AutoFlow R 20Questions -20Answers 日本語版 …AutoFlow® の日本語版発刊にあたって...
Transcript of AutoFlow R 20Questions -20Answers 日本語版 …AutoFlow® の日本語版発刊にあたって...
AutoFlow R
20 Questions - 20 Answers
Joseph Fitzgerald
日本語版
AutoFlow®の日本語版発刊にあたって
丸川征四郎兵庫医科大学救急災害医学教授
現在、市場には数十種の人工呼吸器が流通しているが、Dräger EVITAは信頼
性、安定性、機能性がひときわ高くいわゆる上級機種に分類される。ヨーロッ
パではAutoFlowR、Tube compensation、PAVなど新しい機能が追加され、さら
に一歩前進した。
このようにEVITAが素早く機能拡張できるのには2つの重要な訳がある。
第一の理由は、BIPAP機構を基本としていることである。我が国にEVITAが導
入された直後、著者らはBIPAP機構が開発者の意図以上に汎用性のある機構であ
ること、即ちBIPAP機構を利用すると換気モードBIPAPだけでなく、CPPV、AV、
SIMV、PCV、PCIRV、APRV、CPAPなど、ほとんどすべての換気モードが再現
できることを指摘した。このたび、追加されたAutoFlowRも、見方を変えれば
(量設定による)圧調節型換気モードであり、EVITAが優れた圧制御機構を基本
構造に持っていることの証である。
第二の理由は研究体制である。近年、米国の人工呼吸器製造業界は、利潤追
求を第一の目標とした買収と転売の激流に翻弄され、研究スタッフの離散集合
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が相次ぎ安定した研究組織を構成できず疲弊している。これに比べて、Dräger
社の研究室は、1889年創立以来、落ち着いた環境のもとに豊富な臨床経験を背
景に、利潤のためだけではなく「より良い人工呼吸管理のための人工呼吸器開
発」を継続している。BIPAPにPSVが付加されたモード、Tube compensation、
AutoFlowRは、まさにこのような現場から生まれた新しい機能である。
本書は、質疑応答の形式でAutoFlowRの機能を分かりやすく解説しようとして
いる。しかし、原文はドイツ語訛りの英文であるため相当の意訳が必要であっ
た。意味が曖昧な個所は著者に問い合わせるなどして、できるだけ正確な意味
を伝えるよう心掛けたが、まだ不備が有るかもしれない。もし、もっと解説が
必要な項目や不明瞭な文章があれば指摘して頂ければ幸いである。本書が、
EVITAを利用される皆さんのAutoFlowR理解に役立つことを祈念して止まない。
末筆であるが、ご協力頂いた日本ドレーゲル、日本光電の関係諸兄に感謝い
たします。
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Contents
AutoFlow®の日本語版発刊にあたって
■ AutoFlow®とは何か?
■ AutoFlow®は新しい換気モードか?
■ AutoFlow®はどんな場面で使うのか?
■ AutoFlow®はBIPAPとどこが違うのか?
■ AutoFlow®は換気モードとどのように併用するのか?
■ AutoFlow®はSIMVでどのように作動するか?
■ AutoFlow®はMMVでどのように作動するか?
■量調節型換気モードではAutoFlow®の有無で何が違うか?
■圧調節型換気モードではAutoFlow®の有無で何が違うか?
■ AutoFlow®はどのような肺障害に適しているか?
■ AutoFlow®が適切でない状況が存在するか?
■通常の換気モードからAutoFlow®に変更する時に考えるべきことは?
■ AutoFlow®の設定方法は?
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■ AutoFlow®作動中のモニタではどのパラメータが重要か?
■ AutoFlow®中に見られる利点は何か?
■患者の呼吸管理をどのように継続するか?
■低換気あるいは過換気に対する安全対策は何か?
■ IRVとAutoFlow®はどのように相互作用するか?
■ 1つのモードで調節呼吸と自発呼吸が可能であるメカニズムは何か?
■この最新の発展を支える技術は何か?
