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III. 流動層の反応工学的挙動 III-a. 応* 夫** 固定層接触反応装置の設計については,最 近 で はか な り信 頼 のお け る程 度 まで そ の方 法 が確 立 して きた とい う こ とが で き るが,流 動層接触反応についてはまだ信頼の お け る設 計 方 法 が 確立 され て い な い のが 現 状 で あ る。 固定 層 内 の現 象 が ま った く定常 的 な現 象 と して取 り扱 い得 るのに 対 し,流 動層内の現象が本質的に時間的に変 動 の あ る現 象 で あ り,し か もそ の 変動 の 時 定数 が通 常 わ れ わ れ の 問 題 とす る化 学 反 応 の時 定 数 とほ ぼ 同程 度 の領 域 に あ る こ とが,流 動層内の現象を完全に把握すること を 困難 に す る大 きな 原因 とな って い る と思 われ る。 最近の流動層の研究は,流 動 層 内 の現 象 の解 明 に多 く の努 力が 費 や され て い る。 と くに流 動 層 内 の特 異 な現 象 として気泡の発生があ り,こ れ が流動層に時間的 に変動 のあ る不 均一 性 を もた ら し現象 を複 雑 に す る こ とか ら, 一 方 で は 気 泡 とそれ に 伴 う物理 的 な諸 現 象 の解 明 ,他 では この 不均 一 性 を考 慮 した層 内化 学 反 応 の模 型 化 に よ る反 応 現 象 の 究 明 とが と くに 多 くの研 究 者 の関 心 を集 め て い る。 以 下,接 触 反 応 の 立場 か ら最 近 の 研究 を述 べ, 今 後 の問 題 点 にふ れ た い と思 う. 図1 空 間 率 分 布(粒 子 径175~210μ, u0=59.6cm/sec) 1. 流動機構と気固接触 1. 流動化状態の不均一性 固体 粒 子 を充 填 した 円 筒 容器 に下 方 か ら ガ スを 送 入 す る と,あ る流 速 まで は 粒 子層 は静 止 し てい るが,こ れを 越 え る と粒 子 は 運 動 を 始 め,流 速の上昇 とともに層は膨 張する。 このときの粒子は集塊 として振動を伴いながら あ る方 向 に流 動 して お り,層 内 には 粒 子 を ほ とん ど含 ま な い ガ ス の塊,い わ ゆ る気 泡 が蛇 行 しな が ら上 昇 す るの が認 め られ る。 Bakker3)は 流動層内の各点で時間平均空間率を測定 し,図1に 示す空間率分布を得た。この結果から,彼 は 層 内 で の ガスお よび 固 体粒 子 の流 れ は 図2の よ うになっ て い る と推 定 して い る。Iは 層 高 と と もに 空 間率 の 減少 す る領域,IIは 空 間 率 が ほぼ 一 定 の 領 域,IIIは 空間率の 増 大す る領 域 で あ る。Bakkerは このnowpatternは 容 器 の壁 の影 響 を うけ て い るの で 容 器 の 大 き さが 変 われ ば か な り変 わ るだ ろ う と述 べ て い るが,Bhat6)ら は管 径 と粒 子 径 の比DT/dp>100な ら流 動状 態 に対 す る器 壁 の影 響 は 無 視 で き る こ とを 示 して い る。 気固系流動層では粒子は均一な分散状態で流動(par- ticulate fluidizatioa)せ ず,い わゆる不均 aggregative fluidization)の 状態にな りや rrison, Davidsoa, de Kock18)は,気 し得 る最 大 径D,と 粒 子 径4pの 比De/dpは 粒子 径,固 図2 流動層内粒子,流 体流線 *昭 和40年7月1臼 受理 **Haruo Kobayaghi北 海 遭 大 学 工学 部 合成化学工学科 934 (90)

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III.  流 動 層 の 反 応 工 学 的 挙 動

III-a.  触 媒 反 応*

小 林 晴 夫**

固定層接触反応装置の設計については,最 近 ではか な

り信頼のおけ る程 度までその方 法が確立 して きた とい う

ことができるが,流 動層接触反応についてはまだ信頼 の

おけ る設計方法が確立 されていないのが現状である。

固定層 内の現象がまった く定常 的な現象 として取 り扱

い得 るのに対 し,流 動層内の現象が本質的に時間的に変

動 のある現象であ り,し か もその変動の時定数 が通常わ

れわれの問題 とす る化学反応の時定数 とほぼ同程度 の領

域 にあることが,流 動層内の現 象を完全に把握す ること

を困難にす る大 きな原因 とな っていると思われ る。

最近の流動層の研究は,流 動 層内の現象の解 明に多 く

の努 力が費やされ ている。 とくに流動層内の特異 な現象

として気泡の発生があ り,こ れ が流動層に時間的 に変動

のあ る不均一性 を もた らし現象 を複雑にする ことか ら,

一方では気泡 とそれに伴 う物理的 な諸現象の解 明,他 方

では この不均一性 を考慮 した層 内化学反応の模型化に よ

る反応現象の究明 とが とくに多 くの研究者の関心 を集め

ている。以下,接 触反応の立場か ら最近の研究 を述べ,

今後 の問題点にふれたい と思 う.

