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人口減少社会における入湯税収の役割と今後のあり方  241 人口減少社会における 入湯税収の役割と今後のあり方 ――新潟県の方向性―― 目  次 はじめに 第1章 東日本大震災以降の全国と新潟県の動向 第2章 都道府県別にみた人口・税収動向 第3章 都道府県別にみた観光動向 第4章 地域別にみた温泉地の入湯税収動向 第5章 入湯税の増収策と今後の方向性 おわりに 池田 尚 (株式会社北越銀行)

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人口減少社会における入湯税収の役割と今後のあり方  241

人口減少社会における入湯税収の役割と今後のあり方

――新潟県の方向性――

目  次はじめに第1章 東日本大震災以降の全国と新潟県の動向第2章 都道府県別にみた人口・税収動向第3章 都道府県別にみた観光動向第4章 地域別にみた温泉地の入湯税収動向第5章 入湯税の増収策と今後の方向性おわりに

池田 尚(株式会社北越銀行)

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242

はじめに

 今日、日本の特に地方において、都会への人口流出と少子高齢化により

人口減少問題が深刻化しています。地域の存続には、その地で生活する住

民や企業等からの税収が基礎自治体にとって不可欠ですが、人口の減少に

伴い、税収不足による財政難が懸念されます。こうした中、地域が衰退す

ることなく今後発展していくためには、定住者からの納税にこだわらない

新たな財源が必要であり、課税対象者数の拡大は喫緊の課題です。昨今注

目されている、ふるさと納税、宿泊税、国際観光旅客税(いわゆる出国

税)などは、地域外の人や法人から資金を徴収して自治体の財源を確保し

ようとする共通の流れから生まれたものととらえることができます。

 私は、新たな財源確保は勿論重要ですが、むしろ、既存の財源である入

湯税をもっと見直すべきだと考えます。入湯税は観光振興等に資する目的

税ですが、課税対象者が地域外の場合が多く、今後、宿泊者数の増加によ

り課税対象者数の拡大が期待できる税金です。「温泉」という現存する貴

重な「地域資源」を「観光資源」として最大限活用できます。現在、全国

の入湯税収は約224億円(2016年度)で、地方税収全体の0.06%にすぎま

せん。しかし、インフラ等を整備する財源が乏しい地方にとって、国から

の交付金に頼らず、現存する地方税の体系の中で、訪問客を満足させる観

光施設の整備等に充当する目的税である入湯税が果たす役割は大きく、そ

の増収は今後最重視すべき財政政策であると言えます。

 温泉地を取り巻く自然条件・社会条件は日本各地で異なるものの、温泉

地の快適な環境の維持は、住民と訪問客の双方の生活に潤いを与え、人生

をリフレッシュさせる効果が期待できます。政府が観光産業を国の重要産

業としている今こそ、入湯税収を観光まちづくり財源の一つとして有効活

用する機運を全国的に高めていく好機と思われます。

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人口減少社会における入湯税収の役割と今後のあり方  243

 そこで、本稿では、この「入湯税」にスポットをあて、その税収動向を

地域別にみた上で、新潟県をはじめ入湯税収が伸び悩んでいる地方の基礎

自治体が生き残っていくには、今後、どうすべきかを考えてみようと思

い、筆をとりました。

第1章 東日本大震災以降の全国と新潟県の動向

 本章では、東日本大震災以降、全国の課税対象者数がどう変化してきて

いるのかを2012~16年度の全国と新潟県の人口動向から把握してみます

(図表1−1、1−2参照)。

 総務省の「人口推計」で、2012~16年度の総人口の推移(各年度10月

1日現在)をみると、全国の総人口は、微減基調を辿り、4年間で約60万

人(127.5百万人→126.9百万人)減少しています。これに伴い、全国の課

税対象者数も減少していると考えられます。

図表1-1 全国の総人口の推移(各年度10月1日現在)

第1章 東日本大震災以降の全国と新潟県の動向

本章では、東日本大震災以降、全国の課税対象者数がどう変化してきているのかを 2012

~16 年度の全国と新潟県の人口動向から把握してみます(図表 1-1、1-2 参照)。

総務省の「人口推計」で、2012~16 年度の総人口の推移(各年度 10 月 1 日現在)をみ

ると、全国の総人口は、微減基調を辿り、4年間で約 60 万人(127.5 百万人→126.9 百万

人)減少しています。これに伴い、全国の課税対象者数も減少していると考えられます。

一方、2012~16 年度の新潟県の総人口は、毎年 15 千人前後減少し、4年間で約6万人

(2,347 千人→2,286 千人)減少しています。新潟県の課税対象者数は、全国以上に大きく

減少していると考えられます。

総人口が減少する中、地方税収(府道県税+市町村税)はどうなっているでしょう。全

国と新潟県の地方税収の 2012~16 年度の推移をみてみます(図表 1-3、1-4 参照)。

127.5  127.3  127.1  127.1  126.9 

125

126

127

128

129

130

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

(百万人)

総務省「人口推計」を基に筆者作成

図表1‐1 全国の総人口の推移(各年度10月1日現在)

2,347 

2,330 

2,313 2,304 

2,286 

2,280

2,290

2,300

2,310

2,320

2,330

2,340

2,350

2,360

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

(千人)

総務省「人口推計」を基に筆者作成

図表1‐2 新潟県の総人口の推移(各年度10月1日現在)

 一方、2012~16年度の新潟県の総人口は、毎年15千人前後減少し、4

年間で約6万人(2,347千人→2,286千人)減少しています。新潟県の課税

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244

対象者数は、全国以上に大きく減少していると考えられます。

図表1-2 新潟県の総人口の推移(各年度10月1日現在)

第1章 東日本大震災以降の全国と新潟県の動向

本章では、東日本大震災以降、全国の課税対象者数がどう変化してきているのかを 2012

~16 年度の全国と新潟県の人口動向から把握してみます(図表 1-1、1-2 参照)。

総務省の「人口推計」で、2012~16 年度の総人口の推移(各年度 10 月 1 日現在)をみ

ると、全国の総人口は、微減基調を辿り、4年間で約 60 万人(127.5 百万人→126.9 百万

人)減少しています。これに伴い、全国の課税対象者数も減少していると考えられます。

一方、2012~16 年度の新潟県の総人口は、毎年 15 千人前後減少し、4年間で約6万人

(2,347 千人→2,286 千人)減少しています。新潟県の課税対象者数は、全国以上に大きく

減少していると考えられます。

総人口が減少する中、地方税収(府道県税+市町村税)はどうなっているでしょう。全

国と新潟県の地方税収の 2012~16 年度の推移をみてみます(図表 1-3、1-4 参照)。

127.5  127.3  127.1  127.1  126.9 

125

126

127

128

129

130

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

(百万人)

総務省「人口推計」を基に筆者作成

図表1‐1 全国の総人口の推移(各年度10月1日現在)

2,347 

2,330 

2,313 2,304 

2,286 

2,280

2,290

2,300

2,310

2,320

2,330

2,340

2,350

2,360

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

(千人)

総務省「人口推計」を基に筆者作成

図表1‐2 新潟県の総人口の推移(各年度10月1日現在)

 総人口が減少する中、地方税収(府道県税+市町村税)はどうなってい

るでしょう。全国と新潟県の地方税収の2012~16年度の推移をみてみます

(図表1−3、1−4参照)。

 全国の地方税収は、2013年度に24.69兆円と前年度比9千億円減少しま

したが、2013年度を底として増加基調に転じ、2016年度は38.56兆円と、

3年間で4兆円弱増加しています。課税対象者数が減少しているにもかか

わらず税収が増加しているのは、1人当たりの課税負担が増加しているた

めです。しかし、今後、「稼ぐ力」が弱まって1人当たりの収入が減れ

ば、額の増加で補いきれずに税収が減少していくと予想され、財政難に陥

ることが懸念されます。

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人口減少社会における入湯税収の役割と今後のあり方  245

図表1-3 全国の地方税収(府道県税+市町村税)の推移

全国の地方税収は、2013 年度に 24.69 兆円と前年度比 9 千億円減少しましたが、2013

年度を底として増加基調に転じ、2016 年度は 38.56 兆円と、3年間で4兆円弱増加してい

ます。課税対象者数が減少しているにもかかわらず税収が増加しているのは、1 人当たり

の課税負担が増加しているためです。しかし、今後、「稼ぐ力」が弱まって 1 人当たりの

収入が減れば、額の増加で補いきれずに税収が減少していくと予想され、財政難に陥るこ

とが懸念されます。

一方、新潟県の地方税収は、2013 年度に減少、14 年度、15 年度に増加、16 年度に再度

減少と、6千億円近傍で一進一退の推移を辿り、既に不安定な状況となっています。

このように、地方税収全体が全国で増加基調、新潟県で一進一退の推移の中、本稿テー

マである入湯税収はそれぞれどう推移しているでしょう。2012~16 年度の全国と新潟県の

入湯税収の動向をみてみます(図表 1-5、1-6 参照)。

全国の入湯税収は、2012年度~15年度は右肩上がりで推移し、3年間で約10億円(21,799

百万円→22,743 百万円)増加しました。2016年度は前年度比 3億円強減少し、税収は 22,427

百万円ですが、この額は、市町村税収の 0.12%、地方税収全体の 0.06%にすぎません。

3,559 

3,469 

3,605 

3,830  3,856 

3,400

3,500

3,600

3,700

3,800

3,900

4,000

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

(百億円)

総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成

図表1‐3 全国の地方税収(府道県税+市町村税)の推移

59 

56 

57 

61 60 

55

56

57

58

59

60

61

62

63

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

(百億円)

総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成

図表1‐4 新潟県の地方税収(府道県税+市町村税)の推移

 一方、新潟県の地方税収は、2013年度に減少、14年度、15年度に増加、

16年度に再度減少と、6千億円近傍で一進一退の推移を辿り、既に不安定

な状況となっています。

図表1-4 新潟県の地方税収(府道県税+市町村税)の推移

全国の地方税収は、2013 年度に 24.69 兆円と前年度比 9 千億円減少しましたが、2013

年度を底として増加基調に転じ、2016 年度は 38.56 兆円と、3年間で4兆円弱増加してい

ます。課税対象者数が減少しているにもかかわらず税収が増加しているのは、1 人当たり

の課税負担が増加しているためです。しかし、今後、「稼ぐ力」が弱まって 1 人当たりの

収入が減れば、額の増加で補いきれずに税収が減少していくと予想され、財政難に陥るこ

とが懸念されます。

一方、新潟県の地方税収は、2013 年度に減少、14 年度、15 年度に増加、16 年度に再度

減少と、6千億円近傍で一進一退の推移を辿り、既に不安定な状況となっています。

このように、地方税収全体が全国で増加基調、新潟県で一進一退の推移の中、本稿テー

マである入湯税収はそれぞれどう推移しているでしょう。2012~16 年度の全国と新潟県の

入湯税収の動向をみてみます(図表 1-5、1-6 参照)。

全国の入湯税収は、2012年度~15年度は右肩上がりで推移し、3年間で約10億円(21,799

百万円→22,743 百万円)増加しました。2016年度は前年度比 3億円強減少し、税収は 22,427

百万円ですが、この額は、市町村税収の 0.12%、地方税収全体の 0.06%にすぎません。

3,559 

3,469 

3,605 

3,830  3,856 

3,400

3,500

3,600

3,700

3,800

3,900

4,000

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

(百億円)

総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成

図表1‐3 全国の地方税収(府道県税+市町村税)の推移

59 

56 

57 

61 60 

55

56

57

58

59

60

61

62

63

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

(百億円)

総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成

図表1‐4 新潟県の地方税収(府道県税+市町村税)の推移

 このように、地方税収全体が全国で増加基調、新潟県で一進一退の推移

の中、本稿テーマである入湯税収はそれぞれどう推移しているでしょう。

2012~16年度の全国と新潟県の入湯税収の動向をみてみます(図表1−

5、1−6参照)。

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246

 全国の入湯税収は、2012年度~15年度は右肩上がりで推移し、3年間で

約10億円(21,799百万円→22,743百万円)増加しました。2016年度は前年

度比3億円強減少し、税収は22,427百万円ですが、この額は、市町村税収

の0.12%、地方税収全体の0.06%にすぎません。

図表1-5 全国の入湯税収の推移

一方、新潟県の入湯税収は、2013 年度、2014 年度と減少し、2015 年度増加したものの、

2016 年度再度やや減少しており、総じて伸び悩んでいます。2016 年度の税収は 855 百万円

ですが、この額は地方税収全体の 0.14%です。

ところで、入湯税は市町村税の一つであり、観光施設整備等に充当する目的税ですが、

間接税のため、温泉施設利用者が基礎自治体である市町村に直接支払うわけではなく、温

泉施設業者に支払った施設利用料(宿泊料や入湯税を含む)の中の入湯税分を温泉施設業

者が市町村に支払っています。入湯税を支払う温泉施設利用者は当該市町村の住民だけで

なく、市町村外からの来訪者が大半を占めています。近年、定住人口の減少により、住民

税や法人税の課税対象者数は縮小しています。しかし、入湯税の課税対象者数は、インバ

ウンド需要等による外来者数の増加に伴って拡大していく余地が大きく、各自治体や温泉

施設関係者の努力如何で今後の伸びも大いに期待できることから、貴重な財源として市町

村財政に果たす役割は益々大きくなると思われます。

第2章 都道府県別にみた人口・税収動向

21,799 22,062 

22,373 

22,743 

22,427 

21,000

21,500

22,000

22,500

23,000

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

(百万円)

