を採用することで、個別独自商品開発の柔軟性を確保しつつシステムの開発・保守の大幅な生産性向上を実現し、開発・保守負荷を大幅に軽減している。②顧客サービスの向上-24時間365日稼働を実現

競合力向上のためにも、顧客サービスの向上は非常に重要なテーマであり、24時間365日稼働システムを構築するとともに、新しいデリバリ・チャネルへの柔軟な対応を図っている。③営業店事務の簡素化・標準化

本システムの導入にあたり、事前に印鑑照会システム、オープン出納機などを導入し、2000年上期に営業店体制を一線処理完結型に移行。この体制の下で、本システムを稼働させ、システ

ムの機能を最大限に発揮できる体制とした。本システムは、収支ペ

ア、役席承認システム、端末機別精査などを採用し、パート要員でも対応可能な簡素化・標準化・容易性を追求したオペレーションなどにより、締め上げ時間の短縮化を実現している。④融資事務の整備と審査業

務の正確性の追求

融資業務は、同金庫の独自性が強い分野であり、本システム導入に合わせ融資審査判断に必要な情報システムを再編成し、稟議に関する一連のシス

システムの全体像

テムを再構築している。なお、実行処理の予約など融資業務の平準化・効率化をも図っている。⑤長いシステムライフの追求

急速に変革し続けているIT技術に柔軟に対応できる仕組みとするために、ネットワークのTCP/IP化を実現と、端末機のオープン化の他、システム設計・開発・テスト・保守なども、すべてオープン系システムで実現。現時点の実行環境はメインフレームを採用しているが、今後の技術動向に応じてオープン系システムへ移行可能な仕組みとなっている。

朝日信用金庫では、第4次オンライン・システムの一層の効果を具体化するために、日本ユニシスと沖電気工業との共同開発による新営業店システム「FBA Navigator(SBI21版)」を導入し、営業店の合理化、情報システムの充実を図っている。新営業店システム導入の狙いとして、次の点を挙げている。*営業店BPRによる、さまざまな“レス”の実現*営業店のセールス拠点化の実現*新商品開発などへの迅速な対応*勘定系処理の他、情報検索(顧客メイン化情報)の実現新営業店システムは、ソフトウェアにSBI21版

FBA Navigator、ハードウェアに沖電気製端末で構成されている。新営業店システムの機能・特徴は、以下のとおりである。① 24時間365日稼働を支える信頼性の高いシステム

の実現

ネットワークの二重化、営業店サーバの二重化、ソフトウェアのリモート配布、マルチホスト対応を図っている。②営業店の省力化/効率化対応

DDLB(Drop Down List Box)によるガイダンス機

2001年3月1日第479号

朝日信用金庫第4次オンライン・システム稼働次世代勘定系システム「SBI21」を採用

勘定系システム/営業店システム/ネットワークを一斉全面更改

特集.金融新時代のIT戦略-最新IT活用事例とユニシスの支援体制

「SBI21」で次世代情報基盤を確立

21世紀のさらなる飛躍を目指した次世代勘定系システム

FBA Navigatorにより営業店システムも刷新

■朝日信用金庫http://www5.mediagalaxy.co.jp/asahishinkin/

◆中小企業専門の金融機関として、地域のすべてのお客様に質の高い金融サービスを提供することにより、「地域で最も頼りにされる金融機関」を目指している。◆本店所在地=東京都台東区台東2-8-2◆代表者=塚原和郎理事長◆預金量=1兆1,687億円(2000年3月)◆店舗数=36店舗3出張所◆役職員数=1,389人(2000年3月末)◆使用機種=ITASCA3800-22Gほか

稼働式でテープカットする塚原和郎理事長(左から3人目)、以下右に、森脇邦剛専務理事、小林一雄常務理事、原弘之理事システム部長

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ユニシス・ニュース

2001年3月1日第479号

能、伝票レス/集計レス機能、端末機ごとの精査、現金管理のシステム化、各種帳票配信機能、各種照会の画面表示機能、ペーパーレスの推進、ATMの機能拡張などを実現している。③管理機能の充実

リモート役席承認、オペレータカード方式の廃止、運用管理システム、ネットワーク監視機能など管理

機能を充実させている。④その他

外国為替システム、印鑑照会システム、通帳証書発行機、融資稟議支援システムなどとの連動、融資業務端末のPC化を図り、営業店業務の効率化を支援している。

朝日信用金庫の事例にみるように、新営業店システム「FBA Navigator」は、これからの金融機関の営業戦略を強力に支援するソリューションとして注目を集めている。金融自由化に伴い、金融機関の営業店は、「事務処理の拠点」から「セールスの拠点」へと大きな変革を求められている。各金融機関は営業店事務処理にITを積極的に導入し、営業店のBPR実現に取り組み始めている。こうした状況の中で、これからの営業店システムには、①営業店事務の効率化機能、②営業店でのセールスを支援する情報系機能、③変化に即応できる柔軟性が要求される。「FBA Navigator」は、汎用PC、WindowsNTなどオープンなシステム基盤により構築される営業店システムで、最新のITを容易に取り込むことが可能であるため、顧客ニーズに合った先進的な新営業店システムを短期間に確実に実現できる。こうした先進性のあるオープンな設計思想、豊富な金融ソフト部品による開発の柔軟性、実績に基づく信頼性などが、さまざ

FBA Navigator V.2�(クライアント/サーバ型)

FBA Navigator V.3�(Webブラウザ型)

SBI版(SBI21版勘定系オンライン・システム対応)

FAST版(FAST版勘定系オンライン・システム対応)

SEC版(証券・保険版オンライン・システム対応)

IBS版(IBS版国際勘定系オンライン・システム対応)

SEC版(証券・保険版オンライン・システム対応)

SYSTEM-F版�(SYSTEM-F版勘定系オンライン・システム対応)

FBA Navigatorの商品体系

まな業態の金融機関から高い評価を受け、受注および本番稼働が相次いでいる。FBA Navigatorには、SBI21版/FAST版/SYSTEM-F版/SEC(証券・保険)版/IBS(国際勘定系)版など、勘定系オンライン・システムに対応したクライアント/サーバ型システムと、証券・保険版対応のWebブラウザ型システムとが用意されている。 (図)

本号では、本年度受注、導入された主な事例を紹介する。

新営業店システム「FBA Navigator」続々と採用、稼働「事務処理拠点」から「セールス拠点」へと変革する営業店システム

◆所在地=愛知県安城市御幸本町15-1◆代表者=石川正義理事長◆預金量=1兆2,552億円(2000年3月)◆店舗数=74店◆役職員数=1,440人◆稼働時期=2002年4月(予定)◆端末台数=328台(サーバ:154台、クライアント:174台)◆ホスト・システム=Unisys A18/NX4800■概要・特徴

新営業店端末システム導入にあたり、FBANavigatorのオープンな端末のメリットを有効に活用すべく、最新のイメージ処理技術(スタンド型イメージスキャナ、印鑑照合ソフト、イメージ読取/認識ソフト)、およびネットワークのTCP/IP化を採用。この最新技術により、①全店/全部署からの印鑑照会、②テラー端末上での印影自動照合、③為替集中センター(仮称)での印影自動照合、④各種伝票のイメージ読取/認識による自動入力、⑤営業店/為替集中センターでの分散/集中為替イメージ処理を実現する。また、全店の高速デジタル回線網とともに無線

LANを採用し、フレキシブルなリモート役席承認システムを構築して省人化/省力化を図り、スリムで強固な営業店を目指している。

◆所在地=埼玉県川口市中青木2-13-21◆代表者=長堀健治理事長◆預金量=4,737億円(2000年3月)◆店舗数=38店◆役職員数=775人◆稼働時期=2000年11月~2001年6月(予定)◆端末台数=244台(サーバ:84台、クライアント:160台)◆ホスト・システム=Unisys 2200/403×2■概要・特徴

営業店事務の効率化による省人化、顧客サービスの向上、事務リスクの低減などを目指して導入。日本ユニシスと沖電気工業との共同セールス/開発によるファーストユーザで、端末アプリケーションにFAST版FBA Navigator、端末機に沖電気製GPT/VX4を採用。新営業店システムへのスムーズな移行を図るため、2段階のフェーズに分けて実施。第1フェーズ(2000年11月~2001年3月予定)では、帳票配信、画面照会など現行端末の各種機能を拡充し、オープン化対応を実施。また、端末と連動し端末機上で印鑑照会を行えるシステムに移行。第2フェーズ(4月~6月予定)では、全店舗に通帳証書発行機システムを導入し、さらにATM通帳発行機能を取り入れる。

◆所在地=長野県伊那市大字伊那3438-1◆代表者=阿部凱人理事長◆預金量=1,765億円(2000年3月)◆店舗数=14店◆役職員数=250人◆稼働時期=2000年8月~12月◆端末台数=74台(サーバ:36台、クライアント:38台)◆ホスト・システム=Unisys NX4600-322×2■概要・特徴

2000年8月に試行本番を開始し、10月より順次営業店に展開し12月に全店への移行を完了した。これにより営業店ネットワークのLAN化、端末

OSのWindows NT化など、オープンな営業店システム基盤が構築された。さらに、運用管理システムの導入により、リモートからの自動電源ON/OFF、プログラムのリモート配布などにより運用面での効率化を実現している。また、一部機器の継続使用により、投資の分散を図っている。第2フェーズでは、オープンな営業店システム基盤の上で勘定系と情報系との融合、将来的にはイメージ処理システムを導入し、後方事務処理のさらなる効率化を計画している。

伊那信用金庫(SYSTEM-F版)オープン基盤を構築し、

勘定系と情報系の融合を目指す

静岡県労働金庫ネットワークサービス/営業力強化を目指し、

情報拠点化を推進◆所在地=静岡県静岡市黒金町5-1◆代表者=本多玄吾理事長◆預金量=6,774億円(2000年3月)◆店舗数=27店◆役職員数=580人◆稼働時期=2000年5月~2001年9月(予定)◆端末台数=157台(サーバ:60台、クライアント:97台)◆ホスト・システム=Unisys NX5800■概要・特徴

同金庫では、導入の狙いとして、①ネットワーク・サービスの強化、ハード/ソフト両面の安定したシステムの構築によるシステム・リスク、事務リスクの軽減、②利用者ニーズの対応、③営業力強化のための情報拠点化を挙げている。2000年5月の新情報センター竣工に合わせて最新ホスト・システム「NX5800」、FBA Navigatorの稼働を開始し、全店展開を進めている。新営業店システムの特徴として、①オンライン・システムにおけるTCP/IP化の実現、②GUI、マルチウィンドウによるユーザ・インタフェースの機能向上などを挙げている。今後は、営業店後方事務のほとんどを新センターに集中して、営業店は営業活動に専念できる体制を作り上げていく計画である。

◇なお、来月号にも引き続き「FBA Navigator」の事例紹介を予定している。 UN

碧海信用金庫イメージ処理で営業店事務の一層の自動化を目指す

青木信用金庫(FAST版)営業店事務の効率化、顧客サービス向上、事務処理リスクの低減を目指す

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4 2001年3月1日第479号

UN

規制の緩和、ITの進展はEビジネスの展開に拍車をかけている。製造業や流通業は、それぞれ製造・販売・流通の各プロセスにEビジネスを展開し、また、決済のプロセスの分野においても、自らが決済するという金融機能も創出し始めている。こうしたEビジネスの進展に、金融機関は新たな積極的な対応が求められている。本来の決済機能を武器に、資金仲介や情報仲介・信用仲介・リスク管理機能をEビジネスの市場に積極的に展開するとともに、決済以外の分野への展開を図り、地域や地元産業の活性化を支援することが期待されている。しかし、金融機関におけるEビジネスは、まだ未成熟の段階というのが現実である。そこで、日本ユニシスでは、Eビジネスをも視野に入れながら、地方銀行における経営課題を踏まえて、バンキング・システムの今後のあるべき姿を将来構想として、以下のように提言したい。

まず、地方銀行における経営課題としては以下の4点が挙げられる。①顧客ニーズの価値観が多様化する中で、さまざまな商品、サービスと、それに対応するデリバリ・チャネルが必要になっている。②IT革命が進む中、インターネットや携帯電話を利用した電子商取引はITの大衆化を推し進め、従来の店舗やATMを媒介しない金融サービスが求められている。③自己責任原則の徹底、規制緩和、市場原理の導入は、既存業界内の競合激化だけでなく、外資の積極的な参入や、他業態からの参入を容易にし、金融サービスをめぐる競合は急速に多様化・激化をもたらしている。④こうした課題への対応は、インフラ・コストの高騰をもたらし、その結果、将来の経営圧迫要因になるものと予想される。

これらの課題に対して、地方銀行においては、生き残りをかけて、自行ポジションの明確化、BPRの導入、不得意分野からの撤退、得意分野への資源の集中化などの方策を実施し、競合力を維持することが急務である。日本ユニシスでは、「地域社会との共生のためのリスクの協調分散システムの確立」が最重要課題であると捉え、①CRMの徹底、②商品・サービスの充実、③リスク・収益管理の高度化、④コスト構造の変革による経営基盤の維持・強化を図り、新しいビジネス・モデルの展開が必要と考えている。特に、地域という顧客基盤の確立には、CRMの徹底が不可欠であり、外部からの競合を排除し、顧客を囲い込むための基本政策となるものと確信している。

◆1県1地銀の経営(顧客)基盤の確立

地域金融機関として地方銀行が勝ち残る方向性は、“1県1地銀の経営(顧客)基盤の確立”を目指し、その中のリーディング・バンクたり得るかどうかにある。その企業ドメインは、金融サービスを軸とした地域インフラとしての認知であると位置づけ、行政・住民・地域企業・非営利団体への金融サービスの提供と関連インフラの利用提供にある。将来の地域トップバンクの条件としては、地域

