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その他の応急手当の基礎技術 (1) 傷病者管理法 ア 衣類の緊縛解除 傷病者にとって楽な姿勢をとらせ、衣服やベルトなどをゆるめる。 衣服は、傷病者に動揺を与えないように、できるだけ安静にしてゆるめる。 傷病者に意識がある場合は、よく説明をし、希望を聞きながら衣服をゆるめ、 無理強いしない。 イ 保温法(毛布 1 枚による) 悪寒、体温の低下、顔面蒼白、ショック症状などが見られる場合は、傷病者の 体温が逃げないように毛布などで保温する。 電気毛布、湯タンポ、アンカなどで傷病者を暖めることは、医師から指示を受 けたとき以外はしてはいけない。 地面やコンクリートの床などに寝かせるときの保温は、身体の上に掛ける物よ り、下に敷く物を厚くする。 日射病・熱射病を除き、季節に関係なく実施する。 保温をすることによって、圧迫感を与えないように注意する。 服がぬれているときは、脱がせてから保温をするようにする。 エ 三角巾使用による固定 三角巾は体のどの部分にも使用できる。 ・ きずの大きさにとらわれずに使用できる。 ・ きず口にはガーゼ等を当ててから、三角巾を用いるようにする。 エ 体位管理(仰臥位、回復体位、ショック体位) 傷病者に適した体位(姿勢)を保つことは、呼吸や循環機能を維持し、苦痛を 和らげ、症状の悪化を防ぐのに有効である。 傷病者の希望する、最も楽な体位を取らせる。 体位を強制してはいけない。 体位を変えてやる場合は、痛みや不安感を与えないようにする。 仰臥位(ぎょうがい)(仰向け) ・ 背中を下にした水平な体位である。 ・ 全身の筋肉などに無理な緊張を与えない。 ・ 最も安定した自然な姿勢である。 ② 膝屈曲位 ・ 仰臥位(ぎょうがい)で膝を立てた体位である。 ・ 腹部の緊張と痛みを和らげる姿勢である。 ・ 一般的に、腹部に外傷を受けた場合や、腹痛を訴えた場合に適している。 ③ 腹臥位(ふくがい) ・ 腹ばいで、顔を横に向けた体位である。 ・ 食べた物を吐いているときや、背中にけがをしているときに適している。

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  • その他の応急手当の基礎技術

    (1) 傷病者管理法 ア 衣類の緊縛解除 傷病者にとって楽な姿勢をとらせ、衣服やベルトなどをゆるめる。

    衣服は、傷病者に動揺を与えないように、できるだけ安静にしてゆるめる。 傷病者に意識がある場合は、よく説明をし、希望を聞きながら衣服をゆるめ、

    無理強いしない。 イ 保温法(毛布 1 枚による) 悪寒、体温の低下、顔面蒼白、ショック症状などが見られる場合は、傷病者の

    体温が逃げないように毛布などで保温する。 電気毛布、湯タンポ、アンカなどで傷病者を暖めることは、医師から指示を受

    けたとき以外はしてはいけない。 地面やコンクリートの床などに寝かせるときの保温は、身体の上に掛ける物よ

    り、下に敷く物を厚くする。 日射病・熱射病を除き、季節に関係なく実施する。 保温をすることによって、圧迫感を与えないように注意する。 服がぬれているときは、脱がせてから保温をするようにする。

    エ 三角巾使用による固定 三角巾は体のどの部分にも使用できる。

    ・ きずの大きさにとらわれずに使用できる。 ・ きず口にはガーゼ等を当ててから、三角巾を用いるようにする。

    エ 体位管理(仰臥位、回復体位、ショック体位) 傷病者に適した体位(姿勢)を保つことは、呼吸や循環機能を維持し、苦痛を

    和らげ、症状の悪化を防ぐのに有効である。

    傷病者の希望する、最も楽な体位を取らせる。

    体位を強制してはいけない。

    体位を変えてやる場合は、痛みや不安感を与えないようにする。

    ① 仰臥位(ぎょうがい)(仰向け) ・ 背中を下にした水平な体位である。

    ・ 全身の筋肉などに無理な緊張を与えない。

    ・ 最も安定した自然な姿勢である。

    ② 膝屈曲位 ・ 仰臥位(ぎょうがい)で膝を立てた体位である。 ・ 腹部の緊張と痛みを和らげる姿勢である。 ・ 一般的に、腹部に外傷を受けた場合や、腹痛を訴えた場合に適している。 ③ 腹臥位(ふくがい)

    ・ 腹ばいで、顔を横に向けた体位である。

    ・ 食べた物を吐いているときや、背中にけがをしているときに適している。

  • ④ 回復体位(側臥位(そくがい)) ・ 傷病者を横向きに寝かせ、下あごを前に出して気道を確保し、両肘を曲げ上

    側の膝を約 90 度曲げ、後ろに倒れないようにする体位である。 ・ 吐いた物を口の中から取り除きやすい。 ・ 窒息防止に有効である。 ・ 意識のない傷病者に適している。 ⑤ 半座位 ・ 上体を軽く起こした体位である。 ・ 胸や呼吸の苦しい傷病者に適している。 ・ 頭にけがをしている場合や、脳血管障害の場合に適している。 ⑥ 座位 ・ 座った状態でいる体位である。 ・ 胸や呼吸の苦しさを訴えている傷病者に適している。 ⑦ 足側高位 ・ 仰臥位で足側を高くした体位である。 ・ 貧血や、出血性ショックの傷病者に適している。

    (2) 外傷の手当要領 ア 包帯法(鎖骨固定、健側固定、固定三角巾)

    包帯は、きずの保護と細菌の侵入を防ぐために行う。

    ・ できるだけ清潔なものを用いる。

    ・ きずを十分に覆うことのできる大きさのものを用いる

    ・ 出血があるときは、十分に厚くしたガーゼ等を用いる。

    ・ きず口が開いている場合などは、原則として滅菌されたガーゼを使用し、脱

    脂綿や不潔なものを用いてはならない。

    ・ 滅菌ガーゼを扱うときは、清潔に扱う。

    ・ きず口が土砂などで汚れているときなどは、きれいな水で洗い流すなど清潔

    に扱う。

    ・ 滅菌された材料は有効期限に注意する。

    イ 副子固定法(雑誌、ダンボール、板、等を用いた固定) 副子固定は、主に骨折で用いる。確認する場合は、痛がっているところを動かし

    てはならない。 ・ 骨折の状態、どこが痛いか聞く。激しい痛みや腫れがあり、動かすことがで

    きない。変形が認められる。骨が飛び出している。骨折の疑いがあるときは、

    骨折しているものとして、手当てをする。協力者がいれば、骨折していると

    ころを支えてもらう。 ・ 傷病者が支えることができれば、自ら支えてもらう。

    ・ 副子を当てる。

    ・ 骨折部を三角巾などで固定する。

  • ・ 痛がっているところを確認する。

    ・ 出血がないか見る。

    ウ 熱傷の手当(冷却、滅菌処置) 熱傷(やけど)の程度を調べる

    ・ 熱傷の程度は、熱傷の深さ(皮膚の状態)と熱傷の広さから判断する。

    ・ 熱傷の深さ(皮膚の状態など)を調べる。

    ・ 赤いか(I 度)

    ・ 水疱か、水疱が破れた状態か?(II 度)

    ・ 白っぽいか?(III 度)

    熱傷の広さを調べる。

    ・ 簡単な方法として、手掌法(しゅしょうほう)がある。傷病者の片手の手の

    ひらの面積が体表面積の1%と考えて、熱傷の面積を調べるものである。

    大人の場合には、「9の法則」により、乳児の場合には、「ブロッカーの法則」に

    より、熱傷の部位をもとに、体表面積に占める熱傷の広さ(%)を調べることがで

    きる。 熱傷の程度が次の場合は、「重症の熱傷」であり、直ちに救急車を呼び、専門医

    による処置を受ける必要がある。

    ・ II 度の熱傷で、体表面積の 30%以上の熱傷

    ・ III 度の熱傷で、体表面積の 10%以上の熱傷

    ・ 顔の熱傷で、III 度の熱傷または鼻毛が焦げたり痰が黒色になっている熱傷

    (気道熱傷)

    ・ 老人や乳児では、熱傷の広さが狭いときでも、重症となる場合がある。

    比較的軽い熱傷(I 度の熱傷、狭い面積の II 度の熱傷)のとき

    ・ できるだけ早く、きれいな冷水で 15 分以上痛みがなくなるまで冷やす。 ・ 十分冷やしてからきれいなガーゼを当て、三角巾や包帯などをする。 ・ 靴下など衣類を着ている場合は、衣類ごと冷やす。 ・ I 度で広い範囲の熱傷の場合は、冷やすときに体が冷えすぎないように注意する。

    ・ 水疱を破らないように注意する。 ・ 薬品を塗ってはならない。 重症の熱傷のとき

    ・ 広い範囲の熱傷の場合は、きれいなシーツ等で体を包む。

    ・ III 度の狭い範囲の熱傷の場合は、きれいなガーゼやタオル等で被覆する。

    ・ 重症の熱傷のときは、冷やすことに時間を費やさずに、できるだけ早く専門

    医の処置を受ける必要がある。

    化学薬品による熱傷のとき ・ 衣服や靴などを早く取り除く。 ・ 体についた薬品を水道水等で 20 分以上洗い流す。

  • ・ 目に入った場合は、水道水等で 20 分以上洗い流す。 ・ 熱傷したところを、きれいなガーゼやタオル等で被覆する。

    ・ 薬品を洗い流す場合は、ブラシ等でこすってはならない。

    ・ 化学薬品に限らず目の熱傷の場合は、絶対に目をこすってはならない。

    (3) その他の応急手当(熱中症、けいれん、歯の損傷等) ア 熱中症(別紙資料を参照)