総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成

図表1‐5 全国の入湯税収の推移

876 

849 

830 

857  855 

800

820

840

860

880

900

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

(百万円)

総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成

図表1‐6 新潟県の入湯税収の推移

 一方、新潟県の入湯税収は、2013年度、2014年度と減少し、2015年度

増加したものの、2016年度再度やや減少しており、総じて伸び悩んでいま

す。2016年度の税収は855百万円ですが、この額は地方税収全体の0.14%

です。

図表1-6 新潟県の入湯税収の推移

一方、新潟県の入湯税収は、2013 年度、2014 年度と減少し、2015 年度増加したものの、

2016 年度再度やや減少しており、総じて伸び悩んでいます。2016 年度の税収は 855 百万円

ですが、この額は地方税収全体の 0.14%です。

ところで、入湯税は市町村税の一つであり、観光施設整備等に充当する目的税ですが、

間接税のため、温泉施設利用者が基礎自治体である市町村に直接支払うわけではなく、温

泉施設業者に支払った施設利用料(宿泊料や入湯税を含む)の中の入湯税分を温泉施設業

者が市町村に支払っています。入湯税を支払う温泉施設利用者は当該市町村の住民だけで

なく、市町村外からの来訪者が大半を占めています。近年、定住人口の減少により、住民

税や法人税の課税対象者数は縮小しています。しかし、入湯税の課税対象者数は、インバ

ウンド需要等による外来者数の増加に伴って拡大していく余地が大きく、各自治体や温泉

施設関係者の努力如何で今後の伸びも大いに期待できることから、貴重な財源として市町

村財政に果たす役割は益々大きくなると思われます。

第2章 都道府県別にみた人口・税収動向

21,799 22,062 

22,373 

22,743 

22,427 

21,000

21,500

22,000

22,500

23,000

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

(百万円)

総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成

図表1‐5 全国の入湯税収の推移

876 

849 

830 

857  855 

800

820

840

860

880

900

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

(百万円)

総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成

図表1‐6 新潟県の入湯税収の推移

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人口減少社会における入湯税収の役割と今後のあり方  247

 ところで、入湯税は市町村税の一つであり、観光施設整備等に充当する

目的税ですが、間接税のため、温泉施設利用者が基礎自治体である市町村

に直接支払うわけではなく、温泉施設業者に支払った施設利用料(宿泊料

や入湯税を含む)の中の入湯税分を温泉施設業者が市町村に支払っていま

す。入湯税を支払う温泉施設利用者は当該市町村の住民だけでなく、市町

村外からの来訪者が大半を占めています。近年、定住人口の減少により、

住民税や法人税の課税対象者数は縮小しています。しかし、入湯税の課税

対象者数は、インバウンド需要等による外来者数の増加に伴って拡大して

いく余地が大きく、各自治体や温泉施設関係者の努力如何で今後の伸びも

大いに期待できることから、貴重な財源として市町村財政に果たす役割は

益々大きくなると思われます。

第2章 都道府県別にみた人口・税収動向

 第2章では、人口と税収の全国47都道府県別順位で、各地の置かれてい

る状況を確認してみます。

 まず、2016年10月1日現在の総人口の全国順位をみてみます(図表2−

1参照)。

図表2-1 都道府県別にみた総人口(2016年10月1日現在)

第2章では、人口と税収の全国 47 都道府県別順位で、各地の置かれている状況を確認し

てみます。

まず、2016 年 10 月 1 日現在の総人口の全国順位をみてみます(図表 2-1 参照)。

総人口の全国順位は、東京都が 1 位、神奈川県が2位、大阪府が3位と上位は三大都市

圏の地域が占め、地方の道県では、北海道が8位、福岡県が9位、宮城県が 14 位、新潟県

が 15 位です。

また、2012~16 年度の総人口の増減数を都道府県別に比較すると、トップの東京都の増

加数が突出して大きく、8都府県は増加しているものの、残り 39 道府県は都市圏への人口

流出等により減少しています。2011 年3月に発生した東日本大震災以降、地方の総人口は、

福岡県や宮城県などごく一部では増加しているものの、大部分の地域で減少しており、中

でも、新潟県や北海道は、若者の流出等による人口減少数が大きく、既に地域存続に関わ

る深刻な問題となっています(図表 2-2 参照)。

次に、2016 年度の地方税収の全国順位を都道府県別にみてみます(図表 2-3 参照)。

13.6 

9.1 

2.3 

0

2

4

6

8

10

12

14

16

東京都

神奈川県

大阪府

愛知県

埼玉県

千葉県

兵庫県

北海道

福岡県

静岡県

茨城県

広島県

京都府

宮城県

新潟県

長野県

岐阜県

群馬県

栃木県

岡山県

福島県

三重県

熊本県

鹿児島県

沖縄県

滋賀県

山口県

愛媛県

長崎県

奈良県

青森県

岩手県

大分県

石川県

山形県

宮崎県

富山県

秋田県

香川県

和歌山県

山梨県

佐賀県

福井県

徳島県

高知県

島根県

鳥取県

(百万人)

総務省「人口推計」を基に筆者作成

図表2‐1 都道府県別にみた総人口(2016年10月1日現在)

394 

80 78 77 41 30 19  5 

‐2 ‐11 ‐12 ‐12 ‐15 ‐17 ‐17 ‐17 ‐20 ‐21 ‐21 ‐22 ‐23 ‐25 ‐25 ‐26 ‐26 ‐30 ‐31 ‐32 ‐33 ‐34 ‐34 ‐35 ‐37 ‐38 ‐39 ‐39 ‐40 ‐41 ‐44 ‐47 ‐51 ‐53 ‐53 ‐57 ‐61 ‐61 ‐108 

‐200

‐100

0

100

200

300

400

500

東京都

愛知県

神奈川県

埼玉県

千葉県

沖縄県

福岡県

宮城県

滋賀県

広島県

石川県

鳥取県

佐賀県

福井県

島根県

香川県

京都府

富山県

岡山県

山梨県

大阪府

群馬県

大分県

栃木県

徳島県

宮崎県

高知県

三重県

熊本県

奈良県

和歌山県

岩手県

山口県

茨城県

山形県

岐阜県

愛媛県

長崎県

長野県

静岡県

兵庫県

秋田県

鹿児島県

青森県

福島県

新潟県

北海道

(千人)

総務省「人口推計」を基に筆者作成

図表2‐2 都道府県別にみた総人口の増減数(2012~16年)

Page 8: ±n þqtSZ Ö lk )w þÂq wK M · ¤ ö ö1* 3º~ >2 º6ë[(Ù S Ç>& $Ò S Ç $Ò S Ç>' ö aKZ8rM G _ 8 ² \b1"&ï P1ß* Xv ö aKZ8 \*

248

 総人口の全国順位は、東京都が1位、神奈川県が2位、大阪府が3位と

上位は三大都市圏の地域が占め、地方の道県では、北海道が8位、福岡県

が9位、宮城県が14位、新潟県が15位です。

 また、2012~16年度の総人口の増減数を都道府県別に比較すると、トッ

プの東京都の増加数が突出して大きく、8都府県は増加しているものの、

残り39道府県は都市圏への人口流出等により減少しています。2011年3月

に発生した東日本大震災以降、地方の総人口は、福岡県や宮城県などごく

一部では増加しているものの、大部分の地域で減少しており、中でも、新

潟県や北海道は、若者の流出等による人口減少数が大きく、既に地域存続

に関わる深刻な問題となっています(図表2−2参照)。

図表2-2 都道府県別にみた総人口の増減数(2012~16年)

第2章では、人口と税収の全国 47 都道府県別順位で、各地の置かれている状況を確認し

てみます。

まず、2016 年 10 月 1 日現在の総人口の全国順位をみてみます(図表 2-1 参照)。

総人口の全国順位は、東京都が 1 位、神奈川県が2位、大阪府が3位と上位は三大都市

圏の地域が占め、地方の道県では、北海道が8位、福岡県が9位、宮城県が 14 位、新潟県

が 15 位です。

また、2012~16 年度の総人口の増減数を都道府県別に比較すると、トップの東京都の増

加数が突出して大きく、8都府県は増加しているものの、残り 39 道府県は都市圏への人口

流出等により減少しています。2011 年3月に発生した東日本大震災以降、地方の総人口は、

福岡県や宮城県などごく一部では増加しているものの、大部分の地域で減少しており、中

でも、新潟県や北海道は、若者の流出等による人口減少数が大きく、既に地域存続に関わ

る深刻な問題となっています(図表 2-2 参照)。

次に、2016 年度の地方税収の全国順位を都道府県別にみてみます(図表 2-3 参照)。

13.6 

9.1 

2.3 

0

2

4

6

8

10

12

14

16

東京都

神奈川県

大阪府

愛知県

埼玉県

千葉県

兵庫県

北海道

福岡県

静岡県

茨城県

広島県

京都府

宮城県

新潟県

長野県

岐阜県

群馬県

栃木県

岡山県

福島県

三重県

熊本県

鹿児島県

沖縄県

滋賀県

山口県

愛媛県

長崎県

奈良県

青森県

岩手県

大分県

石川県

山形県

宮崎県

富山県

秋田県

香川県

和歌山県

山梨県

佐賀県

福井県

徳島県

高知県

島根県

鳥取県

(百万人)

総務省「人口推計」を基に筆者作成

図表2‐1 都道府県別にみた総人口(2016年10月1日現在)

394 

80 78 77 41 30 19  5 

‐2 ‐11 ‐12 ‐12 ‐15 ‐17 ‐17 ‐17 ‐20 ‐21 ‐21 ‐22 ‐23 ‐25 ‐25 ‐26 ‐26 ‐30 ‐31 ‐32 ‐33 ‐34 ‐34 ‐35 ‐37 ‐38 ‐39 ‐39 ‐40 ‐41 ‐44 ‐47 ‐51 ‐53 ‐53 ‐57 ‐61 ‐61 ‐108 

‐200

‐100

0

100

200

300

400

500

東京都

愛知県

神奈川県

埼玉県

千葉県

沖縄県

福岡県

宮城県

滋賀県

広島県

石川県

鳥取県

佐賀県

福井県

島根県

香川県

京都府

富山県

岡山県

山梨県

大阪府

群馬県

大分県

栃木県

徳島県

宮崎県

高知県

三重県

熊本県

奈良県

和歌山県

岩手県

山口県

茨城県

山形県

岐阜県

愛媛県

長崎県

長野県

静岡県

兵庫県

秋田県

鹿児島県

青森県

福島県

新潟県

北海道

(千人)

総務省「人口推計」を基に筆者作成

図表2‐2 都道府県別にみた総人口の増減数(2012~16年)

 次に、2016年度の地方税収の全国順位を都道府県別にみてみます(図表

2−3参照)。

Page 9: ±n þqtSZ Ö lk )w þÂq wK M · ¤ ö ö1* 3º~ >2 º6ë[(Ù S Ç>& $Ò S Ç $Ò S Ç>' ö aKZ8rM G _ 8 ² \b1"&ï P1ß* Xv ö aKZ8 \*

人口減少社会における入湯税収の役割と今後のあり方  249

図表2-3 都道府県別にみた地方税収(2016年度)

地方税収の全国順位は、総人口同様、東京都が 1 位、神奈川県が2位、大阪府が3位と

上位は三大都市圏の地域が占め、新潟県は宮城県に次いで 15 位です。しかし、総人口と地

方税収を比較すると、地方税収の方がトップの東京都がより突出しており、一極集中の様

相がより明確です。

さらに、2012~16 年度の地方税収の増減を都道府県別に比較すると、トップの東京都の

増加数は 1 兆 2 千億円弱で突出している半面、47 都道府県中 7 県が減少しています。この

間の総人口が全国で北海道に次ぎ大きく減少した新潟県は、地方税収こそ約 85 億円増加し

ていますが、近隣の群馬県、富山県、長野県に比べ増加数が小さくなっています。一方、

総人口が最も減少した北海道は、地方税収が約 518 億円も増加しており、全国第 10 位の増

加数となっています(図表 2-4 参照)。

681 

288 279 270 

196 176 

158 136 136 

116 82  82  72  65  60  58  58  56  55  53  52  52  39  39  37  36  34  33  31  30  30  30  29  29  28  26  26  24  23  23  23  22  19  19  16  16  13 

0

100

200

300

400

500

600

700

800

東京都

神奈川県

大阪府

愛知県

埼玉県

千葉県

兵庫県

北海道

福岡県

静岡県

広島県

茨城県

京都府

宮城県

新潟県

栃木県

群馬県

長野県

岐阜県

三重県

岡山県

福島県

熊本県

滋賀県

山口県

鹿児島県

愛媛県

石川県

奈良県

富山県

沖縄県

岩手県

長崎県

青森県

大分県

香川県

山形県

宮崎県

福井県

和歌山県

山梨県

秋田県

佐賀県

徳島県

高知県

島根県

鳥取県

(百億円)

総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成

図表2‐3 都道府県別にみた地方税収(2016年度)

11999 

3184 2931 

2010 1489 

920  820  616  548  518  419  387  373  366  336  317  260  222 199 180 176 164 134 130 127 107  104  102  97  92  86  85  69  58  53  52  33  26  23  17 

