TOPIC ギタリストの表現の幅を広げる PEC-2の可能 …...PEC-2の可能性...

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シールド、エフェクター、プログラマブル・スイッチャーなどなど、ギター関連のアイテムを次々と開発して きたプロビデンスの魅力に迫る本連載。先月に引き続いてSiMのSHOW-HATEを試奏者に迎え、PEC-2及び プロビデンスが提唱するALL IN ONE SYSTEMの概要に迫ってみよう。 日頃からプロビデンス製品を愛用しているというSHOW-HATEに、PEC-2及びALL IN ONE SYSTEMの魅力を聞いてみよう。 ギタリストの表現の幅を広げる PEC-2の可能性 試 奏 者 プ ロ フィー ル vol. 3 プロビデンスの流儀─── レゲエとパンクを融合させた独自の音楽 性と、圧倒的なライブ・パフォーマンス でシーンを席巻しているSiMのギタリス ト。2013年にユニバーサルへ移籍。最新 アイテムはバンド10周年を記念した3枚 組DVD『i0 YEARS』。 SHOW-HATE 撮影:菊地英二 文:山本彦太郎 PEC-2 TOPIC ROUTING SYSTEM PROGRAMMABLE EFFECTS CONTROLLER 98年に発表された初代PEC-1は、それまで高価なカスタムものしかなかったプログラマブル・スイッ チャーに、使いやすく現実的な価格帯という新風を吹き込んで大きな話題となった。その後、多くのプロ・ ギタリストたちに愛用され、今やスイッチャーの代名詞とも言える存在となったのが、後継のPEC-2だ。 直列接続の5ループに、各自が独立した3ループを加えた計8ループで、各エフェクターのオン/オフとし て機能するダイレクト・モードと、複数のエフェクターをプリセットしておけるプログラム・モードの2つ で使用可能。プログラムは12バンクにそれぞれ7プログラム(計84パターン)をメモリーしておけるので、 ライブ1本まるごとの音色プリセットや複数のバンドを掛け持ちする際にも十分の機能を備えている。 PECシリーズが単なるエフェクター・スイッチャーに留まらないのは、MIDI端子の搭載はもちろん、ルー プ6 〜 8がラッチ・コントロール端子にもなっており、アンプのチャンネル切り替えにも対応している点だ。 2台のアンプの出力切り替え、複数のギターの持ち替え用入力切り替えなど、あらゆるシチュエーション を手軽にコントロールすることができる。まさにサウンド・システムの中枢とも言える存在が、PEC-2な のだ。PEC-1と比較してのダウンサイジング、フット・スイッチの強度アップ、独自のアダプターによる 低電圧時での安定動作の確保など、現場を見据えたアイディアの数々も、特筆すべき点だろう。 より小型な車や航空機で移動しやすくするため に、コンパクトで軽量な機材を求めるミュージシャ ンが増加しているアメリカのミュージック・シーン をヒントに考え出されたオール・イン・ワン・シス テムは、プロビデンスのPEC-2と、かのHUSHなど を開発し、80年代のLAサウンドの立役者でもある バック・ウォーラーが興したiSPのTHETA(プリア ンプ) & STEALTH(パワー・アンプ)の組み合わせ により、“ギターの出口からスピーカーの入り口まで” を足下で完結させるというギター・サウンド・シス テムの新提案だ。これによりサウンド・システムの 小型化、ライブ会場ごとの機材(おもにアンプ)の違 いによる音作りの悩みを解消できるという点でも、 非常に優れたライブ・サウンド・システムと言える だろう。また、最終的な信号伝達が大電力を伝送す るスピーカー・ケーブルになるため、例えば足下か ら5mのケーブルを這わせるにしても、シールド・ケー ブルより格段にノイズに強いのもメリットとなる。 これはPAシステムの考え方をギター・システムに持 ち込んだ新しい考え方だ。 THETAは、中域可変の3バンドEQを備えたペダ ル型プリアンプ。クリーン・チャンネルに加えて2タ イプのゲインを切り替えられるディストーション・ チャンネルも搭載しており、計3チャンネルで音作 りが可能だ。また、iSPのDecimator G String II回 路も内蔵しており、ノイズ・リダクションも万全。 STEALTHは最大175W出力の小型/軽量パワー・ アンプだ。 すべてを兼ね備える M I D I プ ロ グ ラ マ ブ ル・ス イッ チ ャ ー の 大 定 番 想像以上にパワーがあってしっかりした音。 弾いていて違和感がないぐらいナチュラルでした。 