Volkswagen Group ECU - Vector...Delphi...
Transcript of Volkswagen Group ECU - Vector...Delphi...
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1October 2010
複雑なアーキテクチャーのための開発ツール
車両の個別化が進み、その機能の範囲が拡大した結果、E/Eアーキテクチャーの開発方法は大きく変化しました。近年では、E/Eアーキテクチャーの仕様と要件の範囲は驚くほど拡大しています(図1)。 ドライバーからの多様な機能の要求を満たすためには、E/Eアーキテクチャーをモジュール構造にする必要があると同時に、技術設計は生産を簡素化するために汎用的でなければなりません。低価格自動車やハイブリッド自動車、電気自動車などの新しい
車両コンセプトからも、まったく新しいE/Eのアプローチが求められています。そして何よりも、サプライヤーは欧州の顧客の製品開発部門が持つ構造、プロセス、開発の目標を考慮しなければなりませんが、これが時には顧客、部門ごとに多岐にわたります。
Delphi社は「Velocity」という、仕様から完成品に至る全プロセスを支援するツールスイートを開発しました。このツールスイートの特徴は、市販のソフトウェアツール、市販の高度な専用開発ツール、そしてDelphi社内で開発されたいくつかのソリューションで構成されている点です。それぞれのツールは技術データをグローバルなデータバックボーン、つまり、コンポーネントや生産プ
ロセスに関する全データを全社的に管理するデータベース上に保持します。普及しているツールを選ぶことで、汎用性と幅広いデータベー
スが得られます。さらに、モデルデータを自動交換することで情報の損失を最小限に抑え、手作業で生じがちな誤りのリスクを軽減できます。
データ管理
このツールスイートとその共有データベースを使用すれば、分散している拠点間で開発エンジニア同士が共同作業することも可能です。変更はリアルタイムでシステムにロードされ、その開発プロセスに関わる他の担当者に即座に提供されます。Velocityツールスイートは市場を配慮しない排他的なソリューションではありません。Delphi社は広く使用されているDOORSツールで自社の要件管理を処理しており、標準仕様は電子化されています。
Delphi社 ではアーキテクチャーの開発と最適化にaquintos社
~よいツールがよい結果を~
自動車の車種ごとに、電気/電子(Electric/Electronic、以下E/E)アーキテクチャーのカスタマイズが必要となります。Delphi社では専用ソフトウェアツールスイートを使用し、電源分配、データネットワークおよびそれらが必要とする全てのコンポーネントを顧客の希望に沿って正確に設計しています。
Volkswagen GroupにおけるECU開発のための包括的通信テスト
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Technical Article
(注1)の「PREEvision」を採用しています。PREEvisionは現在、自動車業界の標準となりつつあります。電気回路の分析は、Delphi社内で開発された2つのプログラム「eScout」で処理します。Delphi社が最優先で求めたのは冗長なデータ保守やデータパラメーターの再設定が不要な汎用的なデータ管理システムです。絶え間ない顧客からの短納期の要求と高度な詳細化に対応するための開発プロセスを実行するには、これが唯一の方法です。プロジェクトの開始にあたり、Delphi社は顧客から入手した基本データを検証し、さらなる使用に備えて内部データ形式に変換します。Delphi社ではE/Eアーキテクチャーの開発プロセスは次の6段階に分かれています。
> 最初に、顧客と一緒に完全な要件インベントリーを作成します。これは主に顧客のデータで構成されています。データにギャップがあれば、Delphi社はその豊かな経験とグローバルデータバックボーンに格納されているデータコンテンツに基づいてそのギャップを補います。
> その後、E/EアーキテクチャーのコンセプトをeScoutで半自動的に生成するか、設計上の制限がより厳格であれば手作業で作成します。
> これらのコンセプトを分析指標に従って自動的に評価します。その後、最終評価の段階で、顧客とともに最善案とその評価結果をレビューします。