‐2  ‐6  ‐15  ‐39  ‐40  ‐41  ‐55 

‐2,000

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

東京都

愛知県

大阪府

千葉県

神奈川県

福岡県

兵庫県

宮城県

埼玉県

北海道

広島県

群馬県

福島県

岡山県

沖縄県

静岡県

三重県

山口県

茨城県

石川県

京都府

富山県

鹿児島県

愛媛県

岐阜県

岩手県

長野県

香川県

大分県

滋賀県

栃木県

新潟県

福井県

和歌山県

熊本県

宮崎県

高知県

佐賀県

島根県

長崎県

山形県

鳥取県

山梨県

青森県

秋田県

奈良県

徳島県

(億円)

総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成

図表2‐4 都道府県別にみた地方税収の増減(2012~16年度)

 地方税収の全国順位は、総人口同様、東京都が1位、神奈川県が2位、

大阪府が3位と上位は三大都市圏の地域が占め、新潟県は宮城県に次いで

15位です。しかし、総人口と地方税収を比較すると、地方税収の方がトッ

プの東京都が突出しており、一極集中の様相がより明確です。

 さらに、2012~16年度の地方税収の増減を都道府県別に比較すると、ト

ップの東京都の増加数は1兆2千億円弱で突出している半面、47都道府県

中7県が減少しています。この間の総人口が全国で北海道に次ぎ大きく減

少した新潟県は、地方税収こそ約85億円増加していますが、近隣の群馬

県、富山県、長野県に比べ増加数が小さくなっています。一方、総人口が

最も減少した北海道は、地方税収が約518億円も増加しており、全国第10

位の増加数となっています(図表2−4参照)。

Page 10: ±n þqtSZ Ö lk )w þÂq wK M · ¤ ö ö1* 3º~ >2 º6ë[(Ù S Ç>& $Ò S Ç $Ò S Ç>' ö aKZ8rM G _ 8 ² \b1"&ï P1ß* Xv ö aKZ8 \*

250

図表2-4 都道府県別にみた地方税収の増減(2012~16年度)

11999

3184 2931

2010 1489

920 820 616 548 518 419 387 373 366 336 317 260 222 199 180 176 164 134 130 127 107 104 102 97 92 86 85 69 58 53 52 33 26 23 17

-2 -6 -15 -39 -40 -41 -55

-2,000

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000(億円)

総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成

 若者の都会への流出と少子化等で地方の人口が減少する状況は今後も続

くと予想され、地方の基礎自治体では課税対象者数の減少による地方税収

不足で財政難が懸念されます。

 最後に、入湯税収の全国順位の動向を都道府県別にみてみます(図表2

−5参照)。

図表2-5 都道府県別にみた入湯税収(2016年度)

若者の都会への流出と少子化等で地方の人口が減少する状況は今後も続くと予想され、

地方の基礎自治体では課税対象者数の減少による地方税収不足で財政難が懸念されます。

最後に、入湯税収の全国順位の動向を都道府県別にみてみます(図表 2-5 参照)。

2016 年度の入湯税収は、温泉地数が多い地域が全国の上位を占めています。上位7道県

を列挙すると、1 位が北海道、2位が静岡県、3位が長野県、4位が神奈川県、5位が群

馬県、6位が栃木県、7 位が新潟県です。

因みに、環境省の「温泉利用状況」によると、2016 年度(2017 年 3 月末)現在、温泉

地数(宿泊施設のある温泉地)は、全国で 3,038 か所(2012 年度比 47 か所減、同増減率

△1.5%)でした。都道府県別全国順位は、1位が北海道、2位が長野県、3位が新潟県で、

長野県は静岡県より、新潟県は神奈川県、群馬県、栃木県より上位です。入湯税収の割に

温泉地数が多い長野県や新潟県は、温泉という貴重な地域資源を観光資源として十分活用

しきれていない状況にあると思われます。

入湯税収は各地の地方財源にどこくらい貢献しているのでしょう。2016 年度の入湯税収

の地方税収に占める割合を比較してみます(図表 2-6 参照)。

2423 

1694 

1270 

952  899  879  855  801  751  745  713 586  574  565  565  540  506  502  430  425  404  380  369  331  311  297  278  275  248  246  241  238  228  220  196  192  186  181  180  163  151  137  112  55  46  43  41 

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

北海道

静岡県

長野県

神奈川県

群馬県

栃木県

新潟県

兵庫県

福島県

山梨県

岐阜県

三重県

山形県

石川県

大分県

秋田県

宮城県

岩手県

福井県

和歌山県

千葉県

茨城県

熊本県

東京都

富山県

愛知県

鹿児島県

福岡県

京都府

大阪府

長崎県

広島県

山口県

滋賀県

島根県

岡山県

愛媛県

鳥取県

青森県

佐賀県

香川県

宮崎県

沖縄県

高知県

徳島県

埼玉県

奈良県

(百万円)

総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成

図表2‐5 都道府県別にみた入湯税収(2016年度)

0.22

0.18

0.15 0.150.14

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

山梨県

秋田県

長野県

山形県

大分県

和歌山県

福井県

北海道

石川県

岩手県

群馬県

栃木県

静岡県

福島県

新潟県

鳥取県

岐阜県

島根県

三重県

富山県

熊本県

佐賀県

長崎県

宮城県

鹿児島県

山口県

青森県

香川県

滋賀県

宮崎県

愛媛県

兵庫県

茨城県

沖縄県

岡山県

京都府

高知県

神奈川県

広島県

徳島県

千葉県

福岡県

奈良県

愛知県

大阪府

東京都

埼玉県

(%)

総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成

図表2‐7 都道府県別にみた入湯税収の地方税収に占める割合(2016年度)

 2016年度の入湯税収は、温泉地数が多い地域が全国の上位を占めていま

す。上位7道県を列挙すると、1位が北海道、2位が静岡県、3位が長野

Page 11: ±n þqtSZ Ö lk )w þÂq wK M · ¤ ö ö1* 3º~ >2 º6ë[(Ù S Ç>& $Ò S Ç $Ò S Ç>' ö aKZ8rM G _ 8 ² \b1"&ï P1ß* Xv ö aKZ8 \*

人口減少社会における入湯税収の役割と今後のあり方  251

県、4位が神奈川県、5位が群馬県、6位が栃木県、7位が新潟県です。

 因みに、環境省の「温泉利用状況」によると、2016年度(2017年3月

末)現在、温泉地数(宿泊施設のある温泉地)は、全国で3,038か所(2012

年度比47か所減、同増減率△1.5%)でした。都道府県別全国順位は、1

位が北海道、2位が長野県、3位が新潟県で、長野県は静岡県より、新潟

県は神奈川県、群馬県、栃木県より上位です。入湯税収の割に温泉地数が

多い長野県や新潟県は、温泉という貴重な地域資源を観光資源として十分

活用しきれていない状況にあると思われます。

 入湯税収は各地の地方財源にどこくらい貢献しているのでしょう。2016

年度の入湯税収の地方税収に占める割合を比較してみます(図表2−6参

照)。

図表2-6 都道府県別にみた入湯税収の地方税収に占める割合(2016年度)

若者の都会への流出と少子化等で地方の人口が減少する状況は今後も続くと予想され、

地方の基礎自治体では課税対象者数の減少による地方税収不足で財政難が懸念されます。

最後に、入湯税収の全国順位の動向を都道府県別にみてみます(図表 2-5 参照)。

2016 年度の入湯税収は、温泉地数が多い地域が全国の上位を占めています。上位7道県

を列挙すると、1 位が北海道、2位が静岡県、3位が長野県、4位が神奈川県、5位が群

馬県、6位が栃木県、7 位が新潟県です。

因みに、環境省の「温泉利用状況」によると、2016 年度(2017 年 3 月末)現在、温泉

地数(宿泊施設のある温泉地)は、全国で 3,038 か所(2012 年度比 47 か所減、同増減率

△1.5%)でした。都道府県別全国順位は、1位が北海道、2位が長野県、3位が新潟県で、

長野県は静岡県より、新潟県は神奈川県、群馬県、栃木県より上位です。入湯税収の割に

温泉地数が多い長野県や新潟県は、温泉という貴重な地域資源を観光資源として十分活用

しきれていない状況にあると思われます。

入湯税収は各地の地方財源にどこくらい貢献しているのでしょう。2016 年度の入湯税収

の地方税収に占める割合を比較してみます(図表 2-6 参照)。

2423 

1694 

1270 

952  899  879  855  801  751  745  713 586  574  565  565  540  506  502  430  425  404  380  369  331  311  297  278  275  248  246  241  238  228  220  196  192  186  181  180  163  151  137  112  55  46  43  41 

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

北海道

静岡県

長野県

神奈川県

群馬県

栃木県

新潟県

兵庫県

福島県

山梨県

岐阜県

三重県

山形県

石川県

大分県

秋田県

宮城県

岩手県

福井県

和歌山県

千葉県

茨城県

熊本県

東京都

富山県

愛知県

鹿児島県

福岡県

京都府

大阪府

長崎県

広島県

山口県

滋賀県

島根県

岡山県

愛媛県

鳥取県

青森県

佐賀県

香川県

宮崎県

沖縄県

高知県

徳島県

埼玉県

奈良県

(百万円)

総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成

図表2‐5 都道府県別にみた入湯税収(2016年度)

0.22

0.18

0.15 0.150.14

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

山梨県

秋田県

長野県

山形県

大分県

和歌山県

福井県

北海道

石川県

岩手県

群馬県

栃木県

静岡県

福島県

新潟県

鳥取県

岐阜県

島根県

三重県

富山県

熊本県

佐賀県

長崎県

宮城県

鹿児島県

山口県

青森県

香川県

滋賀県

宮崎県

愛媛県

兵庫県

茨城県

沖縄県

岡山県

京都府

高知県

神奈川県

広島県

徳島県

千葉県

福岡県

奈良県

愛知県

大阪府

東京都

埼玉県

(%)

総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成

図表2‐7 都道府県別にみた入湯税収の地方税収に占める割合(2016年度)

 入湯税収上位7道県の地方税収に占める割合の全国順位をみると、長野

県が3位、北海道が8位、群馬県が11位、栃木県が12位、静岡県が13位、

新潟県が15位、神奈川県が38位です。新潟県は、7道県の中では神奈川県

に次いで入湯税の割合が低い地方税収構成となっています。

 2012~16年度の入湯税収の増減額を都道府県別順位で比較すると、北海

Page 12: ±n þqtSZ Ö lk )w þÂq wK M · ¤ ö ö1* 3º~ >2 º6ë[(Ù S Ç>& $Ò S Ç $Ò S Ç>' ö aKZ8rM G _ 8 ² \b1"&ï P1ß* Xv ö aKZ8 \*

252

道が1位、大阪府が2位、兵庫県が3位、東京都が4位、静岡県が5位、

長野県が10位、神奈川県が25位、栃木県が27位、新潟県が41位、群馬県

は42位です。新潟県は、群馬県とともに入湯税収の伸びが全国下位で低迷

しており、今後の増収が課題です(図表2−7参照)。

図表2-7 都道府県別にみた入湯税収の増減額(2010~16年度)

入湯税収上位 7 道県の地方税収に占める割合の全国順位をみると、長野県が3位、北海

道が8位、群馬県が 11 位、栃木県が 12 位、静岡県が 13 位、新潟県が 15 位、神奈川県が

38 位です。新潟県は、7 道県の中では神奈川県に次いで入湯税の割合が低い地方税収構成

となっています。

2012~16 年度の入湯税収の増減額を都道府県別順位で比較すると、北海道が 1 位、大阪

府が2位、兵庫県が3位、東京都が4位、静岡県が5位、長野県が 10 位、神奈川県が 25

位、栃木県が 27 位、新潟県が 41 位、群馬県は 42 位です。新潟県は、群馬県とともに入湯

税収の伸びが全国下位で低迷しており、今後の増収が課題です(図表 2-6 参照)。

ところで、地方税収と入湯税収の増減額の全国順位を比較すると、北海道(地方税収 10

位、入湯税収1位)や長野県(地方税収 27 位、入湯税収 10 位)は、地方税収より入湯税

収の方が上位である一方、新潟県(地方税収 31 位、入湯税収 41 位)や群馬県(地方税収

12 位、入湯税収 42 位)は、地方税収より入湯税収の方が下位であるのはなぜでしょう。

その要因として、北海道や長野県のように入湯税収の伸びが地方税収の伸びより大きい

地域は入湯税の課税対象者が定住者より外来者の方が多い、つまり、温泉施設を利用する

外来の宿泊客数が多いのではないかという仮説を立てました。この仮説を検証するため、

次章では、観光庁の「宿泊旅行統計調査」、総務省・経済産業省の「経済センサス」、国

土交通省の交通関連統計などの各データを基に、都道府県別の観光動向を比較してみたい

と思います。

185

98 96 9174

55 54 51 49 40 29 27 22 21 14 13 13 13 10 10 10 9 8 6 6 5 4 3 3 2 1 0 0

‐3 ‐4 ‐15‐16 ‐18‐18 ‐18‐21 ‐21‐34 ‐38‐40 ‐47

‐106‐150

‐100

‐50

0

50

100

150

200

250

北海道

大阪府

兵庫県

東京都

静岡県

京都府

千葉県

沖縄県

大分県

長野県

石川県

福岡県

香川県

三重県

長崎県

和歌山県

愛媛県

山梨県

茨城県

岡山県

広島県

岐阜県

徳島県

神奈川県

鳥取県

栃木県

奈良県

滋賀県

福島県

高知県

佐賀県

富山県

島根県

福井県

青森県

宮崎県

山口県

埼玉県

山形県

宮城県

新潟県

群馬県

愛知県

熊本県

鹿児島県

岩手県

秋田県

(百万円)

総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成

図表2‐6 都道府県別にみた入湯税収の増減額(2012~16年度)