トップ・ブランドの確立と維持、対象顧客、商品・サービス・アクセスなどの機能、また、機能提供方法の多様化、意識改革と満足度向上などが挙げられる。◆商品・サービスの充実

自らの強み、長所を整理し、商品・サービスの充実を図るとともに、従来の金融サービスを軸にして銀行業として長年培ってきた信頼・信用、事務処理、調査・審査、財務・経理、法務・税務、情報技術などのノウハウ、人的・物的資産を活用して、次のよう

な取り組みが必要となる。①経営指導や情報提供、ITや資産運用のコンサルティング・ビジネス②生保、年金、投信などの取扱商品の拡大による手数料ビジネスの拡大③決済および流動性預金をベースとしたナローバンク機能に加えて、貯蓄性預金、融資、起債引受などをベースとした伝統的な金融サービスの拡充④法人向けのネッティング、消し込みなど

地域における永久的なリーディング・バンクの地位の確保�

CRMの徹底とマーケティング力強化�

リスク・収益管理の高度化�

地域TOPブランドの確立と維持�

経営モニタリング�

中長期経営計画・ALM

総合予算・収益管理�

市場リスク管理�

信用リスク管理�

ABC原価管理�

採算管理�

その他のリスク管理�

商品・サービスの充実�

伝統的商品・サービスを活用した�新規ビジネス分野の拡大�

提携とアウトソースの推進�

コスト構造の変革�

BPRの実施と継続習慣化�

顧客接点の見直し�

要員体制の変革�

意識改革の推進�

大胆なIT導入の推進�

セールス企画�顧客・マーケット�分析�

顧客反応�結果分析�

行動�

現状�ビジネス・モデル�の限界�

現状の課題�

CRMの徹底とマーケ�ティング�

将来への展開�

商品・サービスの充実�

リスク・収益管理の強化�

コスト構造の変革�

経営基盤の維持・

強化�

ニュー�ビジネス・モデル�

の展開�

対象顧客=地域を構成する全顧客�

伝統的サービスと新たなサービス�機能(商品、サービス、アクセス)

機能提供方法の多様化�(他地域・業態との共生)

意識改革と満足度�

顧客利用手段(顧客接点)の拡大�

コンサルティング・ビジネスの取り組み�

手数料ビジネスの拡大�

Eビジネス分野への進出�

地方銀行の将来展開図

の情報処理サービス、ネット市場での認証サービス、金融ポータルの設立・運営、個人・法人向けエージェント・サービスなどのEビジネス関連への対応⑤顧客利用アクセス手段や対応時間の拡大◆リスク・収益管理の高度化

バンキング・ビジネスは、リスク負担ビジネスであり、リスクを管理することが安定拡大のキーポイントになる。したがって、トップ・マネジメントを含めた管理体制の整備とそのサポート・システムの構築が必須である。トップ自ら先陣を切ってリスク・マネジメントの高度化に取り組んでいただきたい。このためのサポート・システムとしては、①ALM、②総合予算収益管理、③市場リスク管理、④信用リスク管理、⑤原価管理、特にABC原価管理、⑥採算管理、⑦ビジネス・リスク管理などが挙げられる。◆コスト構造の変革

商品・サービスの提供コストを従来以上に継続的に低下させることが必要であり、そのためには、コストの占める要素を極力絞り込み、かつ継続的に見直す体制と意識が必要である。その要素の大きなものは、商品・サービスを提供する事務処理プロセスの軽量化と、それを遂行する要員の意識変革と運用体制の変革である。具体的な施策項目としては、以下の点が挙げられる。①預金、為替、融資、渉外、本部を対象にしたBPRの実施と継続習慣化②統括母店、融資専門店、渉外デポ、取次店、代理店、またバーチャル店舗や自動機などの顧客接点の見直し③ITなどの活用による事務処理の軽量化、事務量に応じた要員配置やパート化などを通じた人件費の変動費化④職員のサービス業意識の徹底⑤大胆なIT導入推進⑥提携、アウトソーシングによる最適な資源投入とコスト削減

このような今後の地方銀行の課題を踏まえて、日本ユニシスでは、経営戦略上今後必要となる新しいバンキング・システムの共同研究・企画、およびその実現に向けての対応策の策定を行うため、地方銀行次期バンキング・システム検討・検証コンソーシアム「S-BITS(Succeeding Banking Information Technologyfor Success consortium=エスビッツ)」を昨年11月に設立した。このコンソーシアムには、秋田銀行、北越銀行、山梨中央銀行、百五銀行、紀陽銀行、大分銀行、鹿児島銀行の7行が参加している。参加行はいずれも勘定系システムの基盤ソフトウェアとして日本ユニシスが開発した「TRITON(トライトン)」を導入しており、S-BITSでは、この共通のシステム基盤をベースに、勘定系システムをはじめとした複数の検討部会を立ち上げ、参加各行のニーズに合わせて各種のテーマに取り組んでいく。 UN

特集.金融新時代のIT戦略-最新IT活用事例とユニシスの支援体制

地方銀行の事業戦略とバンキング・システムの将来展開

進展するEビジネスを視野に “CRMの徹底”が不可欠な要件

地方銀行における経営課題

地域におけるリーディング・バンクを確保するために-地方銀行の将来展開構想

地方銀行次期バンキング・システム検討・検証コンソーシアム「S-BITS」を設立

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5

金融業界は、日本版ビックバンの進展や来年4月のペイオフ解禁を控え、大規模な再編によるメガバンクの登場、異業種からの参入など地殻変動が起こっている。そうした金融環境の中で、信用金庫戦略の大きなポイントは、地域顧客に密着したサービス体制にIT(情報技術)を積極的に取り入れていくことで、都銀や異業種参入組には真似のできない、信金独自のハイタッチ・サービスによる差別化戦略を打ち出していくことにあるとされている。こうした背景を受け、信用金庫向けに各種システム・サービスを行っている、しんきん情報システムセンター(以下:SSC)では、新たに全国の信用金庫が容易にインターネット・バンキングシステムの共用化を可能とする「しんきんインターネットバンキングシステム」の構築に着手し、本年11月からサービスを開始することになった。この新システムは、日本ユニシスがシステム・インテグレータとして構築に当たっている。

SSCでは、これまでインターネット・バンキング機能を都市銀行、地方銀行などとともに加入した外部センターを利用して各信用金庫に提供してきた。しかし、外部センター利用のためサービスに制約があり、信用金庫としての独自色が出せないなどの問題点が露呈してきた。特に、信用金庫業界は、競争の激化とともに、顧客・商品・サービスのあらゆる局面において、サービスの質的向上と新たな差異化戦略の実施が強く求められている。そこで、SSCではインターネット・バンキングシステムの自主運営により、①信用金庫のお客様に他金融機関以上に充実した機能を持つ、サービスレベルの高いインターネット・バンキングサービスの提供②内製化により、信用金庫およびその顧客に、廉価でサービスを提供する。また、信用金庫業界の営業戦略に合ったタイムリーな商品・サービスの提

供を可能とする③将来のインターネットを利用したCRMのための顧客基礎情報を蓄積するの実現を目指すことになった。

SSCでは、新システム構築に当たり、求めた開発機能要件として次の項目を掲げた。*インターネットによる顧客向け機能が、当初より具備されていること*顧客インタフェースに優れ、十分なセキュリティが確保されていること*信用金庫業界センターとしての管理機能が具備されており、管理運用が容易で安価なこと*提供サービスおよびメディア対応などのシステム拡張が、他ベンダを含め確保されていること*24時間365日安定稼働のバックアップ、サポート体制が万全なこと

これらの要件を満たす、新システムの提案書を大手のベンダに募り、日本ユニシスが最終的にシステム・インテグレータとして選定された。選定理由について、業務開発第1部長 堤 健二氏は、「インターネット・バンキングシステムで豊富な実績を持つ日立製作所のFINEMAX(ネットワークバンキング共同センタサービス)を中核とした構築を提案され、少ない投資で、かつ短期間で当社の要件を満たすインターネット・バンキングシステムが実現できると考えたからだ。また信用金庫業界で数多くのシステム構築の実績があり、金庫業務に精通していること、さらにインターネット・バンキングは進化を続けるが、その辺の将来的なサポート力も高く評価し、システム・インテグレーションを依頼した」と語っている。

日本ユニシスは、昨年3月、金融情報システム分野において、日立製作所と①ソリューション商品、

②アウトソーシング・サービス、③事務集中処理システム/営業店システム、④ミドルウェア製品/システム・エンジニアリング・サービスでの協業を発表、両社が持つ製品やサービスなどの経営資源を相互活用することにより、金融機関向けソリューションに関する提案力を強化した。今回の「しんきんインターネットバンキングシステム」は、日本ユニシスがこの協業を背景に、日立

インターネット・バンキングサービス�

顧客�

携帯�電話�

インターネット�

iモード�EZ web�J-SKY

各金庫�ホームページ�

携帯電話バンキングサービス�

ファイア�ウォール�(F/W)

ファイア�ウォール�(F/W)

WWWサーバ�

メールサーバ�

インターネット�バンキングサーバ�

リアルタイム�システム連携サーバ�

DBサーバ�

各地区共同センター�および自営信用金庫�

伝送サーバ�

運用監視サーバ�

登録・運用監視PC

イントラWWW�サーバ�

SSC 新ネットワーク�

勘定系システム�

各信用金庫�

登録・運用PC

顧客�

しんきんインターネットバンキングシステム�

「しんきんインターネットバンキングシステム」のシステム構成

製作所のFINEMAXの実現基盤を採用し、これを信用金庫向けにインテグレーションする。

新システムは、既存の残高照会や資金移動サービスのほかに、定期預金、定期積金、諸届け受付を新たに追加する。また、インターネット・バンキングでは初めて、顧客利便性向上と不正取引を早期に通知するため、入出金などによる口座変動が生じる都度、携帯電話やWebにEメールによる通知機能を付加した。さらに対象となる携帯電話をiモードのみならず、EZWeb、J-SKYにも広げ、一層の利便性向上を図る。さらにセキュリティ面では、SSL128の採用や資金移動時のワンタイム・パスワードの要求など最新のセキュリティ機能を付加するなど万全を期す。実現するシステムの特徴は、次のとおり。①第2世代インターネット・バンキングの実現

豊富な業務機能の実現に加え、投信・外貨などの金融商品の対応強化を考慮②実績に裏付けされた、きめ細かで高信頼性の運用

の実現

・Windows、UNIXを組み合わせたオープン環境での高信頼性の実現・勘定系オンライン接続、取引データ授受の自動化、金庫向け帳表出力などの運用設定が可能・堅牢なセキュリティ機能で不正取引・誤取引を低減堤 健二氏

③各信用金庫の独自営業戦略に追従

・顧客ランク別振込手数料、家族口座対応など独自サービス商品への対応・Web、携帯電話などダイレクト・チャネルでの利便性・商品面でのサービス向上

新システムは、6セットのWindowsサーバ、および15セットのUNIXサーバ上に構築され、本年11月から第1フェーズの機能を実現してサービスを開始する。開発スケジュールは次のとおり。◆第1フェーズ(2001年1月~同10月)残高照会/取引明細照会/振込/振替/定期積立定期の振替入金/諸届け◆第2フェーズ(2001年4月~2002年1月)定期積金/外貨定期

ユニシス・ニュース

2001年3月1日第479号

UN

しんきん情報システムセンター本年11月サービス開始に向け、自主運営による

「しんきんインターネットバンキングシステム」構築に着手日本ユニシスがシステム・インテグレーション

新システムに求めた開発機能要件

日本ユニシスをSIベンダに選定

システム構成と開発スケジュール

ITの積極活用で信用金庫独自の差別化戦略が重要に

信金色が打ち出せるインターネット・バンキングサービスが必須

日立と協業で「FINEMAX」を核に独自システムとして構築

■株式会社しんきん情報システムセンターhttp://www.shinkin.co.jp/ssc/

◆信用金庫のシステム化を推進するための中枢機関として1985年に設立され、神奈川県と兵庫県の東西にセンターを有し、為替系、CD系、情報系、データ伝送系、外為系、デビットカードなどのシステム・サービスを行い、信用金庫業界の発展に寄与している。

◆所在地=東京都中央区八重洲1-3-12◆代表者=高橋幸弘社長◆従業員数=144人

口座変動時にEメールによる入出金通知機能などを付加

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殖産銀行と福島銀行は、勘定系・対外系等基幹系

システムの運用・開発に関して、日本ユニシスとア

ウトソーシング契約を結び、本年1月からサービス

利用を開始した。

殖産銀行と福島銀行は、これまで両行の出資で設立した(株)東北バンキングシステムズ(本社:山形市)に委託して、基幹系システムの運営を行ってきた。これを日本ユニシスのアウトソーシングセンターに加盟することにより、①今後予想される運用・開発コストなどシステム関連経費の大幅な削減を図る②地域のお客様のニーズに応える新商品・新サービスなど今後のシステム高度化への対応を図るのが、狙い。

今回のアウトソーシングでは、両行がそれぞれ個別に日本ユニシスと10年間のアウトソーシング契約を結び、東北バンキングシステムズは協力会社として、日本ユニシスのアウトソーシング事業に参加する。当面3年間は、山形市のセンターでサービスを提供するが、2004年からは首都圏でのサービス提供を計画している。アウトソーシングセンターでは、殖産銀行と福島銀行が使用し、地方銀行でも実績のあるオンライン・バンキング・システム「TRITON」を採用し、2004年からは24時間365日稼働機能、コミュニケーションハブ機能、災害対策バックアップ機能などを付加し、システム基盤の機能強化を図っていく。両行ともこうした高度化するシステムを低コストで利用できるようになる。両行は、このアウトソーシングの活用で、運用・開発コストを今後10年間で、約30%削