Explanatory note: 国によっては、IPPVはCMV、Assist/CMVと表現されます。BIPAPモードは、カナダやアメリカではPCV+と表現されます。BIPAPは認可されたトレードマークです。AutoFlow®もトレードマークとして申請中です。
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注意書き医学知識は、新しい研究や臨床経験によって次々に変化している。このガイドブックでは、換気モードの作動やその応用をはじめとして、最新の知識を記載するよう努めた。しかし、これら本書の知見の臨床応用は、臨床医の責任においてなされるべきことはいうまでもない。
Written by: Dräger Medizintechnik GmbHJoseph FitzgeraldMoislinger Allee 53/5523542 LübeckGermany
All rights, in particular those ofduplication and distribution, are reserved by Dräger Medizin-technik GmbH. No part of this work may be reproduced or stored inany form using mechanical, electronicor photographic means, without thewritten permission of DrägerMedizintechnik GmbH.
ISBN 3-926762-40-3
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1.AutoFlow®とは何か?
量調節型換気モードに、AutoFlow®と呼ばれる新しい機構が加わりました。AutoFlow®では、人工呼吸器は設定された一回換気量(VT)と直前の肺コンプライアンスに基づいて、吸気流量を自動的に調節します。その特徴は、設定された一回換気量が常に最小の気道内圧で供給されること、機械的換気の吸気相、呼気相を問わず自由に自発呼吸が可能な(弁が開いている) こと、吸気流量が漸減波であるため最高気道内圧は軽減され、肺コンプライアンスが変化すれば、これを感知し即応することです。
�
呼気流量�
量調節型呼吸の場合� AutoFlow®に切り替えた場合�
V VT T
漸減波は最高気道内圧を軽減する
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2.AutoFlow®は新しい換気モードか?
AutoFlow®は付加機構であって換気モードではありません。Evita 4とEvita 2 dura(オプション)に搭載されているすべての量調節型換気モードに併用できます。併用しても元の換気モードは影響されません。ちょうど圧支持換気のフロートリガー(flowtrigger)と同じような位置づけです。開発の目的は、設定パラメータの数を増やさずに量調節型換気モードを、患者にもっと有利なように改良、単純化することです。
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3.AutoFlow®はどんな場面で使うのか?
AutoFlow®は、量調節型換気モードが用いられる場面ではほとんど例外なく利用できます。通常、使用範囲を2つに分けることができます。1つは人工呼吸法として用いる場合、もう1つは肺疾患に適応する場合です。前者では量調節型換気モードで起こる高い気道内圧を軽減するため、また鎮静薬や筋弛緩薬を減量して自発呼吸を利用することを目的としています。呼気弁、吸気弁、そして漸減型流量が調節され、すべての自発吸気努力に対して最適な対応がなされるので、患者は開放された呼吸回路で呼吸をしているように感じます。IRVモードでは呼気弁の閉鎖時間が長いので、覚醒し自発呼
吸が始まると気道内圧が上昇して圧損傷の危険性が増します。このような場合でも、AutoFlow®では呼吸回路が開放機構であるため圧損傷の危険は大幅に減少します。もう一つは、肺疾患から見た適応です。例えば、術後患者で
は肺コンプライアンスが大きく変化するので、過換気や圧損傷を防ぐために吸気圧と換気量は慎重かつ頻回に調節しなければなりません。このような場合でも、AutoFlow®は肺コンプライアンスの変化に応じて気道内圧を連続的に調節して、最低の気道内圧で一回換気量を供給します。呼吸回路が閉鎖されていた従来のSIMVとは異なり、
AutoFlow®では、ウィーニングを円滑に進めるために、機械的な調節換気のどの時点であっても患者の吸気努力が開始されれば、これに即応することができます。AutoFlow®が付加されたSIMVモードでは、設定された一回換
気量が患者の要求する吸気流量と換気量に調節されて供給されるので、吸気飢餓感を伴う気管支喘息のケースにも適応できます。
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4.AutoFlow®はBIPAPとどこが違うか?
BIPAPは長年かけて圧調節型換気モードとして発展してきました。BIPAPでは、圧は任意の値に調節され、ピーク圧はなく、患者がいつでも自発呼吸ができるよう時間同調方式が採用されました。BIPAPの多くの利点が、広く臨床的に受け入れられてきたので、量調節型換気モードに取り入れられたのです。BIPAPでは、圧を設定し換気量は肺コンプライアンスによって二次的に決まります。AutoFlow®では、一回換気量を設定し圧は肺コンプライアンスによって二次的に決まります。
BIPAP:2相性気道陽圧換気法
BIPAPの多くの利点が、AutoFlow®によって量調節型換気モードに取り入れられた。
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5.AutoFlow®は換気モードとどのように
併用するか?