図1  空間率分布(粒 子径175~210μ,

u0=59.6cm/sec)

1.  流動機構と気固接 触

1.  流動 化状態の不均一性

固体粒 子を充填 した円筒容器 に下方 からガスを送入す

ると,あ る流速 までは粒子層 は静止 してい るが,こ れを

越え ると粒子は運動を始め,流 速の上昇 とともに層は膨

張する。 このときの粒子は集塊 として振動を伴いなが ら

あ る方 向に流動 してお り,層 内には粒子をほ とん ど含ま

ないガスの塊,い わゆ る気泡 が蛇行 しなが ら上昇す るの

が認 められ る。

Bakker3)は 流動層内の各点 で時間平均空間率を測定

し,図1に 示す空間率分布を得た。 この結果か ら,彼 は

層内での ガスお よび固体粒子 の流れは図2の よ うになっ

ている と推定 してい る。Iは 層高 とともに空間率 の減少

す る領域,IIは 空間率がほぼ一定の領域,IIIは 空間率の

増 大す る領域である。Bakkerは このnowpatternは

容 器の壁 の影響を うけ ているので容器の大 きさが変われ

ばかな り変わ るだろ うと述べてい るが,Bhat6)ら は管

径 と粒子径の比DT/dp>100な ら流動状態 に対す る器

壁 の影響は無視できる ことを示 してい る。

気固系流動層では粒子は均一な分散状態 で流動(par-

ticulate fluidizatioa)せ ず,い わ ゆ る 不 均 一 流 動

aggregative fluidization)の 状態にな りやすい。Ha-

rrison, Davidsoa, de Kock18)は,気 泡の安定 に存在

し得 る最大径D,と 粒子径4pの 比De/dpは 粒子径,固

図2  流動層内粒子,流 体流線

*昭 和40年7月1臼 受理

**Haruo  Kobayaghi北 海遭大学工学部 合成化学工学科

934 (90) 化 学 工 学

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体 および流体の密 度,流 体 の粘度に依存し,De/dp>10

の ときはaggregative, De/dp≦1の ときはparticulate

fluidizationに なると述べてい る。Wilhelm , Kwauk63)

は,粒 子 フルー ド数Fr=u02/g・dpが 流動化状態の 目安

にな り,Fr<1な ら均一,Fr>1の 場合は不均一になる

ことを述べたが,Romero, Johanson47)はFr数 の他に

粒子基準Re数,密 度比(ρs-ρ)/ρ お よびdp/DTま た

はLmf/DTな どの無次元数 に よ って も支配され る と述

べ てい る。不均一性 の問題は,気 泡界面の安定性の問題

として解析 的にも取扱われてい る23, 64)。

van Deemter61)は 不均一型流動の本質は粒子集団の

形成 と崩壊 にある として,そ の機構を次のよ うに説明 し

ている。すなわち粒子の大 きな集 団が ガスをその中に包

んで層 内を降下 しなが ら崩壊 して ガスを放出す る。 また

個々の粒子あ るいはその小さな集団は,ガ ス流れに よっ

て層内を持 ち上げ られなが ら互 いに集合 して 大 き く な

る。 この現 象の繰 り返 しが ガスの流路を乱し逆混合の現

象を起 こす。 また層 内 の 粒 子 濃 度の高 い部分(dense

phase)と 粒子濃度の低い部分(dilute or bubble phase)

との間に ガスと粒子の交換が起 こる。 ガス流速 が早い と

粒子集団の崩壊が起 こりやす く,大 きな集団は できに く

い。層の中心 部は流 速が早 いが器壁付近 は遅いので大 き

な集団がで きやす く,そ の結果 として粒子集団 とこれに

随伴す るガスの下 向きの流れがお きやす い。 この流動機

構は図2に 示 したfiow patternを よく説明 している。

流動層 内の粒子密度は この ように不均一であ り,し か

もその状態は時間的に変動す る。流動層の不均一性 の時

間的変動は種々の方法43)に よって測定 され,不 均一度の

表示方法 も数 多 く提案 され てい る13, 32, 40, 54, 55)。

流動層の流動化状態は多 くの因子によって影響を受け

る。一般に ガス流速を増す と流動の不均一度は高 くなる

ことが認め られ ている。 これ は気泡 の形で吹 き抜 けるガ

スの割合が多 くなる ことによるもので,そ の結果 ガスと

粒子の接触 は悪 くな り,層 内でのガス流が完全混合であ

ると仮定 した場合 よ り反応率が低 くな ることが しば しば

認められ る33,35)。

粒子径 の 影 響 も大 きい。Squires56)は これに着 目し

て,粗 粒流 動層(teeter bed)と 細粒流動層(fluid bed)

