No.682015

No.68

富友会総会のご案内

　　　　　も

　く

　じ

巻頭言 ………………………幹事長　

井上　　

保（高二十回） …

1

消滅自治体と地方創生

　　

　　　そして18歳選挙権 …会　

長　

小室　

直義（高十九回） …

2

グローバル人材育成の取組 …校　

長　

岩城　　

明 ………………

3

随　想 …………………………………………………………

4

つながりを持つ　

渡辺　

寛（中十九回）・晨シン

　鶏ケイ　

佐野和彦（中

二十一回）・〝和みて楽し〞二一会　渡井　

亘（高一回）・若返った同

窓会

　藤川隆司（高四回）・極夜の船旅

　納屋昭宏（高七回）・まだ

現役の七十三歳

　笠井信男（高十二回）・学年幹事の交代にあたって

石川　

忠（高十五回）・校歌の作詞者作曲者　

岡正彦（高十六回）・

二胡の楽しみ

　四條淳人（高十七回）・「子育て日記」　河原崎信幸（高

二十回）・風船が取り持ったご縁　芦澤英治（高二十一回）

同窓会だより

平成二十六年度富友会総会を終えて ……………………………

18

富嶽祭　

富友会展示コーナー ……………………………………

19

「富士山讃歌」御紹介 ………………………………………………

20

会員募集　

－

富友会美術同好会

－

………………………………

21

美術部（三・四・五回生）ＯＢ会　

閉会記念写真 ………………

21

学校だより

部活動の記録 ………………………………………………………

22

高校生活の意義 ……………………………………………………

31

大学別合格者数 ……………………………………………………

32

最近３年間の卒業生の合格状況 …………………………………

34

人材の情報提供のお願い …………………………………………

35

事務局より ………………………………………………………

36

富友会寄付・会計報告…………………………………………………

38

富士高校クラブ後援会からのお願い・編集後記 ……………………

40

表紙写真「世界遺産富士」　撮影

　半場

　清（高十三回）

日時　 平成27年８月22日(土)　13時30分受付開始　14時00分開会1. 総　会　14時00分～ 14時50分　ホテルグランド富士「富士の間」2. 講演会　15時00分～ 15時50分　ホテルグランド富士「富士の間」 　講師：㈱セブン＆アイ・フードシステムズ代表取締役社長 　　　　大久保　恒夫 氏（高校26回） 　演題：「挨拶で土台をつくる」3. 懇親会　16時00分～ 17時30分　ホテルグランド富士「孔雀の間」4. 会　費　５，０００円　当日参加も可。80歳以上の方は無料です。 ＊ホテルグランド富士　　富士市平垣本町8-1　TEL 0545-61-0360 ＊駐車場は終日ホテルグランド富士を利用できます。 　なお、飲酒される方のお車でのご来場は、おやめください。 ＊開催担当幹事　高26回　31回　36回　41回 ＊お問合せ　℡ 090-1288-4673　　　高26回　伊藤まで

─ 1 ─

　富士山が世界文化遺産に登録されてから富士山との縁を意識するようになった。　ふり返ってみると、私の卒業した小学校も中学校も、そして高校も校名に富士の２文字が入る。校歌には勿論富士山が出て来る。小学校「あした夕べに富士ケ嶺を仰ぎて学ぶ学び舎の」中学校「ああ秀麗の富士ケ峰をあした夕べに仰ぐとき」そして高校「霊峰富嶽の聳ゆるところ青松白砂に陽の炎へば」と歌い出す。　そして今は富士市民としての集まりに出ると、きまって市民憲章を「富士山のように広く思いやりの心をもち」と唱和する。　そんな中、最近とりわけ意識していることに『岩淵鳥居講』がある。私たちのまち旧富士川町で江戸時代から続いている伝統行事だ。岩淵の八坂神社の氏子が中心になってつくられた講中で12年に一度の申年に富士山頂に鳥居を奉納する。岩淵は富士川の渡船を担って来た。その渡船を造る材を富士山浅間神社の社領から特別に切り出して来た。そのことへの感謝と渡船の安全祈願を兼ねて鳥居の奉納を行なって来たという。　富士山は「国立公園」であり「特別名勝」である。厳しく法で保護されている。その山頂に鳥居を運び、そこに建立するということは誰にでも許されることではない。しかし岩淵鳥居講にはそれが認められているのだ。権利として譲ってほしいといった申し出もあったという程だ。　さらに言うと、富士山が世界文化遺産である所以は「信仰の対象と芸術の源泉」だからだが、その信仰の具体的な形としての行事が江戸時代から今日まで続いているのは静岡県側では岩淵鳥居講だけだという。　それだけ凄いと言いたいのだが、残念ながら12年に一度と機会も限られているせいか、あるいは文書としての記録も余り見当たらないせいか、文化財として認められるための拠り所が示しづらいようだ。もどかしく思う。　来年（平成28年）は申年なので、地元ではそのための積み立てや委員会の立ち上げ、市や県などの関係機関との打ち合わせが始まった。いよいよという気分が高まって来る。　幸い、今回の奉納にあたっては富士市として調査や記録保存に予算を用意し、準備の段階から協力もしてくれている。この行事が公式に記録され紹介される。やがて文化財としての価値が認められていくものと期待する。　来年、もし運よく鳥居講に同行出来たら富友会の皆さんにうるさがられる位その話をするだろう。今からことわっておいた方がよさそうだ。