例えば、AutoFlow®をIPPVに併用すると、持続的に気道内圧、流量、肺コンプライアンスが測定され、これら測定値に基づいて人工呼吸器は吸気流量を調節して、設定された一回換気量を吸気時間内に供給します。AutoFlow®に切り替えると、吸気流量がユーザーによる設定から自動吸気流量調節機構に変換されます。モニタ画面のPmaxとFlowを除いて、トリガーレベルや圧支持など主機能の設定値は全く影響されません。
トリガーや圧支持などの主要な機能の設定値は影響されない。
IPPV:間欠的陽圧呼吸法Pmax:吸気最高気道内圧
PEEPやその他のパラメータはSIMVと同様に機能し、これに併用されたAutoFlow®による流量と気道内圧の自動調節機能が加わります。この付加された効果はさらにドミノ効果(注:玉突き効果)として、得られた最高気道内圧の低下が平均気道内圧を低下させ循環動態に有利に作用します。また、個々の患者の吸気努力に応じて吸気流量を呼吸毎に調節しますので、鎮静薬や筋弛緩薬の必要量が軽減され、呼吸中枢が正常な状態に保たれるのを助ける効果があります。吸気流量と換気量を患者の吸気努力と吸気時間に応じて一致させ、最小限の気道内圧で供給することは、患者と人工呼吸器の調和を促進することを意味します。言い換えれば、人工呼吸器に対するファイティング(fighting:これは固定した設定値のために人工呼吸器が患者にファイティングしている現象を、患者が逆らっていると誤解して付けられた名称である)と呼ばれる問題は、ほぼ解消されたのです。
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6.AutoFlow®はSIMVでどのように作動するか?
AutoFlow®は鎮静薬や筋弛緩薬の必要量を軽減させ、呼吸中枢を正常な状態に保つことに役立っている。
SIMV:間欠的強制換気法
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7.AutoFlow®はMMVでどのように
作動するか?
MMV(強制分時換気法)では、十分なガス交換が得られるように換気量と呼吸回数を設定するなど、SIMVと多くの点で類似しています。相違点は、患者の努力呼吸が人工呼吸器に設定された分時換気量以上になれば、人工呼吸の送気量が減少することです。患者はしばしば、圧支持によって分時換気量を得るのに必要なすべての仕事を代償されます。MMVではAutoFlow®は機械的換気に影響します。即ち、自発呼吸活動が現れればこれを許容して自発呼吸に同期しない機械的送気量を減少します。これによって不必要な気道内圧の上昇を抑制します。理論的なプロセスは次のようなものです。患者は安静な状態
で完全に機械的換気に乗ることができます。つまり、覚醒していながら人工呼吸器の送気を受け入れ、同時に人工呼吸器を介して自発呼吸も可能であり、それに伴う不快は感じません。患者の自発呼吸が増大すると、これに伴い人工呼吸器の作動は減少し消失します。このため、ウィーニングモードでは何れの調節ノブの切換えも必要ありません。さらに、理想体重を治療開始前に人工呼吸器に設定すると、その患者に最適な換気量など換気条件の設定と警報値が選択されます。したがって、手術直後の患者などでは人工呼吸設定が大変容易です。人工呼吸が必要な患者では、完全な調節呼吸で出発し、換気条件を再設定することなく完全な自発呼吸へ進めることができます。
完全な調節呼吸から自発呼吸への移行には、換気条件の再設定が不要である。
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■理想体重を設定する(例えば70kgと)最適な換気条件と警報が自動的に設定される
■バックアップ換気条件を設定
■患者に接続、人工呼吸を開始
■モニタされているパラメータを記録する
■患者が覚醒しているか、継続観察する
調節呼吸�自発呼吸�
+�強制換気�
完全な自発呼吸�+PSV�+CPAP
MMVAutoFlow
MMV:強制分時換気法PSV:圧支持換気法CPAP:持続陽圧呼吸法
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8.量調節型換気モードではAutoFlow®の有無で何が違うか?