    イ けいれん ひきつけの手当

    ・ 衣服をゆるめ、吐物で気道がふさがれないよう、顔を横に向けて寝かせます。

    ・ 高熱によるときは、熱をできるだけ早く下げるよう首や額をタオルで冷やし

    ます。

    ・ 5分以上続いたり無呼吸が 15 秒以上続くとき、また初めてのときは要注意で

    す。

    ・ 舌を噛むことはまれで、無理に物を入れると口や歯を傷つけたり嘔吐する恐

    れがあります。

    高熱のときの手当

    ・ 悪寒やふるえがあるときは、毛布などで保温し、頭部を冷やします。

    ・ 悪寒やふるえがないときは、過度な保温は避け、頭部、脇の下、太ももの付

    け根などを冷やします。

    ・ 5 歳以下の乳幼児では、高熱によるひきつけに注意します。

    ウ 歯の損傷等(別紙資料を参照)

    (4) 搬送法 傷病者の搬送は、応急手当がなされた後に行うものである。傷病者に苦痛を与え

    ず安全に搬送することが大切である。 ア 搬送の方法(支持搬送、背負い搬送、担架搬送) イ 担架搬送法(平坦地、階段) ウ 応急担架作成法(身の回りにあるもので実施)

  • 応急手当の重要性 応急手当とは、突然のけがや病気に対して、家族や職場でできる手当のことをいう。 応急手当の目的・必要性 応急手当の目的は傷病者の「救命」「悪化防止」「苦痛の軽減」である。

    1 救急車到着までの応急手当の必要性 病院の外で心肺停止となった傷病者を、倒れたときの状況と原因疾患で分類すると、最

    も救命できる可能性が高いと考えられるのは、倒れた瞬間をだれかに目撃されていて、心

    疾患を原因とする心肺停止である。この条件から 1 か月後の生存率を検討すると、三つの重要な事実が判明した。 ① 市民により何らかの応急手当が行われていた生存率は 8.5%。行われていなかったもの

    6.2%であること。 ② AED による電気ショックが行われた傷病者の生存率は 17.5%であること。 ③ 心肺停止が目撃されてから 10分以内に救急隊員により心肺蘇生法が開始されたものの生存率は 9.8%であるのに対し、10 分以上経過してからの生存率は 4.5%であること。

    2 救命のリレー、悪化防止、苦痛の軽減 ① 救命のリレー 心停止の傷病者(成人)を救命するには、①早い 119 番通報と、②早い応急手当(心肺蘇生法と除細動)、③救急救命士等による早い救命処置、更に④医療機関による高度

    な救命医療である。これを「救命のリレー」と呼ぶ。 成人の救命のリレーの 1 番目に早い 119 番通報があるのは、目撃のある非外傷性心停止では、大部分の初期心電図が VF であることが多い。これらの傷病者にとって心停止から除細動までに要する時間が救命の唯一最大の決定要因である。VF により引き起こされた心停止の救命率は、除細動を行わないと毎分 7~10%低下する。これらのことから早期除細動を行うために早期通報とした。

    乳児や小児の心停止の原因の大部分は、突然の心停止というよりもむしろ気道や換気

    の問題に関連している。これら子供の患者には、まず人工呼吸を試みるべきである。そ

    のため約2分間の CPR を行いそれから 119 番通報する。 ② 悪化防止、苦痛の軽減

    応急手当は、けがや病気を治すために行うのではなく、現在以上に悪化させないこと

    が目的となる。傷病者の症状、訴えを十分把握した上で、必要な応急手当を行う。原則、

    薬は医師の指示により使用する。発作の場合などに際して、事前に医師から指示を受け

    ているときは、その指示に従って薬を用いること。 傷病者は、心身ともにダメージを受けている。できるだけ苦痛を与えない手当を心が

    けるとともに、「すぐに救急車が来ます」など、励ましの言葉をかけるようにすること。

  • 応急手当は、傷病者の状態を確認しながら行い、苦痛を与えないよう注意する。傷病者

    の不安を取り除くよう、できるだけ静かな環境となるように配慮すること。

    ③ 自主救護の必要性、他人が救うことが自分を救う

    震災や風水害等で、同時に多数の傷病者が発生したときは、平常時のように救急車に

    期待することは困難である。このようなときは、自主救護に努めなければならない。自

    分たちの生命・身体は自分たちで守るという心構えが必要である。傷病者が発生したら

    お互いが協力し合って救護活動ができるよう、普段から、近所の人に協力を求めやすい

    環境と態勢を作っておくことが望まれる。事業所では、傷病者を速やかに救護するため、

    組織的に対応する救護計画を樹立しておくことが必要であり、応急手当用品を普段から

    備えておき、不測の事態に対応できるようにしておくことが望まれる。 他人を救おうとする社会が自分を救う。傷病者が発生したとき、放置することなく、

    誰かがすぐに手当を行うような社会にすることが必要である。そのためには、まず、自

    分が応急手当の正しい知識と技術を覚えて、実行することが大切である。他人を助ける

    尊い心(人間愛)が応急手当の原点である。 ④ 突然死を予防するための迅速な通報等の必要性

    心肺停止は何の前触れもなく、本当に突然訪れることもあるが、その前に前触れが見

    られることも少なくない。このような前触れに気がついて、心臓や呼吸が止まる前に 119番通報をして救急車を呼ぶことができれば、救命率を大きく向上させることができる。

    したがって、応急手当の講習では、救命処置のみでなく、突然死を防ぐための方法につ

    いても触れることが重要である。 成人の心臓や呼吸が突然止まる主な原因は、心臓発作や脳卒中である。心臓発作は、

    冠動脈と呼ばれる心臓の筋肉に血液を送る血管が詰まることによって生じる。冠動脈が

    詰まり、そのままにしとくと急性心筋梗塞となる。急性心筋梗塞となると、心臓の筋肉

    が壊死するので、心臓の動きが弱まって体に血液が十分に循環しなくなる。また、不整

    脈により心臓が突然止まってしまうこともある。心臓発作の症状で 1 番多いのは、胸の真ん中に生じる強い痛みであるが、その痛み方は人によって異なり、胸だけでなく肩、

    腕やあごにかけて痛むこともある。痛みをあまり訴えず、胸が締め付けられるような苦

    しさだけを訴えることもある。重症の場合は、痛みだけではなく、息苦しさ、冷や汗、

    吐き気などがあり、立っていられずにへたり込んでしまうこともある。 脳卒中は、脳の血管が詰まったり、破けて出血したりすることによって生じる。脳の

    血管が詰まると、脳に血液が行かなくなるので、そのままだと、脳梗塞となる。脳梗塞

    になると脳の神経細胞が死ぬので、部位によっては、体の片側に力が入らなくなり、し

    びれを感じたり、言葉がうまくしゃべれなくなったり、ものが見えにくくなったりする。

    最悪の場合は、昏睡状態となり、呼吸が停止して死に至る。また、脳の血管が破けて脳

    の表面に出血するとクモ膜下となり、生まれて初めて経験するような非常に強い頭痛に

    襲われる。クモ膜下出血は、繰り返して出血することが多く、その度に危険性が増加す

    る。

  • 心臓発作や脳卒中の場合は、一刻も早く病院に行って治療を始めることが重要である。

    急性心筋梗塞は胸痛の発症から 1 時間でも早く専門医療機関で適切な治療を受け、詰まった冠動脈を開通させる治療を受けると、救命率が高く、後遺症も少ないことが知られ

    ている。また、脳梗塞は血液の塊を溶かす薬を注射することによって、症状が消失した

    り改善することがあるが、症状が出現してから 3 時間を超すと副作用が出るため、この薬の投与ができなくなる。

    以上の症状が急に起こったなら、ためらわずに 119 番通報を行うことが重要である。なぜならば、心停止になる前に高度な医療をすることが一番の救命効果であるからであ

    る。

  • 応急手当指導員(普及員)認定制度 総務省消防庁は、市町村の消防機関が行う市民に対する応急手当の普及啓発活動につい

    て、正しい知識と技術の普及に資するべく、平成5年 3 月に「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」を制定した。 1 応急手当普及講習の種類 (1) 普通救命講習Ⅰ(講習時間 180 分)

    ① 応急手当の必要性 ② 重篤な傷病者の救命にかかわる心肺蘇生法 ③ 大出血時の止血法

    (2) 普通救命講習Ⅱ(講習時間 240 分) ① 普通救命講習Ⅰ ② 心肺蘇生法等に関する知識の確認や実技の評価等が加わる

    (3) 上級救命講習 (講習時間 480 分) ① 普通救命講習Ⅱ(成人に対するものに加えて、小児・乳児に対するものも) ② 傷病者管理法・外傷の手当・搬送法等

    2 応急手当普及員・指導員 (1) 応急手当普及員の認定

    ① 応急手当の普及啓発活動の推進にあたり、消防機関は自ら普通救命講習を実施するほか、応急手当普及員の養成を図っている。

    ② 応急手当普及員は、主として自主防災に関する組織その他の消防防災に関する組織又は不特定多数の市民の出入りする事業所の要請に応じて、その防災組織

    等の構成員や事業所の従業員に対して応急手当の普及指導に従事する。 ③ 指導にあたっては、講習内容、講習方法等について、消防本部の助言・指導を受けることが望ましい。

    ④ 応急手当普及員は、基礎的な知識・技能や指導要領の講習内容を含んだ、消防機関の実施する 24 時間の応急手当普及講習を修了した者、その他同等以上の知識、技能を有する者が消防長から認定される。