 ところで、地方税収と入湯税収の増減額の全国順位を比較すると、北海

道(地方税収10位、入湯税収1位)や長野県(地方税収27位、入湯税収10

位)は、地方税収より入湯税収の方が上位である一方、新潟県(地方税収

31位、入湯税収41位)や群馬県(地方税収12位、入湯税収42位)は、地

方税収より入湯税収の方が下位であるのはなぜでしょう。

 その要因として、北海道や長野県のように入湯税収の伸びが地方税収の

伸びより大きい地域は入湯税の課税対象者が定住者より外来者の方が多

い、つまり、温泉施設を利用する外来の宿泊客数が多いのではないかとい

う仮説を立てました。この仮説を検証するため、次章では、観光庁の「宿

泊旅行統計調査」、総務省・経済産業省の「経済センサス」、国土交通省の

交通関連統計などの各データを基に、都道府県別の観光動向を比較してみ

たいと思います。

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人口減少社会における入湯税収の役割と今後のあり方  253

第3章 都道府県別にみた観光動向

 本章では入湯税収と観光動向の関係を探ってみます。2016年度の入湯税

収と延べ宿泊者数を都道府県別に比較すると、東京都、沖縄県など一部の

地域を除き、北海道、長野県、静岡県などの入湯税収が多い地域ほど延べ

宿泊者数が多く、両者の間に相関関係がみられます(図表3−1参照)。

地方の自治体が今後も入湯税収を伸ばしていくためには、延べ宿泊者数の

増加が不可欠と思われます。

図表3-1 入湯税収と延べ宿泊者数(2016年度)

第3章 都道府県別にみた観光動向

本章では入湯税収と観光動向の関係を探ってみます。2016 年度の入湯税収と延べ宿泊者

数を都道府県別に比較すると、東京都、沖縄県など一部の地域を除き、北海道、長野県、

静岡県などの入湯税収が多い地域ほど延べ宿泊者数が多く、両者の間に相関関係がみられ

ます(図表 3-1 参照)。地方の自治体が今後も入湯税収を伸ばしていくためには、延べ宿

泊者数の増加が不可欠と思われます。

観光庁の「宿泊旅行統計調査」を基に、都道府県別に 2016 年度の延べ宿泊者数の全国順

位をみてみます(図表 3-2 参照)。

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000

延べ宿泊者数

(万人泊)

入湯税収(百万円)

総務省、観光庁の資料より筆者作成

図表3‐1 入湯税収と延べ宿泊者数(2016年度)

東京

北海道

沖縄

静岡長野

57.8 

34.0 31.6 

22.5  21.0  20.9 18.8  17.9  17.8  16.6  16.3 

13.8 10.4  10.4  10.3  9.8  9.6  9.2  8.7  8.6  8.3  7.4  7.4  7.3  6.9  6.4  6.1  5.7  5.5  5.4  4.9  4.8  4.7  4.6  4.5  4.2  3.8  3.8  3.7  3.5  3.4  3.4  3.0  3.0  2.8  2.6  2.4 

0

10

20

30

40

50

60

70

東京都

北海道

大阪府

千葉県

静岡県

沖縄県

神奈川県

京都府

長野県

愛知県

福岡県

兵庫県

栃木県

福島県

新潟県

宮城県

広島県

三重県

石川県

群馬県

山梨県

熊本県

鹿児島県

長崎県

大分県

岐阜県

岩手県

茨城県

岡山県

山形県

青森県

滋賀県

和歌山県

山口県

埼玉県

愛媛県

宮崎県

香川県

福井県

富山県

島根県

秋田県

佐賀県

鳥取県

高知県

奈良県

徳島県

(百万人泊)

観光庁「宿泊旅行統計調査」を基に筆者作成

図表3‐2 都道府県別にみた延べ宿泊者数(2016年度)

 観光庁の「宿泊旅行統計調査」を基に、都道府県別に2016年度の延べ宿

泊者数の全国順位をみてみます(図表3−2参照)。

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254

図表3-2 都道府県別にみた延べ宿泊者数(2016年度)

第3章 都道府県別にみた観光動向

本章では入湯税収と観光動向の関係を探ってみます。2016 年度の入湯税収と延べ宿泊者

数を都道府県別に比較すると、東京都、沖縄県など一部の地域を除き、北海道、長野県、

静岡県などの入湯税収が多い地域ほど延べ宿泊者数が多く、両者の間に相関関係がみられ

ます(図表 3-1 参照)。地方の自治体が今後も入湯税収を伸ばしていくためには、延べ宿

泊者数の増加が不可欠と思われます。

観光庁の「宿泊旅行統計調査」を基に、都道府県別に 2016 年度の延べ宿泊者数の全国順

位をみてみます(図表 3-2 参照)。

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000

延べ宿泊者数

(万人泊)

入湯税収(百万円)

総務省、観光庁の資料より筆者作成

図表3‐1 入湯税収と延べ宿泊者数(2016年度)

東京

北海道

沖縄

静岡長野

57.8 

34.0 31.6 

22.5  21.0  20.9 18.8  17.9  17.8  16.6  16.3 

13.8 10.4  10.4  10.3  9.8  9.6  9.2  8.7  8.6  8.3  7.4  7.4  7.3  6.9  6.4  6.1  5.7  5.5  5.4  4.9  4.8  4.7  4.6  4.5  4.2  3.8  3.8  3.7  3.5  3.4  3.4  3.0  3.0  2.8  2.6  2.4 

0

10

20

30

40

50

60

70

東京都

北海道

大阪府

千葉県

静岡県

沖縄県

神奈川県

京都府

長野県

愛知県

福岡県

兵庫県

栃木県

福島県

新潟県

宮城県

広島県

三重県

石川県

群馬県

山梨県

熊本県

鹿児島県

長崎県

大分県

岐阜県

岩手県

茨城県

岡山県

山形県

青森県

滋賀県

和歌山県

山口県

埼玉県

愛媛県

宮崎県

香川県

福井県

富山県

島根県

秋田県

佐賀県

鳥取県

高知県

奈良県

徳島県

(百万人泊)

観光庁「宿泊旅行統計調査」を基に筆者作成

図表3‐2 都道府県別にみた延べ宿泊者数(2016年度)

 国内旅行者と外国人旅行者を合わせた延べ宿泊者数の47都道府県の全国

順位は、東京都が1位、北海道が2位、大阪府が3位で、入湯税収の多い

地域では、静岡県が5位、神奈川県が7位、長野県が9位、栃木県が13

位、新潟県が15位、群馬県が20位です。このうち、総人口より延べ宿泊者

数の全国順位が上位なのは、北海道、長野県、栃木県であり、これら地域

は定住者数の割に外来者数が多い地域と言えます。

 次に、2012~16年度の延べ宿泊者数の増減数の順位をみてみます(図表

3−3参照)。

図表3-3 都道府県別にみた延べ宿泊者数の増減数(2012~16年度)

国内旅行者と外国人旅行者を合わせた延べ宿泊者数の 47 都道府県の全国順位は、東京都

が 1 位、北海道が2位、大阪府が3位で、入湯税収の多い地域では、静岡県が5位、神奈

川県が7位、長野県が9位、栃木県が 13 位、新潟県が 15 位、群馬県が 20 位です。このう

ち、総人口より延べ宿泊者数の全国順位が上位なのは、北海道、長野県、栃木県であり、

これら地域は定住者数の割に外来者数が多い地域と言えます。

次に、2012~16 年度の延べ宿泊者数の増減数の順位をみてみます(図表 3-3 参照)。

1位の東京都と2位の大阪府が突出して増加数が大きい半面、30 府道県が百万人泊未満

で、うち8県が減少しています。入湯税収の多い地域では、北海道が3位、神奈川県が8

位と全国上位ですが、新潟県、群馬県、長野県は下位で低迷しています。

さらに、2016 年度の外国人延べ宿泊者数のみの全国順位も比較してみます(図表 3-4 参

照)。

2016 年度の外国人延べ宿泊者数の全国順位は、東京都が 1 位、大阪府が2位、北海道が

3位、神奈川県が8位、静岡県が9位、長野県が 13 位、新潟県が 27 位、栃木県が 29 位、

8.3  8.0 

5.1 

0.5 0.1 

0.0 ‐0.4 

‐2‐101

234

5

678

9

東京都

大阪府

北海道

沖縄県

千葉県

愛知県

福岡県

神奈川県

広島県

山梨県

石川県

兵庫県

京都府

島根県

岡山県

埼玉県

大分県

滋賀県

茨城県

岐阜県

愛媛県

長崎県

佐賀県

徳島県

熊本県

栃木県

静岡県

三重県

鹿児島県

和歌山県

福井県

青森県

奈良県

香川県

山口県

新潟県

鳥取県

宮崎県

群馬県

福島県

山形県

秋田県

岩手県

富山県

高知県

長野県

宮城県

(百万人泊)

観光庁「宿泊旅行統計調査」を基に筆者作成

図表3‐3 都道府県別にみた延べ宿泊者数の増減数(2012~16年度)

1,830 

1,018 

687 

475 392 

330 267  234  214 

151  139  117  114  99  96  84  68  65  56  54  45  44  39  33  32  31  30  27  25  25  24  23  21  20  18  18  15  14  10  10  10  10  8  7  7  6  5 0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

東京都

大阪府

北海道

京都府

沖縄県

千葉県

福岡県

愛知県

神奈川県

静岡県

山梨県

長野県

兵庫県

岐阜県

大分県

広島県

長崎県

石川県

鹿児島県

和歌山県

滋賀県

熊本県

香川県

三重県

奈良県

岡山県

新潟県

佐賀県

栃木県

宮崎県

群馬県

富山県

宮城県

茨城県

埼玉県

青森県

愛媛県

岩手県

鳥取県

山形県

福島県

山口県

秋田県

徳島県

高知県

島根県

福井県

(万人泊)

観光庁「宿泊旅行統計調査」を基に筆者作成

図表3‐4 都道府県別にみた外国人延べ宿泊者数(2016年度)

 1位の東京都と2位の大阪府が突出して増加数が大きい半面、30府道県

Page 15: ±n þqtSZ Ö lk )w þÂq wK M · ¤ ö ö1* 3º~ >2 º6ë[(Ù S Ç>& $Ò S Ç $Ò S Ç>' ö aKZ8rM G _ 8 ² \b1"&ï P1ß* Xv ö aKZ8 \*

人口減少社会における入湯税収の役割と今後のあり方  255

が百万人泊未満で、うち8県が減少しています。入湯税収の多い地域で

は、北海道が3位、神奈川県が8位と全国上位ですが、新潟県、群馬県、

長野県は下位で低迷しています。

 さらに、2016年度の外国人延べ宿泊者数のみの全国順位も比較してみま

す(図表3−4参照)。

図表3-4 都道府県別にみた外国人延べ宿泊者数(2016年度)

国内旅行者と外国人旅行者を合わせた延べ宿泊者数の 47 都道府県の全国順位は、東京都

が 1 位、北海道が2位、大阪府が3位で、入湯税収の多い地域では、静岡県が5位、神奈

川県が7位、長野県が9位、栃木県が 13 位、新潟県が 15 位、群馬県が 20 位です。このう

ち、総人口より延べ宿泊者数の全国順位が上位なのは、北海道、長野県、栃木県であり、

これら地域は定住者数の割に外来者数が多い地域と言えます。

次に、2012~16 年度の延べ宿泊者数の増減数の順位をみてみます(図表 3-3 参照)。

1位の東京都と2位の大阪府が突出して増加数が大きい半面、30 府道県が百万人泊未満

で、うち8県が減少しています。入湯税収の多い地域では、北海道が3位、神奈川県が8

位と全国上位ですが、新潟県、群馬県、長野県は下位で低迷しています。

さらに、2016 年度の外国人延べ宿泊者数のみの全国順位も比較してみます(図表 3-4 参

照)。

2016 年度の外国人延べ宿泊者数の全国順位は、東京都が 1 位、大阪府が2位、北海道が

3位、神奈川県が8位、静岡県が9位、長野県が 13 位、新潟県が 27 位、栃木県が 29 位、

8.3  8.0 

5.1 

0.5 0.1 

0.0 ‐0.4 

‐2

‐10

1

23

4

5

67

8

9

東京都

大阪府

北海道

沖縄県

千葉県

愛知県

福岡県

神奈川県

広島県

山梨県

石川県

兵庫県

京都府

島根県

岡山県

埼玉県

大分県

滋賀県

茨城県

岐阜県

愛媛県

長崎県

佐賀県

徳島県

熊本県

栃木県

静岡県

三重県

鹿児島県

和歌山県

福井県

青森県

奈良県

香川県

山口県

新潟県

鳥取県

宮崎県

群馬県

福島県

山形県

秋田県

岩手県

富山県

高知県

長野県

宮城県

(百万人泊)

観光庁「宿泊旅行統計調査」を基に筆者作成

図表3‐3 都道府県別にみた延べ宿泊者数の増減数(2012~16年度)

1,830 

1,018 

687 

475 392 

330 267  234  214 

151  139  117  114  99  96  84  68  65  56  54  45  44  39  33  32  31  30  27  25  25  24  23  21  20  18  18  15  14  10  10  10  10  8  7  7  6  5 0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

東京都

大阪府

北海道

京都府

沖縄県

千葉県

福岡県

愛知県

神奈川県

静岡県

山梨県

長野県

兵庫県

岐阜県

大分県

広島県

長崎県

石川県

鹿児島県

和歌山県

滋賀県

熊本県

香川県

三重県

奈良県

岡山県

新潟県

佐賀県

栃木県

宮崎県

群馬県

富山県

宮城県

茨城県

埼玉県

青森県

愛媛県

岩手県

鳥取県

山形県

福島県

山口県

秋田県

徳島県

高知県

島根県

福井県

(万人泊)