に分けて取 り扱 うべ き ことを提唱 してい る。固体 の反応

を 目的 とす る場合は前者が,ガ スの反 応を 目的 とす る接

触反応では後者が多 く利用 されてい る。流動状態の点で

は前者が一般 に良好 であ るに もかかわ らず,接 触反応 に

後者が多 く用 いられ るのは,触 媒 の摩耗に よる粒径分布

の変化が少ないか らであ る.細 粒流動層では最適な粒径

分布があ り4, 66, 69),触 媒粒子径の調整が必要である。 な

お,粒 子形状 も流動状態,摩 耗 の点か ら球形である こと

が好 ま しく,近 年噴 霧乾燥に よるMS (Micro Spheri-

cal)触 媒 が多 く用 い られ ている5)。

流動層支持板 の構造は,流 動状態ひいては反応率に著

しく影響す る13, 44, 48)。多孔質板が最 も良い成績を示 し,

多孔板,金 鋼の順に流動状態が悪 くなることが認 め られ

てお り17, 48)また,白 井は多孔板を用い,孔 数があ る程度

以上多い場合には,支 持板の 圧 降 下 か流動層圧降下の

1/3~2/3の 場合,流 動化状態が最 も良好 にな る ことを

みいだ している53)。工業 装置では1/16~1/4の 値が用い

られているよ うである22)。

粒子 と流体の密度差が大 きいほ ど流動化状態は不均一

にな りやすいが47),そ の意味で,高 圧で操作す ることは

流動 の均一化に効果があ る7,18, 32)。層高の増大は流動状

態 を悪化 させる55)ので,通 常L3/Dr=1~3の 範囲が用

いられ る。

気固系流動層,と くに細粒流動層が上述の よ うに不均

一な流動状態にな るのは,気 泡が生 じやすい ことに よる

ものである。一般に気泡は層内を上昇す るとともに成長

し4,19, 67),ま た気泡径の1/2乗 に比例 して上昇速度が早

くなる18, 25, 60)ことが認め られ てい る.気 泡の成長は気泡

の垂直方向での合 一に よることが最近 だいたい確認 され

てい る19, 21)。気泡の存在は ガス粒子間 の接触を悪 くし,ひ

いては反応 の効率を低下 させる原 因 とな るので,気 泡 の

成長を防止 し,気 固接触の低下 を防 ぐ目的で種 々の挿入

物 を層 内に設けることが試みられ てい る20, 33, 45, 47, 57, 62)。

2.  流動層内の流体混合

流動層内に気泡が発生 しない場合には,層 内で の固体

粒子 の混合はほ とん ど起 こらない ことが見 い出 されてい

る58)。気固系流動層内で固体粒子の混合が起 こるのは気

泡の撹拝効 果に よるものであ る。層内濃厚相での流体 の

流れは空塔基準のRe数 が乱流域に入らない程度 の流速

であれば一般に層流 であ るが,気 泡に よる固体粒子群 の

撹拌効果のために その流体の流線は常に撹乱を受け,結

果的に逆混合 を起 こす ことになる49)。上昇す る気泡は常

にその周囲に気泡を中心 としてガスが循環 してい る領域

を伴 ってお り,こ の ガス量は平均流速 より早い流速で層

内を上昇す る。 これが吹き抜け と呼ばれ る現象であ る。

流動層内の流体の流れはこの濃厚相内の逆混合 と,気 泡

を中心 とす る吹 き抜け の現象に よって特徴づけ られてい

る。

気固系流動接 触反応の反応効率を支配す るのは この流

体 の混合であるとの考えの下 に,こ の流体 の混合現象 の

研究が精 力的に行 な われ た2, 8, 12, 14, 37, 41, 45)。流動層中に

気泡の存在す ることは もちろん認めていたが,工 学的手

法の常道 として,最 初に用い られた のは単純化 した均一

相 モデルであった。Gillilandら14)は 流動層内に設けた

吹込 口より上流にHeの 分布す ること,す なわち逆 混合

の起 こる ことを認め,拡 散 の基礎式を立てHeの 濃度分

布の実測値か ら軸方向乱流拡散係数を求めた。彼は さら

に,上 記定常法の他に残余濃度曲線 の測定 に よる非定常

第29巻  第11号  (1965) (91) 935

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法 も用いてい る。 矢木,宮 内65)は層内平均流速 と平均