    (2) 応急手当指導員

    ① 消防機関の行う普通救命講習又は上級救命講習の指導は、応急手当指導員が当たる。

    ② 応急手当指導員は、基礎的な知識・技能や指導要領の講習内容を含んだ、消防機関の実施する講習を以下のいずれかに該当する者が修了し適任と認められた

    場合、消防長から認定される。 ア 救急救命士、救急隊員の資格を有する者、消防機関在職中に救急隊員の資格を

    有していた者は 8 時間の講習。

  • イ 消防職員又は消防職員であった者は 24 時間の講習 ウ 応急手当普及員は 16 時間の講習を修了した場合 エ その他以上の者と同等以上の知識、技能を有すると消防長が認める者 (3) 応急手当普及員・指導員への認定証の交付

    ① 認定証の有効期限は 3 年間である。 ② 再講習を受講することによりさらに 3 年間有効となる。 ③ 市民に対する普及講習が計画的、効果的に行えるよう、応急手当に関する知識・

    技術及び指導法について救急医療の進歩にあわせた指導ができるように常に研鑽

    に努めなければならない。 (4) 応急手当普及員・指導員の心構え

    ① 救急業務、応急手当技能について内容を正しく認識し、理解しておくこと。 ② 救急活動実務経験等から得た知識・技術や事例を有効に活用し、効果的に普及指

    導を行う。 ③ 指導方法や話術等の向上を図り、理解されやすいように常に創意工夫すること。 ④ 常に自己評価を行い、以後の指導内容の改善に努めること。 ⑤ 展示技術の練磨に努め、正しい技術を指導発揮できるようにすること。 ⑥ 指導時間に質問された内容は、明確に回答できるようにしておくこと。 ⑦ 指導技法をしっかり見につけ、自信を持って指導すること。

    (5) 指導上の留意事項

    ① 指導に当たっては、熱意と誠実心をもって対応し、常に好印象を与えるように努めること。

    ② 指導者として言動・接遇には十分配慮すること。 ③ 常に指導者として節度を保持し、機敏な動作により対応すること。 ④ 指導内容は、常に必要性や目的を明確にしたうえで指導手順に従い普及を行うこ

    と。 ⑤ 対象者に応じた資器材・教材等を準備し、計画した時間内で対応すること。 ⑥ 専門用語の使用は努めて避け、対象者に応じた分かりやすい内容とし、実技及び

    実習を主体とした普及を行うこと。 ⑦ 経験した事例があれば取り入れ、対象者に身近な問題として認識させ、要領・手

    順は具体的に示すこと。 ⑧ 指導時間における質問でその場で回答できないものについては、後日、誠意をも

    って回答すること。

  • 応急手当指導員講習マニュアル 基礎的な知識技能 1 基礎知識 1時間 (1) 応急手当指導員(普及員)認定制度、 (2) 応急手当の重要性 ア 応急手当の目的・必要性

    ① 救急車到着までの応急手当の必要性 ② 救命のリレー、悪化防止、苦痛の軽減 ③ 自主救護の必要性、他人が救うことが自分を救う ④ 突然死を予防するための迅速な通報等の必要性

    2 救命に必要な応急手当の基礎実技 4時間 (1) 心肺蘇生法:成人(8歳以上) ア 反応の確認、通報、気道確保要領 ① 生命に直接関係する症状に対しての優先順位 ② 反応の確認 ③ 119番通報と AEDの手配 ④ 頭部後屈あご先挙上方 ⑤ 回復体位 イ 口対口人工呼吸法 ウ 胸骨圧迫要領 エ AEDの使用法 (2) 心肺蘇生法:小児(1歳以上~8歳未満) (3) 心肺蘇生法:乳児(1歳未満) (4) 異物除去法 ア 背部叩打法 イ 腹部突き上げ法(ハイムリック法) ウ 反応がなくなった場合の対応 (5) 止血法 ア 直接圧迫止血法 (6) 感染防止 ア 感染防止対策の指導事項 イ 呼気吹き込み人工呼吸法訓練時における感染防止対策 3 その他の応急手当の基礎技術 3時間 (1) 傷病者管理法 ア 衣類の緊縛解除

  • イ 保温法(毛布 1枚による) ウ 三角巾使用による固定 エ 体位管理(仰臥位、回復体位、ショック体位) (2) 外傷の手当要領 ア 包帯法(鎖骨固定、健側固定、固定三角巾) イ 副子固定法(雑誌、ダンボール、板、等を用いた固定 ウ 熱傷の手当(冷却、滅菌処置) (3) その他の応急手当(熱中症、けいれん、歯の損傷等) (4) 搬送法 ア 搬送の方法(支持搬送、背負い搬送、担架搬送) イ 担架搬送法(平坦地、階段) ウ 応急担架作成法(身の回りにあるもので実施) 指導要領 1 基礎医学、資機材の取扱い、指導技法 4時間 (1) 基礎医学 ア 循環器系の基礎(心臓の構造と機能、体循環、肺循環、血管の構造と機能、血液) イ 呼吸器系の基礎(呼吸器系の構造、呼吸の機能) ウ 脳神経系の基礎(脳神経系の構造と機能、心停止のメカニズム、心肺蘇生の原理) (3) 資機材の取扱い ア 蘇生訓練人形 イ 感染防護具 ウ AEDトレーナー エ 消毒用薬品 (4) 指導技法 2 救命に必要な応急手当の指導要領 5時間 (1) 反応の確認 (2) 気道確保の指導要領 (3) 人工呼吸の指導要領 (4) 胸骨圧迫の指導要領 (5) AED使用法の指導要領(AEDの必要性、操作上の注意点、AEDの操作) (6) 回復体位の指導要領 (7) 気道異物の指導要領 3 その他の応急手当の基礎技術 3時間 (1) 傷病者管理法(説明・展示) (2) 搬送法(説明・展示) (3) 止血の必要性、方法(説明・展示)

  • (4) けがへの対応(説明・展示) (5) 熱傷への対応(説明・展示) (6) 溺水への対応(説明・展示) (7) その他の手当(熱中症、けいれん、歯の損傷等の説明・展示) 4 各種手当の組合せ、応用の指導要領 2時間 効果測定・指導内容に関する質疑への応答 2時間 1 効果測定 (1) 効果測定の要領 (2) 測定結果に対する評価と指導(フィードバック)の要領 (3) 効果確認表とシナリオ 2 指導内容に関する質疑への応答 (1) 質疑への対応の要領 (2) よくある質問への対応例 ア 新しい救急蘇生ガイドラインの変更点に関するもの イ 応急手当全般に関する質疑 ウ 普通救命講習の質疑 エ 上級救命講習の質疑 オ 用語に関する質疑

  • 解剖学から心臓マッサージが有効と思われる部位

    胸部をXYZ軸の立方体と考えると(ただしx(左右)y(頭尾)z(腹背)方向)以

    下のように心臓マッサージの原理が決められたように考えています。

    心臓マッサージによる心臓からの血流は心臓圧迫による効果と、胸腔内圧上昇による効

    果により心臓からの血流が起こると習いました。胸腔内圧を上昇させるためであれば、胸

    骨の何処を押してもある程度の効果はあると思います(肋骨に垂直に押してもあまり大き

    な胸郭運動は起こらないのでこの場合でも胸骨を押すのが一番効果があるように思われま

    す。さて、では、心臓を圧迫するにはどう押せばいいのか?硬い胸骨と脊柱で心臓をはさ

    む以外に効果的な圧迫は難しいように解剖学的には考えています。CT等を見ていただく

    と、垂直に押して心臓を胸骨と脊椎で「挟む」必要性はイメージしやすいように感じます。

    (斜めに押すと柔らかい肺に向かって心臓を押すことになります)

    ではxyz軸で考えたときのz軸の動きは上記でいいのですが、xy座標の決め方が問

    題となっているのだと思いますが、これはその時「心臓が何処にあるか?」という非常に

    シンプルな質問に対する答えと同じになると考えています。

    まずx軸...心臓は左胸にあるのではなく、胸部の中央に”胸骨の裏にかくれて左からの

    ぞいている(笑)”様な状態ですので、胸骨中線上(正面から見て真ん中の軸)を手のポ

    ジションにすることも問題ないかと思います。(レントゲン写真を見ていただければと思い

    ます)

    後はy軸方向の問題です。

    心臓マッサージが必要な事例では肺も呼気状態(息を吐いた状態)に近く横隔膜は弛緩

    して挙上している状態に近いと思います。

    さて、この様なときの解剖を考えてみると、胸骨中線上における臓器の位置ですが、胸

    部と腹部を分ける横隔膜の起始部は剣状突起の裏であり、ここからドーム上に挙上してい

    るため、剣状突起の裏は横隔膜の下、すなわち「腹腔!」に位置することになります。で

    はこの剣状突起の裏には何が存在するのか?腹腔内蔵の内、最大の実質臓器「肝臓」が位

    置しています。すなわち腹腔内の臓器の損傷を起こす可能性があります。

    剣状突起はこの様に「押してはいけない場所」「効果が無い場所」として教える際に必要

    であろうと考えます。

    横隔膜は上方にドーム状にせり上がり、心臓はその上に乗っているような状態になるの

    で、実際に心臓の位置は横隔膜の起始部である剣状突起よりもさらに上になります。(胸骨

    と肋骨の角から 2 横指上にする理由?)この時の横隔膜の位置が一般の方で乳頭を結んだ

    線上(一般的には第4肋間)に近くなり、これが乳頭を結んだ線を基準にという根拠と思

    われます。

    ただし、乳頭は特に高齢女性では乳房の位置が変わるため正確な指針とはなりにくいの

  • です。(医学的な位置決めでは可動性の大きなものを基準に出来ません)