富友会幹事長　　井上　保（高20回）

巻　頭　言

─ 2 ─

　ご承知のように今春は統一地方選挙が有り、富友会関係でいえば岳南地区において静岡県議会議員に１人（富士宮市選挙区定数２名）・富士市議会議員に６人（定数32名）・富士宮市議会議員に7人（定数22名）が当選されました。　このことまことにご同慶の至りです。当選回数を重ねられている方々も新人の方々も初心を忘れずに市民の幸福度向上を目指してがんばっていただくことを心から期待申しあげるところです。さてその幸福度、住民満足度という表現もありますが、昨今の社会状況を鑑みてそうしたことが確実に進展していると皆さんはお思いでしょうか？私は残念ながらそうは思えません。むしろ心配や疑問の度合いが増していく思いでいます。地球温暖化・エネルギー資源等々のグローバル的問題から3・11で改めて強く感じた自然災害発生の心配、そして生活の中にある介護や子育てに対する困難さ等々を思うと、生活者である国民が政治や行政に求めているのは、日々の暮らしで感じる懸念度に対し具体的処方を示してもらうことであろうと捉えています。すなわち安心安全ということが日本社会のキーワードではないかと考えます。　つけ加えればその安心安全は国を守るということにまで及んでいると考えます。そういう中、昨年５月中央公論６月号に載った日本創生会議座長増田寛也氏による「提言」《ストップ・人口急減社会》は大変衝撃的なものでありました。その内容が2040年までに全国1,800市区町村のうち49.8％の896自治体が消滅可能性あり（子どもを産む20歳～ 39歳までの女性が2040年までに５割以上減る自治体）と公表されたからであります。（念のためですが富士市・富士宮市はその中には入っておりません）しかしこの現象をよくよく考えるといまさらながらにという冷静な見方もしなければならないと思います。つまり高齢化社会は現実のものとなり（25％超）少子化も進行（合計特殊出生率1.42）そして東京一極集中と地方の人口流出・・・・とられた政策対策に効果がみえない以上結果責任は政治が問われます。で、この地方消滅に対して安倍政権が掲げるものが地方創生ですが、その策はというと具体的なものは伝わって来ていません。10年ほど前から使われている地方再生というスローガンも同様でしたが・・・・。　ではどのようにあるべきか、私は次のように考えます。主権と主体は生活者であって、政治行政の在り方は地方主権（けっして分権ではない）である。そして市民社会がそのことを改めて覚醒することによって途は拓ける、ということです。と言いながらもこれでは抽象論的でありますので、一つの具体的行動を提案したいと思います。それは政治の現場にいる富友会メンバーの議員方が富士高生に政治を直接語ってもらう機会を設けるということであります。選挙権が「18歳以上」となりました。当然のことながら文部科学省は高校生の政治活動を全面規制した1969年の通知を見直すとのことですがこれは上位下達の一つ、我々は自主自発の形で後輩たちに学びの場を提供する。そしてそのテーマは「地方自治は民主主義の学校」でいかがでしょうか。　以上、富友会の伝統を継承しながら「創生」をいたしたいと考える所以です。

消滅自治体と地方創生　　　　　そして18歳選挙権富友会　会長　小室　直義 （高19回）

─ 3 ─

　校長２年目を迎え、富士高や富士高生の長所・短所が見えてくるとともに、多少なりとも先の見通しを持ちながら仕事に取り組めるようになりました。一方で、今年が自分自身の教員生活にひとまず区切りをつける年と思うと、一日一日、一つ一つの行事が感慨深いものに思えてきます。だからこそ、長所をさらに伸ばし、短所を解消する取組を進め、創立100周年に向けてのバトンを確実に繋いでゆく責任を感じています。　さて、関係法令の改正により、今年度から教育委員会制度が大きく様変わりしました。教育委員会の責任者を明確にするため、教育委員会を代表する教育委員長と教育委員会事務局トップの教育長を一本化し、議会の同意を得た上で首長が新教育長を任命するというものです。これにより、首長の教育に対する権限が大幅に強化されることになります。川勝静岡県知事と県教委の協議機関「総合教育会議」の初会合において、知事から重点となる４項目の提案がなされました。その第１の提案が「教職員や高校生の国際化」であり、具体的には、高校生のパスポート全員所持や海外修学旅行の推進といった提案でした。　多方面からグローバル人材の育成が求められる中、本校においても数年前から希望者を募り、夏季休業期間を利用して富士市の姉妹都市である米カリフォルニア州オーシャンサイド市と中国浙江省嘉興市を交互に訪問してきました。また、嘉興市からは毎年本校に30人から40人の生徒が訪れ、富士高生との交流が行われています。　昨年度はその嘉興市を訪問する予定になっていましたが、尖閣諸島の領有権問題が起こり、保護者からの不安の声もあって中止することが決まっていました。しかし、せっかく続けてきた海外研修をここで途絶えさせたくないという思いから、急遽５泊６日の台湾研修を企画しました。周知期間が短かったこともあり、私を含め引率２人と女子生徒６人での台湾訪問となりましたが、わが国との正式な国交が無いにもかかわらず、大変に親日的な台湾でのホームステイ、台湾静岡事務所や企業を訪問しての懇談、故宮博物院等の文化遺産での研修など極めて充実したものになりました。　こうした成果を踏まえ、今年度はオーストラリア・シドニーを研修地とし、参加生徒を募ったところ、22人が希望してくれました。新興国オーストラリアの広大な大地に立って、富士高生が何を思うか大変楽しみです。　海外旅行をすれば国際化かというとそれは大きな間違いであることは言うまでもありません。語学力を高め、母国語以外の言語で外国人に自分の考えをしっかり伝えることができること、自他の文化や民族・国民に関心を持ち、理解を深めること等が備わって、初めてグローバル人材と呼べるのではないでしょうか。とはいえ、若くしなやかな感性を持つ高校生の時期に異文化を体験することは自己のあり方や将来を考える上で、大変大きな意味を持つものと確信しています。昨年度及び今年度の取組を基に、富士高校独自のグローバル人材育成カリキュラムが確立できたらと思っています。　富友会の皆様には、本校のこうした取組への御支援も含め、今後ともより一層の御理解、御協力をお願い申し上げます。

グローバル人材育成の取組

校　長　岩城　明

─ 4 ─

随想◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

　つながりを持つ

　　　　　　　　渡　辺　　　寛

（中十九回）

　

いま、こうして『富友会誌』に随想

を書かせていただくのは幸せなことだ

と思う。

　

八十五歳になって、社会とのつなが

りを持っていられることは、願っても、

なかなか得られることではない。

　

ここ一年の間に、私の知人や親しく

していた友人の何人かが、この世を

去っていった。あの人も、この人も、

という感じがした。高齢になって、そ

ういう別れは、自分の周りにいた人の

温かみが少しずつ消えていく感じがし

て、空虚を身に染みて感じる。

　

とくに私にとって、ずっと親しくし

てきた、文芸を愛する仲間が、この世

を去っていくのは本当に寂しい。

　

今年の春、私の敬愛していた谷川昇

さんが亡くなった。私より少し若かっ

た。静岡市に住み、「文芸フォーラム静

岡」の活動を通して、県内の文芸活動

に大きな影響を及ぼしてきた。地方に

住んでいる人たちの中に、身近な文芸

を育てることに向けて、全エネルギー

を注いだ。富士市で、文芸講座の講師

や、市民文芸の選者として依頼したこ

とも何度かあった。

　

私個人にとっても、もし谷川昇さん

との出会いがなかったら、今の自分は

なかっただろうと思う。これは、現実

の社会で利害の関係を持っている場合

とは違う。もっとさらっとしていて、

それでいて深くて、純粋なものである。

　

私は、退職してもう二十五年になる。

長いと思っていたのに、過ぎてみれば

本当に短い。

　

長く生きていても、やりたいことは、

まだある。読みたい本、書きたい随筆

や小説。それから、観たいもの、聴き

たい音楽。旅もしたい。

　

損得に関係のない付き合い。これが、

最高の関係だと思う。

　

だから、こうして『富友会誌』に、思っ

たことを書かせていただくことも楽し

いことである。

　

純粋な友の顔が浮かんでくる。同窓

の友はただ懐かしい。

随想◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

　晨シ

ン

　鶏ケ

イ

　　　　　　　　佐

　野

　和

　彦

（中二十一回）

　