乱流拡散係数 を用いて混合 を表わ し,軸 方向非定常拡散

の基礎式を解 いた.こ れ に基づ いてGillilandら の残余

濃度 曲線の測定値か ら算出 されたEzの 値は950~1900

cm2/secと な り,定 常法 の測定結果か ら求め られた650

~1100 cm2/secと ほぼ一致 した,矢 木,宮 内はさらに,

吹 き抜けの存在が残 余濃度 曲線の形 に及ぼす影響につい

て も検討 してい る。鞭41)は軸方向 に 加 えて さらに半径

方 向の混合拡散を考 慮した基礎式 を 立 て て,こ れを解

き,定 常法に よる実験か らそれ ぞれ の混合拡散係数Ez

お よびErを 求めてい る。Ezは 塔径 大なるほ ど大にな

る12, 14, 41)。

層内には半径方向にかな りの流速分布があ り,中 心部

では早 く,周 辺部 では遅い こと,お よび気泡 が存在す る

とい う事実を考慮 して,次 にさ らに複雑な二相モデルが

取 り上げ られた33, 36, 37, 61)。May37)は,気 泡中の ガスは

ピス トン流をな して上昇 し,濃 厚相中のガスは逆混合 を

伴 うもの とし,さ らに両相間には粒子 群の分散集合 のた

めに ガスの交換(cross flow)が 起こる とした。

cross flowに よって両相間 を移動す るガス量 と気泡 と

して吹き抜け るガス量 との比をcross flow radioと 名

づけたが,こ の比が大 きいことは層内での ガスと粒子の

接触が良好 であ ることを意味す る。cross flowが 無限大

であれば吹き抜けが まった くないこ と に な り,さ らに

cross flowが 無限大で,Ez=0な ら層全体 として押 出し

流れ,Ez=∞ なら完全混合 となる.