金融機関は、ビッグバンによる本格的な自由競争の時代を迎え、今後優勝劣敗の熾烈な競争が繰り広げられ

る。地域金融機関が、この競争に勝ち抜き、地域の顧客から引き続き支持され、高い信頼を得るためには、多

様化する顧客ニーズを的確に把握し、顧客が望まれる最高水準の商品・サービスを提供することが重要となる。

そのためには、基幹系システムの24時間365日稼働やデリバリ・チャネル多様化への対応など、ITを積極的に

活用したサービスの強化や迅速なシステム開発が不可欠となる。しかしながら、その対応のためのシステム開

発費などの投資費用増大が大きな負担となっているのが現状である。

このような環境の中、情報システムの高度化を図りながら、併せてコスト削減を実現する手段として、シス

テムのアウトソーシングや共同開発が現在注目を集めている。

以下に、殖産銀行/福島銀行における基幹系システムのアウトソーシング事例、広島銀行/福岡銀行におけ

る共同利用型総合有価証券システムの共同開発事例、ならびに日本ユニシスの商品別に独立していた証券業務

に必要な情報と機能を整備・統合した総合有価管理システム「Siatol21」のアウトソーシング・サービスの取り組

みを紹介する。

殖産銀行/福島銀行1月から基幹系システムの運用・開発を

日本ユニシスアウトソーシングセンターに委託

減することを可能としている。この経費削減で生まれる資金を、業務の集中化など戦略的分野に投資することが可能となるとともに、要員を営業強化などに振り向けられるメリットもある。

殖産銀行本店

日本ユニシスでは、全国の第二地方銀行に参加を呼びかけていき、全国規模のアウトソーシングセンターへの拡大を目指す。そのアウトソーシング・サービスの概要は次のとおり。【対象範囲】

・ 勘定系/対外系・ 災害対策共同バックアップセンター・ 国際系/有価証券系/その他オプション

日本ユニシス第二地方銀行�アウトソーシング・サービス�

開発受託サービス�

保守管理サービス�

運用管理サービス�

ファシリティ�

   管理サービス�

障害管理サービス�

変更管理サービス�

教育サービス�

移行支援サービス�

【狙い】

①先進的な機能を備えたシステムの提供基幹系システムパッケージとして実績のある

「TRITON」をベースに、今後求められる最新機能群を融合した第二地方銀行向け新基幹系システムを提供する。*最新機能群・ ノンストップシステム機能・ 24時間365日連続稼働機能・ コミュニケーション・ハブ機能・ 災害対策共同バックアップセンターなど

②共同化と加盟行ごとの独自性確保の両立加盟行ごとのシステムは、アプリ 福島銀行本店

ケーショングループ(APG)という単位で完全に独立しており、独自性は完全に確保される。開発案件の確定にあたっても、加盟行間で共通

化が可能な案件は積極的に共通化を図り、加盟行ごとの戦略的案件、または迅速性が優先される案件は、独自開発案件として、即時開発に着手する。③万全のセキュリティ対策旧通産省、金融情報システムセンター(FISC)などが示す、安全対策基準に準拠したセキュリティ・ポリシーを定め、それに基づいたセキュリティ・スタンダードを実現する。④各種要望に応じた業務範囲の拡大*インターネット・バンキング*有価証券システム*国際系システム

【アウトソーシング・サービスメニュー】

・ 開発受託サービス・ 運用管理サービス・ 保守管理サービス・ ファシリティ管理サービス・ 障害管理サービス・ 変更管理サービス・ 教育サービス・ 移行支援サービス

2001年3月1日第479号

特集.金融新時代のIT戦略-最新IT活用事例とユニシスの支援体制

本格化する地域金融機関におけるアウトソーシング/システム共同開発

アウトソーシングで運用・開発コストの大幅削減とシステムの高度化対応を図る

大幅なコスト削減と最新IT利用の両立を実現

全国規模のアウトソーシングセンターとして展開

アウトソーシング・サービスの内容■株式会社殖産銀行http://www.shokusan.co.jp/

◆所在地=山形市桜町7-35◆代表者=長谷川憲治頭取◆預金量=6,202億円(2000年9月末現在)◆店舗数=61店9出張所◆従業員数=964人■株式会社福島銀行http://www.fukushimabank.co.jp/

◆所在地=福島市万世町2-5◆代表者=松本 紀社長◆預金量=6,746億円(2000年3月末現在)◆店舗数=69店3出張所◆従業員数=1,085人

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設置の「Siatol21サーバ」にアクセスすることで、前記機能を利用できる。

7

広島銀行と福岡銀行は、昨年7月、金融大競争時代に向けて、競争力の一段の強化と、経営効率化の同時実現を目指して、勘定系・情報系などの広範囲なシステムや、他業態との連携に必要な新基盤を共同で開発・利用する「共同利用型基幹システム共同開発契約」を締結した。両行は、この契約に基づきシステム共同化作業を進めているが、その第一弾として、総合有価証券システムの共同化が当初の予定通り完了、日本ユニシスへアウトソーシングする形で1月31日稼働開始した。

今回稼働の共同利用型「総合有価証券システム」は、日本ユニシスの総合有価証券パッケージ「Siatol21(シアトル21)」をベースに構築したもので、共同センター(広島市西区)に設置したUNIXサーバ「Unisys USファミリ モデルU4500」上で共同運用される。引き続き、収益管理システム(2002年1月稼働予

定)、および国際系システム(2003年1月稼働予定)を、それぞれ日本ユニシス提供のクライアント/サーバ型総合リスク ・ 収益管理システム「Princia21(プリンシア21)」、ならびに最新ITの採用で高度な操作環境を提供する国際業務系システム「IBS21(アイビーエス21)」で構築し、共同利用型シ

日本ユニシスでは、地方銀行、第二地方銀行を対象に、総合有価証券管理システム「Siatol21」によるアウトソーシング・サービスを開始したが、山梨中央銀行がそのファースト・ユーザとして同サービスの利用を始めた。「Siatol21」は、日本ユニシスが長年にわたって蓄積したシステム・サービスの経験とノウハウをベースに、最新の情報技術を採用し、これまで商品別に独立していた証券業務に必要な情報と機能を全面的に整理・統合して開発したクライアント/サーバ型の総合有価証券管理シス

地方銀行/第二地方銀行を対象に総合有価証券管理システム

「Siatol21」によるアウトソーシング・サービスを開始

共同センター(広島市西区)

ステムとして順次稼働の予定である。「Siatol21」を核に構築された、今回のシステムは、時価会計基準に対応した証券事務処理機能をはじめ、RTGS(即時グロス決済)に対応した資金管理機能などの最新機能を有する総合有価証券システムで、証券業務におけるフロント、ミドル、バックオフィスの各業務をシームレスに支援できるのが特徴。

広島銀行/福岡銀行システム共同化第一弾として共同利用型「総合有価証券システム」稼働開始

日本ユニシスにアウトソーシング

これら総合有価証券、収益管理、国際系のシステム共同化に当たり、日本ユニシスのソリューション・パッケージを選定した理由として、広島銀行総合企画部 システム共同化推進室長 井上 高明氏は、次のように語っている。「今回のシステム共同化は、一般的に見られるベンダが作ったスキームに賛同する形ではなく、銀行主導の下に進めているものである。その目的の一つは邦銀として最高レベルの金融サービスの展開にあり、そのため各局面においてベスト・ソリューションを選択することにしたが、日本ユニシスの総合有価証券、収益管理、国際系のパッケージは、現時点および将来的にもベスト・ソリューションであると両行ともに判断し、これをベースに共同化システムを構築することにした。今回稼働の総合有価証券システムは、銀行の目から共同システム化しており、即最新機能を享受できるので、我々のシステム共同利用に他行も積極的に参加いただければと思う」。

また、日本ユニシスを開発パートナー/アウトソーサとして選定した理由について、福岡銀行 総合企画部 システム共同化推進室長 広田 喜大氏は、次のように語っている。「両行ともに日本ユニシスと共同で業務システムの開発経験があり、その対応法を長年見てきて共同

テムである。現在、地銀、第二地銀など国内約30の金融機関での利用実績を持つ。機能的には、時価会計基準に対応した証券事務処理機能から、ポジション・リスク管理、ポートフォリオ分析、社債受託・登録債管理まで統合的に支援するなどフロント・ミドルオフィス、バックオフィスまでカバーしている。 (図)

利用者は、銀行内のパソコン端末から、ネットワーク経由で、日本ユニシスのアウトソーシングセンター(中央区新川)に

化推進パートナーとして信頼性がおけるうえ、業務ノウハウにも通じていると両行が判断したからだ。今回のシステム共同化では、テレビ会議も採用し、三者が距離間なく、行内各部門も含めてさまざまな意見交換を行い、これによりスピィーディに銀行主導型のシステム構築ができた。また、他システムに先行して、複数行が1台のコンピュータで共同利用できる仕組みを作り上げたが、共同利用の最大の意義は、システム経費を削減することにある。このコスト削減の余力を、今後、増大する新たなIT戦略に投資することで、地域のお客様に良質な金融サービスを提供し、地域社会の発展に寄与していきたい」。

◇なお、日本ユニシスは、今回の稼働を皮切りに、広島銀行、福岡銀行両行の業務ノウハウと日本ユニシスが有するノウハウ、スキルを提供し合い、単なるベンダとしてではなく、両行にとって最適なソリューションを提供するベストパートナーとして、より良い提案を継続していく。

総合有価証券システム稼働式で握手する広島銀行ã橋 正頭取(右)と福岡銀行寺本 清頭取(左)

ユニシス・ニュース

2001年3月1日第479号

UN

総合有価証券パッケージ「Siatol 21」をベースに共同化を実現

ベスト・ソリューションとして日本ユニシスのパッケージを選定

業務ノウハウに通じている日本ユニシスを共同化推進パートナーに

■株式会社広島銀行http://www.hirogin.co.jp/◆所在地=広島市中区紙屋町1-3-8◆代表者=ã橋 正頭取◆預金量=4兆8,344億円(2000年9月末現在)◆店舗数=224店

(本支店と出張所、2000年11月末現在)◆従業員数=3,832人(2000年3月末現在)

■株式会社福岡銀行http://www.fukuokabank.co.jp/◆所在地=福岡市中央区天神2-13-1◆代表者=寺本 清頭取◆預金量=5兆6,496億円(2000年9月末現在)◆店舗数=174店

(本支店と出張所、2000年11月末現在)◆従業員数=4,211人(2000年9月末現在)

国内勘定系システム�約定管理�残高薄価処理�資金決済�現物決済�償却処理�仕訳処理�

マスター登録�発行要項登録�契約書類作成�払込管理�

登録設定�期中管理�券番号の管理�

帳票出力�他系インタフェース�各種登録�時価管理�レポーティングツール�

収益管理システム�

マーケット・リスク管理システム�

日銀ネット�

証券事務処理�

統合データベース�

フロント・ミドルオフィス機能�

社債受託・登録債管理�

市況情報�(時価)� 商品・銘柄� 顧 客� 担当者� 約定明細� 残 高� 資金・現物� 時 価� 証拠金ほか�

残高管理�損益管理�リスク管理�ポジション枠管理�

汎用検索�クロス分析�比較分析�リスク分析�分析データ管理�

ポジションリスク管理� ポートフォリオ分析�

Siatol 21

バックオフィス機能�

Siatol 21システム機能構成図

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昨今の金融ビッグバンの進展により、金融機関では、コスト競争、サービス競争の激化に立ち向かうべく、営業店後方事務の見直し、センター集中、パート化の推進などによる事務処理コストの削減に向けてのシステム構築が求められている。日本ユニシスでは、総合ドキュメント・プロセシング・システム「DOCS(Total Document ProcessingSystem)」を提供し、事務集中部門の事務効率向上、事務経費の圧縮に大きく寄与している。DOCSは、多様化、複雑化する各種データエントリ業務や手形などの現物関連業務に対し、統一したコンセプトの下、より効率的に集中処理するために開発したシステムである。このシステムを構築するためのソフトウェア群、ハードウェア群は、この分野における日本ユニシスの豊富な経験と実績を基にして最新の情報技術が集積されたものであり、集中処理における統合化・効率化とともに、優れた操作性、保守の容易性を実現している。DOCSのシステム体系は以下のとおりである。

(図1)

*総合イメージエントリ:手形・小切手、登録振込・総合振込、口座振替依頼書などのイメージエントリ・システム*手形系:手形交換、集中手形期日管理、手形集中発行などのシステム*振込系:登録振込・総合振込、営業店OCRなどのシステム*口振系:口座振替依頼書登録システムこのほか、汎用エントリ・システム、旅館券システム、プルーフ処理システムなどを用意している。DOCSは、発表以来すでに数多くの金融機関で導入・活用されており、各ユーザに高い評価を得ている。ここでは、最近のイメージ処理による新システムを稼働させた、広島銀行、中国銀行、百五銀行、肥後銀行の事例を紹介する。

◆所在地=広島市中区紙屋町一丁目3番8号◆代表者=�橋 正頭取◆預金量=4兆8,344億円(2000年9月末現在)◆店舗数=224店◆稼働時期=2000年4月◆使用機種=HMP LX5200、NDP1800、NDP1000、NDP500×2、PCサーバ/クライアント他■概要広島銀行では、2000年4月から手形イメージエントリ・システムを稼働させた。旧システムからLX5200システムを中心とした手形交換/期日管理/プルーフ業務システムの全面更改であり、新システムの特徴は以下のとおり。①イメージ処理の採用

手形期日管理システムの処理にイメージ処理方式を採用したことで、現物なしの入力処理が可能となり、オペレータの負担が軽減されると同時にセキュリティ面の向上が図られた。②エントリ端末の共用化