観光庁「宿泊旅行統計調査」を基に筆者作成

図表3‐4 都道府県別にみた外国人延べ宿泊者数(2016年度)

 2016年度の外国人延べ宿泊者数の全国順位は、東京都が1位、大阪府が

2位、北海道が3位、神奈川県が8位、静岡県が9位、長野県が13位、新

潟県が27位、栃木県が29位、群馬県が31位です。入湯税収が多い地域のう

ち、新潟県、栃木県、群馬県はいずれも延べ宿泊者数全体に比べ外国人延

べ宿泊者数の順位が大きくランクダウンしています。

 外国人の宿泊者数は「ゴールデンルート」と呼ばれる東海道新幹線沿線

や北海道や沖縄県などの観光名所が多い地域で多く、新潟県や群馬県など

は未だ少ない状況にあります。

 2012~16年度の外国人延べ宿泊数の増減数の全国順位をみると、「ゴー

ルデンルート」以外の入湯税収が多い地域では、北海道は3位、長野県は

13位と上位ですが、新潟県は27位、群馬県は28位、栃木県は32位と下位

で低迷しています(図表3−5参照)。

Page 16: ±n þqtSZ Ö lk )w þÂq wK M · ¤ ö ö1* 3º~ >2 º6ë[(Ù S Ç>& $Ò S Ç $Ò S Ç>' ö aKZ8rM G _ 8 ² \b1"&ï P1ß* Xv ö aKZ8 \*

256

図表3-5 都道府県別にみた外国人延べ宿泊者数の増減数(2012~16年度)

群馬県が 31 位です。入湯税収が多い地域のうち、新潟県、栃木県、群馬県はいずれも延べ

宿泊者数全体に比べ外国人延べ宿泊者数の順位が大きくランクダウンしています。

外国人の宿泊者数は「ゴールデンルート」と呼ばれる東海道新幹線沿線や北海道や沖縄

県などの観光名所が多い地域で多く、新潟県や群馬県などは未だ少ない状況にあります。

2012~16 年度の外国人延べ宿泊数の増減数の全国順位をみると、「ゴールデンルート」

以外の入湯税収が多い地域では、北海道は3位、長野県は 13 位と上位ですが、新潟県は

27 位、群馬県は 28 位、栃木県は 32 位と下位で低迷しています(図表 3-5 参照)。

長野県は、延べ宿泊者数全体の増減数では 46 位と低迷していましたが、外国人延べ宿泊

者数のみの増減数では 13 位と全国でも上位となっています。外国人延べ宿泊者数が伸びて

いることが長野県の入湯税収が伸びている要因の一つと思われます。

ここからは、「ゴールデンルート」以外でも入湯税収が多い北海道、長野県、群馬県、

栃木県、新潟県の5道県に絞って、2012~16 年度の5年間の宿泊動向をみてみます。

延べ宿泊者数の5年間の推移を比較すると、5道県のうち、北海道のみは増加基調で推

移していますが、他の 4 県は総じてほぼ横ばいで推移しており、延べ宿泊者数が伸び悩ん

でいます(図表 3-6 参照)。

981 

693 

473 

75 20 

0

200

400

600

800

1,000

1,200

東京都

大阪府

北海道

沖縄県

京都府

福岡県

千葉県

愛知県

神奈川県

山梨県

静岡県

兵庫県

長野県

岐阜県

大分県

広島県

石川県

和歌山県

鹿児島県

香川県

滋賀県

長崎県

岡山県

三重県

佐賀県

奈良県

新潟県

群馬県

富山県

青森県

熊本県

栃木県

宮城県

茨城県

埼玉県

宮崎県

岩手県

愛媛県

鳥取県

山形県

福島県

秋田県

山口県

高知県

島根県

徳島県

福井県

(万人泊)

観光庁「宿泊旅行統計調査」を基に筆者作成

図表3‐5 都道府県別にみた外国人延べ宿泊者数の増減数(2012~16年度)

28.9 

18.2 

8.6 10.0  10.2 

31.5 

18.8 

9.0  9.7  9.4 

31.2 

18.1 

8.7  9.7  10.0 

33.3 

18.9 

8.9 10.3  10.2 

34.0 

17.8 

8.6 10.4  10.3 

0

5

10

15

20

25

30

35

40

北海道 長野県 群馬県 栃木県 新潟県

(百万人泊)

観光庁「宿泊旅行統計調査」より筆者作成

図表3‐6 入湯税収の多い道県の延べ宿泊者数の推移(2012~16年度)

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

 長野県は、延べ宿泊者数全体の増減数では46位と低迷していましたが、

外国人延べ宿泊者数のみの増減数では13位と全国でも上位となっていま

す。外国人延べ宿泊者数が伸びていることが長野県の入湯税収が伸びてい

る要因の一つと思われます。

 ここからは、「ゴールデンルート」以外でも入湯税収が多い北海道、長

野県、群馬県、栃木県、新潟県の5道県に絞って、2012~16年度の5年間

の宿泊動向をみてみます。

 延べ宿泊者数の5年間の推移を比較すると、5道県のうち、北海道のみ

は増加基調で推移していますが、他の4県は総じてほぼ横ばいで推移して

おり、延べ宿泊者数が伸び悩んでいます(図表3−6参照)。

図表3-6 入湯税収の多い道県の延べ宿泊者数の推移(2012~16年度)

群馬県が 31 位です。入湯税収が多い地域のうち、新潟県、栃木県、群馬県はいずれも延べ

宿泊者数全体に比べ外国人延べ宿泊者数の順位が大きくランクダウンしています。

外国人の宿泊者数は「ゴールデンルート」と呼ばれる東海道新幹線沿線や北海道や沖縄

県などの観光名所が多い地域で多く、新潟県や群馬県などは未だ少ない状況にあります。

2012~16 年度の外国人延べ宿泊数の増減数の全国順位をみると、「ゴールデンルート」

以外の入湯税収が多い地域では、北海道は3位、長野県は 13 位と上位ですが、新潟県は

27 位、群馬県は 28 位、栃木県は 32 位と下位で低迷しています(図表 3-5 参照)。

長野県は、延べ宿泊者数全体の増減数では 46 位と低迷していましたが、外国人延べ宿泊

者数のみの増減数では 13 位と全国でも上位となっています。外国人延べ宿泊者数が伸びて

いることが長野県の入湯税収が伸びている要因の一つと思われます。

ここからは、「ゴールデンルート」以外でも入湯税収が多い北海道、長野県、群馬県、

栃木県、新潟県の5道県に絞って、2012~16 年度の5年間の宿泊動向をみてみます。

延べ宿泊者数の5年間の推移を比較すると、5道県のうち、北海道のみは増加基調で推

移していますが、他の 4 県は総じてほぼ横ばいで推移しており、延べ宿泊者数が伸び悩ん

でいます(図表 3-6 参照)。

981 

693 

473 

75 20 

0

200

400

600

800

1,000

1,200

東京都

大阪府

北海道

沖縄県

京都府

福岡県

千葉県

愛知県

神奈川県

山梨県

静岡県

兵庫県

長野県

岐阜県

大分県

広島県

石川県

和歌山県

鹿児島県

香川県

滋賀県

長崎県

岡山県

三重県

佐賀県

奈良県

新潟県

群馬県

富山県

青森県

熊本県

栃木県

宮城県

茨城県

埼玉県

宮崎県

岩手県

愛媛県

鳥取県

山形県

福島県

秋田県

山口県

高知県

島根県

徳島県

福井県

(万人泊)

観光庁「宿泊旅行統計調査」を基に筆者作成

図表3‐5 都道府県別にみた外国人延べ宿泊者数の増減数(2012~16年度)

28.9 

18.2 

8.6 10.0  10.2 

31.5 

18.8 

9.0  9.7  9.4 

31.2 

18.1 

8.7  9.7  10.0 

33.3 

18.9 

8.9 10.3  10.2 

34.0 

17.8 

8.6 10.4  10.3 

0

5

10

15

20

25

30

35

40

北海道 長野県 群馬県 栃木県 新潟県

(百万人泊)

観光庁「宿泊旅行統計調査」より筆者作成

図表3‐6 入湯税収の多い道県の延べ宿泊者数の推移(2012~16年度)

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

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人口減少社会における入湯税収の役割と今後のあり方  257

 北海道と長野県の2015年度、16年度の延べ宿泊者数を比較すると、北海

道は、北海道新幹線が開業(2016年3月)した影響等で、2015年度、16

年度と増加が続いています。一方、長野県は、北陸新幹線が延伸(2015年

3月)した影響等で、2015年度こそ増加しましたが、16年度には再度減少

しています。

 同様に、外国人延べ宿泊者数の5年間の推移を比較すると、5道県はい

ずれも増加基調で推移していますが、北海道と長野県の伸びが顕著です

(図表3−7参照)。特に、北海道は、2016年度の外国人延べ宿泊者数が

6.87百万人泊で、延べ宿泊者数全体の約2割を占めています。

図表3-7 入湯税収の多い道県の外国人延べ宿泊者数の推移(2012~16年度)

北海道と長野県の 2015 年度、16 年度の延べ宿泊者数を比較すると、北海道は、北海道

新幹線が開業(2016 年 3 月)した影響等で、2015 年度、16 年度と増加が続いています。

一方、長野県は、北陸新幹線が延伸(2015 年 3 月)した影響等で、2015 年度こそ増加しま

したが、16 年度には再度減少しています。

同様に、外国人延べ宿泊者数の5年間の推移を比較すると、5道県はいずれも増加基調

で推移していますが、北海道と長野県の伸びが顕著です(図表 3-7 参照)。特に、北海道

は、2016 年度の外国人延べ宿泊者数が 6.87 百万人泊で、延べ宿泊者数全体の約2割を占

めています。

次に、観光庁の「宿泊旅行統計調査」の客室稼働率を使って、入湯税収に最も影響する

と思われる旅館客室稼働率と客室稼働率(全体)の増減を都道府県別にみてみます。

2012~16 年度の増減(2016 年度の稼働率-2012 年度の稼働率)を、5道県、全国(参

考)、東京都、京都府、大阪府で比較します(図表 3-8 参照)。

2.14 

0.42 0.09  0.12  0.10 

3.44 

0.53 0.09  0.18  0.10 

4.33 

0.75 0.12  0.17  0.21 

6.22 

1.02 

0.18  0.25  0.28 

6.87 

1.17 

0.24  0.25  0.30 

0

1

2

3

4

5

6

7

8

北海道 長野県 群馬県 栃木県 新潟県

(百万人泊)

観光庁「宿泊旅行統計調査」より筆者作成

図表3‐7 入湯税収の多い道県の外国人延べ宿泊者数の推移(2012~16年度)

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

2.35.2

0.22.5

5.0

‐4.5

22.5

1.9

17.0

5.07.7

0.74.4

7.1

0.3 1.6 0.7

10.4

‐10

‐5

0

5

10

15

20

25

30

全国(参考) 北海道 長野県 群馬県 栃木県 新潟県 東京都 京都府 大阪府

(%ポイント)

観光庁「宿泊旅行統計調査」より筆者作成

図表3‐8 都道府県別にみた客室稼働率の増減(2012~16年度)旅館客室稼働率 客室稼働率(全体)

 次に、観光庁の「宿泊旅行統計調査」の客室稼働率を使って、入湯税収

に最も影響すると思われる旅館客室稼働率と客室稼働率(全体)の増減を

都道府県別にみてみます。

 2012~16年度の増減(2016年度の稼働率−2012年度の稼働率)を、5

道県、全国(参考)、東京都、京都府、大阪府で比較します(図表3−8

参照)。

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258

図表3-8 都道府県別にみた客室稼働率の増減(2012~16年度)

北海道と長野県の 2015 年度、16 年度の延べ宿泊者数を比較すると、北海道は、北海道

新幹線が開業(2016 年 3 月)した影響等で、2015 年度、16 年度と増加が続いています。

一方、長野県は、北陸新幹線が延伸(2015 年 3 月)した影響等で、2015 年度こそ増加しま

したが、16 年度には再度減少しています。

同様に、外国人延べ宿泊者数の5年間の推移を比較すると、5道県はいずれも増加基調

で推移していますが、北海道と長野県の伸びが顕著です(図表 3-7 参照)。特に、北海道

は、2016 年度の外国人延べ宿泊者数が 6.87 百万人泊で、延べ宿泊者数全体の約2割を占

めています。

次に、観光庁の「宿泊旅行統計調査」の客室稼働率を使って、入湯税収に最も影響する

と思われる旅館客室稼働率と客室稼働率(全体)の増減を都道府県別にみてみます。

2012~16 年度の増減(2016 年度の稼働率-2012 年度の稼働率)を、5道県、全国(参

考)、東京都、京都府、大阪府で比較します(図表 3-8 参照)。

2.14 

0.42 0.09  0.12  0.10 

3.44 

0.53 0.09  0.18  0.10 

4.33 

0.75 0.12  0.17  0.21 

6.22 

1.02 

0.18  0.25  0.28 

6.87 

1.17 

0.24  0.25  0.30 

0

1

2

3

4

5

6

7

8

北海道 長野県 群馬県 栃木県 新潟県

(百万人泊)

観光庁「宿泊旅行統計調査」より筆者作成

図表3‐7 入湯税収の多い道県の外国人延べ宿泊者数の推移(2012~16年度)