    さらに胸骨正中線上を上方に進むと、解剖学的には胸骨柄と胸骨体が作る胸骨角(第5

    胸椎の高さ)の裏には気管支分枝部や大動脈弓が存在しており、この部分を圧迫しても心

    臓から血液が送り出せないのは理解していただきやすいのではないでしょうか?すなわち

    胸骨柄の裏にはもう心臓がないということです。

    ただし胸骨角はふっくらとした人などでは判りにくい事が多いです。

    こうするとy軸上での心臓の位置は解剖学的には胸骨体の裏で(胸骨柄と胸骨体を1つ

    と考えたときには下半分)、かつ剣状突起は腹腔の部位に存在しているということがわかっ

    ていただけると思います。

    ちなみに心臓を細かく見ると血液を駆出する心室は下にあり、心房、動脈が上方にあり

    ます。ですから胸骨体の中でも上方よりも下方を押すのがいいと考えております(ただし

    下方過ぎてはだめ)。

    胸骨角はふくやかな方では判り難く、触知は難しいですが、肋骨下縁、剣状突起、胸骨

    柄の上端(頚切痕)はほぼわかると思います。

    この様に医学的な行為で位置が決まっていることは”安全上””解剖生理学上”の理由

    があって決まっているので、「教えやすさ」の観点からのみで変更することはどうかと思い

    メールさせていただきました。

    電話での口頭指示の際など、CPRを知らない人に緊急避難的に教えるためであればい

    ざ知らず、コースに出てくるような方(インストラクター、受講者)は是非知っていただ

    ければと考えております。

    その他の補足

    * 胸骨の 3 つの構成要素のうち剣状突起は一部軟骨であり、年齢と共に骨化が起こる部

    位で、肋軟骨部と並び、この様に加齢と共に骨化した場所は元来骨だった場所に比べ骨折

    が起こりやすいように思います。

  • 救命に必要な応急手当の指導要領 指導の目的 応急手当の指導は、人々に応急救護への関心と認識を啓発し、自主救護能力、救命につ

    いての意識の育成、技術を修得することによって救護活動における役割を認識させ、応急

    救護への理解と協力をより一層高めることを目的としている。 指導の重要性 救急隊が到着する以前に、倒れている人に対して、そばにいる人によって応急手当がな

    されることが、尊い命を救うためには最も重要である。このことから、応急手当普及員に

    は身につけた応急救護の知識技術を伝えるだけでなく、現場で実行できる熱意を受講者に

    伝えることが求められる。 指導主眼 ① 救急隊が到着するまでの間に救命処置(心肺蘇生、AED による除細動、気道異物除去)および止血法ができるようにすること。

    ② 自主救護意識を向上させること。 指導項目 救命のための応急手当 救急隊が到着するまでの問に、そばにいる人が実施しなければならない救命処置を重

    点とした普通救命講習の内容とする。 1 周囲の安全確認・反応の確認の指導要領 周囲の安全確認

    傷病者に近づきながら、自らと傷病者の安全を確認する。 ポイント 反応の確認を行う前に、傷病者に近づきながら現場が安全であるか確認し、可能な限

    り自らと傷病者の二次的危険を回避することを認識させることが重要である。 周囲の安全、反応及び呼吸の確認 ① 意義 病気やけがの原因を調べることではなく、傷病者が、応急手当が必要な状態かどうか

    を把握することであることを指導する。 ② 手順 確認および応急手当は、自らの安全を確保した上で行い、救命に必要なことを優先し

    て確認することを指導する。 ③ 確認項目と救命処置 救命処置は確認結果に基づき行われることを理解させる。

  • 反応の確認 人が目の前で倒れたとき、または倒れている人を発見した場合に、反応の確認をする。

    ここでは、まずは肩を叩きながら呼びかけて、反応の有無を見ることを修得することが

    重要である。姿勢や肩の叩き方等の細部の指導は、心肺蘇生が十分にできた後に行う。 傷病者の肩の位置で姿勢を低くして(額に手を当て、同じ側の肘を地面に着ける方法

    を展示するが、受講生には必須ではなく有効な確認ができていればよい)、肩を叩きな

    がら、耳元で「わかりますか」などと呼びかけたり、名前を呼んで反応の有無を確認す

    る。 ポイント ① 傷病者の反応を確認するためには、傷病者の目や表情、体全体の動きを見る必要があ

    ることを指導する。 ② 肩を叩くことや呼びかけはいきなり強く大きく行うのではなく。相手が寝ているだけ

    の場合もあるため、最初はやさしく呼びかけ、3 段階位で、寝ている人が通常ならば起きる程度の呼びかけを行うように指導する。

    大声で助けを求め 119 番通報と AED の搬送依頼 反応がない場合には、直ちに大声で助けを呼び、119 番通報と AED を現場に持ってくるよう依頼する。

    ポイント ① 反応がないと判断したら、まずはしっかりと大きな声で「人が倒れています。誰か来

    てください」と周囲に協力を求めるよう指導する。 ② 展示するときは羞恥心を捨て、自ら範を示し、大きな声で行う。 ③ 協力者が複数の場合は、119番通報とAEDの搬送を人を指定せずに依頼しても誰

    かがやるだろうと誰も対応しないこともある。このため、人を指定して任務分担を具体

    的に指示し協力を依頼するよう指導する。 「人が倒れています。あなたは、119 番通報をしてください」 「あなたは、AEDを持ってきてくたさい」 ③ 協力者が誰もいない場合は、ます自分で119番通報しAEDが近くにある場合はA

    EDを取りに行くことも指導する。 2 気道確保の指導要領 反応がなく、普段どおりの息がない場合は、気道確保を行う。気道模型を活用すると、

    なせ気道確保が必要か理解しやすい。 頭部後屈あご先挙上法 頭を後ろに反らして、あご先を指で持ち上げることで気道を確保する方法であるが、

    まずは細かい形にとらわれず、きちんと気道確保できるように指導する。 最終的には、あご先に人差指と中指の2指の先端を当てて持ち上げるとともに、額に

    当てた手を押し下げるようにして頭部を後ろに反らす方法を指導する。 額に当てた腕側の肘を床に着けると姿勢が安定することも指導するが、受講者が確実

  • に気道を確保できていれは強制しなくてもよい。 ポイント ① 反応のない人は、舌がゆるんで後へ下がり気道閉塞を起こす危険性がある(舌根沈下)

    ことを指導する。 ② あご先に当てた指で、首やあごの下の軟部組織を圧迫しないように指導する。 ③ 気道確保が正しく行われていないと、正確に呼吸を確認することはできないことを指

    導する。 ④ 呼吸の確認は、呼吸のたびに上下に動く胸腹部を見て、耳で呼吸音を聴き、頬で吐息

    を感じて(見て、聴いて、感じて)行うことを指導する。 ⑤ 普段どおりの息がないと判断したら、直ちに心肺蘇生(人工呼吸と胸骨圧迫)を実施

    することを指導する。 ⑥ 「胸腹部の動きが分かりづらい」など、換気が不確実と思えた場合には危険側に立ち、

    普段どおりの息がないと判断するように指導する。 3 人工呼吸の指導要領 心肺蘇生の対象者 気道を確保したまま 10 秒以内で呼吸を確認した結果、息をしていないだけでなく、 普段どおりの息がない傷病者が心肺蘇生の対象者であることを理解させる。

    普段とおりの息のない傷病者は、脈拍もないと判断して、一刻も早く心肺蘇生を実施

    すべきであることを指導する。 普段どおりの息とみなさない例 死戦期呼吸(あえぎ呼吸) 心停止が起こった直後には、「死戦期呼吸」と呼ばれる呼吸が見られる場合かある。死