実測 したHeの 残余濃度曲線 の解析に当って,彼 は こ

の濃厚相中の逆混合 と両相間 の ガス交換を考慮 した基礎

式を用いたが,濃 厚相中の逆混合は放射性 トレーサ ー粒

子を用いた固体粒子の混合の実験か ら算出 した粒子の乱

流拡散係数Ezを 用いて流体 の拡散係数 とみな

し,こ の値 を用い て解析結果 と残余濃度曲線の

実測値の対比か らcross flowを 算出した。

van Deemter61)はMayと 同一 のモデルを

用いたが,濃 厚相中の ガスの拡散係数が固体粒

子の拡散係数に等しい としたMayの 仮定を用

い る代わ りに,二 相間の ガスの交換速度は両相

におけ る トレーサ ーガスの濃度 差に比例す ると

の仮定を導 入して定常法における層内濃度分布

に対す る基礎式 を立て,適 当な境界条件の下に

これを解 いた。濃厚相の混合拡 散係数お よび両

相間の ガス交換速度の値を適当に仮定 して濃度

分布を計算した例 を図3に 示す 。 これは前記の

Gillilandら の定 常 法 の実測結果を よく説明 し

てい る。

この よ うな流動層内の流体混合 の研究は,流

動 層反応装置 でとくに ガス側 の反応 を問題 とす

る場合に対 して貴重な知見を与 えるものであ る

が,次 のよ うな問題点があることを指摘 したい。

まず,装 置 出口で残余濃度 曲線 を測定す る方法は,流体

の各微小部分が どの装置内で どのよ うな履歴を有 してい

たかについては何 らの知見 も与 えない。 したが って,装

置内での反応 の解析に残余濃度 曲線か らの知見を利用で

きるのは一次反応 の場合に限 られる ことである9, 10, 30)。

したが って一次反応以外に この方法 を適用す るためには

装置内の流体 の混合のpatternに ついて より詳細 な知

見が必要 である。De Maria12)ら は この観 点から装置内

の各点におけ るpoint age distributionを 測定 してい

る。 一般の化学反応に適用す るための流体混 合の研究 と

しては今後さらに この立場か らの研究 の進展 が 望 ま れ

る。

次に問題 となるのは接触反応装置 として流 動層 を考 え

る場合に,こ れ までの層内流体混合の取扱 いは,接 触反

応 に特有な吸着の現象 を考慮に入れていない点である。

粒子群 の流動化は流体 の混合拡散を促進す る原因 として

は考えられてい るが,結 果的には混合拡散を起 こした流

体の反応 があたか も均一相反応 であ るかの よ うに モデル

化 して取扱われ てい るわけ で あ る。 白崎 ら54)はこの点

に着 目し,通 常 の滞留時間分布関数 の代わ りに,実 際に

触媒に吸着 して存在 してい る吸着時 間分布関数 を用い る

ことを提唱 し,Arの ご とき非吸着性 ガス と,プ ロパン,

エチ レンな どの吸着性 ガスとを用 いてそれ ぞれの滞留時

間分布関数を求 めてい る。パルス法 によ って測定 した非

吸着性お よび吸着性 ガスの滞留時間分布 曲線が 明らかに

異 なることは図4に 示 した とお りである,こ のよ うに し

て求めた吸着時間分布関数に よって クメンの接触分解反

応率 を良 く説明す ることがで きた。

宮 内39)もまた こ の 点に着 目し次の よ うな混合機構を

(a)  トレーサーガスを気泡相に入れた場合

(b)  トレーサ ーガスを濃厚相に入れ

た場 合

図3  ト レ ー サ ー 濃 度 分 布 曲 線(定 常法)

図4  非吸着性 ガス(A)と 吸着性 ガス(C3H6)と の応答 曲線

936 (92) 化 学 工 学

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提唱 してい る。流体中での着 目成分は流体中のみ でなく