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

2.35.2

0.22.5

5.0

‐4.5

22.5

1.9

17.0

5.07.7

0.74.4

7.1

0.3 1.6 0.7

10.4

‐10

‐5

0

5

10

15

20

25

30

全国(参考) 北海道 長野県 群馬県 栃木県 新潟県 東京都 京都府 大阪府

(%ポイント)

観光庁「宿泊旅行統計調査」より筆者作成

図表3‐8 都道府県別にみた客室稼働率の増減(2012~16年度)旅館客室稼働率 客室稼働率(全体)

 5道県の中では、旅館客室稼働率は、北海道が+5.2㌽、栃木県が+5.0㌽、

群馬県が+2.5㌽で、全国の+2.3㌽を上回っています。客室稼働率(全体)

は北海道が+7.7㌽、栃木県が+7.1㌽で、全国の+5.0㌽を上回っています。

 5道県以外の東京都、京都府、大阪府では、旅館客室稼働率は、東京都

が+22.5㌽、大阪府が+17.0㌽で、全国を大きく上回り、客室稼働率(全

体)は、大阪府が+17.0㌽で、全国を大きく上回っており、大都市地域の

旅館の盛況ぶりがうかがえます。

 一方、新潟県は、旅館客室稼働率が△4.5㌽、客室稼働率(全体)が+0.3㌽

で、双方とも全国の稼働率を下回り、旅館客室稼働率はマイナスとなって

います。旅館の宿泊客が増えていないために入湯税収が伸び悩んでいる状

況がうかがえます。

 さらに、入湯税収の増減には各県の温泉地を支える宿泊業の業況の影響

も大きいと思われます。そこで、「経済センサス−活動調査(確報)」の結

果を基に、2012年と2016年の宿泊業の事業所数、従業者数を、全国と5

道県別で比較してみます(図表3−9参照)。

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人口減少社会における入湯税収の役割と今後のあり方  259

図表3-9 5道県にみた宿泊業の事業所数・従業者数

5道県の中では、旅館客室稼働率は、北海道が+5.2 ㌽、栃木県が+5.0 ㌽、群馬県が+

2.5 ㌽で、全国の+2.3 ㌽を上回っています。客室稼働率(全体)は北海道が+7.7 ㌽、栃

木県が+7.1 ㌽で、全国の+5.0 ㌽を上回っています。

5道県以外の東京都、京都府、大阪府では、旅館客室稼働率は、東京都が+22.5 ㌽、大

阪府が+17.0 ㌽で、全国を大きく上回り、客室稼働率(全体)は、大阪府が+17.0 ㌽で、

全国を大きく上回っており、大都市地域の旅館の盛況ぶりがうかがえます。

一方、新潟県は、旅館客室稼働率が△4.5 ㌽、客室稼働率(全体)が+0.3 ㌽で、双方と

も全国の稼働率を下回り、旅館客室稼働率はマイナスとなっています。旅館の宿泊客が増

えていないために入湯税収が伸び悩んでいる状況がうかがえます。

さらに、入湯税収の増減には各県の温泉地を支える宿泊業の業況の影響も大きいと思わ

れます。そこで、「経済センサス-活動調査(確報)」の結果を基に、2012 年と 2016 年の

宿泊業の事業所数、従業者数を、全国と5道県別で比較してみます(図表 3-9 参照)。

2012~16 年の宿泊業の事業所数、従業者数の増減率をみると、全国、5道県のいずれに

おいてもマイナスです。

事業所数の増減率は、長野県(△4.7%)以外の4道県とも、全国(△5.9%)を下回っ

ています。温泉利用客に代わって入湯税を納める事業所数自体の減少が入湯税収の大きな

減少要因となっている状況がうかがえます。

従業者数の増減率は、5道県とも、全国(△2.8%)を下回っているものの、北海道(△

3.1%)は、5道県の中では最も小さいマイナス幅です。一方、新潟県は、事業所数(9.6%)、

2012年 2016年 2012年 2016年

A B A B

全 国 52,045 48,963 ▲ 3,082 698,057 678,833 ▲ 19,224 ▲ 5.9 ▲ 2.8

北海道 3,183 2,950 ▲ 233 41,169 39,878 ▲ 1,291 ▲ 7.3 ▲ 3.1

長野県 3,984 3,797 ▲ 187 32,103 29,806 ▲ 2,297 ▲ 4.7 ▲ 7.2

群馬県 1,276 1,163 ▲ 113 13,209 12,654 ▲ 555 ▲ 8.9 ▲ 4.2

栃木県 1,112 1,040 ▲ 72 13,022 12,429 ▲ 593 ▲ 6.5 ▲ 4.6

新潟県 1,902 1,720 ▲ 182 18,978 16,965 ▲ 2,013 ▲ 9.6 ▲ 10.6

総務省・経済産業省「平成28年経済センサス-活動調査(確報)」を基に筆者作成

増減B-A

増減B-A

事業所数 従業者数

図表3-9 5道県にみた宿泊業の事業所数・従業者数事業所数 従業者数 増減率(%)

 2012~16年の宿泊業の事業所数、従業者数の増減率をみると、全国、5

道県のいずれにおいてもマイナスです。

 事業所数の増減率は、長野県(△4.7%)以外の4道県とも、全国(△5.9%)

を下回っています。温泉利用客に代わって入湯税を納める事業所数自体の

減少が入湯税収の大きな減少要因となっている状況がうかがえます。

 従業者数の増減率は、5道県とも、全国(△2.8%)を下回っているも

のの、北海道(△3.1%)は、5道県の中では最も小さいマイナス幅です。

一方、新潟県は、事業所数(9.6%)、従業者数(△10.6%)とも5道県の

中で最大のマイナス幅であり、人手不足により思うようなサービスができ

ない宿泊業の厳しい業況がうかがえます。

 因みに、新潟県は、2012~16年の全産業の増減率においても、事業所数

が△4.0%、従業者数が△0.8%と、いずれもマイナスです。新潟県が衰退

することなく、持続的に発展していくためには、宿泊業だけでなく全産業

の経済活動の底上げに県全体が一体となって取り組む必要があると考えま

す。

 入湯税収の増減は、当該地への交通アクセスや地域の魅力に関する発信

力の優劣などが背景にあると考えられます。移動のための主要交通手段の

一つである鉄道の中で、二次交通として今後一層の活用が期待されるロー

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260

カル鉄道の近年の動向をみてみます。

 入湯税収の多い5道県のうち、ローカル鉄道と呼ばれる地域鉄道を有す

る長野県、群馬県、栃木県、新潟県の4県における地域鉄道年間旅客数の

推移を国土交通省の「鉄道統計年報」の2012~16年度データをもとに比較

してみます(図表3−10参照)。

 長野県と新潟県は2015年度から旅客数が大きく増加していますが、この

増加分には、北陸新幹線延伸に伴いJR在来線がローカル鉄道に変わった

ことにより、その路線の旅客数が加味されています。その点を考慮して比

較しても、長野県は増加基調、群馬県と栃木県はほぼ横ばい、新潟県は微

増基調で推移しているとみられます。4県とも定住者数が減少している状

況の中、外来者数の増加が旅客数を押し上げていると判断されることか

ら、長野県は外来者数が最も増えており、入湯税収増加の一因と考えられ

ます。

図表3-10 長野県、群馬県、栃木県、新潟県の地域鉄道年間旅客数の推移

従業者数(△10.6%)とも5道県の中で最大のマイナス幅であり、人手不足により思うよ

うなサービスができない宿泊業の厳しい業況がうかがえます。

因みに、新潟県は、2012~16 年の全産業の増減率においても、事業所数が△4.0%、従

業者数が△0.8%と、いずれもマイナスです。新潟県が衰退することなく、持続的に発展し

ていくためには、宿泊業だけでなく全産業の経済活動の底上げに県全体が一体となって取

り組む必要があると考えます。

入湯税収の増減は、当該地への交通アクセスや地域の魅力に関する発信力の優劣などが

背景にあると考えられます。移動のための主要交通手段の一つである鉄道の中で、二次交

通として今後一層の活用が期待されるローカル鉄道の近年の動向をみてみます。

入湯税収の多い5道県のうち、ローカル鉄道と呼ばれる地域鉄道を有する長野県、群馬

県、栃木県、新潟県の4県における地域鉄道年間旅客数の推移を国土交通省の「鉄道統計

年報」の 2012~16 年度データをもとに比較してみます(図表 3-10 参照)。

長野県と新潟県は 2015 年度から旅客数が大きく増加していますが、この増加分には、北

陸新幹線延伸に伴いJR在来線がローカル鉄道に変わったことにより、その路線の旅客数

が加味されています。その点を考慮して比較しても、長野県は増加基調、群馬県と栃木県

はほぼ横ばい、新潟県は微増基調で推移しているとみられます。4県とも定住者数が減少

している状況の中、外来者数の増加が旅客数を押し上げていると判断されることから、長

野県は外来者数が最も増えており、入湯税収増加の一因と考えられます。

以上のように、長野県が観光業に注力し成果を上げている一方、新潟県は、観光業の盛

り上がりに近年やや欠けていると思われます。人口減少が年々進行している新潟県が今後

も観光県として生きていくためには、観光産業や宿泊業に注力した振興策を立案し、着実

に推進していくことが大切であると考えます。

212 

38 19 

39 

216 

39 21 

40 

217 

39 19 

41 

268 

39 18 

54 

264 

38 19 

53 

0

100

200

300

長野県 群馬県 栃木県 新潟県

(万人)

国土交通省「鉄道統計年報」より筆者作成

図表3‐10 長野県、群馬県、栃木県、新潟県の地域鉄道年間旅客数の推移

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

 以上のように、長野県が観光業に注力し成果を上げている一方、新潟県

は、観光業の盛り上がりに近年やや欠けていると思われます。人口減少が

年々進行している新潟県が今後も観光県として生きていくためには、観光

産業や宿泊業に注力した振興策を立案し、着実に推進していくことが大切

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人口減少社会における入湯税収の役割と今後のあり方  261

であると考えます。

第4章 地域別にみた温泉地の入湯税収動向

 第4章では、入湯税収が多い5道県の入湯税収の動向を温泉地別にさら

に掘り下げ、新潟県を中心に、新潟県をはじめ入湯税収が伸び悩んでいる

地域の減少要因を探ります。

 まず、5道県の2016年度入湯税収額上位8位の温泉地を比較すると、北

海道、群馬県、栃木県は、税収額が2億円超の温泉地が上位を占めている

一方、長野県、新潟県は、1億円未満の温泉地が大半を占めています(図

表4−1参照)。長野県は、県全体の入湯税収額は群馬県や栃木県を上回

って全国3位であるにもかかわらず、温泉地別全国上位50位に入っている

温泉地が一つもなく、入湯税収額5億円以上10億円未満の温泉地が上位の

過半数を占めています。新潟県は、新幹線沿線地域が上位の過半数を占め

ています。

図表4-1 北海道、長野県、群馬県、栃木県、新潟県の温泉地別入湯税収額(2016年度)

(単位:千円)

地  名 税 収 額 地  名 税 収 額 地  名 税 収 額 地  名 税 収 額 地  名 税 収 額

札 幌 市 397,026 松 本 市 92,172 草 津 町 226,663 日 光 市 379,930 湯 沢 町 112,026

函 館 市 224,663 諏 訪 市 78,781 渋 川 市 204,585 那 須 町 201,108 新 発 田 市 93,255

登 別 市 195,583 茅 野 市 74,111 みなかみ町 129,256 那 須塩 原市 138,185 十 日 町 市 90,878

釧 路 市 156,715 山 之 内 町 72,910 嬬 恋 村 98,641 さ く ら 市 28,591 村 上 市 57,982

洞 爺 湖 町 109,478 軽 井 沢 町 60,115 前 橋 市 50,674 宇 都 宮 市 27,725 妙 高 市 46,795

ニ セ コ 町 80,531 上 田 市 54,017 中 之 条 町 39,186 大 田 原 市 21,802 長 岡 市 46,695

富 良 野 市 45,350 小 諸 市 47,820 沼 田 市 36,393 那 珂 川 町 17,276 上 越 市 42,210

北 見 市 42,397 大 町 市 47,111 高 崎 市 33,807 高 根 沢 町 13,149 南 魚 沼 市 38,732

県 計 2,238,091 県 計 1,270,157 県 計 898,817 県 計 873,783 県 計 855,418

※黄色部分は新幹線沿線地域 各地の「財政状況資料集」より筆者作成

群 馬 県 栃 木 県長 野 県北 海 道 新 潟 県

 次に、2012~16年度の温泉地別入湯税収の推移を5道県別にみてみま

す。

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262

 はじめに、入湯税収トップの北海道の温泉地別税収動向からみます(図

表4−2参照)。

図表4-2 北海道内の温泉地別入湯税収の推移

第4章 地域別にみた温泉地の入湯税収動向

第4章では、入湯税収が多い5道県の入湯税収の動向を温泉地別にさらに掘り下げ、新

潟県を中心に、新潟県をはじめ入湯税収が伸び悩んでいる地域の減少要因を探ります。

まず、5道県の 2016 年度入湯税収額上位8位の温泉地を比較すると、北海道、群馬県、

栃木県は、税収額が2億円超の温泉地が上位を占めている一方、長野県、新潟県は、1億

円未満の温泉地が大半を占めています(図表 4-1 参照)。長野県は、県全体の入湯税収額

は群馬県や栃木県を上回って全国3位であるにもかかわらず、温泉地別全国上位 50 位に入

っている温泉地が一つもなく、入湯税収額5億円以上 10 億円未満の温泉地が上位の過半数

を占めています。新潟県は、新幹線沿線地域が上位の過半数を占めています。

次に、2012~16 年度の温泉地別入湯税収の推移を 5 道県別にみてみます。

はじめに、入湯税収トップの北海道の温泉地別税収動向からみます(図表 4-2 参照)。

(単位:千円)