明の春晨鶏声をほしいまま

　

荒コウジン神の舟を模したる飾りかな

　

一握の野蒜の生ふる屋敷墓

　

終章は如何に生くべき桜かな

　

点滅は螢の鼓動こもり沢

　

八月や牧舎にこもる咀嚼音

　

ひもすがら山の声聴く紅葉狩

─ 5 ─

　

峨ガ

ガ

ギ

ギ

々巍々と瑞ミズガキヤマ

牆山や秋澄めり

　

霜晴や富士に二心の有るや無き

　

恐ろしきまでに雲燃ゆ冬夕焼

随想◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

　〝和みて楽し〞二一会

　　　　　　　　渡

　井

　　　亘

（高一回生）

　

昨年の二一会は初夏の「蕎麦食う会」

に始まり、夏の「ステーキを楽しむ会」

秋には「総会」と残り少なくなった同

級生が集まり賑やかに行われました。

　

さて、今年はといいますと、すでに

三月に一四名の富士地区在住の仲間が

集まり、食べて飲んで楽しむ会が行わ

れました。場所は富士市本町通りで、

ちょっと見落しがちな入り口を二階に

上がった、こじんまりとした海鮮フラ

ンス料理店〈和楽〉です。因みにここ

は二一会の塩川宏明君の御子息がオー

ナーシェフを務めるレストランで、巷

間の人気が高くなかなか予約が取れな

いので有名です。人によっては食事が

終わるとすぐ次の予約を入れて帰ると

のことです。

　

この日は特別な計らいで休業日に貸

切りということで便宜を計らって頂き

ました。ここで目にし口にした料理は、

非常に洗練されていて美しく、舌に優

しい馴染みやすいものでした。一品一

品丁寧に手を加えられ、ガラスの器に

色どり鮮やかにドレサージされた海の

幸は、宝石をちりばめたかのようで一

瞬箸を付けるのをためらわせました。

　

テーブルにはオードブルから始ま

り、アントレ・デザートと本格的なフ

ランスのコース料理が用意されまし

た。もちろん引き立て役は辛口のボル

ドーワインでした。一たび料理を口に

しますと、口腔一杯に広がる爽やかな

海の香りと、しゃきっとした歯触りの

海の宝石がワインの風味と一緒になっ

て舌の上で踊り出す何とも言いようが

ない〈まいう〜〉の世界でした。

　

宴も半ば過ぎ、ワインの酔いが心地

好く身体中にゆき渡った頃、富士宮在

住の佐野和彦君から一つのことが提案

されました。彼は高校の生物の教師を

長く勤めた人物で、自然への愛着が強

く、自然を身近な友として近年は俳句

三昧の生活を送っているといいます。

富友会誌にも俳句〈風樹の嘆〉を寄せ

ています。

　

俳句には喜怒哀楽の感情が、一七文

字に凝縮されていて人生そのものであ

るといいます。「これからの人生、俳

句を作りながらその中に自分を見い出

し、生きる伴侶としていこうじゃない

か」というのが提案の趣旨でした。そ

して、次回七月行われる予定の二一会

にそれらしいものでいいから、一人一

句作ってくるようにと宿題が出されま

した。酒の席での話であり、どれほど

真面目に受け止められ、誰がどんな俳

句を作ってくるか興味のもたれること

です。日本語は基本的には五音・七音

─ 6 ─

からなっているといいます。私も身の

回りから言葉を捜して五七五と並べて

みました。

　〝句作りに　

言葉あれこれ　

こぶし

散る〞

　

どんな評価が下されるものやら楽し

みにしています。

随想◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

　若返った同窓会

　　　　　　　　藤

　川

　隆

　司

（高四回）

　

私たち高校四回生は、現在長寿の「傘

寿」を過ぎて、いよいよ人生の終着駅

に近づいてきました。厚労省の日本人

平均寿命二十一年によると、男性は

八十歳で八、六六年でした。また、健

康寿命は二十三年度静岡県は女性が全

国第一位、男性が二位でした。しかし

富士市は、県下の市町村と比べるとあ

まりよくありません。このようなこと

はさておいて、自分の健康は自分で維

持管理することが大切です。お互いに

九十歳の健康寿命を目指して努力した

いと思います。

　

ところで、恒例の「高四回生同窓会」

が平成二十六年度は、六月七日ホテル

グランド富士で開催されました。新井

勇吉総合司会の進行のもと開宴され、

来賓としてご出席の吉田実先生が元気

な姿で、力強く毎年のご出席を確約さ

れました。思い起こせば、吉田先生は

私たちが中学生の時に、学校を卒業さ

れすぐに母校に赴任されました。です

から私たちとは七歳位の年の差がある

だけでした。しかし、数学（解析）の

授業に、水泳の指導にと、若い情熱を

私たちに注いでご指導をいただきまし

た。それだけに私たち生徒にとっては、

沁みのある子弟関係だったといえるの

ではないでしょうか。この同窓会も「吉

田先生ありきの同窓会」です。ぜひと

も先生には長生きをしていただき、最

後まで私たちにご指導ご鞭撻をいただ

けたら幸甚に思います。

　

同窓会宴会半ばになると、小野行雄

さんの作詞「同窓の友と共に」が披露

され、琵琶湖周航の歌のメロディで合

唱しました。小野行雄さんは、穏健で

誠実、その上探求心が旺盛で努力家で

す。ご自宅を美術会場にして、自作の

水彩画や油絵を展示したり、仲間の歌

を七五調で簡単に作詞したりしてくれ

ました。また陸上競技の長距離走が得

意で、いろいろな大会では好成績を収

めています。まさに文武両道を地で行

く方です。この詩を同窓会に出席でき

なかった方々にもお知らせし、同じ思

いを分かち合いたいと思います。過去

を思い出すことは、脳の活性化につな

がり、ボケ防止にもなると思います。

　

一、祖国破れし翌くる年

　　　

胸弾ませて富士中に

　　　

岳南健児集い来て

　　　

明日の夢見し学び舎に

　

二、中学、高校六年は

　　　

戦後貧しき世なれども

　　　

熱き血潮のほとばしり

　　　

文武両道に励みたり

─ 7 ─

　

昭和二十年八月十五日終戦を迎え、

その翌年の混乱期の中、私たちは富士

中に入学しました。入学試験の口頭試

問で、鈴木先生から俳句の季節を聞か

れ、その答えが正しかったかどうか未

だに頭の片隅に残っています。中学の

授業では、五味先生から「富士郡の秀

才」と励まされましたが、勉強する環

境とは言えず、教科書もガリ版ずり、

先生の欠講も多く勉強したという記憶

は余りありませんでした。皆さんはど

うでしたでしょうか。ただ上級生の体

育館でのお説教や応援歌の練習だけは

鮮明に記憶に残っています。

　