エントリ端末機の共用化を実現することにより、手形・為替・公金・雑エントリのエントリ要員の相互互換体制が向上し、要員管理がより弾力的になった(オペレーションの効率化・平準化が実現した)。③生産性の向上

支払人情報について従来のシステムでは自行分のみを対象としていたが、新システムでは他行分に関しても対象に加えたことにより、かな入力がほとんどなくなった。イメージ処理方式を採用したことと相俟って、入力の生産性が従来比約40%向上した。④エントリ業務のパート化

イメージ・エントリ端末の入力の改善により、エントリ要員のパート化が容易となった。現在はパート主体の入力体制となっている。⑤持込み期限の緩和

手形期日管理の業務面でも、システム上のさまざまな改善により、営業店か

広島銀行

手形系 振込系

手形交換システム

集中手形期日管理システム

手形集中発行システム  ・署名鑑イメージプリント

登録振込・総合振込システム

営業店OCRシステム  ・当日分為替処理

 ・交換持出し/持帰り処理  ・交換印鑑イメージ照合

 ・入庫/出庫処理、残高照合/組戻し  ・手形情報照会  ・被仕向集中手形システム

 ・振込依頼書作成サービス  ・依頼人/受取人管理  ・全銀データ作成

プルーフ処理システム その他

汎用エントリシステム

旅館券システム  ・入金管理

 ・市町村税/公金処理  ・付帯物件付振込処理  ・交換振込/メール振込

口座振替依頼書登録システム  ・手形・小切手イメージエントリ  ・登録振込・総合イメージエントリ  ・口座振替依頼書イメージエントリ

 ・口振依頼書登録データ作成  ・口振印鑑イメージ照合  ・口振依頼書イメージ照合

口振系

総合イメージエントリ

図1 「DOCS」のシステム体系図

ら集中センターへの手形の持込み期限を従来より5営業日緩和した。これにより、営業店の負担の軽減が図られた。⑥今後の対応

今回のシステム改善では、プルーフ業務に関しては従来の機器を継続利用としたが、昨年末オートプルーフ・システム(APS)の採用を決定 広島銀行本店

し、現在、新システムへの切り替え作業中である。年度内には全面的に新APSに更改の予定である。

◆所在地=岡山市丸の内1丁目15番20号◆代表者=永島 旭頭取◆預金量=4兆5,206億円(2000年9月末現在)◆店舗数=188店◆稼働時期=2000年5月◆使用機種=HMP LX5150、NDP1825、NDP500×2PCサーバ/クライアント他■概要中国銀行では、2000年5月から手形イメージエントリ・システムを稼働させた。 (図2)

旧システム(V410システム)から、A-DOCSパッケージ・システム導入による全面更改を行った。導入にあたっては以下の点を重点項目に掲げて検討を行った。手形期日管理処理をイメージ化することにより、①現物搬送の削減による、セキュリティの向上を図る。②自動入力の活用による、エントリ効率の改善を図る。また、システム構築にあたっては、③オープン・システムを積極的に採用し、低価格・省スペースを実現する。④ネットワークの更改を行い、手形小切手読取・分類機も含めてLAN環境下に置く。

エンタープライズ・サーバ (LX5150-111)

カートリッジ

外部ディスク

スーパバイザPC×2 (JPWD8172N-8J1)

エントリPC×12 (JPWD8172N-8J1)

文字認識PC×2 (JPWD8172N-8J1)

SCJⅢ

リーダソータ (NDP1825)

システムマネージャPC (JPWD7145A-ABJ)

イメージドキュメント・プロセッサ×2 (NDP500) 500枚/分、12ポケット

LBP×2 (JPW0023-850) イメージプリント

漢字プリンタ×2 (AP1350-KG2) 精査リストなど

漢字プリンタ×1 (JPP2550-LN3) 精査リストなど

ファイル・サーバ×3 (JPWD7126A-ABJ)

EFS IFS

2001年3月1日第479号

中国銀行

総合ドキュメント・プロセシング・システム「DOCS」の導入・稼働相次ぐ

事務集中部門の事務効率の向上、事務経費の圧縮を目指す

図2 中国銀行システム構成図

特集.金融新時代のIT戦略-最新IT活用事例とユニシスの支援体制

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同システムを勘定系システムの一環の重要システムと位置づけ、障害対策にも考慮し、⑤基本的にすべてのモジュールを二重化対応とし安全対策にも十分に考慮した。◆導入効果

①手形現物レスのオペレーション体制の実現により、現物のハンドリング作業をなくすことで端末入力部門と現物管理部門を完全に分離し、安全性の向上が実現できた。②オペレータごとの操作内容、および操作権限を管理することにより、システムの安全性が確保された。③イメージ処理技術とICR自動認識技術、さらに実績学習機能の活用によるエントリ項目の削減効果に加え、操作性の向上によるエントリ効率の改善が実現された。エントリ端末を削減したにもかかわらず、月初の繁忙日にも時間外オペレーションをすることがなく、また、オペレーターの操作環境の改善にもつながったことから、オペレータの評判が良く、導入の効果が実感された。④クライアント/サーバ・システムの採用により、設置スペースの改善・運用コストの削減が実現できた。⑤サーバ、ディスクなどの二重化により、ハードウェア障害に起因するシステム・ダウンの回避、

プルーフ・システムは、税公金、公共料金、付帯物件付きの文書振込、非印字手形・小切手などの証票を事務(集中)センターに集め、枚数/金額の集計、照合、現物の分類、送付書/集計表の作成などに必要な機能を提供するシステムである。日本ユニシスでは、これまでのマニュアル・ベースのプルーフ・システムに加えて、オペレーターがタッチパネル/テンキーで入力でき、高速処理や効率化を実現する「オートプルーフ・システム」を発表した。オートプルーフ・システムは、地方税/公金処理、付帯物件付振込処理、交換振替/メール振込、手形交換非印字分処理などの機能を備えている。主な特徴は以下のとおりである。

*誰でも速く・正確な業務処理

動作時間平均2秒/回の高速処理性能を実現し、1200件/時間の高生産性を確保している。また、標準ポケットを84分類とし、最大192分類ボックスまで1パスで増設できるなど、最多ポケットを実現している。さらに、液晶タッチパネル分類キーボード(最大130項目/ページを備え、取り扱い証票の柔軟な対応(名刺サイズ~B5版用紙)を図っている。*業務の流れを意識した設計

証票を、ポケットマガジン(42分類×2個)で一括取り出しができ、マガジンごとの運搬が可能である。また、予備マガジン(オプション)を準備すれば、次のバッチ業務を連続して処理することができる。さらに、分類済証票の取り出しは、

マガジンを外して一斉に行うことができる。このように業務の流れを意識した設計が施されている。*使いやすさを追求・実現

電子明細ジャーナル、店番指定明細照会、金額指定明細照会、ポケット指定明細照会機能など豊富な照会機能を実現している。また、大型モニターを採用し、1画面内の表示情報量の拡大を図っている。

および入力済みデータの保全体制が完全なものになった。⑥各種照会機能の充実データエントリ業務の進捗状況や各種マスター照会の機能改善を図り、運用の正確さやサービス機能の向上が実現できた。

◆所在地=三重県津市岩田21番27号◆代表者=川喜田貞久頭取◆預金量=3兆230億円(2000年9月末現在)◆店舗数=136店◆稼働時期=2000年2月◆使用機種=HMP NX4600、NDP500×2、DP1800、PCサーバ/エントリPC■概要百五銀行では、従来のユニシス機器による手形期日管理システムに手形イメージエントリ・システムを導入し、2000年2月より稼働させた。 (図3)

手形イメージ・システムの導入目的は、以下の点にある。①安全性の向上

新システムではイメージ対応されたリーダソータを用いて手形券面を画像として読み取り、端末画面に表示されたイメージを見ながら手形の登録を行う

ため、現物のハンドリングがなくなり、現物管理の徹底が図れる。②生産性の向上

イメージ処理により記載事項の自動認識率が高まり、エントリ作業時間を削減できる。また、画面に切り出されたイメージを見ながら入力作業を行えるため、オペレーターの熟練度が不要となり、人員のパート化ならびに即戦力化が図れる。③効率的な人員配置

オペレーターの判断業務を削減し、入力画面も使いやすさを考慮することにより、部署間の応援がスムーズ

・内蔵9.1GB�・ストレージ� 9.1GB×3

汎用エントリ・サーバ#2�(バックアップ)

汎用エントリ ・サーバ#1 バックアップ・�サーバ�

エントリファイル・�サーバ�

イメージファイル・�サーバ�

高速スィッチングハブ�ネットワーク�

・内蔵9.1GB �・ストレージ� 9.1GB×3

LBP×3

ICRPC�2台�

スーパバイザ�PC2台�

エントリ用PC×15�

NDP500#1(新規導入)��

NXホスト�

漢字プリンタ×3(内1台既設)

NDP500#2�(フィールドアップグレード)

になり、繁閑度合いに合わせた効率的な人員配置が可能となった。

◆所在地=熊本市練兵町1番地◆代表者=稲垣精一頭取◆預金量=2兆8,108億(2000年3月末現在)◆店舗数=126店■概要旧システムの後継機として、LX5100、NDP1800、NDP500×2台を採用し、手形イメージエントリ・システムの導入を開始した。手形交換を2001年4月、期日管理を2001年5月の稼働を予定している。新システム導入の目的は以下の点にある。①イメージエントリ・システムの採用

手形現物に触ることなく、エントリ・ベリファイを行うことにより、現物ハンドリングからの解放、安全性を実現できる。②生産性の向上

チェックライター表示の金額部分を自動認識するなど、エントリ項目を削減できる。これによって従来の入力端末台数を30%削減の予定。③役席管理システムの導入

作業の進捗状況を、随時把握できるため、作業効率の平準化が図れる。④バッチ処理のオペレーション改善

期日管理システムのほとんどは、従来のソフトウェア資産を継承するが、新システムでは次の改善を図る予定。*バッチ・プログラムのオペレーション・メニューを新しい応答表示にして、操作者に分り易くしオペレーション・ミスの削減を図る。*入庫分類処理はイメージソート手法を採用し、2パスで現物分類を完了できるようにする。⑤今後の検討事項

統合サーバにより、事務集中部門(口座振替、印鑑照合、為替OCR、手形システムなど)全体の一元化を検討している。

ユニシス・ニュース

2001年3月1日第479号

UN

百五銀行

肥後銀行

図3 百五銀行ハードウェア構成概念図(手形イメージ・汎用エントリ・システム)

「オートプルーフ・システム」を発表高速処理、柔軟設計により業務処理をさらに効率化

オートプルーフ・システム

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急速に進展するグローバルな競争など、小売業をとりまく情勢は激しく変化している。店舗数の増えることによるポストの増加や右肩上がりの成長が期待できた時代は過去のものとなり、厳しい競争を勝ち抜くための体力が、より求められるようになってきた。人事においても例外でなく当社で

は、①年功型を廃し、役割連動型賃金体系への移行②適所適材の配置と業績に対する評価の透明性を高め、やる気を引き出すことによる人材の活用を柱とした人事制度変更を実施した。しかし、従来の汎用機で稼働していた人事給与システムは、約20年前に構築されたもので、長年にわたる機能追加と修正作業により、①システム全体の見通しの悪化②コード体系の乱れ③情報の分散とプライベート化(特にMAPPERレポートとして)など、経年劣化が見られ、新しい人事制度への対応は困難と思われた。そこで、当社では新人事制度に短期間で対応できるパッケージの選定を行った結果、ERPパッケージ「OracleApplications HRMS(以下 HRMS)の採用を決め、日本ユニシスに開発を依頼し、人事給与システムの再構築を実施した。

HRMSを採用したのは、①社内標準から世界標準へのシフト②システム・業務の統合化推進(将来的な会計ERPの導入も視野に入れる)にある。すなわちBPRの推進、ならびに状況に応じて刻々と変化する社会情勢と、それに合わせた制度変更に対して迅速に対応できることを期待した。また、他のERPパッケージと比較して、既存の他システム(会計システムなど)との連携が柔軟に図れる点を評価し、開発を依頼した。日本ユニシスへの開発依頼は、当社システムを熟知している点とHRMSに関してのノウハウを評価した。

最大の難関は既存のデータを移行することであった。特にデートトラック項目に苦しんだ。1999年10月にヒアリングを開始し、正社員人事機能すべてと、給与計算機能をそれぞれ2000年8

月、9月に稼働させるという厳しいスケジュールであった。特に苦労したのは、データ移行であった。(1) 移行元データ整備の問題

HRMSはエラーチェック基準が厳しく、住所は1項目ごとに数千件単位でエラーが出た。補正に時間はかかったが、結果的にデータ精度が上がった。(2)デートトラック項目の移行

HRMSの特徴として、デートトラックの考え方がある。これはデータを履歴管理し、「有効日」の設定で、システムは該当する情報だけを処理する。機能としては優れた部分であるが、データ移行という面でみると、①時系列のマスタが必要になる②常に開始時点から現在に向かって時系列に移行登録しないといけないというかなり厳しい制約があった。移行に当たっては、元データから各時点のマスタを逆生成するツールの作成が必要であった。(3)データ移行時間の長時間化

データ移行は、約11日間、正味の機械処理時間でも約73時間かかった。そのため、運用停止期間を設けて一気に移し変えるという手段が使えず、移行用のデータを取得してからも通常運用を続け、毎日更新差分をとっていく仕組みを作り、データ移行後に補正登録するという手順が必要になった。(4)検証方法の問題