地  名 税 収 額 地  名 税 収 額 地  名 税 収 額 地  名 税 収 額 地  名 税 収 額

札 幌 市 397,026 松 本 市 92,172 草 津 町 226,663 日 光 市 379,930 湯 沢 町 112,026

函 館 市 224,663 諏 訪 市 78,781 渋 川 市 204,585 那 須 町 201,108 新 発 田 市 93,255

登 別 市 195,583 茅 野 市 74,111 みなかみ町 129,256 那 須塩 原市 138,185 十 日 町 市 90,878

釧 路 市 156,715 山 之 内 町 72,910 嬬 恋 村 98,641 さ く ら 市 28,591 村 上 市 57,982

洞 爺 湖 町 109,478 軽 井 沢 町 60,115 前 橋 市 50,674 宇 都 宮 市 27,725 妙 高 市 46,795

ニ セ コ 町 80,531 上 田 市 54,017 中 之 条 町 39,186 大 田 原 市 21,802 長 岡 市 46,695

富 良 野 市 45,350 小 諸 市 47,820 沼 田 市 36,393 那 珂 川 町 17,276 上 越 市 42,210

北 見 市 42,397 大 町 市 47,111 高 崎 市 33,807 高 根 沢 町 13,149 南 魚 沼 市 38,732

県 計 2,238,091 県 計 1,270,157 県 計 898,817 県 計 873,783 県 計 855,418

※黄色部分は新幹線沿線地域 各地の「財政状況資料集」より筆者作成

図表4-1 北海道、長野県、群馬県、栃木県、新潟県の温泉地別入湯税収額(2016年度)

群 馬 県 栃 木 県長 野 県北 海 道 新 潟 県

0

100

200

300

400

500

札幌市 函館市 登別市 釧路市 洞爺湖町 ニセコ町

(百万円)

各市町村の「財政状況資料集」より筆者作成

図表4‐2 北海道内の温泉地別入湯税収の推移2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

 2012~16年度において、札幌市は伸び悩んでいますが、それ以外の温泉

地は、総じて増加基調で推移しています。中でも、洞爺湖町、ニセコ町

は、毎年着実に入湯税収が増加しています。なお、釧路市の2015年度以降

の伸びについては次章で詳述します。

 長野県の入湯税収上位温泉地の動向をみると、松本市こそ伸び悩んでい

るものの、諏訪市、茅野市、軽井沢町は増加基調で推移しています(図表

4−3参照)。なお、2016年に大河ドラマ(真田丸)の舞台となった上田

市は、2015年度以降の税収が伸びています。

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人口減少社会における入湯税収の役割と今後のあり方  263

図表4-3 長野県内の温泉地別入湯税収の推移

2012~16 年度において、札幌市は伸び悩んでいますが、それ以外の温泉地は、総じて増

加基調で推移しています。中でも、洞爺湖町、ニセコ町は、毎年着実に入湯税収が増加し

ています。なお、釧路市の 2015 年度以降の伸びについては次章で詳述します。

長野県の入湯税収上位温泉地の動向をみると、松本市こそ伸び悩んでいるものの、諏訪

市、茅野市、軽井沢町は増加基調で推移しています(図表 4-3 参照)。なお、2016 年に大

河ドラマ(真田丸)の舞台となった上田市は、2015 年度以降の税収が伸びています。

栃木県、群馬県内の上位温泉地をみると、栃木県の中では、日光市が 2016 年度入湯税収

全国 4 位の温泉地ですが、近年やや伸び悩んでいます。一方、那須町は増加基調、那須塩

原市はほぼ横ばいで推移しています。群馬県の中では、草津町が増加基調である以外は、

渋川市が減少基調、みなかみ町がほぼ横ばいで推移しています(図表 4-4 参照)。

最後に、新潟県の入湯税収上位6位までの温泉地別に 2012~16 年度の推移をみてみます

(図表 4-5 参照)。

0

20

40

60

80

100

松本市 諏訪市 茅野市 山ノ内町 軽井沢町 上田市

(百万円)

各市町村の「財政状況資料集」より筆者作成

図表4‐3 長野県内の温泉地別入湯税収の推移

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

0

100

200

300

400

500

日光市 那須町 那須塩原市 草津町 渋川市 みなかみ町

(百万円)

各市町村の「財政状況資料集」より筆者作成

図表4‐4 栃木、群馬県内の温泉地別入湯税収の推移

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

 栃木県、群馬県内の上位温泉地をみると、栃木県の中では、日光市が

2016年度入湯税収全国4位の温泉地ですが、近年やや伸び悩んでいます。

一方、那須町は増加基調、那須塩原市はほぼ横ばいで推移しています。群

馬県の中では、草津町が増加基調である以外は、渋川市が減少基調、みな

かみ町がほぼ横ばいで推移しています(図表4−4参照)。

図表4-4 栃木、群馬県内の温泉地別入湯税収の推移

2012~16 年度において、札幌市は伸び悩んでいますが、それ以外の温泉地は、総じて増

加基調で推移しています。中でも、洞爺湖町、ニセコ町は、毎年着実に入湯税収が増加し

ています。なお、釧路市の 2015 年度以降の伸びについては次章で詳述します。

長野県の入湯税収上位温泉地の動向をみると、松本市こそ伸び悩んでいるものの、諏訪

市、茅野市、軽井沢町は増加基調で推移しています(図表 4-3 参照)。なお、2016 年に大

河ドラマ(真田丸)の舞台となった上田市は、2015 年度以降の税収が伸びています。

栃木県、群馬県内の上位温泉地をみると、栃木県の中では、日光市が 2016 年度入湯税収

全国 4 位の温泉地ですが、近年やや伸び悩んでいます。一方、那須町は増加基調、那須塩

原市はほぼ横ばいで推移しています。群馬県の中では、草津町が増加基調である以外は、

渋川市が減少基調、みなかみ町がほぼ横ばいで推移しています(図表 4-4 参照)。

最後に、新潟県の入湯税収上位6位までの温泉地別に 2012~16 年度の推移をみてみます

(図表 4-5 参照)。

0

20

40

60

80

100

松本市 諏訪市 茅野市 山ノ内町 軽井沢町 上田市

(百万円)

各市町村の「財政状況資料集」より筆者作成

図表4‐3 長野県内の温泉地別入湯税収の推移

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

0

100

200

300

400

500

日光市 那須町 那須塩原市 草津町 渋川市 みなかみ町

(百万円)

各市町村の「財政状況資料集」より筆者作成

図表4‐4 栃木、群馬県内の温泉地別入湯税収の推移

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

 最後に、新潟県の入湯税収上位6位までの温泉地別に2012~16年度の推

移をみてみます(図表4−5参照)。

 スキーや温泉等で外国人にも有名な湯沢町は、2016年度こそ伸び悩んだ

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264

ものの、それまでは増加基調です。しかし、それ以外の温泉地は、いずれ

も横ばいないしは微減基調で推移しています。なお、十日町市の2016年度

の伸びについては次章で詳述します。

図表4-5 新潟県内の温泉地別入湯税収の推移

スキーや温泉等で外国人にも有名な湯沢町は、2016 年度こそ伸び悩んだものの、それま

では増加基調です。しかし、それ以外の温泉地は、いずれも横ばいないしは微減基調で推

移しています。なお、十日町市の 2016 年度の伸びについては次章で詳述します。

各温泉地の入湯税収の増減は、二次交通を含めた当該温泉地への交通アクセスやSNS

等を通じた地域の魅力に関する発信力の優劣などが背景にあると考えられます。例えば、

北海道の洞爺湖町やニセコ町、長野県の軽井沢町などは、国際イベントやリゾート、スキ

ー等で国内外での知名度の高さが着実に入湯税収の増加につながっていると思われます。

新潟県でも、湯沢町の増加基調の要因は、上越新幹線沿線地という交通アクセスの良さ

と知名度の高さが影響していると思います。一方、月岡温泉のある新発田市はほぼ横ばい、

瀬波温泉のある村上市は微減基調ですが、鉄道利用客の交通アクセスがやや不良であるこ

とが要因の一つと思われます。

しかし、前向きにとらえると、新潟県の湯沢町以外の温泉地も、今後、交通アクセスや

地域の発信力を高める努力と工夫次第で、訪日外国人はじめ県外客の潜在需要を掘り起こ

し、入湯税収を拡大する余地が十分あるとも考えられ、今後の巻き返しが大いに期待され

ます。

020406080

100120

湯沢町 新発田市 十日町市 村上市 妙高市 長岡市

(百万円)

各市町村の「財政状況資料集」より筆者作成

図表4‐5 新潟県内の温泉地別入湯税収の推移

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

 各温泉地の入湯税収の増減は、二次交通を含めた当該温泉地への交通ア

クセスやSNS等を通じた地域の魅力に関する発信力の優劣などが背景に

あると考えられます。例えば、北海道の洞爺湖町やニセコ町、長野県の軽

井沢町などは、国際イベントやリゾート、スキー等で国内外での知名度の

高さが着実に入湯税収の増加につながっていると思われます。

 新潟県でも、湯沢町の増加基調の要因は、上越新幹線沿線地という交通

アクセスの良さと知名度の高さが影響していると思います。一方、月岡温

泉のある新発田市はほぼ横ばい、瀬波温泉のある村上市は微減基調です

が、鉄道利用客の交通アクセスがやや不良であることが要因の一つと思わ

れます。

 しかし、前向きにとらえると、新潟県の湯沢町以外の温泉地も、今後、

交通アクセスや地域の発信力を高める努力と工夫次第で、訪日外国人はじ

め県外客の潜在需要を掘り起こし、入湯税収を拡大する余地が十分あると

も考えられ、今後の巻き返しが大いに期待されます。

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人口減少社会における入湯税収の役割と今後のあり方  265

第5章 入湯税の増収策と今後の方向性

 第5章では、これまでの入湯税収の現状分析を踏まえ、今後のあり方を

考察してみたいと思います。

 「はじめに」でも触れたように、全国各地で人口流出・少子高齢化が進

行する中、地域が衰退することなく発展していくには、地方の基礎自治体

にとって財源確保は喫緊の課題です。税収をアップさせるためには、①課

税額の引き上げと、②課税対象者の拡大という二つの方法があります、昨

今注目される消費税率の引き上げは①の流れから、ふるさと納税・宿泊

税・国際観光旅客税(いわゆる出国税)などは②の流れから打ち出された

財政政策ととらえることができます。

 第3章では宿泊者数の増加による入湯税の課税対象者の拡大策について

述べましたが、本章では、もう一つの政策である入湯税の課税額の引き上

げについて考えてみます。

 まず、総務省の「入湯税に関する調」で、2016年度の全国の入湯税の税

率採用状況を市町村別にみてみます(図表5−1参照)。

 入湯税の課税市町村は全国で975あり、うち892の市町村(91.5%)が入

湯税の標準税率である150円を適用しており、残りのほとんど(8.0%)が

標準未満の市町村です。

図表5-1 全国の市町村別にみた入湯税の税率採用状況

第5章 入湯税の増収策と今後の方向性

第5章では、これまでの入湯税収の現状分析を踏まえ、今後のあり方を考察してみたい

と思います。

「はじめに」でも触れたように、全国各地で人口流出・少子高齢化が進行する中、地域

が衰退することなく発展していくには、地方の基礎自治体にとって財源確保は喫緊の課題

です。税収をアップさせるためには、①課税額の引き上げと、②課税対象者の拡大という

二つの方法があります、昨今注目される消費税率の引き上げは①の流れから、ふるさと納

税・宿泊税・国際観光旅客税(いわゆる出国税)などは②の流れから打ち出された財政政

策ととらえることができます。

第3章では宿泊者数の増加による入湯税の課税対象者の拡大策について述べましたが、

本章では、もう一つの政策である入湯税の課税額の引き上げについて考えてみます。

まず、総務省の「入湯税に関する調」で、2016 年度の全国の入湯税の税率採用状況を市

町村別にみてみます(図表 5-1 参照)。

入湯税の課税市町村は全国で 975 あり、うち 892 の市町村(91.5%)が入湯税の標準税

率である 150 円を適用しており、残りのほとんど(8.0%)が標準未満の市町村です。

そうした中でも、150 円を超える税率を適用している市町村が 4 団体あります。具体的

には、湯郷温泉(岡山県美作市)・箕面温泉(大阪府箕面市)では 200 円、長島温泉(三

重県桑名市)の一部ホテル・旅館では 210 円、阿寒湖温泉(北海道釧路市)の一部ホテル・

旅館では 250 円を徴収しています。

次に、新潟県の入湯税の税率採用状況を市町村別にみてみます(図表 5-2 参照)。

新潟県では、30 市町村のうち 28 市町村が課税市町村で、22 市町村が標準税率である 150

円を呈用しています。しかし、残りの加茂市、上越市、南魚沼市、聖籠町、津南町、粟島

浦村の6市町村(課税市町村全体の 21.4%)は、標準税率である 150 円より少ない税率を

適用してり、標準未満の自治体の割合が全国を大きく上回っています。

税率(円)20 40 50 70 80 100 120 130

(標準)150 200 210 250 合計

市町村数 1 5 14 3 3 48 2 3 892 2 1 1 975

構成比(%) 0.1 0.5 1.4 0.3 0.3 4.9 0.2 0.3 91.5 0.2 0.1 0.1 100.0

※1 市町村数は、平成28年度中に入湯税の現年度調定済額があった団体の数である。※2 標準とする税率の他に不均一課税を行っている場合には、標準とする税率採用団体として計上している。※3 東京都特別区は、23区をそれぞれ1団体として計上している。