コ ン パ クト な 4 チ ャ ン ネ ル・モ デ ル Specifications ●ループ:8(シリーズ接続ループ×5、セパレート・ループ×3)●メモリー数:84●外形寸法:446(W) ×130(D)×50(H)mm(背面側。ジャック、スイッチなどの突起物は含まず)●重量:約1.9kg●電源: PEC-2専用ACアダプター Specifications ●ループ:4(シリーズ接続ループ×3、セパレート・ループ×1)●メモリー数: 4●外形寸法:290(W)×70(D)×40(H)mm(背面側。ジャック、スイッチ などの突起物は含まず)●重量:約780g●電源:PEC-04専用ACアダプター Presented by Providence 製品に関するお問い合わせはパシフィクス☎045-510-4060、ホームページ(http://www.providence.jp/)まで。 豊富な拡張機能を備えるバック・パネル。MIDI 端子を装備している点もポイントで、MIDI 信号による音色切り替え機能を持つアン プなどにも対応できる。さらにリンク端子で、スイッチャーを拡張することも可能。また、2 つの入力端子があるため、バッファー 回路を経由するかどうかも選択できる。 直列の3ループ+独立の1ループを備えた4チャンネル・プロ グラマブル・スイッチャー。ダイレクト/プログラム(メモリー は4パターン)の使い分けが可能なうえ、ループ4がラッチ・コ ントロール端子となっており、アンプのチャンネル切り替えに も活用できる。また、4系統のDC9V電源出力も備えており、他 エフェクターへの電源供給も可能だ。これ以外にも3ループの RX-L1、2ループ+A/BボックスのRX-S1をラインナップ。 そもそもプロビデンスは、シールドの音が好きで昔から愛用していました。3 〜 4年ぐらい前 からエフェクターが増え始め、スイッチャーが必要になったのでPEC-2を使ってみたんですが、 使い方も簡単ですぐに気に入りましたね。やっぱり直列だと何かトラブルがあった時に困るので、 1つ1つをセンド&リターンで分けられるっていうのは安心感があります。どのエフェクターがトラ ブルの原因になっているのかもすぐに見つけられますしね。普段は、各エフェクターのオン/オ フで使うダイレクトと、曲ごとに使うエフェクターを組み合わせておくプログラムを併用していま す。アンプのチャンネル切り替えも3パターンをPEC-2に割り振っているので、RX-L1(プロビデ ンスの3ループ・ボックス)でループを増やしているのがポイントですね。 今回弾かせてもらったiSPのTHETAとSTEALTHについては、普段はアンプ主体で音を作って いるので、足下で音を作るっていうのはどうだろうと思ったんですけど、想像以上にパワーがあっ てしっかりした音でした。弾いていて違和感がないぐらいナチュラルでしたね。それに、いちい ちアンプまで行かなくても、足下で音質を微調整ができるのは、意外と便利かもしれないと思い ました。僕も昔はライブハウス備え付けのアンプを使っていて、会場ごとの音の違いにはずいぶ ん悩まされましたけど、このシステムならいつも同じ音が出せるっていうのはいいですね。あと、 ノイズも軽減できるっていうのはありがたいです。 PEC-04 PROGRAMMABLE EFFECTS CONTROLLER 価格:オープン・プライス (市場実勢価格:57,000 円) 価格:オープン・プライス (市場実勢価格:29,000 円) vol. 3 プロビデンスの流儀 来月号では満を持して発表され たプロビデンス・ギターの全貌 を、今剛の試奏レポートとともに 紹介していこう! WEB連動 デジマート・マガジンにてSHOW-HATEの試奏 動画を公開予定! http://www.digimart.net/magazine/ NEXT ISSUE 自社ブランドであるプロビデンス以外にもさ まざまな製品を輸入しているパシフィクス が、アメリカのツアー事情からヒントを得て、 米国iSPとともに提案するのがALL IN ONE SYSTEMだ。その概要に迫ってみよう。 ギター スピーカー iSP THETA(プリアンプ) iSP STEALTH(パワー・アンプ) PEC-2及びエフェクター 接続例 SHOW-HATEが語る PEC-2 / ALL IN ONE SYSTEMの魅力 新提案!  ALL IN ONE SYSTEM の正体とは? REPORT POINT! ギター・アンプを使用せず、足下だけで音作りを完結することが可能。さらにiSP STEALTHからはスピーカー・ケーブルを接続 できるため、通常よりもパワフルな信号をスピーカーまで運ぶことができる。 160 161