> 次に、Delphi社のシミュレーションツールを使って、選択したE/E アーキテクチャーを技術面から検証します。
> ここで確定されたE/Eアーキテクチャーを土台として、技術部門が製品記述書を作成します。ワイヤーハーネスの開発においては、作業の80パーセントまでもが仕様内の既存データを使って処理できます。特殊な被覆や追加パーツなどの特殊なワイヤー
ハーネス製品に限り、従来どおり新規で追加する必要があります。従来、最終的な機械的データは、プロジェクトのこの段階で初めて利用可能でした。それに比べこのツールスイートを利用することで、特に車両プロジェクトの定義段階と初期開発段階で、プロセスのスピードアップが実現されています。以前は1年に及んだプロジェクト期間も、現在では3か月から半年程度で済みます。最終的には、詳細化のレベルが大幅に高まったことで、確かな根拠に基づいて材料や生産のコストを見積もれるようになっています。
汎用的かつきめ細かく
コンセプト開発ツールのPREEvisionは、Delphi社のツールスイートで主要な役割を担っています。PREEvisionは顧客から入手したすべての基本データに加えてグローバルデータバックボーンも合わせて一体化するため、各種アーキテクチャーのドラフト設計を詳しく分析および評価する環境として最適です。要件レベルの定義もしくはインポートが済むと、次のステップではネットワークレベルに割り当てる前に機能とその関係を抽象的に記述します。多様なバスシステムを伴ったネットワークやECU、時には非常に複雑化した電源システムがこの段階で記述されます(図2)。その後の回路図レベルでは、電気回路図を使って一層の詳細化が行われます(図3)。物理レベルはDelphi社のコアコンピテンシーです。ここで電源分配モジュール、ボディーコントローラー、センサー、アクチュエーター間の相互作用が定められ、ピン、コネクター、インラインコネクター、シールなどを用いてネットワークが完成します。最後に、車両トポロジーによって分割ポイントの位置と、使用可能なアセンブリーとワイヤーハーネスのレイアウトが決まります。成
図1:ここ数年間、仕様の複雑性が驚くほど増しています
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になっています。分析レベルでは、色分けによってトポロジーモデルのレイアウト
確認が容易にできます。また電源ラインの回路図およびワイヤーハーネス図上の表記位置とワイヤーの詳細情報、ネットワーク図における通信挙動の詳細情報などを、1クリックで確認することができます。
要約
このツールスイートは透過性を提供し、データをネットワーク化し、コンセプト開発における創造的な作業を支援すると同時に、シミュレーションも実行します。これによって開発プロセスの効率を高め、それをグローバルな企業ネットワーク内に確実に組み込むことができます。このツールスイートのコンセプトは、市販のプログラムを核または開始点に用いるアプローチが、「洗練と統合」をインテリジェントに行う上で極めて効果的であることを実証しています。このコンセプトは顧客の間にも迅速に受け入れられ、その認知度も高まっています。
後注(1) aquintos社は2010年5月よりベクターグループの一員となり
ました。
執筆者Thomas Blote(Dipl.-Ing.)Delphi社のE/Eシステム部においてツール開発マネージャーとして従事しています。
果物に対しては、シミュレーションツールを使って最適化とチェックが繰り返し行われます。たとえばワイヤーハーネス全体を調べ、ワイヤーゲージやヒューズ素材の変更、あるいは電気システムの総重量が及ぼす影響を判定することが可能です。 また、複雑なパラメーター変更の影響も非常に簡単に比較できます。さらに、標準化されたレポートを通じて、アセンブリーやワイヤーセット開発のための基本情報が提供されます。その後、アーキテクチャーはDelphi社の他のツール 「Delight」 で二次元システムに変換され、このシステムデータに基づいて量産用の文書が作成されます。データはグラフィックで視覚的に表現されているため、開発者は複雑なE/Eコンセプトも明確に構造化できます。また、電気システムの特定の部分に注目できるよう、シャーシー用コンポーネントや利便性機能用コンポーネントなどの表示/非表示が切り替え可能
図3:電源分配の電気回路概略図
図2:PREEvisionにより、アーキテクチャーの各階層が明確に構造化されます