学制改革で併設中学校から高校に入

学しても、一年生までは最下級生です。

やっと後輩ができると、今までのうっ

ぷんを晴らすかのように、下級生を運

動場に集めて、応援歌の練習をしたも

のでした。そのほか部活動のことや淡

い初恋、受験勉強のことなどが走馬灯

のように頭をよぎります。

　

三、あれから月日幾星霜

　　　

赤き頬なる青年も

　　　

今や白髪の翁なり

　　　

過ぎし昔を偲ぶのみ

　

四、さらばと浮世に別れ告げ

　　　

あの世に眠る友幾多

　　　

寂しき耳に聞こゆるは

　　　

幽かにわれ呼ぶ友の声

　

それぞれが社会人になってからは、

高校時代によく遊んだ仲間が集い、結

婚披露宴に出席したり、旅行に行った

りしました。それがいつの間にか、今

度は葬儀に参列しお別れをしなければ

なりません。高四回生同窓会も今年は

参加者が、三十名になってしまいまし

た。この間お会いした時は元気だった

のにもう死亡欄に名を連ねるとは、寂

しい限りです。

　

小野行雄さんの「同窓の友と共に」

を合唱した後は、それぞれ得意分野の

方々から色々と発表があったり、その

上素晴らしい音声にも触れることがで

きました。最後は井出宣一さんが、自

分なりの健康法を述べて閉会を宣言さ

れ、高四回生同窓会が終了となりまし

た。幹事長の三浦英次さんをはじめ、

事務局の遠藤守さん並びに幹事の方々

ご苦労様でした。

　

この同窓会で私は、歳を一つ若返っ

たような気分で一杯です。参加された

皆さん方の顔も、昔の中高時代の顔に

戻って若返っていました。これからは、

はじめに書きましたように、自分の健

康は自分で維持管理し、お互いに健康

で長生きをしたいものです。そのため

に、富士市の「青春マイレージ」や県

の「ふじ三三プログラム」やＮＨＫの

「マイ健康」なども参考になるのでは

ないでしょうか。

　

それでは、またお会い致しましょう。

─ 8 ─

随想◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

　極夜の船旅

　　　　　　　　納　屋　昭　宏

（高七回）

　

ノルウェーに「沿岸急行船」という

フェリーがある。

　

毎夜、西海岸の港ベルゲンを出て沿

岸の町に寄港しながらノルウェー海を

北上、欧州の北端を廻ってバレンツ海

に入り、ロシアのムルマンスクに程近

いキルケネスを往復、十二日後にベル

ゲンに帰って来る定期船である。

　

深い峡湾と氷河に遮られ、陸上の交

通網の疎らな沿岸の住民にとって、人

や生活物資を運ぶ一日一便の船便が文

字通りライフラインとなっている。

　

航路の三分の二は北極圏にあって、

冬は終日太陽を見ない極夜となる。

　

船賃が半額となる十一月下旬、思い

立って家内を同伴、ベルゲンに飛んだ。

　

午後十一時、雛段状に積み上がるベ

ルゲンの灯火を眺めながら出航する。

一万噸、定員五百人の船に乗客は約

七十人、半数が英国人とドイツ人だっ

た。

　

一夜明けると左舷に荒涼とした大小

無数の島々、右舷には氷河が削り残し

た荒々しい姿の岩山が続き、時に峡湾

の陰に隠れた集落が現れる。船はその

一つ一つに寄港し荷役を終えて次の港

に向かう。

　

三日目、トロンハイム入港、かつて

首都であったこの街に半日停泊する。

下船して街を歩く。凍結して足元が危

ない路面に商店の主が砂を撒いてい

た。十時頃山の端に出た太陽が正午に

なっても昇らず低空を徘徊している。

　

四日目朝、北緯六十六度三十三分を

過ぎ北極圏に入る。氷点下の上甲板で

北極入圏の洗礼式があった。海の神に

扮した船員が船客を捉えて背中に氷を

入れ、あと熱い果実酒を振舞う手荒い

儀式だ。「ジャパニーズ」と声が掛かっ

て家内が引きずり出され、抵抗むなし

く柄杓一杯の氷を襟首に注ぎ込まれ

た。大きな悲鳴に歓声と拍手が湧く。

船室に戻ると船長の署名入りで「海の

神は貴殿の北極圏入りを確認した」旨

の証明書が届いていた。

　

同日午後ボードー入港。背後の雪山

が紅く染まっている。極夜は何も見え

ない闇の世界かと思ったが少し違う。

水平線下をうろつく太陽の余光で、こ

の町では朝九時頃から午後三時頃まで

夕暮のような明るさが続き、北上する

につれてこの薄暮の時間が短くなって

行く。

　

五日目、北極圏最大の都市トロムソ、

雪に覆われた街に年末セールに入った

店々の窓明かりが暖かい。絵本で見た

西洋のクリスマスの街を歩くようだ。

　

緯度は既に南極の昭和基地のそれを

超えている。定期船が冬期に北極圏を

航行できるのは、沿岸を洗うメキシコ

湾流のおかげで海が凍らないからだ。

　

六日目、ホニングスボーグでノー

ルカップ行のツアーに参加する。岬

に向かうバスを陸軍の除雪車が先導す

る。正午、薄闇に欧州最北端を示す標

識が影絵のように浮かんでいた。北緯

七十一度、吹雪。

─ 9 ─

　

岬のカフェ

の熱いココア

に至福を感じ

た。

　

この夜、船

のラウンジで

満月の海を眺

めていて、薄

緑色の雲のよ

うな光が目に

入った。甲板

に出ると上空をV字型に二条の光がよ

ぎっている。出航後初めて見るオーロ

ラが中空を揺曵している。氷の張った

甲板は見物客で一杯になった。

　

七日目、バレンツ海に入る。海面が

所々凍っている。キルケネス寄港。他

の寄港地と同じく、豪邸も貧相な家も

なく木造の住宅が程良く立ち並び、店

の規模も商品も都会並で、この国の格

差のない生活水準が伺われる。

　

荷役を終えた船がベルゲンに引き返

す。

　

午後五時、船内放送が「右舷にノー

ザンライト」と告げる。この夜、オー

ロラが四回現れた。二回目が一番華や

かだった。十五分程で消えて北斗七星

が大きく残る。柄杓の先を辿って北極

星を探すと頭上真上にあった。

　

船内では終日双眼鏡を片手にラウン

ジで過ごした。暗夜、波の上に様々な

形で踊る月の光はいつまで見ていても

飽きない。前方遠くに見える一点の灯

が徐々に近づき、港町の無数の灯火に

拡がる。入港、碇泊、出港。町の灯がゆっ

くり遠ざかり、灯台が遠く明滅する。

船上で眺める港の灯は久しく覚えたこ

とのない旅愁を誘う。不思議なことに

月が何日も沈まない。月光に映える氷

雪の峰々は凄絶な眺めだ。

　