HRMSのコード体系と既存システムのコード体系はまったく異なるものが多く存在した。そのため、移行データの検証で単純突合わせは不可能だった。今回は全データ項目を次の2つのタイプに分類し、チェック方法を変更した。①コード体系変更がない項目:検証ツールで全件突合わせ②コード体系変更のある項目:件数チェックを機械的に実施リストを打ち出しての目検による

チェックは一切しないというルールで行った。結果として、一括データ移行間違いによる障害は出なかった。

(5)ツールで移行できない項目

の存在

件数的には数百件であったが「画面で登録できる」という油断があったのか、登録間違いがあり、補正などに時間をとられたのが反省点である。大変な作業であったが、日本ユニシスの努力で、移行ミスによる大きなトラブルもなく、人事・給与システムとも

SUN U5500Oracle Applications R11

正社員人事/給与�

ワークフロー・システム�

Unisys IX5600-32A

臨時社員�MR

新規構築� 既存処理�

通勤費�MR

PC�※駅すぱあと�

IBM RS6000

店舗出退勤�(正社員/�臨時社員)

ワークフロー用�外部テーブル�

2000年9月稼働時構成

スケジュール通りに稼働できた。

「予定通り稼働できた」という事実は十分評価に値する。しかし、優秀なパッケージだからこそ、人事業務や給与計算業務が効率的にできるのは「当たり前」。また、約250種あった帳票も約15種の指定帳票以外、全部廃止するというペーパレスの実現も「当たり前」である。つまり、それだけでは投資に対する効果としては不十分というのが当社の認識であった。では、本当の効果を生み出すキー

ワードは何か。それは「従業員の活性化実現」と考えた。小売業で利益を生み出すのは店舗である。商品を販売するのは人である。いかにシステムが進化しても、小売業は、やはり人間に依存する産業である。従業員一人ひとりがやる気をもって活性化できない限り、店舗の(企業の)活性化はあり得ない。人間がやる気を出すのは、達成すべき目標が明確であり、やったことに対する公正な評価を得られていると自覚できることだと考えた。公正な評価の源には、「何を目標にして、どんなことをやり、結果がどうであったか?」という記録が重要である。また、適正な配置のためには、個々人の能力・適性を把握しないといけない。とはいえ、人事担当者が約4,000名の社員の行動・能力・適性などを記憶するのは不可能である。このジレンマを解消する手段として、「人事担当者の記憶(脳)の代替えとなるような人事情報システム」を目指した。

重要なのは「あらゆる情報の一元管理」と、情報をタイムリーに「蓄積」し、柔軟に「検索」できることである。幸い、HRMSには画像、非定型情報(メモ情報)、Excel、Wordなどの文書をクリップする機能などがあったので、これを利用すれば一元管理は可能と考えた。非定型なコメントなど、多様で、き

め細かい人事情報をタイムリーに収集しようとすると、従来の「紙による申請+人事部による登録ベース」では、安定した登録は望めない。これを回避するために、自分のことは自分で登録するという個人責任の考え方をメインに、人事部担当者の個人的頑張りに依存せず、コンスタントに情報が蓄積されていく仕組みが必要である。そのため、Web経由で個々人が自分の情報を申請入力できる機能(セルフサービス)を重点機能と考えた。合わせて、Excelシートからの一括取込機能(ADE)を運用の中心にし、「HRMSからExcelへ抽出→Excel上で修正→HRMSへ一括取込み」という流れで中間資料を廃止し、手間をかけずに登録することができるように業務フローを作り変え、業務効率化を図った。

検索に関しては、条件設定は柔軟、しかし条件指定がやや複雑で遅い汎用検索と、まったく逆の特性のフォルダ(定型検索)とのバランスが問題となった。そこは個別画面での検索条件設定を最小限にし、最大公約数的条件を全画面に付与することで定型検索に融通を持たせ、それでも不十分な場合は汎用検索でカバーする方針をとった。また、特定の条件で抜いた対象者に、数名のイレギュラー者が存在するケースに対応するため、イレギュラーの補正済の対象者社員No.リストをそのまま検索条件に使用できる機能を付加するなど、再利用性を高める工夫をした。

2000年12月14日時点で、正社員人事業務と正社員給与計算業務はHRMSに全面的に移行し、順調に稼働している。個人責任による入力(セルフサービス)に関しては、ベースの機能はできているが、運用面やルールの検討整備を行い、早期の稼働に向けて準備中という段階である。導入してよかったと思えるようになるには、これからのステップがより重要だと考えている。

2001年3月1日第479号

UN

従業員活性化のための人事情報システム構築イズミヤ株式会社

情報技術部 表 正氏

人事システム・ソリューション

社会変化に対応した人事制度の必要性

制度変更対応に柔軟なことを評価しHRMSを採用

評価のキーワードは「従業員の活性化」

重要なのはあらゆる情報の一元管理

蓄積した情報を有効活用する検索機能

“使いこなし”の定着が今後の課題

■イズミヤ株式会社http://www.izumiya.co.jp/

◆衣料品、食料品、電器、家具、レジャー用品、日用雑貨などの総合小売業のチェーンストア。

◆所在地=大阪市西成区花園南1-4-4◆代表者=林 紀男社長◆売上高=3,552億円(2000年2月)◆店舗数=76店舗(2000年8月末)◆従業員数=3,684人(2000年2月)

最大の難関は既存データの移行

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ユニシス・ニュース

2001年3月1日第479号

2000年、まだ夏も盛りの8月30日朝9時、私は信濃町から明治記念館に向かって急いでいた。今日一日、ロバート S.キャプラン教授の「バランス・スコアカード(以下BSCと略す)」の講義が行われるのだ。会場に着くと「バランス・スコアカード東京サミット2000」の看板のもと続々と人が集まってきていた。企業の役員・管理者とおぼしき人、コンサルタントらしき人、学者らしき人などがいる。受講料15万7,500円という大枚を出して集まってきた人たちだ。これらの人たちを駆りたてる「BSC」とは、どんなものであろうか、本当に、今日の、またこれからの日本企業の経営活動に役立つものであろうか。それを解き明かすのが、本レポートの役割である。限られたスペースであるが、

「BSC」とは何か、どのように活用したら良いか、注意すべきことがらはどんなことかを見ていきたい。その前に、8/30日の講義について若干触れておこう。キャプラン教授は、ハーバード・ビジネススクールの管理会計担当教授であり、その前はカーネギーメロン大学の産業経済大学院の教授として活躍していた偉い学者である。講義は、9:30から始まり、17:30まで、四部構成で行われた(8/28日にも同様の講義が行われた)。詳細な内容は触れることはできないが、実例や具体的な数字を挙げての精力的な講義であった。米国のコンサルタントの例に洩れず、プレゼン資料もかなり充実したものであった。

ここで「BSC」の概要を述べておこう。「スコアカード」とは、採点表のことである。野球のヒットや三振あるいはエラーなどを記録した表をスコアカードと呼ぶが、それを経営活動の評価(業績評価)について適用したものである。また、「バランス」が頭についているが、これは、いろいろな観点から均衡を取って統合的に見たという意味でつけられている。バランスシート(貸借対照表)とは、直接的な関係はない。最近の「BSC」は、単なる企業の業績評価システムではなく、経営革新の道具として使われている。すなわち、「BSC」は、静的なものでなく、戦略策定&企業革新のツールとしてダイナミックに活用する道具に成長した。理論が実践を通じて使える道具になってきている。ここが、今「BSC」が注目されている理由であり、うまく使いこなすことができれば非常に役立つものになってきている、と評価されている理由であろう。従来、特に米国では、

企業の業績評価は、財務的な観点が中心で、他はほとんど注目しないことが多かった。1980年代、米国の経済は低迷しており、逆に日本の絶好調であった。この結果、徹底的に日本企業が研究された。日本企業は、(プロセスの)改善を行い、従

業員を大切にし、組織、学習をする。本田技研などでは、顧客を大切にし、イノベーションを進めていた。これらのことを、米国、そして博士たちは学んだ。これらの学習を通じて、企業の評価、業績改善のためには、過去の指標である財務の視点からだけではなく、将来を見据えた上で、「財務の視点」に加えて、「顧客の視点」、「内部業務プロセスの視点」、「学習と成長の視点」という4つの視点から検討する必要があるとの結論に達したのである。博士は、1992年、ノーラン&ノートン コンサルティングのデビット・P.ノートンと共同で、6社と結んだコンサルティング契約を通じて、重役と仕事をすることとなり、その過程で「BSC」を使い始めた。前述のように、はじめは業績評価システム、すなわち(戦略的・革新的)目標設定、日々の経

過測定、改善を伴う活動の「評価システム」であった。約8年後の現在、「BSC」は経営環境、自社の強み・弱みを勘案し、経営目標・評価指標として重要業績評価指標

(KPI)を選び、それらの因果関係を明確にし、情報技術(IT)を駆使して、ビジネス・サイクルを回す戦略策定とそれをべースに経営活動を実践するのための統合的ツールとなってきている。

1996年、発表から4年が経過し、「BSC」を活用した、モービル(石油)、ケミカルバンクなどの業績が劇的に改善された。モービルは、1993年には、業界大手最下位の業績で5億ドルの赤字であったが、1998年には業界トップの9億ドルの収益を出している。またケミカルバンクは、1996年に、1993年の約20倍の利益を出している(参考文献1参照)。最近はヨーロッパ、北欧の企業で採用され、効果があったと評判になっている(参考文献2)。成功の要因は、「BSC」の採点表機能である4つの視点から重要業績評価指標(KPI)を抽出し、それらの因果関係を明確にし、社員に伝え、経営者自らリーダシップを発揮し、実践したことによる。以下の5つの基本原則を守ることが大切であると、教授は語っている。(1)エグゼクティブの強力なリーダシップ=①変革の必要性を訴える、②全社的なリーダシップチームを創る、③ビジョンと戦略を創る(方向を決め部下に伝える)、④チーム・アカウンタビリティを創る、⑤企業文化を変える(2)戦略にリンクしたバランス・スコアカード=戦略⇔財務の課題⇔顧客の課題⇔業務プロセスの課題⇔組織学習(従業員)の課題という戦略マップを作ることが大切である(3)組織に浸透させる仕組み=メジャメントはコントロールのためでなく、コミュニケートのためのものである(4)戦略を全社員の仕事にする

(5)継続的なプロセスにする利益の源泉として、生産性向上(経費削減・資源の活用効率向上)/増収戦略(既存客の売上・利益向上/新規客開拓)の目標を決め、儲かる客とは誰かを明らかにし、儲かる客を増やすための活動(差別化、ベストプロダクト・サービスの提供)をスピード・経済面で効率化し、環境変化に効果的・効率的に対応し改善できる体質、企業文化を創ることを企画、実行することが肝要である。経営者が器を向上し、明確・適切なビジョンを打出し、実行部隊に戦略をうまく伝え、企業が変革するためのツールとして、「BSC」は、なかなか優れたものを持っている。もちろん、ツールは使い方により効果は多いに異なるが、採用検討の余地がある方法であると思う。図1は、筆者が診断した企業(「BSC」そのものの実施はしていない)に関して、戦略マップを創ってみたものである。実践するためには、さらなる検討が必要であるが、どんなものかという参考になるものと思う。図2は、「BSC」の実践スケジュールの例である。一つの目安になると思われる。[参考文献]*1バランス・スコアカード-新しい経営

指標による企業革新-吉川 武男訳 生産性出版

*2戦略的バランス・スコアカード ニルス・ゲラン・オルヴ他著 吉川武男訳 生産性出版

*3バランス・スコアカード経営 松原 恭司郎著 日刊工業新聞社

UN

経営革新ツールとしての「バランス・スコアカード」テン・システム株式会社 代表 金子 崇氏

サービスアドバンスト・コンサルティング・サービス(34)

ロバート S.キャプラン教授来日

「バランス・スコアカード」活用事例と活用の留意点

「バランス・スコアカード」って何?