図表5-1 全国の市町村別にみた入湯税の税率採用状況

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266

 そうした中でも、150円を超える税率を適用している市町村が4団体あ

ります。具体的には、湯郷温泉(岡山県美作市)・箕面温泉(大阪府箕面

市)では200円、長島温泉(三重県桑名市)の一部ホテル・旅館では210

円、阿寒湖温泉(北海道釧路市)の一部ホテル・旅館では250円を徴収し

ています。

 次に、新潟県の入湯税の税率採用状況を市町村別にみてみます(図表5

−2参照)。

 新潟県では、30市町村のうち28市町村が課税市町村で、22市町村が標準

税率である150円を適用しています。しかし、残りの加茂市、上越市、南

魚沼市、聖籠町、津南町、粟島浦村の6市町村(課税市町村全体の21.4%)

は、標準税率である150円より少ない税率を適用しており、標準未満の自

治体の割合が全国を大きく上回っています。

Page 27: ±n þqtSZ Ö lk )w þÂq wK M · ¤ ö ö1* 3º~ >2 º6ë[(Ù S Ç>& $Ò S Ç $Ò S Ç>' ö aKZ8rM G _ 8 ² \b1"&ï P1ß* Xv ö aKZ8 \*

人口減少社会における入湯税収の役割と今後のあり方  267

図表5-2 新潟県内市町村別にみた入湯税の税率採用状況

市町村名 税率(円)

新 潟 市 150円

長 岡 市 宿泊150円、日帰り50円

三 条 市 150円

柏 崎 市 150円

新 発 田 市 宿泊150円、日帰り120円、指定施設40円

小 千 谷 市 宿泊150円、日帰り100円

加 茂 市 50円

十 日 町 市 宿泊150円、日帰り100円

見 附 市 150円

村 上 市 150円

糸 魚 川 市 宿泊150円、日帰り100円

妙 高 市 宿泊150円、日帰り50円

五 泉 市 150円

上 越 市 中学生以上100円、小学生以下50円

阿 賀 野 市 宿泊150円、日帰り100円

佐 渡 市 宿泊150円、日帰り50円

魚 沼 市 宿泊150円、日帰り100円

南 魚 沼 市 120円

胎 内 市 宿泊150円、日帰り100円、指定施設50円

聖 籠 町 100円

弥 彦 村 宿泊150円、日帰り60円

田 上 町 150円

阿 賀 町 150円

湯 沢 町 150円

津 南 町 100円

刈 羽 村 150円

関 川 村 宿泊150円、日帰り・自炊100円

粟 島 浦 村 100円

※色付き部分は標準未満

2016年4月1日現在

 仮に、これら6市町村が入湯税率を標準税率の150円まで引き上げるこ

とができれば、県全体の入湯税収の底上げに大きく貢献できると思われま

す。それ以外でも、長岡市や妙高市は日帰り客の入湯税が50円ですが、こ

れを50円引き上げるだけでも貢献できると思います。2015年3月の北陸新

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268

幹線延伸により、地方に拡がりつつあるインバウンド需要をいち早く取り

込み、今後も温泉客・スキー客等の宿泊者数の増加が見込める上越市、妙

高市は、今が引き上げを検討する絶好の機会と考えます。

 そもそも、入湯税は、1960年代以降の温泉旅行客の増加に伴い、温泉旅

館やホテルの大型化、高層化が進み、これに伴い温泉施設や消防設備の維

持、整備のための財源確保が必要になり、温泉旅館やホテルの宿泊客を対

象として課税することになりました。標準税率は、1950年は10円だったも

のが、1971年に40円、そして、1978年に現在の標準税率である150円にな

って以降、標準税率は引き上げられていません。

 実際に、近年、入湯税率を引き上げた市町村の事例をみてみます。

 全国的にみると、北海道釧路市が、2015年度に入湯税を標準税率である

150円から250円に引き上げ、超過課税となりました。

 釧路市では、市内にある阿寒湖温泉の近年の観光客入込数、入湯税税収

額、観光客入込数が10年間で約40%、入湯税税収額が約17%減少するとい

う危機的な状況になったため、地元で様々な議論を重ねた結果、市の税条

例を改正し、150円の入湯税を、阿寒湖温泉地区の国際観光地化事業の財

源とするため、2015年から2024年までの10年間、100円引き上げて250円

としました。入湯税引上げ分の運用方法については、入湯税の引上げ部分

のみを観光振興の事業に充てるための基金条例を制定し、100円分だけを

積み立てる基金(釧路市観光振興臨時基金)をつくりました。基金化する

ことで、実際に何にどのくらい使ったのかが明確になり、事業決定は、地

元と市による事業検討会議を設置して、決定した事業に市から補助金とい

う形で支出しています。

 釧路市の入湯税収と延べ宿泊者数の2012~16年度の5年間の推移をみる

と、国内客と訪日客を合わせた全体の宿泊者数は、2015年度の引き上げ後

も懸念された超過課税による宿泊者数の減少は見られず、更なる増加を続

けています。一方、入湯税収は、2015年度以降はそれまでの税収の1.5倍

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人口減少社会における入湯税収の役割と今後のあり方  269

の額で、順調に推移しています(図表5−3参照)。

図表5-3 釧路市の入湯税収と延べ宿泊者数の推移

そもそも、入湯税は、1960 年代以降の温泉旅行客の増加に伴い、温泉旅館やホテルの大

型化、高層化が進み、これに伴い温泉施設や消防設備の維持、整備のための財源確保が必

要になり、温泉旅館やホテルの宿泊客を対象として課税することになりました。標準税率

は、1950 年は 10 円だったものが、1971 年に 40 円、そして、1978 年には現在の標準税率

である 150 円になって以降、標準税率は引き上げられていません。

実際に、近年、入湯税率を引き上げた市町村の事例をみてみます。

全国的にみると、北海道釧路市が、2015 年度に入湯税を標準税率である 150 円から 250

円に引き上げ、超過課税となりました。

釧路市では、市内にある阿寒湖温泉の近年の観光客入込数、入湯税税収額が、観光客入

込数が 10 年間で約 40%、入湯税税収額が約 17%減少するという危機的な状況になったた

め、地元で様々な議論を重ねた結果、市の税条例を改正し、150 円の入湯税を、阿寒湖温

泉地区の国際観光地化事業の財源とするため、2015 年から 2024 年までの 10 年間、100

円引き上げて 250 円としました。入湯税引上げ分の運用方法については、入湯税の引上げ

部分のみを観光振興の事業に充てるための基金条例を制定し、100 円分だけを積み立てる

基金(釧路市観光振興臨時基金)をつくりました。基金化することで、実際に何にどのく

らい使ったのかが明確になり、事業決定は、地元と市による事業検討会議を設置して、決

定した事業に市から補助金という形で支出しています。

釧路市の入湯税収と延べ宿泊者数の 2012~16 年度の5年間の推移をみると、国内客と訪

日客を合わせた全体の宿泊者数は、2015 年度の引き上げ後も懸念された超過課税による宿

泊者数の減少は見られず、更なる増加を続けています。一方、入湯税収は、2015 年度以降

はそれまでの税収の 1.5 倍の額で、順調に推移しています(図表 5-3 参照)。

105 108 108156 157

116 120129

138 145

0

40

80

120

160

0

50

100

150

200

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

(万人)(百万円)

総務省「地方財政状況調査」、釧路市資料より筆者作成

図表5‐3 釧路市の入湯税収と延べ宿泊者数の推移

入湯税収

(2015年度改定)

延べ宿泊者数

(右目盛) (万人泊)

 釧路市以外でも、入湯税の超過課税の動きは見られます。大分県の別府

市は、観光振興の新たな財源を確保するため、2017年度に入湯税の引き上

げを決定しました。初年度となる2019年度の増収を約1億7600万円と見

込んでいます。基金に積み立てた上で、観光客の安全・安心や快適性を確

保する事業、資源量調査など温泉資源保護の事業に活用する予定です。な

お、近年インバウンド需要が盛んな北海道ニセコ町は、2021年から宿泊税

を導入する方針を先日固めています。

 新潟県内では、このような超過課税や宿泊税を導入する動きは未だ見ら

れません。しかし、十日町市が、2016年度からそれまでの税率を50円引き

上げ、標準税率にしました(宿泊100→150円、日帰り50→100円)。

 十日町市の入湯税収と延べ宿泊者数の2012~16年度の5年間の推移をみ

ると、宿泊者数は、2015年度が284千人で、前年度比23千人増加しまし

た。入湯税率を引き上げた2016年度の宿泊者数は239千人で、同45千人減

少しました。一方、入湯税収は、91百万円で、前年度比43百万円増加しま

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270

した。2017年度も91百万円をキープしており、十日町市の安定した財源と

なっています(図表5−4参照)。

図表5-4 十日町市の入湯税収と延べ宿泊者数の推移

釧路市以外でも、入湯税の超過課税の動きは見られます。大分県の別府市は、観光振興

の新たな財源を確保するため、2017 年度に入湯税の引き上げを決定しました。初年度とな

る 2019 年度の増収を約 1 億 7600 万円と見込んでいます。基金に積み立てた上で、観光客

の安全・安心や快適性を確保する事業、資源量調査など温泉資源保護の事業に活用する予

定です。なお、近年インバウンド需要が盛んな北海道ニセコ町は、2021 年から宿泊税を導

入する方針を先日固めています。

新潟県内では、このような超過課税や宿泊税を導入する動きは未だ見られません。しか

し、十日町市が、2016 年度からそれまでの税率を 50 円引き上げ、標準税率にしました(宿

泊 100→150 円、日帰り 50→100 円)。

十日町市の入湯税収と延べ宿泊者数の 2012~16 年度の5年間の推移をみると、宿泊者数

は、2015 年度が 284 千人で、前年度比 23 千人増加しました。入湯税率を引き上げた 2016

年度の宿泊者数は 239 千人で、同 45 千人減少しました。一方、入湯税収は、91 百万円で、

前年度比 43 百万円増加しました。2017 年度も 91 百万円をキープしており、十日町市の安

定した財源となっています(図表 5-4 参照)。

全国の入湯税収上位の自治体の中には、最近 10 年間で入湯税の納税額の順位が大きく下

がっている自治体もあります。団体旅行から個人旅行への旅行スタイルの変化やバブルの

崩壊後の環境変化に対応できず、観光客の減少が続いています。こうした自治体が今後生

き残っていくためには、入湯税収を伸ばしている先進自治体との違いを厳しく認識した上

で、自らの強みを生かした戦略を練り、自治体と温泉関係者が一体となって取り組んでい

く必要があると考えます。

56 54 50 54

91

268 261 261284

239

0

100

200

300

0

50

100

150

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

(千人)(百万円)

総務省「地方財政状況調査」、観光庁「宿泊旅行統計調査」より筆者作成

図表5‐4 十日町市の入湯税収と延べ宿泊者数の推移

入湯税収

(2016年度改定)

延べ宿泊者数

(年・右目盛) (千人泊)

 全国の入湯税収上位の自治体の中には、最近10年間で入湯税の納税額の

順位が大きく下がっている自治体もあります。団体旅行から個人旅行への

旅行スタイルの変化やバブルの崩壊後の環境変化に対応できず、観光客の

減少が続いています。こうした自治体が今後生き残っていくためには、入

湯税収を伸ばしている先進自治体との違いを厳しく認識した上で、自らの

強みを生かした戦略を練り、自治体と温泉関係者が一体となって取り組ん

でいく必要があると考えます。

おわりに

 これまで、「入湯税」にスポットをあて、その税収動向を地域別にみた

上で、①課税対象者数の拡大と②課税額の引き上げという両面から、入湯

税の税収アップの方策について考えてきました。

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人口減少社会における入湯税収の役割と今後のあり方  271

 繰り返しになりますが、入湯税収が伸び悩んでいる新潟県の基礎自治体

が今後、観光県として生き残っていくためには、まずは県全体が現状の危

機的状況を再認識した上で、広域連携し、官民一体となって、①来訪客の

増加、②入湯税の標準税率(150円)までの引き上げとそれに見合うサー

ビスの向上を強力に推進していかなければなりません。

 全国でも先進DMOである「雪国観光圏」代表理事の井口智裕氏は、あ

る講演会で次のように述べています。

 「ディズニーランドを訪れるお客様は〈非日常〉を求めている。一方、

雪国である新潟県を訪れるお客様は〈異日常〉を求めている。」

 けだし名言です。天然の温泉地はまさに〈異日常〉の空間と言えます。

これから、地方の基礎自治体は、来訪者を満足させる〈異日常〉の空間を

いかに整備していくかについてみんなで知恵を縛り、入湯税収をはじめ自

主財源である地方税収の増加に努め、地域を末長く存続させていく必要が

あると改めて思う次第です。

【参考文献】・総務省「人口推計」・総務省「地方財政状況調査」・観光庁「宿泊旅行統計調査」・総務省「財政状況資料集」・総務省「入湯税に関する調」・総務省、経済産業省「経済センサス−活動調査(確報)」・国土交通省「鉄道統計年報」・新潟県ホームページ・釧路市ホームページ・十日町市ホームページ