十日目、朝十時、七日ぶりに太陽を

見る。午後二時には沈んだが、海上に

日常の明るさが戻った。往復十二日間

乗り通した物好きな客は約二十名、

各々船内の好きな場所で自在に船旅

を楽しんでいたが、すっかり顔馴染に

なった。夕食時に英国人にサインを頼

まれ、日本語で署名をすると、漢字が

珍しかったと見え、続けて四人がサイ

ンを求めて来た。

　

十二日目午後、ベルゲン帰港。船員

船客誰彼となく肩を叩き合って別れの

言葉を交わし、名残を惜しんで船を降

りた。

　

月下の海や、港の灯を眺めて過ごし

た無為の時間が、今無性に懐かしい。

随想◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

　まだ現役の七十三歳

　　　　　　　　笠　井　信　男

（高十二回）

　

小生は三月下旬生まれなので、同級

生の中では一番遅く七十三歳となった

が、この会誌が発刊される頃には、

七十四歳となっている人も多く、もう

直ぐ後期高齢者の仲間入りとなる事に

なる。

　

富士高卒業後、早くも五十五年経っ

た。自宅は自転車で十分余りの近くで

─ 10 ─

あったが、朝ギリギリまで寝ていて中

古自転車の荷台へ鞄をくくり付ける時

間もなく、右手でハンドル左手で鞄を

押さえて、始業ギリギリに滑り込む毎

日であった。

　

今年は終戦後七十年であると共に、

小生にとっては銀行に就職してから

五十年経った。現在は同級生が経営し

ている古紙問屋に毎日勤めているの

で、サラリーマン生活を五十年続けて

いる事になる。

　

五十年と言えば、平成二十二年十月

に富士高卒業五十周年を記念して同窓

会を開催した。ホテルグランド富士に

九十二名が集い旧交を温めた。この同

窓会は三〜四年毎に開催していて、小

生は事務局として会計やら雑務を担当

している。近隣に住む総幹事の田村隆

男君やクラス幹事の応援を得ながら、

昨年十一月にも開催したが、この時の

出席者は六十四名に減ってしまった。

段々外出が億劫になる様だ。

　

この同窓会の前に、以前総幹事で

あった川島公夫君が惜しくも亡くなり

大変ショックであった。川島君とは同

じ三年Ｂ組で、大学も同じであり頼り

にしていた存在だっただけに本当に残

念であった。それだけに幹事一同とし

ては、元気に幹事が出来るのは大変有

難い事である。

　

ここで古紙業界について少し記す

と、古紙は品薄状況で争奪戦となっ

ている。国内では回収システムが確立

されており余っているが、この余剰分

を中国等に輸出しているからである。

製紙業界にとって重要な原料となって

いると共に、環境・省エネ・リサイク

ルにも貢献している。当社は業界に先

駆けて「こしのえき」と名付け、一般

市民が気軽に置いていただける回収ス

テーションを県内百三十カ所に展開し

て好評を得ている。これからも重要な

資源として持続していく事が大切で、

再認識していただければ幸いである。

　

毎日忙しくしている中で、やはり息

抜きが必要で、年一回の海外旅行をノ

ルマにしていたが、最近では二、三年

置きとなっている。最初は銀婚旅行と

して初夏のカナダが素晴らしく病み付

きとなった。それから十一回を数えて、

元気の内に遠くへと考え、ヨーロッパ

やエジプト、マチュピチュ等が印象深

い。

　

三年前の夏には古希記念としてスイ

スへ十日間の避暑を奮発し、天気に恵

まれて山岳美を満喫してきた。五年前

には結婚四十周年としてベネルクス三

国十日間「花と芸術」のツアーに参加

した。チューリップとフェルメールや

ゴッホ等が目玉となっていた。旅の後

半にアイスランドの噴火による火山灰

の影響で、ヨーロッパの主要飛行場が

数日閉鎖されて、日本に帰れなくなり、

四日間延長を余儀なくされた。添乗員

の手配で帰り便が確保されたので、安

心して自由行動を楽しむ事が出来た。

　

毎年富友会富士支部総会に出席して

いるが、席上学校関係者から富士高の活

動状況について報告がある。これによる

と正に文武両道が遺憾無く発揮されて、

頼もしい限りである。最後に斉唱する

校歌も年々味わいが深まっていく。

─ 11 ─

　

この拙い小文を閉じるに当たって、

これからも卒業生、在校生の一層の活

躍を祈るばかりである。

随想◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

　学年幹事の交代にあたって

　　　　　　　　石

　川

　　　忠

（高十五回）

　

去る四月二十八日学校後援会の監事

の仕事を終え〝ホッ〞としたところ、

前幹事として富友会誌に一筆をとの要

請。

　

長男が富士高に入学以来ＰＴＡ・本

部役員・学年幹事と途中多少のブラン

クがあったものの振り返れば矢継ぎ早

の二〇年であった。この間喜びや楽し

みも多かった筈だが何故か寂しいこと

悲しいことばかりが心に刻まれてい

る。役柄のせいで友の訃報は必ず私の

許に伝わって来た。皆、短すぎる一生

だった。ご冥福を祈るばかりである。

　

さて、年寄りの決まり文句「昔は良

かった」はこと富士高については当嵌

まらない気がする。大学進学率の良さ

もさることながら、生徒達の行儀の良

さ。外部の来訪者に対してもキチンと

挨拶できるし身なりもキチンとしてい

る。教室内も昔とは段違い、敷地内も

清掃が行き届いている。自分の在校中

のことを想い出すと恥ずかしい限りで

ある。これは本音。卒業生である私共

は母校富士高を立派な一等国だと誇り

に思うのである。積み重ねた伝統を末

永く繋げて欲しいと思う。

　

終わりに。今四月から学年幹事ポス

トが富士宮地区の私から富士地区の花

崎俊明君に交代した。多分三年間はお

願いできると思うがその後は吉原地区

に番が回る慣例である。吉原地区では

芦川英一君は亡く、川村正昭君も無理

はできず誰が幹事役を受けてくれるの

か気掛かりである。率先して引受けて

くれる人を待っている次第である。

随想◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

　校歌の作詞者作曲者

　　　　　　　　

　岡　正　彦

（高十六回）

　

富友会会誌を手にする度にああまた

も出来なかつたか、とくやしく思ひ覚

悟をあらたにすることをもう何回経験

したことでせうか。

　

校歌（霊峰富嶽の聳ゆるところ）に

ついて教へてもらひたいことがあり、

それを投稿によつて果したいと思つて

もう十年以上になります。

　

今度こそ、と何度目かの決意を以て

筆を執ります。

　

話の初めは校内合唱コンクールから

とします。しかしこの行事、今でも行

はれてゐるのでせうか。全学年共通の

課題曲と、クラス毎に選んだ自由曲の

二本立てで合唱の優劣を決める、と云

ふ行事です。

　