    戦期呼吸とは子供が大泣きしたときのしゃくりあげるような呼吸が途切れ途切れに起

    こる呼吸のこと。 鼻翼呼吸 吸気時に鼻孔を拡大し、呼気時に縮小させるために、鼻翼が広がったり、縮んだりし

    て見える呼吸のこと。 下顎呼吸 呼吸に際し口を半ば開きかけた状態で、下顎のみを動かし呼気時にあごが下がるような

    呼吸のこと。

    鼻翼呼吸と下顎呼吸は、胸腹部の上下動はほとんど見られない。有効な換気が行われ

    ていない。 ポイント ① 人工呼吸がうまくできなくても、胸骨圧迫を行えば十分救命効果が向上することを理

    解させ、人工呼吸ができないことにより、心肺蘇生をためらうことのないよう配慮する。

  • ② 人工呼吸では吹き込みスピードが速過ぎたり、呼気を吹き込みすぎると胃が膨満し、

    胃の内容物が逆流する恐れがある。また吹き込みすぎることにより、送気に時間がかか

    り、もっとも重要な胸骨圧迫を行う時間が短くなってしまう。このため人工呼吸時は、

    胸が軽く上がることを必ず横目で確認しながら呼気を吹き込み、胸が軽く上がれば、そ

    れ以上吹き込まないように指導する。 これを指導するためには、受講者の視線が訓練用人形の胸に向けられているかが分か

    る場所に位置すべきである。 ③ 人工呼吸がうまくできないときは、次の3項目をチェックし、不十分な部分について

    指導する。 ・ 気道確保が確実にできているか(十分に頭部を反らしているか、あご先を持ち上げ

    ているか)。 ・ 鼻の穴がしっかりと塞がれているか(鼻の付け根をつまむのではなく、先端部分を

    つまんでいるか)。 ・ 傷病者の口がすべて覆われているか(自分の口を大きく縦に開けて、傷病者の口全

    体をすき間なく覆っているか)。 ・ なお、人工呼吸がうまくできないときも、最も大切な胸骨圧迫の指導に移行し、胸

    骨圧迫ができるようになった後に、再度人工呼吸の指導に戻る。 ④ 人工呼吸2回が、いずれも胸の上がりを確認できない場合でも、やり直すことなく胸

    骨圧迫に移行すべきであることを指導する。 ⑤ 送気が速かったり、多くの量を吹き込むと、呼気が食道を通って胃に送り込まれてし

    まうことがある。但し、胃が膨満することにより、胃の内容物が逆流し、気管に入るお

    それがある点を強調し過ぎると、人工呼吸の実施を阻害することとなるので注意する。 ⑥ 人工呼吸時、人工呼吸用マウスピース(一方弁付)等の使用が推奨されているが、心

    肺蘇生が胸骨圧迫だけで行っても効果があるので、人工呼吸の実施がためらわれたり、

    人工呼吸用マウスピース(一方弁付)等の準備が遅れる場合は、人工呼吸を行わなくて

    もよいが、胸骨圧迫だけはぜひ行うべきことを必ず理解させる。 4 胸骨圧迫の指導要領

    心肺蘇生では特に質の高い胸骨圧迫が重要であることから、胸骨圧迫に重点を置いて

    指導する。 ポイント ① 胸骨圧迫をできるだけ早期に開始し、十分な強さ(4~5cm沈むまで)と十分な速

    さ(1分間に約 100 回のテンポ)で絶え間なく圧迫できるようにすることに最も重点を置いて指導する。

    ② 圧迫位置は、乳頭と乳頭の真ん中(胸骨上)である。正確な圧迫位置を確認するため

    に時間をかけ過ぎて、圧迫開始の時期が遅くならないように指導する。 ③ 圧迫位置がずれることによる内臓損傷の可能性について強調し過ぎると、かえって胸

    骨圧迫の実施を阻害することになるので注意する。 ④ 圧迫の解除は、完全に胸が元の位置に戻るようにすること、および圧迫を解除した際

  • に手がずれてしまわないようにすべきことを強調して指導する。 ⑤ 胸骨圧迫については、上記①②ができることを最大の目標として指導する。次の項目

    については、その後順次指導する。 ・ 肩が胸骨の真上にくるように垂直に圧迫しているか。 ・ 腕の力ので押すのではなく、疲れにくいように体重を利用して押しているか。 ・ 肘と背中をピンと伸ばしているか。 ・ 人工呼吸と胸骨圧迫の移動を速やかに行えるよう、配慮しているか。 ⑥ 胸骨圧迫を実際に生体を使って訓練することは、きわめて危険なので、絶対に行って

    はならないことを指導する。 胸骨圧迫 30 回と人工呼吸 2 回の組み合わせを続ける ① 30:2 のサイクルを、救急隊に引き継ぐか、何らかの応答や目的のある仕草が出現した

    り、普段どおりの息が出現するまで続けることを指導する。 ② 絶え間ない胸骨圧迫のため、人工呼吸と胸骨圧迫の移動や、移動したあとの胸骨圧迫

    の開始が、できるだけスムーズにできるように指導する。 ③ 圧迫は、非常に体力を消耗するので、時間経過とともに圧迫が弱く、遅くなりやすい

    ので注意させる。なお、救助者が複数いる場合は、十分な強さと速さの圧迫を継続す

    るために、2分おきに胸骨圧迫を5秒以内に交替すべきことを指導する。 5 AED使用法の指導要領

    AEDは、まず電源を入れることが最も重要であり、電源さえ入れれば、あとはメッ

    セージどおり行動するだけであることを理解させる。 AED の対象者 反応と普段どおりの息がない傷病者が AED の対象者であるが、乳児(l歳未満)は対象外であることを理解させる。 ポイント ① AEDの効果を高めるためには、心肺蘇生が重要であること、およびAEDを受けと

    ったらなるべく早く操作を開始すべきことを指導する。 ② AEDは、救助者あるいはAEDを持ってきた協力者のどちらが操作してもかまわ

    ない。できるだけ絶え間なく心肺蘇生をし続けるよう配慮すべきことを指導する。 ③ 救助者以外に誰もAEDの操作および心肺蘇生の手技が分からない場合は、救助者は

    直ちに心肺蘇生を中断してAEDの操作に移ることを指導する。 ④ 心肺蘇生ができる者が複数いるときは、絶え間ない胸骨圧迫のため、AEDを操作す

    る以外の者は、患者から放れるようメッセージが出るまで(解析が始まるまで)、心肺蘇生を継続することを指導する。

    まずAEDの電源を入れる 使用する機種により電源の入れ方が異なる。電源ボタンを押下するものと、本体のふ

  • たを開けると電源が自動的に入るものと2つのタイプがある。 ポイント

    AEDは、音声メッセージにて使用方法を指示してくれるので、まず電源を入れるこ

    とが最も重要であることを、特に強調して指導する。 メッセージどおりに行動する。(電極パッドを貼る) ① 電極パッドは、必ず素肌に貼ることを強調して指導する。なお、一部でも下着などの

    上に貼ると十分な効果が得られない場合があることを必要に応じて指導する。 ② 電極パッドは、粘着力が強いので、2枚同時に扱って、くっついて剥がれなくなるの

    を防ぐため、1枚ずつ貼るように指導する。 ③ 電極パッドと皮膚の間に隙間があると、心電図の解析が実施されない場合や、やけど

    をする場合があるため、密着させることを指導する。 ④ 機種によっては、電極パッドを貼った後、メッセージに基づきコネクターの接続が必

    要なものもあることを指導する。 ⑤ 救助者が二人以上いる場合は、「患者から離れてください」という旨のメッセージが出

    るまで、電極パッドを貼る間も心肺蘇生を継続することを指導する。 ⑥ 電極パッドを貼る位置は、イラストに示されたとおりであることを指導する。1枚は

    右胸胸部で鎖骨の下に、もう1枚は左の脇下から5cm位足側であるが、このことにつ

    いては必要に応じて指導する。 ⑦ 傷病者の胸がケガ等で、電極パッドが正しい位置に貼れない場合は、位置をすらして

    貼りつける。基本的には、両方の電極パッドが心臓を挟んだ位置に貼りつければ問題な

    いことを必要に応じて指導する。 ⑧ 傷病者の胸が濡れていないか、ICD(自動埋め込み式除細動顛)・ペースメー力ーな

    どの傷跡やふくらみがないか、医療用貼付薬剤等がある場合の対応を、実技中に必要に

    応じて指導する。 傷病者に触れない(心電図の解析) ① 心電図の解析中に、誰かが触れていたり、揺すると正しい心電図解析ができないため、

    解析する旨のメッセージが出たら、周囲の人に傷病者から離れるように指示すべきこと

    を指導する。 ② 救助者が複数いて、心肺蘇生を継続しているときも、解析を行う旨の音声メッセージ

    が出たら中断するよう指導する。 ③ 電極パッドが正しく貼りつけられていない、または AED本体と電極パッドのコードが 確実に接続されていないと心電図の解析が行われない可能性がある。その場合は、電極

    パッドが確実に貼られているか、コネクターが接続されているか再度確認すべきことを

    指導する。 ⑤ 解析ボタンがあるタイプのAEDでは、解析するには、音声メッセージに従い解析ボ

    タンを押す必要があることを指導する。

  • 除細動(電気ショック)を行う ① 除細動実施時に傷病者に触れていると、感電の危険があるので必ず誰も触れていない

    ことを確認すべきことを指導する。 ② 心電図の解析の結果、「ショックは不要です」の音声指示があった場合は、直ちに胸骨

    圧迫から心肺蘇生を開始すべきことを指導する。 ④ 何らかの理由でショックボタンを押せなかった場合、ショックが自動的にキャンセル

    されるが、除細動が必要な場合はAEDが再度自動的に充電を開始する(キャンセル

    される時間は使用するAEDにより異なる)ことを必要に応じて指導する。 除細動を実施した後の対応 AEDの電源を切ったり、電極パッドを外すことなく、AEDの音声メッセージに従

    い直ちに胸骨圧迫から心肺蘇生を再開することを理解させる。しかし、機種の新旧の違

    いにより「心肺蘇生を実施してください]以外のメッセージが出ることがある。この場

    合は、そのメッセージどおりに行動する。 心肺蘇生を開始して、2分経過するごとに自動的に心電図の再解析が始まる、出てく

    るメッセージどおりに除細動か心肺蘇生を行うことを理解させる。 この、心肺蘇生とAEDの手順の繰り返しを、救急隊に引き継ぐか何らかの応答や目

    的のある仕草が出現するか、普段どおりの息が確認されるまで続ける。何らかの応答や

    目的のある仕草が出現した場合や普段どおりの息が確認されたら、心肺蘇生を中断し回

    復体位にする。なお、この場合も電極パッドは貼りつけたまま、AED の電源も入れたままとすることを理解させる。

    ポイント ① 除細動実施後は、直ちに胸骨圧迫からマッサージを開始すべきことを強調して指導す

    る。 ② 傷病者に何らかの応答や、目的のある仕草が出現した場合でも、再度心室細動となり

    除細動が必要になる場合がある。したがって、AEDの電源はONのままで電極パッド

    は貼ったままとし、救急隊や医師が到着するまでAEDの音声指示に注意しながら、注

    意深く傷病者の反応や呼吸の状態を見続ける必要があることを指導する。 ③ 救急隊や医師が到着したら、救命処置の内容(傷病者に接したときの状況、除細動の

    回数、回復の状態など)を伝えるべきことを指導する。 6 回復体位の指導要領 ポイント ① 腰に触れることから実技を行うときは、原則として同性でペアを組ませる。 ② 回復体位の目的は、気道を確保し、嘔吐物による窒息を予防することであることを強