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Page 1: TOPIC ギタリストの表現の幅を広げる PEC-2の可能 …...PEC-2の可能性 試奏者プロフィール プロビデンスの流儀 vol. 3 レゲエとパンクを融合させた独自の音楽

シールド、エフェクター、プログラマブル・スイッチャーなどなど、ギター関連のアイテムを次々と開発してきたプロビデンスの魅力に迫る本連載。先月に引き続いてSiMのSHOW-HATEを試奏者に迎え、PEC-2及びプロビデンスが提唱するALL IN ONE SYSTEMの概要に迫ってみよう。

日頃からプロビデンス製品を愛用しているというSHOW-HATEに、PEC-2及びALL IN ONE SYSTEMの魅力を聞いてみよう。

ギタリストの表現の幅を広げるPEC-2の可能性

試 奏 者プロフィール

vol. 3プ ロ ビ デ ン ス の 流 儀 ───レゲエとパンクを融合させた独自の音楽性と、圧倒的なライブ・パフォーマンスでシーンを席巻しているSiMのギタリスト。2013年にユニバーサルへ移籍。最新アイテムはバンド10周年を記念した3枚組DVD『i0 YEARS』。

SHOW-HATE

撮影:菊地英二 文:山本彦太郎

PEC-2

TOPIC

ROUTING SYSTEMPROGRAMMABLE EFFECTS CONTROLLER

 98年に発表された初代PEC-1は、それまで高価なカスタムものしかなかったプログラマブル・スイッチャーに、使いやすく現実的な価格帯という新風を吹き込んで大きな話題となった。その後、多くのプロ・ギタリストたちに愛用され、今やスイッチャーの代名詞とも言える存在となったのが、後継のPEC-2だ。直列接続の5ループに、各自が独立した3ループを加えた計8ループで、各エフェクターのオン/オフとして機能するダイレクト・モードと、複数のエフェクターをプリセットしておけるプログラム・モードの2つで使用可能。プログラムは12バンクにそれぞれ7プログラム(計84パターン)をメモリーしておけるので、ライブ1本まるごとの音色プリセットや複数のバンドを掛け持ちする際にも十分の機能を備えている。PECシリーズが単なるエフェクター・スイッチャーに留まらないのは、MIDI端子の搭載はもちろん、ループ6 〜 8がラッチ・コントロール端子にもなっており、アンプのチャンネル切り替えにも対応している点だ。2台のアンプの出力切り替え、複数のギターの持ち替え用入力切り替えなど、あらゆるシチュエーションを手軽にコントロールすることができる。まさにサウンド・システムの中枢とも言える存在が、PEC-2なのだ。PEC-1と比較してのダウンサイジング、フット・スイッチの強度アップ、独自のアダプターによる低電圧時での安定動作の確保など、現場を見据えたアイディアの数々も、特筆すべき点だろう。

 より小型な車や航空機で移動しやすくするために、コンパクトで軽量な機材を求めるミュージシャンが増加しているアメリカのミュージック・シーンをヒントに考え出されたオール・イン・ワン・システムは、プロビデンスのPEC-2と、かのHUSHなどを開発し、80年代のLAサウンドの立役者でもあるバック・ウォーラーが興したiSPのTHETA(プリアンプ) & STEALTH(パワー・アンプ)の組み合わせにより、“ギターの出口からスピーカーの入り口まで”を足下で完結させるというギター・サウンド・システムの新提案だ。これによりサウンド・システムの小型化、ライブ会場ごとの機材(おもにアンプ)の違いによる音作りの悩みを解消できるという点でも、非常に優れたライブ・サウンド・システムと言える

だろう。また、最終的な信号伝達が大電力を伝送するスピーカー・ケーブルになるため、例えば足下から5mのケーブルを這わせるにしても、シールド・ケーブルより格段にノイズに強いのもメリットとなる。これはPAシステムの考え方をギター・システムに持ち込んだ新しい考え方だ。 THETAは、中域可変の3バンドEQを備えたペダル型プリアンプ。クリーン・チャンネルに加えて2タイプのゲインを切り替えられるディストーション・チャンネルも搭載しており、計3チャンネルで音作りが可能だ。また、iSPのDecimator G String II回路も内蔵しており、ノイズ・リダクションも万全。STEALTHは最大175W出力の小型/軽量パワー・アンプだ。