音楽部所属の人が中心となつて合唱

の練習をするクラスが多かつたけれど

三学年の全クラスに中心となつて指導

─ 12 ─

する音楽部員が揃つてゐるわけでもな

いので、各クラスいろいろ工夫してゐ

ました。私は音楽部に所属してはゐま

せんでしたが音楽は嫌ひではなかつた

ので音楽部へ足を運んではいろいろ教

へてもらひました。部員は皆親切で初

歩的と思へることでも丁寧に教へてく

れました。

　

自然親しみも増してきて、合唱コン

クールが終つてからでも二階にあつた

音楽室に遊びに行くことしばしばでし

た。音楽部室はこの教室とはドアー一

枚へだててゐるだけでしたのでいつも

誰かがピアノの周りに出て来てゐまし

た。

　

二年生のときはとくに足繁く通つて

音楽部の人達と談話したり一緒に歌を

歌つたりして楽しいときを過ごしまし

た。

　

ピアノの周りに集つた人達が歌う歌

には知ってゐるものもありましたが未

知の歌も多かつた。しかし皆の声に耳

を傾けながら歌つてゐると自然に覚え

てくるので、むしろ未知の歌とのめぐ

りあひが楽しみでした。

　

ここで覚えた歌で五十年たつた今で

も鮮やかに想ひ出される、特別に好き

な曲が二つあります。

　「さくら貝の歌」（うるはしきさくら

貝ひとつ　

去りゆける君に捧げん）と

「出船」（今宵出船かお名残り惜しや）

です。どちらも詞、旋律とも美しく且

覚え易い、富士高音楽部想ひ出の曲で

す。

　「さくら貝の歌」はテレビで倍賞千

恵子が歌ふのを数回以上は視聴しその

つど感動を新たにしてゐました。しか

し「出船」の方は爾来御無沙汰のしつ

ぱなしでした。

　

再びめぐりあへたのは平成の一桁年

代になつてからでした。所謂なつメロ

全集をＣＤで一括購入したときその中

に「出船」が這入つてゐた、と云ふわ

けです。大学以来ずつとクラシックに

耳を傾けてゐましたが昭和四十年代後

半あたりから昔聴いた歌謡曲にも少し

ずつ惹かれて曲を集め始めてゐたもの

です。

　

先のＣＤ集に収められてゐた「出船」

は我等のテナー藤原義江によつて吹き

込まれたもので昭和三年二月ビクター

レコードから発売となつてゐました。

暗く、さびしく、やるせない別離の旅

情を切々と歌ふ藤原の声に富士高時代

の想ひ出を重ねつつ何度も聴いたこと

でした。繰返し聴き歌詞解説に目を通

してゐるうち作詞勝田香月、作曲杉山

長谷夫の名も自然に覚えてしまひまし

た。

　

さてそれから幾星霜、平成も二桁年

となつたある日、何かの資料で我が校

歌を目にしたそのとき。作詞作曲者に

ふと目をやると、何とあの「出船」の

制作コンビがそのまま校歌でも揃つて

作詞作曲者となつてゐたのです。

　

これまで何度校歌を歌つたかわかる

筈もありません。それほど繰返して歌

つたのに作者に関心を持つたことは申

し訳ないけれど一度もありませんでし

た。

　

それが今、校歌の作者はかつて音楽

室で仲間と楽しく歌つてゐた歌と同一

─ 13 ─

であることがわかると、次は校歌制定

の経緯に俄然関心は移ります。一番知

りたいのは校歌制定の年次です。いつ

制定されたのか。

　

富友会会員名簿にある母校沿革抄を

見ても校旗制定は昭和五年五月と記さ

れてゐますが校歌についての言及はま

つたくありません。

　

十年以上前に拙稿内容を投じてゐた

らいつ頃校歌作成を依頼し出来上がつ

たのはいつで、制定はいつから、と経

緯を御存じの方がまだいらつしやつた

かもしれません。

　

自分の怠惰を悔やみますが今更どう

にもなりません。

　

尤も校歌制定につき全く見当がつか

ないと云ふこともありません。私は以

下のやうに推測しますがそんなに大き

く外れてゐないのではないかと思ひま

す。

　「出船」のレコード発売（昭和三年

二月）によつてこの曲が大ヒットした。

作詞者は沼津市出身で富士宮市でも生

活した時期があつた。それなら我校の

校歌も同じ地区の誼で作成を依頼して

みたらどうだらうか。依頼を受けて成

つた曲が校歌と制定されたのは校旗制

定との差一、二年のうちではなからう

か…。

　

実態はどうだつたのでせうか。

　

こんな駄文をもし御覧になつて校歌

制定に興味ある方がいらつしやいまし

たらどうか御教示賜りますやうお願ひ

申上ます。

　

ここで終止符を打つつもりでした

が、どうしても書きとめたいことがあ

り、抑へられません。昭和三十七年六

月、二年生のときの合唱コンクールの

ことです。

　

我がG組は課題曲「故郷」（兎追ひ

しかの山）と自由曲「村の教会」（森

のかげに真白く見える村の教会）でコ

ンクールに臨み見事第一位に輝きま

した。自らも合唱練習に加はるなどコ

ンクールに熱心だった担任の故加藤晴

一先生は殊のほかお悦びになりポケッ

トマネーをはたいて五十一人のクラス

全員にキャラメル五個ずつ配られまし

た。これまた懐かしい想ひ出です。

随想◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

　二胡の楽しみ

　　　　　　　　四

　條

　淳

　人

（高十七回）

　

中国の楽器二胡に親しんで十一年に

なる。十五年ほど前、台湾に業者の親

睦で旅行したとき、帰国前日の豪華な

中華料理の宴席でチャイナドレスの素

敵な若い女性が二胡を演奏してくれ

た。音色は知っていたが本物を間近で

見るのは初めてだった。その時演奏し

てくれた名曲夜来香（イエライシャン）

は素晴らしかった。でもいかにも難し

そうな楽器で、まさか自分がこの楽器

の魅力の虜になり弾きこなす時が来る

とは夢想だにしなかった。

　