粒子に も配分(物 質な ら吸着に よって)さ れ るので,粒

子群 の移動 とか混合拡散 によってその成 分は粒子 ととも

に層 内を搬送され つつ周 囲流体 との間で放 出再配分を繰

返す(こ の効果を容量効果 と呼ぶ)。 したが って流体 と

ともに層内を通過 す る 着 目成 分の混合拡散 とか,濃 厚

相-気泡相 間の交換混合の速 さは,流 体 自身が受ける拡

散,混 合 のほかに粒子群の運動 に伴 う容量効果による分

が加算された もの となる。 この容量効果は,分 配平衡に

達す る速度 平衡分配比≡(粒子1cc当 りの分配量)/(流

体1cc当 りの分配量)≡mに よって異な って くる。着 目

成分は熱 として も同様 に取 り扱 うことができる として,

粒子容量効果 の立場か ら流動層を分類 しきわめて一般的

な基礎式を導 いている。少 なくとも触媒反応においては

m>1な るこ とは常識的に十分考え られ るので,従 来,

直接には考慮に入れ られていなか った固体粒子の運動の

寄与 について十分の考慮をは ら う必要があ る こ とに な

る。今後大いに検討の余地 のある問題 といえよ う。

2.  流動層接触反 応

1.  流動 層の反応モデル

これ まで述べて きた よ うに,流 動層の流動機構は複雑

であ り,流 動状態に よって接触反応装置 としての成績 も

大幅に影響を受 ける。上記の よ うな流動機構に関す る多

くの研究 と平行 して,直 接流動層に よる接触反応を行な

い,こ の結果か ら流動層反応装置の反応成績を表現 しう

る流動層反応模型 とその数学 的表式 を確立 しよ うとす る

多 くの試みが行なわれ て きた。

層内の流体混合の研 究 と平行 して発展 して きた た め

に,初 期においては層 内の流体の逆混合を平均混合拡散

係数のみ によって説明す るいわゆる均一相 モデルが用い

られたが,こ の反応 モデル では,流 動層の反応成績が,層

内の流体が完全混合すなわち混合拡散係数が無限大 とし

た ときよ りも低 くな る実験事実を説明 し得 ないので,現

在 のところ気泡に よる吹き抜けを考慮 した,い わゆ る2

相モデルが代表的な ものとい うことができよ う。

すなわ ち,流 動層は濃厚相 と気泡相 とか らな り,層 内

を流れ る全 ガス量Fの うち νFな る量 が全 断面積 の う

ち平均 として δを占め る気泡相を通 って流れ,両 相間に

は単位時間,単 位層体積当 りKな る量の ガス が 交 換 す

る。 また全触媒量Wの うちaWな る量が気泡相で反応

に よ り,(1-a)Wは 濃厚相で反応に よるとす る。2相

モデルを取 り扱 った これ までの研究はすべて基本的に こ

のモデルに含 まれ るが,α, δ, νな どの値を どの よ うに と

るか,ま た濃厚相中の流体の流れ を どの よ うに考えるか

な どの点で各研究者はそれぞれ異 なった考え方 をしてい

る。気泡相内の流れはすべて押 出し流れ とみ な してい る

が,濃 厚相内の流れは,押 出し流れ(Ez=0) ,完 全混合

(Ez=∞),あ るいは不完全混合(0<Ez <∞)と して解

析 され てい る。a=0と する取 り扱いは,反 応がすべて濃

厚相のみで起 こるとす る立場であ り,a≠0と す るのは

気泡相 でも反応が起 こるとする立場であ り,こ の二つの

考 え方は2相 モデルを大 きく2分 している。表1に これ

まで行なわれ た研究を一括 して整理 して示 した。

各研究者 の用いたモデルは基本的には同一 で あ っ て

も,こ のモデルの数学的取 り扱いにおいて用いた仮定 は

さまざまであ って,こ れ らの結果のみ ではいずれの取 り

扱いが妥当 であ るか明らかでない。小林,荒 井26)はK,

α, δ, νのほかに濃厚相中の混合拡散係数お よび触媒 の反

応速度常数をすべ て可変数 として含む一般化2相 モデル

につ いて理論的な解析を行ない,そ れ らの可変因子が反

応収率に どのよ うに影響す るかについて定量的な検討を

行ない,そ れ ぞれの重要度が層高,流 速 な どの操作条件

に よって どのよ うに変化す るかを示 した。 さらに これ に

基づいて一般化モデルを単純化 し得 る基準を示 し,こ の

表1  流 動 層 接 触 反 応 の 研 究

第29巻  第11号  (1965) (93) 937

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結 果に基づいて従来の研究者の用いた仮定 の妥当性 を詳

細 に検討 した。鞭42)は ま た 一般化 された2相 モデル統

一2相 モデルについての基礎式 の完全解析解 を求め,従

来 の均一相 モデルを も含めたすべての2相 モデルの基礎

式 の解が これ よ り導かれ ることを示 している。

これ までの多 くの2相 モデルは,モ デル中に含まれる

2相 間 ガス交換速 度,混 合拡散 係数 な どの因子は全 層に

わたっての平均値 を用 いてい る。 しか しすでに流動機構

の項 で述べた よ うに,流 動層内は気泡 の成長があるため

に これ らの因子は層内で流れ方 向に分布を もつ もの と考

え られ る。た とえば2相 間 ガス交換係数は明 らかに層 の

高 さ方向に減少 してい る15, 27, 52)。小林,荒 井は流動層 の

高 さ方向での流動状態,気 泡の状態の変化を考慮す るこ

とによ り適切なモデル として層内をい くつかの区分に分

け,濃 厚相中の流体混合の影響 を槽列 モデルによって表

現す る2相 モデルと槽列モデルの組合わせか らなる数学

モデルを提出 した28)。これは とくに複合反応 を行な う場

合 の計算の容易さの点で特徴が ある。 間室,鞭34)は 気

泡 の成長を考慮 し,層 内各位置 におけ る気泡径 によって

規定 され るセルの積み重ね として流動層を理解 し,2相

図5 gas cloudの 生成 (uB>u0)

図6  気泡 を通 る流体 の粒子 接触割 合

モデル と槽 列モデルの組合わせか らなる"分 割 モデル"