量調節型換気モードでは、流量が固定されているので、患者の吸気時間、吸気流量および換気量に対して常に最適な対応が得られるわけではなく、しばしば患者の呼吸努力に一致せず非同期状態に陥ります。この状態では、最高気道内圧が高くなりすぎるため、鎮静薬や筋弛緩薬を用いて患者の自発呼吸運動を人工呼吸に合わせて、気道内圧を下げる必要があります。
この時、患者の自発呼吸は閉鎖している弁に対して呼気を排出しようと無意味な努力をしているのであり、高気道内圧警報が鳴ります。量調節型換気モードでは、
自由に咳嗽をして気道を清浄化することが妨害されています。これに対してAutoFlow®は、どのような条件でも常に高い安全性と低い気道内圧が保証されています。
調節呼吸(青)� 自発呼吸(緑)�
Flow
Paw
t
t呼気終了�(閉鎖)�
in
ex
呼吸終了�(閉鎖)�
流量�一定�
Paw:気道内圧Flow:流量
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9.圧調節型換気モードではAutoFlow®の有無で何が違うか?
調節呼吸� 自発呼吸の混在�
Flow
Paw
t
t
in
ex
呼気終了�(閉鎖)�
BIPAP:2相性気道陽圧呼吸法Paw:気道内圧Flow:流量
AutoFlow®は、圧調節型換気モードが圧を調節するように、流量を自動調節します。このため、吸気圧曲線には、肺コンプライアンスに応じた圧プラトー(plateau)が形成されます。従来の圧制限型モード(pressure limited mode)やPressure
Regulated Volume mode(圧調節型量換気モード)と異なる点は、機械的換気サイクルのどの時点でも自発呼吸が可能なことです。設定された一回換気量は保証され、吸気圧は最少限に維持されます。これに比べて、圧調節型モードは圧を一定に維持しますが、一回換気量は不定です。AutoFlow®は、PCVの多く特長を兼ね備えた量調節型換気モードなので、量志向型ユーザーにもBIPAPユーザーの経験した利点を理解してもらえます。
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10.AutoFlow®はどのような肺障害に適しているか?
AutoFlow®は、肺コンプライアンスが急速に変化する症例、あるいは短時間に改善することが予測される症例に対して、換気量を調節する手段として利用できます。術後症例が最も良い適応です。急激に拘束性の変化が起こっても換気量は維持されます。急性肺水腫の場合、最初は高い気道内圧で換気され、治療効果が得られると気道内圧は低下しますが、この間の換気量は一定です。これらの症例で、量調節型換気モードにAutoFlow®を併用すると、圧調節型換気よりも管理が容易です。肺炎や外傷で限局性無気肺を合併するため頻回の体位変換
が行われる症例では、圧調節型換気モードを使用すると換気量に大きな変化が起こります。しかし、AutoFlow®を併用すると、最小限の圧で換気され、安定した換気量が供給されます。AutoFlow®は、病態が不明な肺障害に対する人工呼吸の開
始モードとして適しています。このように、どのような症例でも自発呼吸を障害せずに流量と気道内圧を調節できる人工呼吸管理を行うことが重要です。
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11.AutoFlow®が適切でない状況が存在するか?
AutoFlow®の適応範囲は、量調節型換気モードの適応範囲によって決まります。肺障害の改善に、数日から数週間と長期間の治療が必要な重症患者には推奨されません。確定診断された急性肺障害(ALI)や急性成人呼吸窮迫症候群(ARDS)などには、圧調節型のBIPAPやAPRVによって、肺ガス交換改善のための肺胞再拡張に不可欠な小さな換気量を供給します。最近では専門家は、圧を制御して最少の換気量によって圧損傷の発生を防ぐべきと言う意見です。量調節型換気モードが適応でないのは、内因性PEEP
(intrinsic PEEP)が存在する場合、人工呼吸によって肺過膨張の可能性がある場合、特にCOPDあるいは長い逆比換気が必要な場合などです。これらの症例では、流量を漸減し自発呼吸を容認するBIPAPが適しています。これはAutoFlow®と同じ利点を持っています。
肺疾患が実際的な指標であり、それによって圧か量かを選択する。
BIPAP:2相性気道陽圧換気法APRV:間欠的圧解放換気法
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12.通常の換気モードからAutoFlow®に変更する時に考えるべきことは?