    調して指導する。 ③ 安定した姿勢で、あごを反らせて口元を床に向かせることを指導する。 ④ 自分より大柄な傷病者に対しては、救助者から遠い方の傷病者の膝を立ててから、そ

    の膝と肩を持つことで、簡単に横向きにできることを指導する。

  • ⑤ 長時間回復体位にするときは、血液の流れが悪くなり、体に悪影響をおよぼすことがあ

    るので、30 分おき程度に反対向きの回復体位とすることを指導する。 7 気道異物の指導要領 成人・小児に対する気道異物除去

    気道異物除去は救命処置であり、迅速に行われることで救命できることを強調して指

    導する。 ポイント ① 気道異物除去の対象者と判断したら、まず、大声で人を呼び、誰かが来れば 119 番通報とAEDの搬送を依頼するとともに直ちに気道異物除去を始める。

    ② 大声で助けを呼んでも、誰も来なかったときは、自分で119番通報したり、AED

    を取りに行くことなく、直ちに気道異物除去を始める。 ③ 背部叩打法と腹部突き上げ法の2種類があるが、この2つを順序は問わず併用して、

    異物が取れるか、反応がなくなるまで続けることを理解させる。 ④ 反応がなくなったら、心肺停止と同じやり方(心肺蘇生)を行うが、救助者が一人の

    ときは、まず 119 番通報と、近くにあればAEDの搬送を依頼する。 ④ 異物の確認は特に行わす、□から異物が見えた時に除去する。 背部叩打法 肩甲骨と肩甲骨の間を4~5回迅速に叩くが、単に手のひら全体で叩くよりも手掌基部

    で叩く方が効果があることを指導する。 腹部突き上げ法 ・ 妊婦、乳児には実施できないことを強調して指導する。 ・ 傷病者が立位のまま実施するときは、傷病者の股間に救助教の足を入れることにより、

    傷病者が後方に倒れることをある程度防げる。 ・ 椅子に坐ったままでも手が届くときは、そのままの姿勢で行うことを指導する。 ポイント ① 握りこぶしを、へそとみぞおちの中間に当てること(剣状突起や肋骨にあたると内臓

    損傷や骨折の可能性があり危険である)を指導する。 ② しっかりと体を密着させることが、腹部突き上げの効果を高めるうえで重要であるこ

    とを強調して指導する。 ③ たとえ異物が取れたとしても、必ず医療機関を受診して、内臓損傷がないか調べるべ

    きことを指導する(特に老人は自覚症状が出ない人もいる)。 乳児に対する気道異物除去 反応のある場合が対象である。反応がなくなった場合は心肺蘇生を行う。成人・小児と

    は異なり、腹部突き上げ法は実施しない。

  • ポイント ① 食事中は目を離さないこと、気道異物となりやすいものを乳児の手の届くところに置

    かないなどの予防策が最重要であることを指導する。 ② ます背部叩打法を行う。なるべく低い姿勢で片手で胸部と下顎を支えて、あごを少し

    突き出し、肩甲骨と肩甲骨の間を手掌基部で叩くことを指導する。なお、実施時は乳児

    の片足を脇の下にはさみ、落下防止に注意すべきことを併せて指導する。 ③ 背部叩打法で異物が出ないときには、胸部突き上げ法を実施することを必要に応じて

    指導する。 ④ 反応がなくなった場合は、平らな所であおむけにして心肺蘇生を5サイクル(2分間)

    行ったあとに119番通報する(成人とは異なる。小児とは同様だが、小児と異なりA

    EDは取りに行かない)ことを指導する。 ⑤ 体の大きな乳児に対しては、転落防止のため膝の上で支える方法ではなく、床に寝か

    せ小児に対しての背部叩打同様に行うことを指導する。

  • 呼吸器系の基礎 1 呼吸器系の構造

    2 気道の仕組みについて 咽頭(いんとう)…鼻腔(びくう)、口腔、喉頭(こうとう)の後ろにあり、頭蓋底から始まり食

    道に続きます。鼻部、口部、喉頭部の3部に区別されます。咽頭は口腔から食道への食物の通

    路で消化管の一部であり、また、鼻腔から喉頭への空気の通り道で、気道の一部でもあります。

    喉頭…喉頭口に始まり、気管に移行するまでの内腔を喉頭腔といい、空気の通路であると同

    時に発声器でもあります。その壁は喉頭軟骨、靭帯(じんたい)、喉頭筋、粘膜からなります。

    声帯…喉頭腔の真中ごろの両側壁に声帯ヒダ(声帯)があり、左右の声帯ヒダの間を声門裂

    といいます。声帯ヒダと声門裂を合わせたものが声門です。声門を調節し、声帯を振動させて

    いろいろの声を出します。

    気管および気管支…気管は喉頭に続き、左右の気管支に分かれるまでの約10cmの細長い管

    です。気管支は肺門より肺に入り、樹枝状に分岐し肺胞となります。気管支には左右差があり、

    右気管支は左気管支に比べて、短く、太く、分岐より肺門に至る傾斜が急です。

    3 肺の構造について 肺は、心臓をはさんで左右に1個ずつあります。心臓がやや左に片寄っているため左肺は右

    肺より小さくなっています。肺の上端を肺尖(はいせん)、下部を肺底といい、肺底は横隔膜の上

  • に乗っています。肺の内側面中央は肺門といい、気管支、肺動脈、肺静脈、気管支動静脈、リ

    ンパ管、神経などが出入りしています。 肺は、右が上葉、中葉、下葉の3つに、左は上葉、下葉の2つに分かれています。肺葉は多

    角形小葉の集まりからなり、その中を葉気管支が枝に分かれ、一定の肺区域に広がり、さらに

    分岐し肺胞となります。 胸膜は肺を直接包み、肺門部で折れ返り、胸腔内壁に密着する2枚の漿膜(しょうまく)で、この2枚の膜の間に少量の漿液を分泌し、肺の拡張・収縮による肺と胸壁との摩擦を防いでいま

    す。 左右の肺にはさまれた胸腔の正中部を縦隔(じゅうかく)といい、心臓、胸腺、気管、気管支、食道、大動脈、大静脈、胸管、神経などの器官が存在します。

    4 肺のはたらきと肺動脈・肺静脈について 肺のはたらきは呼吸に関連しています。鼻から始まった空気の通り道、気道が左右の気管支

    に分かれ、それぞれ左右の肺に入っていきます。 肺門から肺の内部に入った気管支はどんど

    ん枝分かれして細くなり、最終的には肺胞となります。肺胞の周りには毛細血管が網の目のよ

    うに取り巻いており、呼吸によって取り入れた肺胞内の空気から、酸素を血液中に取り入れ、

    血液中の二酸化炭素は肺胞内に押し出し、“ガス交換”が行われます。 肺門には、気管支、肺動脈、肺静脈が出入りしています。肺動脈とは心臓から出て肺門から

    肺に向かって血液を流す血管で、肺静脈は肺から出る血液を心臓にもどす血管です。肺動脈と

    肺静脈とは、その管の中を通る血液の性状が異なっています。心臓にもどる血管、肺静脈中を

    流れるのは肺胞から酸素をもらったきれいな血液で、二酸化炭素を肺胞に出してしまう前の汚

    れた血液が流れているのは、心臓から肺に向かい、肺内に入ってきている肺動脈ということに

    なります。 5 呼吸の機能 呼吸運動は、吸息と呼息の運動で肺胞内の換気を行う行為です。吸息は、外肋間筋(がいろっかんきん)や横隔膜(おうかくまく)の収縮により、胸腔を拡大して行われ、呼息は、内肋間筋の収縮、横隔膜の弛緩(しかん)により、胸腔を縮小して行われます。 胸式呼吸…主に肋間筋のはたらきによります。 腹式呼吸…主に横隔膜のはたらきによります。 胸腹式呼吸…胸式(きょうしき)呼吸と腹式(ふくしき)呼吸を併用した呼吸型。普通はこの型で呼吸しています。 呼吸数…健康な成人では、普通15~17回/分で、睡眠時には少なく、運動時には増加します。安静時に1回の呼吸で出入りする空気の量を1回換気量といい、約500mlです。 肺活量…最大に息を吸い、ついで最大に息を吐いたときの呼吸量をいい、成人男性では3000~4000ml、女性で2000~3000mlです。そのうち右肺は約55%、左肺は約45%を占めます。 呼吸の調節…一般には延髄(えんずい)の呼吸中枢により、反射的に規則正しいリズムで行われます。

  • 止血法 1 止血法の対象者

    に外傷により出血している傷病者が対象です。内出血の場合は、その診断、出血の程

    度などの判断が難しいため、専門家に任せます。 出血部位、出血の種類、性状及び程度のほか、傷病者の顔色、四肢の変形、ショック

    症状(冷汗、顔面蒼白、四肢冷然など)はないかなど、全身をよく見ます。 優先すべきは、その出血が生命に危険を及ぼす出血、言い換えれば「大出血」がある

    か見ることです。 出全量が多いほど、また激しいほど止血を急ぐ必要があります。 ショック症状の顔貌 顔色は、蒼い。表情は、ぼんやりし冷汗をかいている。皮膚が青白く、冷たい。 成人の血液量 成人の総血液量は、体重の 13 分の1から 14 分の 1(7~8%)といわれています。この総血液量のうち、急激に 20%を失うとショック症状が出現し、急激に 30%失うと生命に危険を及ぼすことになります。

    体重 60kg の成人の場合、総血液量は、約 5ℓであり、1ℓ(20%)失うとショック症状が出現し、1.5ℓ(30%)失うと生命に危険が及んでしまうことになります。