を提出 し,統 一2相 モデル との関係を論 じた。

この よ うに,流 動層の反応模型 とその数学的表式化の

試みが多数行 なわれ てきたが,い ずれ もモデル中に含 ま

れ る因子の数 が多 く,し たが ってある操作条件下 での因

子の値を一義 的に決定す ることには多 くの困難が伴 う場

合が多いので,実 験的検討に当っては操作条件の選定 に

十分 な配慮が必要である26)。さらにこれ までの反 応モデ

ルの研究は,反 応の実験結果 をいかに説明す るかに重点

がおかれ てい るかに見 うけ られ るが,わ れわれの 目的 と

す るところは,あ る接 触反応 を流動層で行な う場合の装

置 ならびに操作条件の設計 の基礎を確立す る こ と で あ

り,そ の意味か らは,モ デル中の どの因子が最 も支配的

であ るかを見 きわめ,そ れ らの因子が装置 および操作条

件に よって どのよ うな値を もつかを知る ことが必要 であ

る。 これ らに関す る各研究者の結果はか な りまちまちで

あ り,ま だ統一的見解は まとまってきていない現状であ

る,そ の意味 で流動層接触反応のデー ターが今後 さらに

蓄積 される ことが望 ましい。

2.  流動 層反応モデルと流動機構の相関

濃厚相 と気泡相の間の ガス交換速度Kが 大 きいほ どガ

スと触媒の接触は良 くな り,反 応率は高 くな る。 この両

相間の ガス交換速度の決定 にあた っては,反 応速度既知

の1次 の化学反応を用い,流 動層 の反応率の実測値 と,

2相 モデルに基づ く反応率 の計算値 との対比か ら決定す

ることが 多い。 しか しこの方法に よると,2相 モデルに

含まれ る変数が多いために,反 応操作条件に よる各因子

の影響 の程度を十分 注意 しない と,他 の因子の影響がK

の値 にかぶ って きて誤 差が大 きくな りやすい。Kの 値は

反応 と無関係に,既 述 の流体混合の実験か ら求めること

ができる。小林 ら29)は ま っ た く同一な流動条件におけ

る接触反応 と流体混合 の実測を行ない,流 体混合の実測

結果か ら求めたKの 値 を用いて2相 モデルに よって反応

率 を計算 した結果は常 に実測値 よ り下回 り,そ の差 は触

媒 活性 の高いほ ど大 きいことか ら,そ の差を気泡 相間の

触媒粒子 の効果に よる もの とした。 この よ うに気泡 内に

含まれ る触媒粒子の反応に対す る寄与 を考 慮 したモデル

は表1に 示 した よ うに多数取 り扱われてい る。最近 の気

泡 の挙動に関す る多 く の 研究結果21, 25, 60)によれば物理

的測定に よる気泡内の粒子は極めてわずかであ り,反 応

に寄与 し得 る程度 でないが,気 泡に関 してfinger, wake,

gas-cloudな ど多 くの重要 な事実が明 らかにされつつあ

り10, 23, 50, 51, 68),2相 モデル中に含 まれ る気泡内触媒割合

は このよ うな気泡の機能 と密接な関係にあ ることが次第

に明らか とな って きた。Pyleら46)は この よ うな気泡周

囲の流体 の流れを考慮 して気泡中を流れ る流 体 と粒子 と

の接触割 合を求めて図6の よ うな結果を得ている。

2相 モデルの近似は不完全 なものであ るが,流 動層の

938 (94) 化 学 工 学

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気泡の挙動に関す る今後の知 見の集積に よ り,さ らに洗

練された信頼度の高 い ものに なることが期 待され る。そ

の上で2相 モデルに含 まれ る各因子 の値が多数の実測デ

ーターか ら操作条件の関数 として帰納的に決定 されて く

れば,流 動層接触反応装置の設計 の有用な指針 となるで

あろ う。

3.  触媒 活性と接触反応効率

流動層におけ る反応率 を固定層におけるそれ と対比 し

て,contact efficiency32), fluidization effectiveness

factor52), reactor efficiency33),表 面接触効率31)など

種々な表現でその効率 を表わ してい る。流動層 を接触反

応装置 として用 いた場合,触 媒の活性 が この接触反応効

率に顕著 に影響す ることはあ ま り注意 されていない よう

に思われ る。図7に 触媒活性(1次 反応速度定数)と接触

反応効率 との関係を図示 した55)。これに よると,流 動層

の接触反応 効率は触媒活性が高 くな るほ ど低下す る(流

動条件一定 の場合)。 したが ってあま り高活性の触媒 を

流動層 に使用す ることは得策でないといえ よ う。池田22)

は無水 フタール酸製造に際 し16),固 定層に用い られ る触

媒は活性 が高す ぎ,流 動層には低活性 の触媒が用い られ

てい る例のあ ることを指摘 し,彼 らの炭化水素のam-

moxidationの 反応において も固定 層と流動層では最適

活性が異な った と述 べている。

図7  触媒 活性 と接触反応効率の関係(Ls=67cm)

流動層は流動化のために流動 の制限を受けるのであ ま

り低活性 の触媒が用い られ ない ことは明 らか であ り,し

たが って流動層を適用す るに当 っては適当な触媒活性範

囲が存す ることになる。Andersen1)ら は触媒を連続的

に置換す る場合 の問題 として,流 動層中の触媒 活性の計

算法を示 している。

引 用 文 献

1) Andersen, S. L., R. H. Matthias: Ind . Eng. Chem., 46,1296 (1954)

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and particles", p.127 (London, Inst. Chem. Engrs.), 196320) Hebden, D.: Trans. Inst. Chem. Engrs, 39, 225 (1961)

21) 発, 吉田, 国井: 化学工学協会第3回 総合シンポジウム講演前刷

集, 39 (1964)

22) 池田: 化学工学, 27, 667 (1963)

23) Jackson, R.: Trans. Inst. Chem. Engrs ., 41, 13 (1963)24) Johnston, H. F., Bachelor , J. D., C. Y. Shen: A. I. Ch. E.