AutoFlow®への変更時、設定値はそのままとします。もし自発呼吸が無ければ一回換気量は設定値のままです。同様にPEEP、吸気時間(Tin s p)、換気回数も変化しません。AutoFlow®では、吸気流量の調節は自動で行われています。量調節型換気モードでは、気道内圧の上限を規制する気道内圧上昇アラーム(Paw)を設定することが安全を保つために重要です。また、ファイティングを抑制するための鎮静薬の投与は、自発呼吸の利点を最大に生かすことができません。
Pinsp
Pressure
量調節型� AutoFlowR 肺コンプライアンス�
Pinsp:吸気気道内圧
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13.AutoFlow®の設定方法は?
AutoFlow®のスイッチオンには、タッチスクリーンでの「特別設定(Extra settings)」とロータリーノブを用います。呼吸回数、Tinsp、VT、PEEPを最適値に設定します。突然に起きるかも知れない肺コンプライアンスの低下、気道内圧の上昇などによる気道内圧の変化に対する圧上限アラームは必ず設定します。VT上限アラームも自発吸気によるVT増加を知るために設定します。
設定はスクリーンの表示(prompts)によって行う。
Tinsp:吸気時間VT:一回換気量PEEP:呼気終末陽圧
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14.AutoFlow®作動中のモニタではどのパラメータが重要か?
AutoFlow®に切り替えると、流量が漸減するので気道内圧は低下します。吸気気道内圧(Pinsp)は、肺コンプライアンスの変化に応じ
て調節されます。その結果、平均気道内圧が決まります。吸気流量パターンは、気道抵抗の変化に応じて変化します(延長することもある)。従来の人工呼吸のように気道内圧上昇アラームが鳴ることはありません(しかし、設定はしておくべきです)。気道抵抗が高すぎて十分な一回換気量(VT)が供給されない場合には一回換気量減少アラーム(VT low alarm)が鳴ります。自発呼吸活動は流量曲線上に現れます。気道内圧上昇アラ
ーム(high Paw alarm)は、自発呼気が起こっても発生しません。平均VT値は設定したVT値に等しくなります。圧、VT、自発呼吸回数は、モニターされ画面上に表示されます。圧-量(PV)ループは、圧と量の関係をもっと発展させた表現法です。これら多数のパラメータのトレンドグラフは、臨床的推移を知る上に良い指標です。
Vtが供給されなければ、一回換気量低下アラーム(Vt low alarm)が自動的に鳴る。
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Paw
Pinsp. = f (VT,C)
PEEP t
TI
1
Paw
TE
Flow
t
f
自発呼吸のない場合� 自発呼吸のある場合�
VT
流量が漸減する�ので、ピーク圧�が低下する�
■�
■�Pinspは肺コンプ�ライアンスに応�じて決定される�
自発呼吸活動は�スクリーンの流�量曲線の変化と�して描かれる�
■�
自発呼吸では気�道内上昇アラー�ム(Paw)は発生�しない�
■�
トレンドグラフ�はオーバービュ�ーに有用である�
■�
Pinsp:吸気気道内圧(VTとCを因子とする関数である) C:肺コンプライアンスPaw:気道内圧 TI:吸気時間 TE:呼気時間 PEEP:呼気終末陽圧t:時間軸 Flow:流量 VT:一回換気量 :1回呼吸時間
1f
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15.AutoFlow®中に見られる利点は何か?
最高気道内圧と平均気道内圧は低下するので、人工呼吸の調節換気による侵襲は軽減されます。回路リークがあればAutoFlow®は検知して、必要なだけ流量を補償します。鎮静薬や筋弛緩薬は少なくてすみ、そのため全身的にも良い効果が得られます。特に、自発呼吸は、より良いガス交換と喀痰排出に貢献します。ウィーニングは開始が容易であり、スムースに進行します。患者には大変安楽でありストレスが少なく、スタッフのストレスも軽減されます。また、設定ノブが少ないこと、アラームが少ないことは、忙しいICUでは大きな利点です。
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16.患者の呼吸管理をどのように継続するか?