す べ て を 兼 ね 備 え るM I D I プ ロ グ ラ マ ブ ル・ス イッチャ ー の 大 定 番

想 像 以 上 に パ ワ ー が あってしっか りし た 音 。弾 い て い て 違 和 感 が な い ぐら い ナ チュラ ル でし た 。

コ ン パ クトな 4 チャン ネ ル・モ デ ル

S p e c i f i c a t i o n s●ループ:8(シリーズ接続ループ×5、セパレート・ループ×3)●メモリー数:84●外形寸法:446(W)×130(D)×50(H)mm(背面側。ジャック、スイッチなどの突起物は含まず)●重量:約1.9kg●電源:PEC-2専用ACアダプター

S p e c i f i c a t i o n s●ループ:4(シリーズ接続ループ×3、セパレート・ループ×1)●メモリー数:4●外形寸法:290(W)×70(D)×40(H)mm(背面側。ジャック、スイッチなどの突起物は含まず)●重量:約780g●電源:PEC-04専用ACアダプター

●Presented by Providence 製品に関するお問い合わせはパシフィクス☎045-510-4060、ホームページ(http://www.providence.jp/)まで。

豊富な拡張機能を備えるバック・パネル。MIDI 端子を装備している点もポイントで、MIDI 信号による音色切り替え機能を持つアンプなどにも対応できる。さらにリンク端子で、スイッチャーを拡張することも可能。また、2 つの入力端子があるため、バッファー回路を経由するかどうかも選択できる。

 直列の3ループ+独立の1ループを備えた4チャンネル・プログラマブル・スイッチャー。ダイレクト/プログラム(メモリーは4パターン)の使い分けが可能なうえ、ループ4がラッチ・コントロール端子となっており、アンプのチャンネル切り替えにも活用できる。また、4系統のDC9V電源出力も備えており、他エフェクターへの電源供給も可能だ。これ以外にも3ループのRX-L1、2ループ+A/BボックスのRX-S1をラインナップ。

 そもそもプロビデンスは、シールドの音が好きで昔から愛用していました。3 〜 4年ぐらい前からエフェクターが増え始め、スイッチャーが必要になったのでPEC-2を使ってみたんですが、使い方も簡単ですぐに気に入りましたね。やっぱり直列だと何かトラブルがあった時に困るので、1つ1つをセンド&リターンで分けられるっていうのは安心感があります。どのエフェクターがトラブルの原因になっているのかもすぐに見つけられますしね。普段は、各エフェクターのオン/オフで使うダイレクトと、曲ごとに使うエフェクターを組み合わせておくプログラムを併用しています。アンプのチャンネル切り替えも3パターンをPEC-2に割り振っているので、RX-L1(プロビデンスの3ループ・ボックス)でループを増やしているのがポイントですね。 今回弾かせてもらったiSPのTHETAとSTEALTHについては、普段はアンプ主体で音を作っているので、足下で音を作るっていうのはどうだろうと思ったんですけど、想像以上にパワーがあってしっかりした音でした。弾いていて違和感がないぐらいナチュラルでしたね。それに、いちいちアンプまで行かなくても、足下で音質を微調整ができるのは、意外と便利かもしれないと思いました。僕も昔はライブハウス備え付けのアンプを使っていて、会場ごとの音の違いにはずいぶん悩まされましたけど、このシステムならいつも同じ音が出せるっていうのはいいですね。あと、ノイズも軽減できるっていうのはありがたいです。

PEC-04PROGRAMMABLE EFFECTS CONTROLLER

価格:オープン・プライス(市場実勢価格:57,000 円)

価格:オープン・プライス(市場実勢価格:29,000 円)

vol. 3

プ ロ ビ デ ン ス の 流 儀

来月号では満を持して発表されたプロビデンス・ギターの全貌を、今剛の試奏レポートとともに紹介していこう!

W E B 連 動デジマート・マガジンにてSHOW-HATEの試奏動画を公開予定!

http://www.digimart.net/magazine/

▶NEXT ISSUE

自社ブランドであるプロビデンス以外にもさまざまな製品を輸入しているパシフィクスが、アメリカのツアー事情からヒントを得て、米国iSPとともに提案するのがALL IN ONE SYSTEMだ。その概要に迫ってみよう。

ギター スピーカーiSP THETA(プリアンプ) iSP STEALTH(パワー・アンプ)PEC-2及びエフェクター

接続例

SHOW-HATEが語るPEC-2 / ALL IN ONE SYSTEMの魅力

新提案! ALL IN ONE SYSTEMの正体とは?

REPORT

POINT! ギター・アンプを使用せず、足下だけで音作りを完結することが可能。さらにiSP STEALTHからはスピーカー・ケーブルを接続できるため、通常よりもパワフルな信号をスピーカーまで運ぶことができる。

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