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いま振り返る研究の日々

いま振り返る研究の日々

いま振り返る研究の日々

エッセイ

 在宅酸素療法は,今や広くいきわたった治療法である。対象疾患はCOPDをはじめ肺結核後遺症,間質性肺炎/肺線維症,肺癌など多岐にわたる。この適応基準はもちろん呼吸不全が存在することであるが,その基準作りや実態調査についての臨床研究は世界的に見ても我が国は抜きん出ており,保険診療でカバーしていることも特色である。その意味で我が国は先進国である。 このような進歩が見られた背景には,1979年に始まった厚生省特定疾患「呼吸不全」調査研究班の功績がある。その中で,私達が世界に向けて発信した幾つかの研究を紹介したい。

 性別によって罹患数や病態,予後に差があるか否かは,長い間臨床医の関心を集めてきた。この中で,在宅酸素療法による生命予後の延長に性差があることが班研究で明らかになった1)。対象は1,212施設から登録された総計9,759人の COPD,肺結核後遺症,間質性肺炎/肺線維症で,1986〜1993年に至る7年間の追跡(吉良枝郎班長,川上義和班長)である。世界でも例を見ない大規模,長期追跡研究だった。 3疾患とも女性の生命予後は年齢,動脈血酸素分圧(PaO2),動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2),肺活量(%VC),一秒率(FEV1/FVC)の影響を除外しても長かった(図1)。3疾患の中では間質性肺炎/肺線維症で生命予後が最も悪かった。平均生存期間の男女差は,それぞれ0.41年,1.84年,0.78年と比較的小さかったが,いずれも女性がより長命だった。これだけに着目すると“女性は強い”の印象だった。しかし,この男女差は一般人口のそ

れ(70歳で約3年,女性が長寿である)に比べると小さかったので,これら3疾患,特に COPD と間質性肺炎/肺線維症について“女性はやはり弱者”である。 興味ある事実に,登録時の空気呼吸時動脈血ガスと在宅酸素療法期間中(平均1.1年後)の血液ガスの結果がある。在宅酸素療法中の3疾患は,男女とも平均 PaO2値は約70mmHg に保たれていたが,女性の特徴は PaCO2値にあった。COPD でPaCO2値が空気呼吸時も在宅酸素療法中も女性のほうが高かったこと,他の2疾患では男女に年齢差があったもののやはり空気呼吸時も在宅酸素療法中も女性の PaCO2値が高かったことである。空気呼吸時も在宅酸素療法中も pH が正常範囲内にあった,つまり HCO3

—は正常で,呼吸性アシドー

シスはなかったことも注目すべきである。この事実が持つ重要な意味が次の報告で明らかになったのだった。

 3年後,この班研究の追跡結果の第2報が出た2)。4,552例の COPD と3,028例の肺結核後遺症に的を絞り,1985〜1993年の8年間にわたる在宅酸素療法前と途中の血液ガスの変化を解析したものである。 COPDでは,在宅酸素療法開始前にHypercapniaがあるなしに関わらず生命予後は同じであったのに対し,肺結核後遺症では Hypercapnia 群でかえって予後が良好だった。特に,気道閉塞がない肺結核後遺症ではこの有利な結果が明らかだった。Cox 比例ハザードモデルでは,肺結核後遺症のHypercapnia は独立した予後因子であることも分

THE LUNG perspectives Vol.24 No.2 91( 211 )

我が国の在宅酸素療法の長期追跡結果が持つ意味とは?

KKR 札幌医療センター名誉院長 川上 義和

第8回

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