各症例で異なりますが、一般的なウィーニングは、FIO2を下げる、PEEPは下げるが下位変曲点以上に保つ、吸気時間(Tinsp)は吸気と呼気時間比(I:E)を1:1になるように下げる、回数を下げる、などです。患者の自発呼吸が活発になり、機械的換気中に吸気が始ま
ると、吸気圧は自動的に低下するので、次のステップは自発呼吸を補助するために圧支持換気(PSV)を行うことです。AutoFlow®による管理上の有利な点は、オープンシステム*1を用
いているので機械的換気を減少させることができ、早い段階で自発呼吸に移行できることです。気管チューブのために増加した自発呼吸仕事量を代償するために、持続気道陽圧(CPAP)にPSVを併用することは、従来どおりです。
ウィーニングステップの最終段階への移行は、単純明快である。
*1 オープンシステムとは呼気弁を設定圧でコントロールするオープンバルブ方式を用い、CPAPと全く同じ方法で機械換気を行うため、機械換気中でもCPAPのように自発呼吸が可能なシステムである。
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17.低換気あるいは過換気に対する安全対策は何か?
低換気あるいは過換気に対する安全対策には3つの方法があります。1つは、ユーザーがスクリーン上のアドバイスにしたがって不注意による間違いを、これらの設定が実行される前に確認することです。2つ目は、肺コンプライアンスの変化に応じた気道内圧の変更幅(step)を3 mbarに設定し、上限圧アラーム値よりも5 mbar低いレベルを限界値として設定することです。3つ目は、肺コンプライアンスや気道抵抗が変化したために、設定した一回換気量が供給されなくなれば、自動的に一回換気量減少ラーム(Volume inconstant alarm)が作動します。圧上限アラームは、極端な咳嗽や気道閉塞で作動します。一回換気量上昇アラーム(VTi)は大きすぎる吸気が起こった時に、吸気量を制限します。患者が頻回にトリガーしてもAutoFlow®のSIMVやMMVでは
過換気になりません。調節・補助(CMV/Assist)モードでは過換気になってしまう可能性がありますが、トリガーをOFFにすることで防止することができ、その際にも自発呼吸は可能です。
SIMV:間欠的強制換気法MMV:強制分時換気法
20 Questions – 20 Answers using AutoFlow® 25
18.IRVとAutoFlow®はどのように相互作用するか?
AutoFlow®は吸気時間を延長させても上手く対応できます。臨床経験はまだ少ないのですが、Sydowら(2)の報告した方法を参考にして設定、応用します。吸気時間を延長して自発呼吸が現れると、気道内圧は全体に低くなり、IRVが上手く適応できます。末梢気道閉塞によるエアートラップ(airtrapping)を回避し、IRVの圧損傷のリスクを低下させるために、この方法を積極的に用いるべきです。
呼気終末の�肺胞内圧�
圧�
流量�
AutoFlow®は、吸気時間延長に理想的に対応できる。
IRV:吸気呼気時間逆比人工呼吸法
20 Questions – 20 Answers using AutoFlow®26
19.1つのモードで調節呼吸と自発呼吸が可能であるメカニズムは何か?
調節換気のどの時点でも、自発吸気は可能です。このユニークな方式は、精巧な呼気弁、流量と圧センサー、そして優れたマイクロプロセッサシステムなどの高い技術によって達成されました。従来の機械換気では固定された流量と換気量しか供給でき
ず、患者の自発呼吸を自由に行わせることは不可能でした。AutoFlow®を併用した量調節型換気モードは、一呼吸毎に反応しています。その結果、患者は一呼吸毎に最適に調節された換気量を受け取ることになります。つまり、人工呼吸器は吸気量をモニタし、変化があれば次の呼吸で代償しています。一回換気量が少なすぎる場合、次の呼吸では吸気終末圧
(Plateau)を増加させることによって、自動的に調節されます。自発呼吸が生じて、あるいは肺コンプライアンスが改善して一回換気量が多すぎる場合、次の吸気圧は自動的に低下します。患者と気道内圧の相互作用を円滑にするため、毎呼吸間の圧変化は最高で3 cmH2Oに制限されています。咳嗽やため息(sigh)など特別な現象で起きる大きな圧変化は除外されます。
新しいマイクロプロセッサシステムと精巧な呼気弁が新しい機構を誕生させた。
20 Questions – 20 Answers using AutoFlow® 27
AutoFlow®はCPAPと同様にPinspに対してセットされます。患者がより多くの吸気量を要求した場合はいつでも、供給弁(demand valve)はそれに対応した流量を供給できます。患者が息を吐きたい場合はいつでも、呼気弁はPEEPや圧を維持したまま呼気を許容します。図にはこの様子を示しました。患者はSIMVやMMVで自然な吸気、呼気が可能であり、IPPVの呼気相においても自然な自発呼吸が可能です。
調節呼吸� 自発呼吸の混在�
患者�
流量�(Flow)
気道内圧�(Paw)
t
in
ex
t
t呼気弁開放�
吸気弁開放�
in
ex
CPAP:持続陽圧呼吸法 Pinsp:吸気気道内圧PEEP:呼気終末陽圧 SIMV:間欠的強制換気法MMV:強制分時換気法 IPPV:間欠的陽圧呼吸法
20 Questions – 20 Answers using AutoFlow®28
20.この最新の発展を支える技術は何か?