売上が増加しなくても�利益の出る体質にする�

付加価値生産性の向上�

労働分配率の見直し� 競争力のあるマージン� 1人あたりの付加価値向上�

コスト対効果の生産性�

資本回転率�

高い顧客価値� 高いブランド・イメージ�

クイック・レスポンス� サービス・メニューの充実�

固定客の維持・拡大�(リピート・オーダーの増加)

ローコスト・オペレーション�

工番別実行予算�管理の実施�

生産管理システムの再構築� 減耗在庫の削減�外注政策のの見直し�

一元的生産管理�システムの構築� 工程山積�

みの実施�製造手配�の一元化�

部品の工番別�引当手配の実施�競合体制の確立� 内作化の推進�

成果主義の�報酬制度� 目標管理� 危機感の醸成� 従業員の動機付け�

管理者教育�

財務的視点�

顧客の視点�

社内ビジネス�プロセスの視点�

学習と成長の視点�

図1 バランス・スコアカードを活用した戦略マップ例

出典:バランス・スコアカード-新しい経営指標による企業革新-吉川 武男訳 生産性出版�

ステップと作業(期間(週)) 担当� コメント�

ステップⅠ 評価項目の構造の明確化(1~3)

(1)導入対象組織の選定�

(6)サブ・グループ・ミーティングの実施�

(7)第2次経営者ワークショップの実施�

(8)導入計画の作成�

(4)まとめ�

(5)第1次経営者ワークショップの実施�

経営者�設計者�

経営者�

経営者�

設計者�

設計者�

設計者�経営者�

設計者�サブグループ�

設計者�経営者�

初めてのバランス・スコアカードの導入対象組織としては、全社レベルで�はなく一つの戦略的事業組織(SBU)を選択する方がうまくいく�

会社目的、KPI案の作成と、バランス・スコアカードへの抵抗の程度の確認�

ステップⅡ 戦略的目的に対する合意の形成(4~7)

ステップⅢ 評価項目の選定と設計(7~13)

ステップⅣ 導入計画の策定(13~16)

(3)第1次インタビューの実施�

導入チーム�

経営者�中間管理者�

(10)導入計画の達成�

(9)第2次経営者ワークショップの実施�

設計者による経営者のインタビューの実施(バランス・スコアカードの概念の紹介、�会社戦略目的、バランス・スコアカード業績評価指標案(KPI)などの情報入力)

各視点につき5つ以上のKPIを検討し、上位3ないし4のKPIに絞り込む。�(各視点ごとの戦略目的、各目的ごとの指標候補の記述)

戦略目的の記述の洗練、各目的ごとのKPIの明確化、各KPIごとの情報源�と情報入手方法の明確化、各KPI間の関連の明確化�

ビジョン、戦略ステートメント、目的とKPIに関する最終的な合意に達する。�ターゲットの検証と、ターゲットを達成するための主要な実行プログラムの�明確化。バランス・スコアカードの従業員への啓蒙、経営哲学との統合、支援�する情報システムを含む導入計画の合意�

ビジョン、戦略ステートメント、目的とKPIについての討議、各KPIに対�するターゲット(目標値)の設定�

ターゲットの公式化と導入計画の作成�

60日以内でバランス・スコアカードの使用を開始�

(2)導入対象と組織と全社の関係の明確化�

図2 バランス・スコアカード実践スケジュール例

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今回の連載は、システム開発に関わる営業、技術者などの対談で、最近の開発技術を巡る問題を探った「システム開発の流れ(5月号)」で始まった。ITと融合したビジネスであるEビジネスでは、従来に比べ開発期間が短いこと、ビジネスとともに要求が変化していくことが、技術・人・組織の面でさまざまな課題を生み出すことを見た。この課題に対応するツールや新技術といった“銀の弾”も開発プロセスの変更や再利用を促進する仕組みの中に位置づけることで活用できるとしたが、その開発プロセスをどのように進め、管理していけばよいか、再利用をどう捉えるべきか、そしてこのようなシステム開発上の課題を生み出すEビジネスに踏み出す

各種開発ツール�� VisualAge�

for Java

VisualCafe�Version4

JBuilder3VisualAge�

C++��

C++Builder4

Microsoft�Visual C++6.0

どういった手順で?�何を使って?�

どのように開発すればよいの?��

アプリケーション�

新しい技術基盤�

UML、Java、XML、COM+、AIP…�

Microsoft�Visual J++6.0

図1 ツールと新技術の採用

まず「Webアプリケーションの動向とシステム開発(7月号)」では、Webベースのアプリケーションを採用する事情を、米国でのEC(企業間電子商取引)の動向を踏まえて解説した。バリューチェーン(価値連鎖)プロセスの

ソフトウェア開発を難しくしている要因は、複雑さと柔軟さであると言われる。

どちらも対象の規模が大きくなり、携わる人数が多くなるほど制御が難しくなる。

短期開発では、さらにスピードという要因が加わった。

連載「システム開発技術の動向」は、システム開発者が直面している課題を、ユ

ニシス・ニュースの読者とともに考えていくことを目指してきた。今月はこれまで

のまとめとして、改めてこの1年間の記事を紹介する。

のは何故か、という問題が残った。(図1)

「「LUCINA」で実現するEビジネス時代のシステム開発(5月号)」でシステム開発方法LUCINAの基本的なコンセプトを示し、「コンポーネント指向再論(9月号)」では、要求分析・開発プロセス・再利用についての読者の疑問に答える形で、このような問題を解決する鍵はアーキテクチャ中心の開発プロセスであると述べた。

変更という視点から、取引のプロセスやデータを標準化するためにWebベースのアプリケーションが必要であり、標準に基づいた柔軟なビジネスを実現するにはコンポーネント指向の開発が適することを述べている。

次に「部品化・再利用による効率のよいソフトウェア開発(6月号)」では、従来の再利用技術と比較しながら、コンポーネント技術を使った開発の基本的な考え方を示した。コンポーネント技

術は、サブルーチン・レベルのライブラリの再利用に比べて利用者の負担が少なく、クラス・ライブラリより柔軟であり、このような特性はインタフェース中心の考えに基づくことを解

説した。 (図2)

また、コンポーネントの体系化、アーキテクチャに基づく部品化・再利用のアプローチを紹介した。「EJB(Enterprise Java

Beans)の適用とその課題(12月号)」ではEJBを題材に、より具体的にコン

開発者作成コード�

コンポーネントの呼び出しや�関連をすべて管理する�→開発者の負担が大きい�

フレームワークがコンポーネント�の呼び出しなどの共通部分を管理�→開発者の負担が小さい�

開発者作成コード�

フレームワーク�

コンポーネント� コンポーネント� コンポーネント� コンポーネント� コンポーネント�コンポーネント�

図2 フレームワークを利用したコンポーネントの利用

ポーネント技術について述べている。従来のライブラリに相当し、必ず再利用されるものはフレームワークであり、このフレームワークを活用することで、従来に無い再利用の形である柔軟でカスタマイズ可能なコンポーネン

ところで、短期開発には迅速さが求められるが、一般にスピードを出すと制御が難しくなる。Eビジネスも、コンポーネント技術も枠組みを決めることで、柔軟さや迅速さを実現しようとしている。「開発を速くする(8月号)」では、この

オンサイト顧客�

ペアプログラミング�

継続的�インテグレーション�

1~2回/週�

随時�

提案�

随時�

随時�

随時�

会議�

ML 合意�

日ごと� 日ごと�

機能テスト�

シナリオ�改訂�

機能テスト�改訂�

リリース�

1回以上/日�

1回以上/日�

ビルド�

コーディ�ング�

レビュー�

枠組みの限界点を理解することが管理可能で速い開発を実現するための鍵であると述べた。そして、パラメータ型パッケージ、コンポーネント型パッケージ、作り込みの3類型について、限界点を基準にしないと開発が長引くケースを紹介し、リスク管理のためにはアーキテクチャ中心の反復型の開発が必要なことを示している。短期開発の好例が「事例:リバースオークションサイトの構築(2月号)」である。これは、日本ユニシスが昨年8月から提供しているAIP(ApplicationInfrastructure Provider)サービスである

トへの道が拓けることを説明している。そして、企業を越えたEJBコンポーネントの流通を目指す国内のコンソーシアムが10月に立ち上がったことを受け、部品流通に関する見解と方向性を示した。

kiban@asaban、EC用ソフトウェア・パッケージCommerce Center という枠組みを利用して、アプリケーション開発を超短期(2カ月)で柔軟に開発した事例である。この記事は短期間で要求が進化し続ける開発において、LUCINAをどのようにカスタマイズしてプロセスを定義・実行し、品質を保証していったかを紹介している。代表的な軽量開発プロセスであるXP(eXtreme Programming)を評価軸として成功の鍵を探り(図3)、特に顧客との円滑なコミュニケーションの意義を強調している。

このようにアプリケーションを短期開発するには、プロセスを明確に定め、開発運用ルールを標準化し、プロセスと成果物を関連付けるなど品質の手戻りが発生しない仕組みが重要である。「開発プロジェクトの総合力を引き出す開発モデルとツール「TIGA〔注〕

(11月号)」は、そのような仕組みを提供するTeamFactoryを紹介した。12月から製品提供を開始したTeamFactoryの成果物管理、ライン管理、プロセス管理などの機能が、反復的で並行作業を含むチーム開発で有効であることを示している。 (図4)

技法�

プロセス�スペシャリスト�

分析� 設計� 実装� テスト� 保守�

ツール�

ツール�

ツール� ツール� ツール� ツール�

ドライブ�

プロセス�

プロジェクト・チーム�

部門・企業�

情報・知識の蓄積と利用�

要員管理・経費管理...など�

ドライブ� フィードバック/情報公開�

成果物管理�

並行開発管理�

工程管理�

変更管理�

標準化�

情報共有�

TeamFactoryが支援�

図4 チーム開発支援モデルとTeamFactory

【技報LUCINA 特集号】技報68号(2001年3月発刊予定)は、

LUCINAを中心としてシステム開発技術を特集している。この連載で取り上げなかったセキュリティ・

ポリシーや ASP(Application ServiceProvider)などの基盤技術、Sun 社やRational 社のシステム開発技術も掲載している。

[注 ]T IGA は 、 TeamFactory の旧称。

2001年3月1日第479号

UN

システム開発への期待と悩み

なぜWebベースの開発を採用するのか

コンポーネントで変わる再利用の姿

柔軟で迅速な「反復型開発」の実際

チーム開発を支える「TeamFactory」

連載を振り返ってこの1年間でシステム開発技術はどこまで進んだか

日本ユニシス株式会社Eビジネス技術部コンポーネント技術室グループ・マネージャ 羽田昭裕

IT最前線システム開発技術の動向(9)

図3 XP的に見た超短期開発プロセス

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13

アベイラビリティ(可用性)の実現要素として、①システムフェールの発生頻度、②影響のシビアさ、③復帰の素早さなどが図られてきた。しかし現実にはこれらの要素は、互いに関連し合っている。発生頻度が多ければシビアさが増し、クリティカルなトラブルほど短時間での復旧が求められる。IEEE Computer/1995レポートによると、システムフェイラーの85%がソフトウェア、操作ミス、計画的なダウン操作などに起因し、環境設備、ハードウェアによるものは15%である。近年のハードウェアの信頼性向上を考えると、現状ではさらに差が広がっていると思われる。したがって、システムの可用性には、フォールト・トレラント化ハードウェアよりもシステマティックなアプローチの方が効果的であるといえる。Microsoft Windows NT/2000は、ファイル・プリント・アプリケーション・サーバ、Webサーバ、DBサーバなど幅広いサポートが可能であり、Windows 2000Datacenter Serverは、ミッション・クリティカルなエンタープライズ環境への導入を促進している。この増加に伴い、

サービスレベル・アグリーメントなどサーバ・アプリケーションのアベイラビリティを保証するニーズが高まっている。このようなニーズに応えるため、ユニシスは、“Advanced High AvailabilityComponents”(以下:ADHACと略す)を開発する。ADHACは、Windows NT/2000環境でのシステム・アベイラビリティ向上をターゲットに、特にフェイラーに対するオペレーション、ソフトウェア両面での即時回復実現に開発の焦点をあてたソフトウェア・フレームワークである。単一のソフトウェア・コンポーネントからデータセンタ規模までのフェイラーを扱えるレンジを持ち、OS、ミドルウェアのみならず、カスタム・アプリケーションまでも監視の対象にする。ES7000システムは、ADHACにより99.99%のアベイラビリティ挑戦が可能となった。ADHACはWindow sNT/2000環境にフォーカスしたトップクラスのアベイラビリティ・ソリューションである。

ADHACは、ビジネス・アプリケーションから、ミドルウェア、WindowsNT/2000 Serverまで広範囲をカバーする。問題の発見と修正(コレクティブ・アクション)・回復(リカバリー)の自動化によりアベイラビリティが確保され、システムのプロアクティブな管理が可能となり、サポート・コストの削減、生産 性 の 向 上 な どTCO(総所有コスト)の削減が図れる。ADHACはNetIQ

/AppManagerのモジュールとシームレス

に統合し、NetIQ/AppManagerのWindows OS、およびデータベース、メッセージングサーバなどミドルウェアに対する優れた監視機能を活用しプロアクティブな管理を実現している。

(図1)

アプリケーション�

ハードウェア�

Windows NT/2000 Operating System

DB�サーバ�

MTS�サーバ�

Messaging�サーバ�ADHAC�

フレームワーク�

図1 ADHACフレームワーク

ADHACのシステム可用性向上のキーとなる機能は次のとおり。・監視対象リソース(アプリケーション、ミドルウェア、OS、ハードウェア)ごとのキー特性の変化を察知・アプリケーション実行中に発生したクリティカルな事象を検知・把握したプロブレムのシビア・レベルを決定し、相応しいコレクティブ・アクション(修正処理)を選定

・リソースのステートの修正、検出されたプロブレムの回復処理。市場に出回っているほとんどのモニタリング・ツールは、管理者への通報(ポケベル)、情報のロギング、あるいはアプリケーションの停止・再起動などをコレクティブ・アクションとしているが、ADHACは検知された異常事象、察知したリソース変化について、きめ細かく精緻に評価を行い、最も相

応しいコレクティブ・アクションにつなげるのが特長。またADHACは統合したNetIQ/AppManagerの監視機能の優位性を徹底的に利用している。NetIQ/AppManagerは、Windows

NT/2000が備えている「パフォーマンス・カウンタ」を情報源としている他社ツールと異なり、「Knowledge Script」という監視エージェントをWindowsNT/2000とミドルウェアなどに数百以上設定してアベイラビリティ情報を得ることにより深いレベルの管理を可能している。例えば、SQL ServerのKnowledge

Scriptは、SQL Serverのエラーログを監視し、重大障害のロギングを検知したり、レスポンス・タイム、ディスク空きスペースがしきい値を越えた場合、イベントを発生することなどができる。一方、ADHACはユーザ・カスタム・アプリケーションに対するDLLインタフェースを提供し、アプリケーションにこれが組み込まれる(ADHAC対応リソース)と、アプリケーションはADHACに監視・制御される。これによりOS、ミドルウェア、カスタム・アプリケーションまで総合的なアベイラビリティの管理が可能となる。

図2は、今まで述べた機能を実現するADHACシステムの主要エレメントと関連を図式化したものである。以下の機能説明と照らし合わせ、全体像をイメージ願いたい。①Resource Manager

ADHACの中枢機能であり、リソースごとに存在し、・ADHAC対応リソースに対しては、モニタリング、プロパティへのアクセス、支援のための要求・応答メッセージングなど能動的に関わり、・ADHAC非対応リソースに対しては、モニタリングのみの受動的な関わりをして、リソースの可用性向上を支援する働きをなす。②NetIQ KS(Knowledge Script)

NetIQ/AppMangerが提供する監視エージェント群③NetIQ Monitoring Script

NetIQ KS/Monitor Objectが捉えたADHAC非対応リソースの状況を、Resource Managerにつなげる④Local State Table Database

管理サーバ� アプリケーション実行サーバ�

Human I/FNet IQ�

コンソール�

Net IQ�管理サーバ�

Net IQ�管理�

クライアント�

ADHAC�ApplicationKS�(Bridge?)