ギターと合唱団の音楽経験があった

─ 14 ─

が、いずれも疎遠となり音楽から縁遠

くなっていた五十七歳のある日、新聞

で富士宮市上野公民館成人学級で二胡

教室練習生募集の記事を見て即座に申

し込んだ。講師は中国で二胡を勉強し

てきた清水市の若く美人の深澤香里先

生で、第二期生十五名ほどの生徒が集

まった。初めて手にする二胡は何とも

勝手の違うアバウトな楽器で面食らっ

た。恐る恐る弾いてみるとガッガッ

ギーと音にならない。最初は先生持参

の楽器で練習したが月二回の練習では

身につくはずがない。すぐに先生紹

介の上海（シャンハイ）製の二胡を

六万五千円で購入し、自宅で練習し始

めた。部屋で弾くと異音に猫が逃げ出

し、娘は「お父さん、近所迷惑だよ」

と嫌がられた。ＣＤでプロが弾く魅力

的な二胡演奏を聴くと、深く妖しいま

での音色が何とも素晴らしくて聞き惚

れてしまう。いつかは‥と基礎練習に

力が入った。正確な音階はギターを参

考にして独自に竿に印をつけると案外

簡単にクリア出来、練度は進んだ。弦

は二本しかなくD音（レ）が最も低い

ので五線譜では弾きにくく移動ドの数

字譜である。少し弾けるようになると

楽器店で楽譜を探し始めた。でも二胡

用の数字譜の楽譜は少なく、気に入っ

た曲の五線譜を数字譜に書き直して弾

いていたが、なかなか手間がかかる。

フト小曲を暗譜で弾いてみると何とか

弾けるではないか！　

嬉しくて小躍り

した。やがて楽譜のない曲をメロディ

を追いながら音を拾っているとこれま

た何とか弾ける。旋律だけなので繰

り返すうちに指が覚え、いつしかに暗

譜で弾ける曲が増えていった。二胡教

室の定期練習では楽譜は外せないが、

自己練習では自分の好きな曲を間断な

く弾きつづけ、楽譜はめったに見なく

なった。

　

二胡は弾きこなしの回数がものをい

う。手首や肘がしなやかでないと音色

が向上せず、そのためにも暗譜での繰

り返しが欠かせない。

　

人前での演奏が励みになり、ちょっ

とした集まりや機会があれば図々しく

弾かせてもらった。最初の頃は楽譜は

必須で、緊張し指が震えた。人の視線

を気にすると途端に固くなり、トチる

と頭の中が真っ白になり慌てた。楽譜

からうっかり目を外すとどこを弾いて

いるか戻れず、目が泳いだ。よく指摘

されたのが「テンポが速すぎる。もっ

とゆっくり弾けば‥」。間がうまく取れ

なかったのだ。やがて場数を踏んでく

ると楽譜は外して弾けるようになり、

余裕をもって対応出来るようになって

きた。楽器演奏を積極的に人前で披露

するなどはかつてのギターでは考えら

れなかったので凄い変わりようだ。

　

四年前、九州へフェリーで行く機会

があり、泊めてもらった友人の家や帰

途の夜の街、熊本、呉、舞鶴、富山の

スナックで二胡を披露すると、皆二胡

を初めて目にした人たちばかりで大歓

迎で大喜びされ、大いにもてた（つも

りになった）。新潟へ行ったとき、夜

のスナックで二胡を披露すると、日本

人形のような顔立ちの可愛らしいホス

テスが「私、アルバイトなんです。短

─ 15 ─

大生でチェロをやってます。二胡って

たった二本の弦なのにいろんな曲が弾

けて凄いですね。」と感心してくれた。

新潟の親せきの家では若い嫁が「こん

な小さな楽器から次から次といろんな

曲が出てきてすごく不思議」と目を丸

くした。大体、女性の反応が敏感で楽

しい。目を輝かせて聴いてくれ、終わ

ると感動の拍手をしてくれる。こんな

にもてるんじゃあもっと早くから始め

りゃあ良かったなぁ、とついぼやいた。

　

二胡の習得には今までの音楽経験が

生きている。ギターでは楽譜に頼りす

ぎることの弊害の負の経験と、合唱で

は暗譜演奏が絶対的有利の経験が土台

となっている。ことに在籍した富士宮

市民合唱団の指揮者・同級生の清　

晌

一郎（ショウイチロウ）君（現関東学

院大学経済学部教授）は積極指導で暗

譜演奏の重要なことに開眼させてく

れた。私にとっては大きなカルチャー

ショックで感謝している。「ソロ演奏

では楽譜に頼るな。暗譜を目指し、人

前で演奏して場数を踏め」が私の二胡

練習の大原則となった。尤も、二胡の

合同演奏では運指、弓の方向を皆が合

わせる必要から楽譜は手放せないが。

　

近所の尺八の達人が教えてくれた。

「四條さん、守破離ですよ。」これは習

い事の基本である。基礎を守り基礎を

習得したら自分なりのものをいろいろ

試し、やがては師の教えから離れて独

自なものを拓きなさい、ということで

あり、その繰り返しなのだ、と納得した。

　

二胡教室は「富士宮二胡同好会」と

して練習は基礎技術向上のため続けて

いるが、やはり難しいのだろう、次々

辞め、一期生と一緒の合同練習になっ

ても減り続け、現在六名で男性は私一

人だ。でもみな熱心で積極的に月一〜

二回のペースで近在の高齢者施設を慰

問している。いくつも教室を持ってい

る先生は「ここは自慢の教室です」と

熱心さを褒めてくれた。仲間の女性

たちはチャイナドレスを七着ほど揃え

ていて季節や状況に合わせ着替えてい

る。「四條さんも私らに合わせてよ」と

言われ、仕方なくネット通販でエンジ

色の中国服を取り寄せた。私はその一

着のみだ。

　

二胡の技術は多彩でとても深く、ビ

ブラート、トリル、すり音‥上手にな

ればなるほど演奏に艶が出てくる。弾

いていて飽きることがない。

　

人生、いい相棒を見つけたものだ。

随想◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

　「子育て日記」

　　　　　　　　河原崎

　信

　幸

（高二十回）

　

ふと気づけば齢六十五歳、六十歳定

年後の延長雇用も満了、まさに「サン

デー毎日」の年齢に突入してしまいま

した。

　

現在七人の孫に恵まれ、来年には全

員小学校に勢揃いとなります。五人は

富士宮東小で私の後輩、二人は伝法小、

週末になると親を含めて十五人が、年

寄り夫婦の狭い家に集合して大宴会、

─ 16 ─

楽しい日々を過ごしています。

　

子供たちから孫の話を聞くと、子育

てに奮闘していた三十数年前を思い出

します。小学校のＰＴＡ会合で先生に、

家庭内で子供たちとの接し方を問わ

れたとき、「子供は親の排泄物だと思

う、排泄器官の近くで作って生まれる

し、悪いことは大方優性遺伝だから、

子供は親より劣っていて当たり前、だ

からこそ、少しでも親より優れていた

ら、それは本人の成長であり、大いに

ほめてやる」と言ったとき、先生は目

が点、周囲の冷たい目、妻には怒られ

るし、例えの悪さに大いに反省しまし

たが、子供を常に一人の人間として対

応することができました。私が「酒！」

と妻に言っているのをまねて、子供が

「水！」私は「誰に向かって言ってい

るんだ、この人はお前のお母さんだぞ、

悔しかったら早く大人になって女房を

もらってから言え」それ以来、子供は

「お母さんお水下さい」妻は「自分で

やりなさい」。子供を所有物ではなく

一個の人間として捉え、いつも理屈で

注意する私に、妻は「たまには感情で

叱って！」とよく訴えていました。

　