    ショック症状(出血性ショック) 体内を循環する血液が急激に失われ、重要臓器や細胞の機能を維持するために必要な

    血液循環が得られないために発生する種々の異常を伴った状態を「ショック]といいま

    す。ショックが進行すれば、重要臓器の低酸素症をきたし、正常な細胞代謝を障害する

    悪循環に陥って、臓器不全が発生し死に至る危険もあります。 このショックの病態に起こる徴候を、「ショック症状」といいます。また、出血性ショ

    ックでは、脈拍は弱く速くなります。 2 出血の種類 ① 動脈性出血 噴き出すような出血を動脈性出血といい、真っ赤(鮮紅色)な血液が脈打つように噴

    出します。大きな血管では、瞬間的に多量の血液を失って出血死のおそれがあります。

    緊急に止血を必要とするのは、この動脈性出血です。 ② 静脈性出血 湧き出るような出血を静脈性出血といい、赤黒い(暗赤色)血液が持続的に湧くよう

    に出血します。動脈性に比べ、瞬時に死に至ることは稀ですが、大きな静脈からの出血

    が持続すれば、多量出血となり、止血の処置が遅れるとショックに陥る危険があります。

  • ③ 毛細血管性出血 にじみ出るような出血を毛細血管性出血といい、指先を切ったり、転んで擦りむいた

    ようなとき、傷口から赤色(動脈性と静脈性の中間色)の血液がにじみ出ます。この程

    度の出血は、大出血とは関係ありません。 3 直接圧迫止血法 出血部位をガーゼやタオルなどで直接強く圧迫して出血を止める方法です。 ① 出血部位を押さえる材料 清潔であること。 厚みのあるものであること(うすいものを何枚も重ねても良い)。 出血部位を十分に覆うことができる大きさがあること。 ② 圧迫の行い方 出血部位にガーゼやタオルなどを当て、その上から手で強く圧迫します。片手で止

    血できなければ、両手で圧迫したり、体重をかけて圧迫して止血します。 ほとんどの出血は、この方法で止血することができます。 圧迫したのにもかかわらず血がにじみ出る場合は、さらにその上にガーゼやタオル

    などを重ねて圧迫します。この際は、はじめにあてたガーゼやタオルなどは外さない

    でください。 ポイント 感染防止のため、ゴム手袋やビニール袋などを使用することが勧められます。 強く押さえましょう。圧迫が弱ければ止血できません。

  • 歯牙損傷

    ・ 歯牙の再植にとって最も大事なことは、歯根に付着している歯根膜を、できるだけそ

    の活性を失わないように保存すること。

    ・ 歯根膜の活性が失われると、再植した歯牙の予後は不良となり、歯根は早期に歯槽骨

    に吸収され、やがて歯牙の脱落を招く。

    ・ 最も避けなければならないことは、歯根膜の乾燥。また、歯根膜に損傷を与えるよう

    な行為は、極力避ける。

    ・ 歯根膜の活性を保持するためには、生理食塩水や牛乳中に置くことが推奨されている。

    単なる水より生理食塩水や牛乳が推奨されている

    ・ 強打された歯を、水、口腔洗浄剤、アルコール、ベタダインに浸けない。

    ・ 強打された歯を、スキムミルク、粉ミルク、ヨーグルトのような乳製品に浸けない。

    理由は、浸透圧や PH の問題であろうと思われる。

    ・ 榧@玉野消防サンもご紹介いただいたのと同様の商品ですが歯科業界では、歯牙の保

    存を目的に作られた「歯牙保存液」も商品化されている。

    ・ 歯根膜は目で見ても一般の方には分かりづらい。その歯牙が脱落する前に高度の歯周

    病に罹患していない限り、必ず歯根の周囲を被覆している。

    NSC{National Safety Council (USA)のファーストエイドテキストに歯が汚れてい

    れば歯冠を持って流水で軽くすすぎ、可能ならば抜けた歯にとって最も良い場所である歯

    槽の中に戻す。

    地面に落ちたり、歯が砕けて入れられなければ冷たいミルクにつけるか、水で歯を湿

    らせて(乾かさないで)すぐに歯を持参して歯科医を受診することを勧めている。

    また、口腔内に歯を保存する方法もある(子供は飲み込んでしまう危険があるので勧め

    てない)。アメリカにはSave-a-Tooth Kit(TM)という市販されているファーストエイド

    キットがある。また、30分以内に歯を歯槽に戻せば、再植込みは成功する事が多い。折

    れたり脱落した歯の保存には「歯牙保存液」というものが存在します。

    患者の口の中では 30 分が限度であるとメーカーHP にありますが、これらの保存液では

    12 時間の保存が可能です。

  • 質疑への対応 1 なぜ、応急手当てが必要なのですか

    救急隊や医師が到着するまでの時間に、そばにいた同僚や家族などが、応急手当を行

    い助かった例は決して少なくありません。また、応急手当が行われた方が救命効果が高

    いことについては統計的にも有意差が出ています。ですから、突然に病気などで倒れた

    場合は、その回りに居合わせた人たちが必要な応急手当を行うことにより、尊い命を救

    うことができるのです。 2 応急手当を行う心構えを教えて下さい どのような事故であっても、あわてずに直ちに応急手当を行う勇気が必要です。 応急手当は、身の回りにあるものを使って行うことが必要です。 周囲の人に協力を求めるとともに、自分でできることをまず実施することが命を救う

    ことになります。 3 突然死の原因となる心臓発作や脳卒中の症状にはどのようなものがありますか 心臓発作の代表的な症状は胸が締めつけられるような痛みです。胸の痛みだけでなく

    肩・腕・あごにかけての痛みが出ることもあります。また、痛みだけでなく、胸の圧迫

    感、冷や汗、顔面蒼白、血圧の低下により立っていられなくなるなどの症状が現れるこ

    とがあります。脳卒中には、脳の血管が詰まる脳梗塞や、脳の血管が破けるくも膜下出

    血などがあります。脳梗塞の代表的な症状は、体の片側が動かせなくなったりしびれを

    感じることです。また、うまくしゃべれなくなったり、いびきをかいて反応がなくなる

    こともあります。くも膜下出血の代表的な症状は、突発する激しい頭痛で、嘔吐を伴う

    こともあります。 これら心臓発作や脳卒中は、短期間で悪化し致命的となります。しかし、早期に治療

    すると助かる可能性が高くなることから、おかしいなと思ったら早く 119 番通報することで突然死が防げるのです。

    4 救急活動はどのように行われるのですか

    119 番通報は近くの消防署ではなく消防本部に直接つながります。通報を受けた災害救急情報センターでは、直ちに事故現場に近い消防署、出張所、移動中の救急隊に指令電

    話や無線電話等により、救急車の出動を指令します。指令を受けた救急隊は、直ちに現場

    に急行します。到着後は、事故の状態や傷病者の観察、必要な救急処置を行い、ケガや病

    気の症状に合った治療が速やかに行える医療機関へ搬送します。 5 救急車はどのようにして呼ぶのですか 電話のかけ方 119 番の通報は、一般家庭の電話や携帯電話等で 119 番通報すればつながりますが、その他電話の種類によって異なっていますので、いざというとき間違わないようにしてくだ

  • さい。 o 緊急用通報ボタン付公衆電話 緊急用通報ボタンを押してから 119 番のダイヤルを回すとつながります(10 円玉等を入れて 119 番ダイヤルしても通話は可能です)。

    o デジタル公衆電話 119 番ダイヤルを回すとつながります(10 円、100 円玉、カードを入れて 119 番ダイヤルしても通話は可能です)。

    o 赤電話やピンク電話 赤電話やピンク電話は、店の人に申し出て鍵を使わないと 119 番を回してもつながりません。

    o 携帯電話 管轄する消防本部以外につながることもありますが、その場合も管轄する消防本部へ

    転送してくれます。ただし、携帯電話では電波が届かないこともあるので、すぐそばに

    ある場合は一般電話を優先して用いてください。 また、電柱などで番地を把握したり、目標物を把握した上で連絡することが必要です。 6 心肺蘇生の実施よりも、119 番通報や AED の搬送が優先されるのはなぜか

    傷病者が心室細動や脈のない心室頻拍により心停止したときは、早く除細動する必要

    があるので、心肺蘇生の実施よりも AED の搬送が優先されます。 一万、心室細動や心室頻拍以外で心停止したときなどは、AED の搬送よりも心肺蘇生の実施が優先されます。

    しかし、市民にはこれらの区別がつかないことと、救命できる確率が高いのは、除細

    動か必要な心室細動や脈のない心室頻拍による心停止なので、一律に 119 番通報と AEDの搬送が優先されることとなりました。

    7 傷病者がうつ伏せで倒れたいた場合はどうしますか

    まずは、そのまま反応を確認します。反応がなければ大声で助けを呼び 119 番通報とAED を依頼します。次にあお向けにして気道確保し、呼吸を確認します。普段どおりの息がない場合には通常どおり心肺蘇生を実施し AED を使用します。

    8 交通事故外傷などで頸椎損傷のある傷病者の場合、どのように気道確保をしたらよい

    のでしょうか。 以前は下顎挙上法による気道確保が行なわれていましたが、修得が難しいので、医師

    や救急隊員等以外は頚推損傷のおそれがある場合でも頭部後屈あご先挙上法でゆっく

    りとやさしく頭部を後屈し気道を確保してください。 9 もし、一人でいるときに、自分自身が窒息したらどうすればよいのですか

    自分のこぶしで腹部を内上方に素早く圧迫したり、どこか固いテーブルやいすの縁に

    自分の上腹部を素早く圧迫してみましょう。

  • 10 自分がはいた息で人工呼吸をして、なぜ効果があるのか 大気中には約 21%の酸素が含まれています。私たちが呼吸で消費する酸素はこのうち

    3~5%程度であり、はいた息の中にも約 16~18%の酸素が残っていることになります。このため、呼気吹き込み人工呼吸は効果があるというわけです。

    11 人工呼吸を省略して胸骨圧迫を行っても、十分な蘇生の効果があるのに、なぜ人工呼吸をおこなわなければならないのですか 胸骨圧迫のみでも救命効果はあるのですが、すぐに AED が来ないときは、胸骨圧迫