①ADHAC�Resource�Manager

⑦-2�ADHAC�Agent

⑦-1�ADHAC�Agent

Metadata�Access�GUI

④Local State Table�⑤Simple Rule Engine� Simple Action Engine

META�DATA

ADHAC�API

①-1�ADHAC�AWARE�

Application�(Interacive)

Net IQ/AppManagerモジュール�

⑥Net IQ�ADHAC�AS

②Net IQ�KS�

(Monitor)

Net IQ�ADHAC�

Expansion

②-1 Net IQ�Monior�Object

ADHAC�Expansion�Object

③�

図2 ADHACアーキテクチャ図

ADHACのセントラル・ストレージ、捉えたプロダクトのステータスを格納⑤Simple Rule Engine

Local State Tableのステータスよりプロブレム・レベルを決定し、適正なコレクティブ・アクションを選定⑥NetIQ AS(Action Script)

リソース・ステートの修正、検出されたプロブレムの修復処理などを実行⑦Agent & Agent Manager

アプリケーション実行サーバごとにADHACが導入され、ADHACマネージャが全体の監視・制御⑧ADHAC/META DATA

リソース・プロファイルおよびアクション・ルールセット

◇今春の市場投入を目指し、現在、米ユニシスと日本ユニシスが共同でADHACの開発を進めている。ADHACは、今後ますますミッション・クリティカル業務への採用が予想されるES7000システムに、さらに強固なハイアベイラビリティ基盤を提供する。

ユニシス・ニュース

2001年3月1日第479号

UN

ADHAC(Advanced High Availability Components)によるES7000システムの高可用性実現のアプローチ

日本ユニシス株式会社ESビジネス推進部プログラム開発室担当部長 沢田勝男

IT最前線Windows Data Centerの実現に向けて(6)

ADHACによるプロアクティブ管理

挑戦:99.99%の可用性実現にチャレンジ

ADHACによる深いレベルの管理

ADHACシステムのアーキテクチャ

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14 2001年3月1日第479号

*2000年12月20日A社*2001年1月29日B学習塾*2001年2月1日Cデパート上の3行が何を意味するかご存知だろうか?これらはこの1~2カ月の間にウイルス入りのメールを誤って顧客に発信してしまい、事件として報道された企業である。これらの企業は、実は被害者でもあるのだが、ニュースを軽く目にしただけでは、これらの企業は加害者であるかのような印象を持たれてしまうだろう。このようにコンピュータ・ウイルスを取り巻く環境はこの1年間で大きく変化している。IPA(情報処理振興事業協会)への届出被害件数は、昨年の3倍以上の11,109件に上り、ウイルスの感染経路は2000年12月分に限れば、約94%がメールからの感染となっている。IPAではメールが感染源のウイルスを「メール悪用ウイルス」と呼んでいるが、この「メール悪用ウイルス」は下記の2つの特徴を持っている。①短時間に大量に感染する

添付ファイル名を工夫したり、差出

人が知人であるかのように振舞うため、つい添付ファイルを開いてしまう。“W32/MTX”が記憶に新しいところ。②被害者が次の瞬間から加害者になる

メール・クライアントとは無関係に送信されるため、感染したことに気付かないままウイルスをばらまいてしまう。上で述べた3社の場合“W32/Hybris”が混入していた。さらに最近では、特定の環境下においてではあるが、添付ファイルを開かなくても感染してしまうウイルスの存在も確認されている。「不用意に添付ファイルを開かない」は最低限のルールだが、メールソフトによってはそんなルールにお構いなしに感染してしまう可能性があるので事態は深刻だ。このように、だんだん悪質化しつつあるウイルスが、パターンファイル更新の履歴を見ると最近は毎月約700~800件ずつ増加している。パターン・ファイルの更新が遅れてしまうと、もはやそのPCは対策していないのと同じことになってしまう。あなたのPCは大丈夫だろうか?

では、メール悪用ウイルスに対しては、どのような対策が有効なのだろうか。各クライアントPCにウイルス対策ソフトをインストールすることによって、対策が実施されている場合がまだ多いが、この手法には例えば下記のような問題点がある。*PC利用者にパターン・ファイル更新を任せると、なかなか更新してくれない。自動更新を実現するためには、それなりの初期コスト・運用コストがかかる。*PCが不安定になることを嫌ってウイルス対策ソフトを外されてしまう。こういったPC利用者が1人でもいるとウイルス対策は台無しになりかねないのだが、現状では、ウイルス対策のポリシーを社内で徹底させるしか方法がないのが実情ではないだろうか。一方、インターネット・ゲートウェ

イでの対策という手法も登場している。インターネット・ゲートウェイ対策とは、社内ネットワークとインターネットとの間にゲートウェイ・サーバを設置し、そのサーバ上でウイルス対策を行う手法である。ゲートウェイ・サーバは、毎日自動的に最新のパターン・ファイルが適用されるので、PC利用者や管理者がパターン・ファイルを更新する負担もなく、すべてのPC利用者が恩恵を受けることができる。この手法は、クライアントで対策を実施するより一歩進んでいるが、問題がないわけではない。クライアントPC数が少ない場合は、1台あたりの初期コストが高くなってしまうし、ゲートウェイ・サーバには、比較的高い負荷がかかる。メール・サービスに支障をきたすことがないような構成にすると、さらに初期コストを押し上げてしまうことも考えられる。

日本ユニシス情報システム(UIS)では、インターネット・ゲートウェイでのウイルス対策として、「メールウイルス・フィルタリング・サービス」を2000年12月より提供を開始した。メールウイルス・フィルタリング・サービス

とは、「名前deメールサービス」*をご利用のお客様向けにトレンドマイクロ社の「InterScan VirusWall」を使用して、電子メールウイルス対策を行うオプション・サービスである。サービスの内容は下記のとおり。

◇ゲートウェイでのウイルス・チェッ

ク(送信/受信)

ウイルスが検知された場合、その感染ファイルを除去する。添付ファイルが圧縮されていてもチェックすることができる。◇感染ファイル発見時のメール通知

サービス

ウイルスメールが検知された場合、送信者・受信者(インバウンドのみ)・管理者にメールで通知する。◇ウイルス駆除用パターン・ファイル

の更新サービス

最新ウイルス・パターンのリリース後、24時間以内に、そのパターン・ファイルを適用する。緊急時にはトレンドマイクロ社から直接連絡を受けて直ちに更新する。◇ウイルス解析サービス

お客様の要請に応じて、ウイルス感染(未確認のもの)の疑いがあるメールを診断の上報告する。◇お客様管理者向け情報提供サービス

専用Webページにて、下記の情報を提供する。*各種ウイルス情報・現状パターン・ファイルでの対応ウイルス情報・誤警告情報・ウイルス情報データベース(検索システム)

*ウイルス検知状況このサービスでは、先に述べたインターネット・ゲートウェイ対策の問題点に対しても考慮されている。初期コストの負担は少なく、ウイルス対策の

ための管理者が不要である。ゲートウェイ・サーバの構成については、サーバは完全に二重化されている上にロード・バランサー(負荷分散装置)を導入しているため、可用性が極めて高くユーザ数の増加にも柔軟に対応できる構成になっている。そして、「メールウイルス・フィルタリング・サービス」の最大の特長は、「アウトバウンドブロック機能」である。社外から社内へのメール(インバウンド)の場合、添付ファイルにウイルスが含まれていると、そのファイルを削除して本文とウイルスを除去したメッセージが社内に届けられるが、社内から社外へのメール(アウトバウンド)の場合、添付ファイルにウイルスが含まれていると、そのメールの送信自体を中止し、ウイルス感染の事実を社内に通知する。万が一社内のPCがウイルスに感染してしまったとしても、そのことを相手に知られない。「あの会社は今時ウイルス対策もできていないのか」という烙印を押されるのは最悪。このリスクを大幅に低減することができるのが「メールウイルス・フィルタリング・サービス」である。詳しくは下記のURLを参照されたい。http://www.netsurf.ad.jp/houjin/

filtering.html

今後の計画としては、対象の範囲を専用線IP接続ユーザやハウジング・ユーザにも拡大する予定である。*名前deメールサービス:U-netSURFで提供している、独自ドメイン名で電子メールを利用することができるサービス(旧マイドメイン・メールサービス)。

UN

メールウイルス・フィルタリング・サービス日本ユニシス情報システム株式会社インフォメーションサービス事業部

インターネットシステム部企画開発グループ 伊草孝裕

IT最前線ネットワーク・ソリューション(9)

急増する「メール悪用ウイルス」

メール悪用ウイルスへの対策

UISが提供するメールウイルス・フィルタリング・サービス

電子メール受信時の動き(インバウンド)

電子メール送信時の動き(アウトバウンド)

差出人�

送付先�

外部からウイルス付き�のメールを送信�

添付ファイル�付きメール�

添付ファイル�付きメール�

添付ファイル�付きメール�

通知文のメール�

U-net SURFメールウイルス�フィルタリング・システム�

U-net SURFメールウイルス�フィルタリング・システム�

ウイルスフィル�タリングゲート�ウェイサーバ�

ウイルスフィル�タリングゲート�ウェイサーバ�

ウイルス�監視�

名前de�メールサーバ�

名前de�メールサーバ�

本文+通知文�のメール�

検知情報をメール�にて通知�

検知情報をメール�にて通知�

お客様(受信者)

お客様管理者�

検知情報をWeb�から照会�

検知情報をWeb�から照会�

U-net SURF�メニューシステム�

U-net SURF�メニューシステム�

感染している�ファイル発見�時には削除�

感染している�メールを発見�時には削除�

インターネット�

インターネット�

外部へウイルス付きのメール�が送信されることをブロック�

通知文のメール�

お客様(差出人)

お客様管理者�

電子メール送受信時の動き

Page 15: 日本の潮流 2001 -4つの視点 - Unisys · 21世紀を迎え、日本は共創の流れの中でいかに自 らのポジションを定め、戦略を描くかを強く求めら

15

イーエムシー ジャパン(株)、プライス

ウォーターハウスクーパース コンサル

タント(株)、マイクロソフト(株)、およ

び日本ユニシスの4社は、「Windows

2000 Datacenter Server 日本語版」

をベースとしたシステム環境のミッショ

ンクリティカル分野への最適化に向けて

技術協力することで合意した。

昨今のデータセンター・ソリューショ

ンには、オンライン稼働時間の最大化

(24時間×365日連続稼働)、ノンス

トップ(無停止)でのデータバックアッ

プ、本番システム継続中のアプリケー

ション・テスト、ピーク時処理のための

動的CPUリソース割り当てといった機

能が要求されている。これらの要求を、

Windows 2000 Datacenter Server

をベースとしたシステム環境で実現して

いくため、4社でデータセンター・ソリュー

ションの高可用性の検証を行うプロジェ

クト『MOCHA(モカ)』を発足させた。

MOCHAプロジェクトは、マイクロソ

フトの大規模ミッションクリティカル・

システム向けOS「Windows 2000

Datacenter Server」と、データベース

「SQL Server 2000 Enterprise

Edition日本語版」の発売開始を受け、同

OSをサポートする世界最大のスケーラ

ビリティ(32CPU、64GBメモリ)を持

つ日本ユニシスの「Unisys e-@ction

Enterprise Server ES7000」、およ

びイーエムシー ジャパンの高可用性

ディスク「Symmetrix 8430」との組み

合わせで検証作業を行う。その検証作業

は、プライスウォーターハウスクーパー

ス コンサルタント内で実施し、プロ

ジェクトに携わる人員は、4社合わせて

15名体制となる。

まずは、高機能バックアップ・ソフト

ウェアとしてイーエムシー ジャパンの

「TimeFinder」を、検証用アプリケー

ションとしてSAPジャパン(株)の「SAP

R/3」および「mySAP.com BW」を採

用し、検証作業を行う。その成果は、

2001年3月末までに検証結果レポート

として作成し、各社の営業活動に活かし

ていく。

今回の検証作業の概要は次のとおり。

(1)検証項目

可用性を高める(計画停止時間の短縮)

ためのソリューションとして挙げられる

システム稼働中のバックアップ、検証、

テストなどを行う。

*TimeFinderとSQL Server 2000

Enterprise Editionの統合によるノ

ン・インパクト・バックアップおよびポ

イント・イン・タイム・リカバリ

*TimeFinderとSQL Server 2000

Enterprise EditionのSAN(ストレー

ジ・エリアネットワーク)とデータベー

ス統合機能:第三のミラーボリューム

(BCV: Business Continuance

Volumes)の設定、同期化、スプリッ

ト、再同期化、制御の一連の手順など

*Windows 2000 Datacenter

Server上でのSAP R/3、mySAP.

com BWのマルチインスタンス構築

*ES7000上で稼働するSAP R/3、

mySAP.comのマルチインスタンス・

アプリケーションについて、大規模構

成システム運用およびデータセンター

での運用に着目したシステム運用性を

評価

(2)システム環境

*OS:Windows 2000 Datacenter

Server

*データベース:SQL Server 2000

Enterprise Edition

*サーバ:ES7000

*ストレージ:Symmetrix 8430

*アプリケーション:EMC TimeFinder、

SAP R/3、mySAP.com BW

4社は、このプロジェクトで培ったノ

ウハウを、「SAP R/3」システム分野を

はじめ、急激な処理能力増大への対応が

必要なEビジネス分野、サーバ・コンソ

リデーション分野、その他基幹業務ビジ

ネス分野へフィードバックしていく。

Windows— 2000 Datacenter Server環境のミッションクリティカル・システムへの最適化に向けて4社が技術協力高可用性システムの検証プロジェクト『MOCHA(モカ)』を発足