富士高在学中、柔道部に所属してい

た私は、社会人になってからも富士宮

市の道場で小学生を教えていました。

幼稚園児だった子供を連れて行きまし

たが、小学校へあがると皆サッカーへ、

球技が苦手な私はレフリーを、会社創

業間もないのに平日でもグランドで笛

を持って走っていました。結局、富士

宮東サッカー少年団の会長を七年、現

在は団長を務めています。レフリーで

学んだこと、子供たちの耳元で笛を

吹くと直ぐに従う、遠くからの笛には

反応が鈍い。以来、会社でも叱る時に

はジャストインタイムを心がけていま

す。子供たちが高校生になってからも、

洗面台を離れない子供に妻は「早くす

るように言って！」と、私は「ある内

にやらせてやれよ」（実は私が禿げて

いるので）どんな奇抜な髪型でも文句

を言ったことはありません。

　

還暦を境に会社の社長を辞めて非常

勤取締役に、現在、長男・次男がそれ

ぞれ社長・専務を、そして長女は富士

宮労務協会（河原崎信幸社会保険労務

士事務所）に勤務。子供たち全員で私

の事業を継承してくれています。友人

は「引退早すぎるんじゃないの」と言

いますが、私は子供たちと同じ年齢の

頃の私を比較することができ、当時の

私より立派だなと思えるから、素直に

引退することができました（十年準備

しましたが）。今、子供たちが小学生

の孫に言っている言葉が、私の当時の

言葉とシンクロします。さて、私はこ

れから三十六年の労務士と三十二年の

経営者経験を生かした、経営コンサル

タントとして人生を楽しんで生きたい

と想っています。

─ 17 ─

随想◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

　風船が取り持ったご縁

　　　　　　　　芦　澤　英　治

（高二十一回）

　

次女が富士宮市立大宮小学校一年生

のとき（一九八九年）のこと。学校の

行事で風船に自分の住所と名前を書い

た手紙を付けて大空に飛ばした。大部

分の子供の風船は、近くの山などに落

ちてそれっきりとなったが、娘の風船

は、富士山を超え、偏西風に乗って埼

玉県桶川市の本木さんという農家の庭

先に落ちた。

　

ちょうど草取りをしていた本木さん

の奥さんは、ひらがなで優しく返事を

書いて下さり娘は大喜び。それから、

娘と本木さんの奥さんとの手紙のやり

取りが始まった。毎年娘の誕生日には

プレゼントが届くようになり、こちら

も恐縮して地場産のお茶とみかんを送

るようになった。

　

そんなことが何年か続き、娘が中学

生となった一九九五年のある日。本木

さんの奥さんからの手紙に数枚の写真

が同封されていた。そこには、当時、

俳優として売り出し中の本木雅弘さん

と美しい女性が居間でくつろいでいる

様子が写っていた。手紙には、「隠すつ

もりはなかったのですが、実は私は本

木雅弘の母です。母ですが息子のファ

ンなので、私が撮った写真を同封しま

す。」とあった。隣の美しい女性は、

女優の樹木希林さんとロックンロー

ラー？の内田裕也さんの一人娘で本木

雅弘さんの妻となった人だった。

　

中学生の娘は本木雅弘さんといって

もほとんど興味を示さなかったが、芸

能界ミーハー（昭和の俗語？）である

私の妻は大興奮。こんな偶然あるの、

と喜んだ。

　

時は過ぎ、娘は富士高から大学に

進学し、本木さんの奥さんのお誘い

で、埼玉のお宅に遊びに行ったりもし

た。その後、本木雅弘さんは、大河ド

ラマ徳川慶喜や年末放送の坂の上の雲

などで主役となり着々と実力を付け、

二〇〇九年「おくりびと」でついにア

カデミー賞を受賞し、国際的な俳優

となった。妻は、早速コチョウラン

を埼玉の本木さん宅に送り、たまた

まニュースで実家の様子が放映された

際、自分が贈った花が映ったと大喜び

していた。（私にはみんな同じに見え

たが…）それからしばらくして本木さ

んから花のお礼にと、「芦澤様へ　

お

くりびと　

本木雅弘」と書かれた色紙

を送っていただき、今も我が家の居間

に飾ってある。

　

当時小学校一年生だった娘も三年前

に結婚し、母となったが、埼玉の本木

さんとの文通はまだ続いているそうだ。

　

二十六年前に飛ばした風船が、思い

もかけないご縁を我が家に与えてくれ

た。

─ 18 ─

同窓会だより

同窓会だより

平成二十六年度富友会総会を終えて

宇佐美　守英（高二十五回）

　

第九十二回富友会総会は、平成二十六

年八月十六日に開催されました。

　

前年度の年次幹事である高校二十四回

の先輩方のご配慮で、一年前から準備の

会議に参加させて頂いてきたことから、

それに倣って準備を進めることができま

したことは、大変大きな助けとなりまし

た。改めて、誌面を借りて先輩幹事の皆

様に御礼申し上げます。

　

五年前の段階では、まだ先のこととい

う感覚から担当部分をこなせば良しとす

ることで、全体の運営には目が行き届き

ませんでした。やはり持つべきものは富

友会の先輩であると実感した次第です。

ただ、高校二十四回の結束の強さ、集金

力の大きさには目を見張るものがあり、

そこまで近づけるかが私たち年次の課題

でもありました。

　

総会は、例年通り、富士市交流プラザ

での開催と致しましたが、講演について

は、独自色を出そうということで、この

年一月に市長に就任した小長井義正市長

にお願いし、さらに、メンバーの中に三

名の二十五回生がいるハンドベルリン

ガーズＭＡＵの演奏と致しました。小長

井市長は、高校二十六回であり、次年度

幹事の皆様には申し訳ない処もありまし

たが、富友会出身の市長ということで快

諾を頂きました。

　

講演では、市長の市政への取組みの姿

勢が語られ、ＭＡＵの演奏では富士高校

歌が奏でられるなど、サービス精神に満

ちたステージでもありました。

　

さて、会場をグランド富士に移しての

懇親会は、多くの先輩、後輩のご協力に

より、華やかに、そして賑やかに行われ

ました。この年四月からの消費税８％に

よる影響が気がかりでしたがご出席皆様

の温かいご理解を頂き、和やかな雰囲気

の中で、次年度への引継ぎを済ませるこ

とができました。

　

アトラクションとして、二十五回の仲

間四人がＭＫＹ６０＋Ｍなるバンド名で

青春を取り戻す演奏を披露して、盛り上

げてくれたことも成功の一因と思ってい

ます。

　

終わりに、総会、懇親会を通じて、ご

協力頂いた三十回、三十五回、四十回の

役員の皆様に深く感謝申し上げ、またチ

ケット販売にご尽力頂いた各年次幹事の

皆様に心から御礼申し上げまして、ご報

告と致します。