    と人工呼吸を組み合わせて行ったほうが、蘇生の可能性がより高くなります。呼吸停止

    が原因で二次的に心停止した場合は、人工呼吸を行わなければ助けられない病態もある

    からです。 12 人工呼吸用マウスピース(一方弁付)等がなかったらどうしたらよいか

    人工呼吸を行う際には人工呼吸用マウスピース(一方弁付)等の、感染防護具を使う

    ことが望ましいです。 なお、人工呼吸がためらわれたり、人工呼吸の開始に時間がかかるときは、人工呼吸

    は省略しても構いませんので、胸骨圧迫だけはぜひ行ってください。心肺蘇生では胸骨

    圧迫が最も大切です。胸骨圧迫を行うだけで救命効果が期待できるのです。 13 応急手当を行って感染した場合の補償はどうなるのですか

    応急手当を行った結果、市民が感染症に罹患した場合は、救急隊など消防職員の協力

    要請に基づくものは「消防法」により、それ以外のものについては「警察官の職務に協

    力援助した者の災害給付に関する法律」により補償されると考えられています。 交通事故では出血を伴うケースも多いことから血液感染が考えられますが、この場合

    は「警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律」において、明らかな因果

    関係が立証されれば、血液感染の疾病に感染した場合を含めて補償の対象になると考え

    られます。 また、救急隊到着後に救急隊員が応急手当を実施している市民に対して引き続き応急

    手当を実施することを求めたり、119 番通報時に消防職員から応急手当を実施することを求められた場合は、「消防法」において、救急業務に協力した者として補償の対象に

    なると考えられます。 いずれにしても、人工呼吸や止血などの応急手当を行う場合は、感染しないように配

    意することが必要です。また、心肺蘇生が必要な傷病者に対して人工呼吸がためらわれ

    る場合は、胸骨圧迫を行うだけでも高い救命効果があるので、胸骨圧迫だけでも実施す

    ることが求められます。 14 人工呼吸の吹き込み時間が、2 秒から約 1 秒になったのはなぜですか

    人工呼吸による胸骨圧迫の中断を最小限にするためです。また、約1秒の吹込みでも

    十分な換気が得られると考えられるためです。かえって、過剰な量の吹込みは心肺蘇生

  • の効果が下がる可能性があります。 15 傷病者の口を開くことができないときの人工呼吸はどうするのですか

    口対鼻(マウスツーノーズ)人工呼吸が有効です。 1 頭部後屈あご先挙上による気道確保をし、 2 一方の手であごを押し上げながら、傷病者の□を塞ぐ 3 深く息を吸い込んで、あなたの唇で鼻を覆う。 4 そして、鼻に息を吹き込む。 5 □を押さえていた手を解除し、吹き込んだ息が出やすいようにする。 16 人工呼吸で胃膨満を防ぐには、どうすればよいのですか

    胃膨満は、過度の送気や気道に部分的な閉鎖がある場合に起こりやすくなります。胃

    膨満は、人工呼吸時に、確実な気道確保と適切な吹き込みを行うことによって、ある程

    度減少できます。約1秒かけて送気する際に、胸が軽く上がるのを必ず確認し、それ以

    上吹き込まないようにします。胃膨満が極端になると嘔吐を誘発するおそれがあります。

    もし、人工呼吸中に胃が膨れてくるようであれば、気道確保をやり直し、胸部の上下の

    動きを再確認しながら、落ちついてゆっくり吹き込むことが必要です。 17 循環のサインを確認しなくなったのはなぜですか

    従来は、呼吸がなく反応がない傷病者をみたとき、2回の人工呼吸に対する反応とし

    て呼吸の有無、咳の有無、体の動きの有無を確認し、これらがすべて無い場合は、心停

    止と判断し、胸骨圧迫を行っていました。 市民にとって、心臓が動いているか判断するために、微弱な頚動脈の拍動を、短時間

    のうちに触れて確認することが困難であることが判明したため、心肺蘇生を始める前に

    頚動脈の触知を試みることを求めず、心肺蘇生を早く行う意味を含めて考えられた方法

    でした。 しかし、循環のサインを確認するために胸骨圧迫の開始が遅れることを避けるため、

    2005 年に示された国際基準に従って循環のサインを確認する必要はなく、医師や救急隊員など以外は、反応がなく普段どおりの息がなければ呼吸も脈拍もないと判断して心肺

    蘇生を行うこととしました。 18 胸骨圧迫の位置が簡素化されたのはなぜか

    今回の改正では、心肺蘇生は胸骨圧迫が時に重要であり、救命効果を向上させるため

    には胸骨圧迫が早期に十分な力と十分な速さで絶え間なく行なわれることが重要とさ

    れました。しかし、肋骨線をなぞる従来の圧迫位置確認方法では、圧迫位置を探すのに

    時間がかかっていました。このため、同程度の正確性で、かつ短時間で圧迫位置を確認

    できる方法として圧迫位置を乳頭と乳頭の真ん中(胸骨上)としました。 19 胸骨圧迫と、人口呼吸の比率が、15:2 から 30:2 に変わったのはなぜか

  • 人工呼吸により胸骨圧迫を中断した後に再度胸骨圧迫を開始した場合、初めの数回の

    圧迫によって得られる血流量は比較的少なく、圧迫を連続するにつれて次第に増加して

    いきます。このため 15 回圧迫するよりも 30 回圧迫する方が胸骨圧迫による血流量が増えるのです。一方、胸骨圧迫回数を増やしたことにより、時問あたりの人工呼吸の回数

    は減少します。しかし時間あたりの人工呼吸回数が少なくても、血液には十分な酸素が

    いきとどきます。以上のとおり、人工呼吸の効果は十分に確保しつつ、胸骨圧迫の効果

    の向上が図れることから、胸骨圧迫と人工呼吸の比率が 15:2 から 30:2 に変更されました。

    20 胸骨圧迫と、人口呼吸の比率が、成人から乳児まで統一されたのはなぜか

    今までは、年齢区分ごとに比率が違うことから記憶にとどめにくく、市民による心肺

    蘇生が行なわれないことが憂慮されました。このため、年令区分による心肺蘇生の違い

    を最小限にし、胸骨圧迫と人工呼吸の比率が成人から乳児まで統一されました。 21 心肺蘇生しようとしたところ傷病者が入れ歯をしていたら、どうすればよいのですか

    入れ歯が外れかかっていて、邪魔になるようであれば取り除きます。安定していれば、

    そのままにしておき、すぐに気道を確保し、心肺蘇生を行います。 22 心肺蘇生が必要な傷病者がベッド上にいたとき、いつベッドから固い床に移せばよいですか

    1 反応のないことを確認したら、直ちに枕を外し気道を確保します。 2 呼吸を確認し、普段どおりの息がなければ心肺蘇生が必要と判断し、すぐに固い床な

    どに傷病者を移します。 傷病者を移動するときは、どんなときでも頭と頚を支えます。もしあなた 1 人で移動することが困難な場合は、ベッドにそのままに寝かせた状態で何か固い板等を見つけて、

    傷病者の背部に挿入します、 23 心肺蘇生中に胃内容物が逆流したら、どうすればよいのですか

    胸の上がる人工呼吸ができないようであれば、傷病者の口から胃内容物をかき出しま

    す。その際、心肺蘇生の中断ができるだけ短かくなるよう配慮します。 24 傷病者を移動する場合、どのくらい心肺蘇生を中断してもよいのですか

    あなたが一人しかいなくて、救急車を呼びに行く場合とか特別な事情がない限り、原

    則5秒以上心肺蘇生は中断してはいけません。たとえ、傷病者を移動する必要があって

    も、移動はできるだけ短時問で行い、心肺蘇生を中断することは極力避けます。 25 心肺蘇生を実施中、回復したかどうかの調べ方はどうするのですか

    心肺蘇生の効果や心拍動が回復しているかを確認するために心肺蘇生を中断する必要

    はありません。心肺蘇生中、傷病者に何らかの応答や目的のある仕草が現れたときなど

  • は回復したと判断してください。 26 心肺蘇生を中断した方がよいときは、どういう場合ですか

    傷病者に何らかの応答や目的のある仕草が出現したり、普段どおりの息が出現した場

    合は中断してください。 27 溺れた人に対する心肺蘇生はどうするのですか

    ここで問題となるのは、心肺蘇生の開始前に水を吐かせる必要があるかどうかです。

    溺れた人には、なるべく早く心肺蘇生を実施すべきであり、飲み込んだ水は、無理に吐

    かせる必要はありません。 28 AED と心肺蘇生はどちらを優先しますか

    AED を優先して行います。AED は到着し次第直ちに使用します。心肺蘇生を始める前にAEDがあれば AED の使用を優先します。AEDがその場になければ心肺蘇生を行います。

    29 電極パッドを左右逆に貼ってしまったらどうなりますか

    どの機種も、電極パッドのイラストに貼り付け位置が描かれていますが、間違って左

    右逆に貼っても問題はありません。 30 電極パッドは使い捨てですか

    Yes 1回限りの使い捨てです。また、電極パッドには使用期限があり、AED の設置者は点検が必要です。

    31 AED を使用してはいけない場所