日本ユニシスとジャストシステムがeCRM分野で提携「Kana Response」と「ConceptBase」の連携ソリューションを提供開始

日本ユニシスと(株)ジャストシステム

は、大量Eメールのより効率的な処理で

企業の販売やマーケティングを支援する

ため、「Kana Response(カナ レスポ

ンス)」と「ConceptBase(コンセプト

ベース)」を連携し、日本ユニシスによる

SIサービスとして提供を開始した。

Eビジネスの浸透に伴って、企業のビ

ジネス・インフラとしてのネットワーク

がますます重要になりつつある今日、顧

客から寄せられる数多くのEメールを効

率よく処理し、その情報を効果的な販売

やマーケティングに結びつけることは、

すべての企業の共通課題となっている。

このような状況下、日本ユニシスでは、

電話、Eメール、Webなどのマルチ・

チャネルをサポートできるコールセン

ター構築のために、昨年11月、「Cyber

Contact Center」の名称のもとeCRM

モデルを構築し、以来、これに基づくソ

リューション製品群、インテグレーショ

ン・サービス、サポート・サービスを提供

してきた。特に、大量のEメールやWeb

フォームによる問い合わせを管理し、イ

ンターネット顧客とのやりとりを支援す

るためのシステムとして、米国Kana

Communications Inc.のEメール自動

処理システム「Kana Response」を

eCRMソリューションの一つに位置付

け、昨年3月より販売を開始、同ソフト

ウェアは現在、国内でも20社以上で稼

働実績がある。

ジャストシステムの「ConceptBase」

は、思いついたままの言葉や文章を入力

するだけで、文章の内容を解釈し、類似

する情報をすばやく探し出すナレッジマ

イニング・システム。各社、各部署の特

性にあった柔軟なナレッジマネジメン

ト・ツールとして、1997年12月の発売

開始以来、高い評価を得ており、先進企

業600社、20万クライアントに導入さ

れている。これらの「ConceptBase」を

導入している企業ユーザから、ナレッジ

マネジメントをベースとしたeCRMソ

リューション実現に対する強い要望を受

け、「ConceptBase Clustering」を初

めとしたeCRM製品ラインナップを積極

的に展開している。

その両社がこのたび、Eメール文書の

解析能力をさらに高め、Eメールでのや

りとりをナレッジベース(KB)として蓄

積し、日々のEメール処理作業にそのナ

レッジをフィードバックした活用を可能

と す る こ と を 目 指 し て 、 K a n a

ResponseとConceptBaseを連携さ

せることで合意したもの。

両ソフトウェアの連携による相乗効果

で、以下の新機能の提供が可能となる。

◇Kana ResponseのEメール・ルーティン

グ・アルゴリズムに「ConceptBase

Classifier」の日本語解析機能を組み

合わせたEメール分類機能の最適化

Kana Responseでは、従来、単語

(主に体言)ごとのキーワードを元に、E

メールの内容を分析し、カテゴリ分けを

行ってきたが、C o n c e p t B a s e

Classifierの日本語解析機能を組み合わ

せることによって、メール内容の分析力

を深め、Eメール処理・分類作業の一層

の省力化・自動化が実現できる。

◇Kana ResponseとConceptBase

Searchの連携による、受信Eメール

への回答文作成支援

ナレッジベースとの連携により、

FAQなどから探し出した結果を回答文

へ適用できる。これにより短時間での均

質な回答サポートを実現する。

Kana ResponseとConceptBase

の連携に伴い、ブリッジ部分の開発と

セールス、およびユーザでのインテグ

レーションは日本ユニシスが担当し、

ジャストシステムは、日本ユニシスに対

してConceptBaseのコンサルテーショ

ンを含めた技術協力を行う。

インターネット・サービス「U-net

SURF」を展開している日本ユニシス情

報システムは、ADSL(Asymmetric

Digital Subscriber Line)接続サービス

「eADSLパック」の提供を開始するとと

もに、「フレッツ・ISDN」サービス提供

地域の拡大など、会員向けサービスを充

実させた。

新サービスの「eADSLパック」は、

ADSL接続と時間無制限コースをセット

にした定額制サービスで、64Kbpsの

ISDNの通信方式に比べ、格段に通信速

度が速い、最大1.5MbpsのADSL通信

方式を採用しており、ストリーミング・

ビデオなどの情報も快適に入手できる。

また、ADSL接続のIDを使い、一般電

話回線からダイヤルアップ・アクセスポ

イントにも接続でき、モバイルなど移動

先でのインターネット利用が可能。個人

向けと法人向けサービスがある。今回の

ADSL接続サービスは、イー・アクセス

(株)と業務提携し開始するもの。

また、昨年8月よりU-netSURF会員

向けに開始した「フレッツ・ISDN」サー

ビスの提供地域を、3月中旬より全国47都

道府県に拡大するとともに、法人向けの

ダイヤルアップ接続定額料金制コース

「DolphieSURF(法人)」を新設した。

U -ne tSURFでは、「フレッツ・

ADSL」についてもサポートを計画中で、

引き続き会員サービスの向上を予定して

いる。

サービスの詳細は、

http://www.netsurf.ad.jp/

ユニシス・ニュース

2001年3月1日第479号

 ユニシス・ニュースに関する ご意見・ご感想をお寄せください。 また、送付先の変更などのご連絡 お問い合わせにもご利用ください。 Eメール [email protected]

日本ユニシス情報システムU-netSURF 各種サービスを拡充

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16

全日空商事の直販部では、ANA機内の座席に置かれている通販誌「ANASKY SHOP」と 、 通 販 カ タ ロ グ「GOODS FOREST」をメイン媒体として通販事業を展開している。競争が激しい通販業界で優位性を確保するには、魅力的な商品の提供はもとより、迅速な配送、遅延・欠品のない在庫管理、返品・交換・問い合わせ対応など、さまざまな要求に速やかに応えていかなければならない。そのためには、情報が一元的に管理され、注文の処理状態がリアルタイムに記録されている必要がある。「通販業務の旧基幹系システムは、

物流(配送)系をメインフレーム、受注系をPCサーバと2系列で運用していたため、情報の一元管理ができず、現実のビジネス遂行に即さなくなるなど、種々の不都合が生じていた。そこで2000年問題対応を機に、受注~出荷~顧客管理~精算まで、一気通貫に効率良く処理できるシステムの実現を目指し、基幹系システムを再構築した」(直販部 通信販売課 森戸正剛氏)。

通販誌「ANA SKY SHOP」と通販カタログ「GOODS FOREST」

基幹系システムの再構築に当たっては、ユニシスの通販業務ソリューション「IMPACT-DM/FFⅡ」の導入を決めた。選定理由として森戸氏は、次の点を挙げている。*受注~出荷~顧客管理~精算まで、一元的に管理できる通販向けのフルフィルメント・システムである*最新のオープンシステム技術を採用し、業務量に応じて、大規模システムへ容易に移行できる*顧客からの問い合わせに柔軟かつ迅速に対応でき、また、クレーム履歴と回答管理機能も提供される

ムを構築した」(森戸氏)。その分析ツールとして、ユニシスの顧客情報管理・分析ソリューション「IMPACT-DM/MA」(UNIXサーバ「U250」を使用)を採用、昨年12月から活用が開始された。この新システムでは、基幹系に蓄積される顧客属性や購買履歴などを情報系サーバに取り込み、以下の分析を行っている。*顧客構成分析=現在の顧客リストの構成から、現実的な顧客層を割り出す*顧客購入力分析=受注実績の推移から、現在の顧客リストが保持している購買力を計算*顧客維持力分析=獲得した顧客の減少速度を分析して、既存顧客の維持、および新規顧客獲得のための企画立案*購入パターン分析=顧客の購入パターンを商品と媒体ごとに明確化し、効果的な顧客ターゲットのセグメントや新商品・新媒体の収益性を予測

ら分析し、顧客の購入傾向などを把握する必要があるということで、情報系(総合顧客分析)システ

この基幹系/情報系システムは、下図のような全体構成となっており、UISがサーバ機器を預かって運用管理する「U-netサーバプール・サービス」を全面的に活用するとともに、受注業務、物流業務は外部専門会社にアウトソーシングすることで、自社の運用管理・保守の負荷を軽減するアライアンスを実現している。

発行日本ユニシス株式会社広報部広報室 〒135-8560 東京都江東区豊洲1-1-1 (03)5546-4111 発行人山下宗久 編集人武井 浩 制作ピー・アールセブン 発行日 2001年3月1日 ISSN 0915-051X

2001年3月1日 第479号*社外からの寄稿や発言内容は、必ずしも弊社の見解を表明しているわけではありません。*本紙記載の社名、製品名、およびシステム名は各社の登録商標または商標です。*掲載記事の無断転載を禁じます。

全日空商事全日空商事では、通信販売事業の基幹系システムをユニシスの通販業務ソ

リューション「IMPACT-DM/FFⅡ」を用いて刷新し、さらに、顧客情報管理・

分析ソリューション「IMPACT-DM/MA」で、情報系(総合顧客分析)システムを

構築し活用を開始した。現在、豊富な販売メニューで、顧客ニーズを満たす

とともに、顧客情報を多岐にわたって分析することで、効果的・戦略的な販

売促進が可能となり、顧客サービス・レベルを向上させ、売上増大に繋げて

いる。また、基幹系/分析系システムを日本ユニシス情報システム(UIS)へ、

受注業務、物流業務は外部専門会社にアウトソーシングし、運用・保守管理

の負荷軽減を図っている。

◆ANAグループの中核をなすエアライン系商社で、空港売店・軽食/喫茶・ホテル内売店などの店舗営業事業、通信販売・機内用品販売などの直販事業、航空機の輸出入・リースなどの機械事業、航空機部品の調達などの航空機部品事業、紙パルプ事業などを展開している。

■全日空商事株式会社 http://www.anatc.com/http://www.astyle-shop.co.jp/

◆所在地=東京都港区港南2-15-2品川インターシティB棟

◆代表者=太田三夫社長◆売上高=1,549億円(2000年3月)◆従業員数=663人(同)◆使用機種=UNIXサーバ「US450」、同「US250」

CRM強化に向けて通販事業の基幹系/情報系(総合顧客分析)システムを

ユニシス・ソリューションで刷新

流通ソリューション

顧客分析については、従来外部の情報処理会社に委託して分析された結果をもとにDM発送などに利用していた。しかし、「今後の通販事業は、顧客一人ひとりのニーズを捉え、個々に最適な商品やサービスを提供し、お客様との関係を強化するCRM展開が重要戦略となる。そのためには、マーケ

新システムは、「IMPACT-DM/FFⅡ」(UNIXサーバ「U450」を使用)の採用で、フルフィルメント・システムの早期立ち上げを実現、2000年1月から稼働させている。主な機能・特徴は次のとおり。*受注支援システム

住所マスタによる新規顧客入力作業の効率化、電話番号・氏名によるリピート顧客検索、入荷予定も含めたリアルタイム在庫引当てなど。*物流支援システム

欠品に伴う分割配送の抑止、商品・在庫情報の一元管理、ピッキングヤードとバックヤードの正確な在庫管理、人員・出荷量に合わせた出荷指示による迅速な出荷作業、在庫状況のリアルタイム検索、返品処理の効率化など。*顧客管理支援システム

顧客からの問い合わせ/クレームに対する即時回答、即回答できなかったものは未回答管理による回答漏れの防止、これらの情報を関連部署へリアルタイムに提供など。*買掛管理支援システム

商品仕入に伴う買掛管理および支払い管理の効率化など。このほかに、頒布会支援システム、直販支援システム、人事/経理インタフェースなども新たに付加している。

受注~出荷~精算まで一元管理する基幹系システムに再構築

UISアウトソーシングセンター�

CD�ROM

CD�ROMDAT DAT

外部ディスク�

情報系サーバ(UNIX)�IMPACT-DM/FFⅡ�

情報系サーバ(UNIX)�IMPACT-DM/MA

通信サーバ(PC)�外部インタフェース�

ルータ�

ルータ�

ルータ�

ルータ�

ルータ� ルータ�

ルータ� ルータ� ルータ�

DA128

DA128

受注センター�-受注業務委託先-�

受注系端末�

プリンタ�

OCR

簡易処理サーバ�…� …�

…�

クレジット�承認�

クレジット処理�サーバ�

DDX-P

売上データ�

INS-C

物流センター�-配送業務委託先-�

全日空商事本社(品川)

物流系端末�

レーザプリンタ�お買上げ明細�

ラインプリンタ�宅配伝票�

ラインプリンタ�宅配伝票�

基幹系/情報系端末�

プリンタ�

プリンタ�

ANATC�経理システム�

ANA海外ギフト�

自動�FAX

仕入先�仕入先�

仕入先�

INS-C

関連会社�

航空食品(大森)

ソフトエクセル(早稲田)�-プログラム保守-�

インターネット�

ルータ�

配送先�

Web�DNS

ティングの企画立案に携わる我々自身の手で、顧客情報をさまざまな角度か

運用・保守はUISのサーバプール・サービスを全面的に活用

通販業務ソリューション「IMPACT-DM/FFⅡ」で、システム刷新を決める

フルフィルメント・システムの早期立ち上げを実現

顧客情報管理・分析ソリューション「IMPACT-DM/MA」で新情報系システムを構築

UN

新システム全体構成図

森戸正剛氏