Journal, 1, 318 (1955)25) 小林, 千葉, 荒井: 化学工学協会第3回 総合シンポジウム講演前

刷集, 45 (1964)

26) 小林, 荒井: 化学工学協会第1回 総合シンポジウム講演前刷集,

175 (1962)

27) 小林, 荒井, 伊沢, 砂川, 宮: 化学工学協会第4回 反応工学 シン

ポジウム講演前刷集, 121 (1964)

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29) 小林, 荒井, 伊沢, 砂川: 化学工学協会第3回 反応工学 シンポジ

ウム講演 前刷集, 52 (1963)

30) Kramer, H.Jr.: Cem .Eng.Sci.8, 45 (1958)

31) 国井:"最 近の化学工学", p.147 (丸 善) 1962

32) Lanneau, K. P.: Trans. Inst. Chem. Engrs ., 38, 125 (1960)33) Lewis, W. K., E. R. Gilliland , W. Glass : A. I. Ch. E.

Journal, 5, 419 (1959)34) 間室, 鞭: 工化誌, 68, 126 (1965)

35) Massimilla, L., H. F. Johnstone: Chem . Eng. Sci., 16,105 (1961)

36) Mathis, J. F., C. C. Watson: A . I. Ch. E. Journal, 2, 518(1956)

37) May, W. G. : Chem. Eng. Progr ., 55, 49 (1959)38) May, W. G. : Dechema Monograph , 32, 261 (1959)39) 宮内: 化学工学協会第30年 会講演前刷集

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(1951)41) 鞭, 間室, 佐 々木: 化学工 学

, 25, 747 (1961)42) 鞭:"化 学機械技術"

, 第16集, p.44 (化 学同人) 196443) 南宮: 化学工学, 25, 630 (1961)

44) 小笠原, 白井, 森川:"最 近の反応工学", p.102 (1959)

第29巻  第11号  (1965) (95)939

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45) Overcashier, R. H., D. B. Todd, R. B. Olney: A. I. Ch.E. Journal, 5, 54 (1959)

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48) Rowe, P. N., W. M. Stapleton: Trans. Inst. Chem. Engrs.,

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52) Shen, C. Y., H. F. Johnston: A. I. Ch. E. Journal, 1, 349

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53) 白井: "最 近 の反応工学", p.114 (愼 書店) 1959

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61) van Deemter, J. J.: Chem. Eng. Sci., 13, 143 (1961)62) Volk, W., C. A. Johnson, H. H. Stotler: Chem. Eng.

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65) 矢木, 宮 内: 化学工学, 17, 382 (1953)

66) 山 口: 石油学会誌, 3, 629, 636, 979, 984 (1960), 4, 29 (1961)

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70) Zwietering, Th. N.: Chem. Eng. Sci., 11, 1 (1959)

III-b.  固 体 反 応*

鞭 巌**

石炭の ガス化に ウ ィンクラー ・ガス発生炉が実用化 さ

れてか ら,多 くの種類の無触媒反応に流動層が応用 され

てい るが,こ れ らの中で も最 も普遍的に知 られ てい るプ

ロセスは硫化鉱の流動バイ焼 であ る。鉄 鉱石 の流動還元

については,多 くの基礎研究が行なわれ て い る が,結

局,経 済的に有利な直接製鉄が実現困難であるとい う理

由か ら,H-ironプ ロセ ス以外にかな りの規模 で実用化

されているよ うな プロセスは見あた らない。

無触媒反応では,流 体ばか りでな く固体粒子 自体 も反

応に より変化す るため,触 媒反応の場合 とくらべて現象

の理 論的取 り扱いが複雑に なる。 このため,流 動層によ

る固体反応の数学 的モデルの研究は少ない現状であ る。

ここでは,流 動層による無触媒反応に関 して従来提 出

され ている数学的モデルについて,新 たに展開 してみた

理論解析を加味 して概説 し,さ らに,流 動 層無触媒反応

の分野 で1960年 以降に発表 され た主 な研究について展

望す る。

1.  流動層無触媒反応の数学的モデル

この分野で,矢 木,国 井31)は 広範 な理論解析 を展開

してい る。すなわち,反 応を通 じて粒子径 が変化 しない

場合について,経 過時間 と粒子内部の反応 界面 の半径 と

の間の関係を(1)~(4)式 で示 した。

粒内拡散が律速段階 の場合

(1)

(2)

化学反応が律速段階の場合

(3)

(4)

層内で粒子が反応を完結する時間について

(5)

と し,φ と δ とで補 正 して表 わ して い る。 た だ し,

(6)

であ り,ガ スが押 し出 し流れの場合は

(7)

ガスが完全混合の場合には

(8)* 昭和40年7月13日 受理

** Iwao Muchi名 古屋大学工学部 鉄鋼工学科

940 (96) 化 学 工 学