AutoFlow®の機能を最適に維持するために、すべての電子、ガス供給システムが関わっています。
流量と圧の精密なコントロールは必須の機能です。高度なアルゴリズムと迅速に反応する弁によって、患者の自発呼吸に追従することが可能になりました。EVITAは、FIO2、気道内圧を維
持したまま、マイクロプロセッサーシステムの制御によりミリ秒単位で開閉する非常に反応性の良い吸気弁を備えています。これによって患者は呼吸仕事量を最少限にでき、無駄な呼吸努力を避けることができます。呼気弁は、呼気抵抗を小さ
くするため大きな口径に設計してあります。圧は、PEEPや気道内圧の幅広い変化に対
して、迅速に反応し円滑に調節されます。図に示したように、呼気弁は決して完全に閉鎖することはありません。狭窄による圧は、その時のPEEPや吸気圧に常に等しい。これはちょうどポップオフ弁(pop off valve)のように、気道内圧が設定圧以上に上昇すると呼気ガスが流出する仕組みです。最後になりましたが、これらすべての基礎には、吸気側にも呼
気側にも非常に正確で丈夫な圧と流量のセンサーが設置されていることは、大変重要です。
呼気弁閉鎖�
か�
呼気弁調節�
FIO2:吸入酸素濃度PEEP:呼気終末陽圧
20 Questions – 20 Answers using AutoFlow® 29
AutoFlow®の利点のまとめ
生理学的
同期性
自動制御
単純化
論拠
調節呼吸における自発呼吸の重要性の認識を容易にする
患者の要求に適合した流量、圧
MMVで理想体重を最初に設定するとウィーニングが自動的に完了する
調節ノブや警報が少ない
BIPAPで実証された利点を調節換気に移植した
量調節換気モードは、将来への重要なステップである。
MMV:強制分時換気法BIPAP:2相性気道陽圧換気法
20 Questions – 20 Answers using AutoFlow®30
2000年3月20日 初版発行
編 著 者:Dräger Medizintechnik GmbH監 修:丸川征四郎発 行 所:日本光電工業株式会社
東京都新宿区西落合1-31-4(〒161-8560)
TEL 03-5996-8000(代表)
非売品
Printed in JapanC2000 日本光電工業株式会社
AutoFlowR
20 Questions - 20 Answers 日本語版
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監修者:丸川征四郎(まるかわ せいしろう)
昭和44年3月、神戸大学医学部卒業後、昭和46年5月に神戸大学医学部麻酔科へ入局。その後、昭和56年4月に兵庫医科大学助教授(集中治療部)、平成6年11月に同大学集中治療部診療教授に就任。平成7年12月には同大学救急・災害医学教授に就任し、現在に至る。一方、日本集中治療医学会で理事を務めているのをはじめ、第21回日本呼吸療法医学会学術総会では会長に就任するなど、数々の学会で活躍している。昭和57年には日本麻酔学会にて第1回山村賞を受賞。主な研究領域は、集中治療医学、救急医学、災害医学、酸素療法、肺ガス交換機能、肺理学療法、人工呼吸療法、心肺蘇生法、SAMUの機能と構造、地域災害救急医療、重症患者の国際搬送(リパトリエイション)と、広範にわたる。主な著書に『酸素療法』(中外医学社)、『エアウエイマネジメント』(総合医学社)、『ICUのための新しい肺理学療法』(メディカ出版)がある。そのほか平成7年5月、阪神淡路大震災復興計画策定調査委員会の委員を務めている等、多方面に活躍。
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