KUNIO

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『グリークス』

T•6Newsletter shunjuza/studio21

ギリシャ悲劇はダンスや音楽、怒りに涙、笑いが詰まった、一大エンターテイメント！

俳　優

安藤玉恵

　　×

演出家

杉原邦生

1980年にイギリスで初演された、10本のギリシャ悲劇をひとつの物語に再構成した長編戯曲『グリークス』。全三部構成で、上演すると 10時間にも及ぶ超大作です。昨年『オイディプス REXXX』で初めてギリシャ悲劇に挑戦した演出家の杉原邦生（KUNIO主宰）が “ いま、この時代に上演すること”をテーマに取り組み続けている新翻訳戯曲で挑みます。稽古に入ったばかりの 5月下旬。出演者の安藤玉恵さんと杉原邦生の対談の行いました。

【編・英訳】

ジョン・バートン、ケネス・カヴァンダー

【演出・美術】杉原邦生

【翻　

訳】

小澤英実

【出　

演】

天宮良

安藤玉恵

本多麻紀

武田暁　

石村みか

箱田暁史

田中佑弥

渡邊りょう

藤井咲有里

福原冠

森田真和

池浦さだ夢

土居志央梨

河村若菜

毛利悟巳

森口彩乃

井上夕貴

永井茉梨奈　

中坂弥樹

尾尻征大

井上向日葵

松永玲子　外山誠二

小田豊　ほか

安藤玉恵　俳優

1976年生まれ、東京都出身。早稲田

大学卒。三浦大輔の劇団ポツドール出

身。近年は、岩松了作・演出『結びの庭』、

宮藤官九郎演出『ロミオとジュリエッ

ト』、今夏は、松尾スズキ氏との二人芝居、

東京成人演劇部vol.1

「命、ギガ長ス」（作・

演出：松尾スズキ）に出演。

杉原邦生

演出家、舞台美術家。KUN

IO

主宰

1982年生まれ、東京都出身。

KU

NIO

主宰。京都造形芸術大学在籍中

より演出家・舞台美術家として活動をは

じめる。代表作はK

UN

IO11

『ハムレッ

ト』（作：シェイクスピア）、木ノ下歌舞

伎『黒塚』、『勧進帳』など。今秋にはスー

パー歌舞伎Ⅱ『新版 オグリ』の演出も

控えている。

出会いは春秋座

杉原　僕、学生時代から安藤さんの

ファンだったんですよ。当時、安藤さ

んが所属なさっていた劇団、ポツドー

ルの公演を観て、すごい女優さんがい

る！

ってファンになって、それで、

安藤　

2006年に京都造形芸術大学

舞台芸術研究センターが主催されたリ

チャード・フォアマンのワークショッ

プに私が参加した時、

杉原　春秋座の裏で挨拶させてもらっ

たんですよね。もう、ドキドキしながら。

安藤　そうでしたね〜。

杉原　その翌年、僕の初めての東京公

演、木ノ下歌舞伎『yo

tsuya-kaidan

』

（2007年

│

こまばアゴラ劇場）を

観に来てくださったんですよね。

安藤　当時、学生さんでしたけれど意

欲的で、いずれきっと東京で活躍する

んだろうなと思いました。

杉原　本当ですか！それは嬉しい。

この世は多様性でできている

杉原　今回のキャストは安藤さんをは

じめ、天宮良さんや小田豊さん、　『グ

リークス』の日本初演に出ていらした

文学座の外山誠二さん、そしてオー

ディションで決まったフレッシュな顔

まで、色々なタイプの役者さんに出演

T•7 KUNIO15『グリークス』

していただいています。

僕はキャストを選ぶときに多様性を持

たせることが好きなんですよ。世界っ

て同じような出自や性質の人ばかり

じゃないから、いろいろな役者がいる

方が、作品世界も広がる気がして。そ

れに、この作品にはそういうキャス

ティングが合っているような気がして

います。

安藤　何人ぐらいオーディションから

の方がいらっしゃるんですか？

杉原　

5人です。

安藤　その他の若手の方は？

杉原　オファーを出していて、永井

茉梨奈さんは僕の造形大での教え子。

卒業後、新国立劇場の養成所に入っ

て、3月に修了したばかりなのです

が、声をかけさせてもらって。井上向

日葵さんも造形大を卒業したばかりで

すしね。

安藤　すると20代前半。

杉原　そうですね。

安藤　うわー、もう娘、息子といって

もいい年ですね（笑）。私、完全にお

母さん感が出てますよ（笑）。

ギリシャ悲劇は一大エンターテイメント

杉原　ギリシャ悲劇というと、どうし

ても重厚で難しいというイメージがあ

ると思うのですが、そもそも演劇祭で

競って上演されたものなんですね。当

時、悲劇は市民の娯楽の中心として

あった。だから、ギリシャ悲劇の中に

は歌や踊り、つまり、音楽コンサート

やダンス公演のようなエンターテイメ

ント要素も全て入っているし、悲劇と

しての怒りや憎しみ、悲しみや涙の中

に、当然笑いの要素もある。ギリシャ

悲劇を〝一大エンターテイメント〞だ

と僕は思ってるんです。

安藤　まだ、お稽古が始まったばかり

ですが、『グリークス』の台本を読ん

でいて自分の中のフェミニズム的な感

情に気付かされて、「今」この戯曲を

やる意味を考えたりしたんです。私の

実感でいうと今も男女差別はあるけれ

ど、この10年で少しは女の人の立ち位

置って変わったのかなぁという気もす

るんですが、その辺、いかがですか？

杉原　僕が『グリークス』を初めて読

んだ時、女性の視点がこの作品にとっ

て、とても大事だと思ったんです。出

てくる男性たちって、みんな弱っちく

て、くだらなくて、すごくバカバカし

い。だって、戦争しているのにずっと

女の取り合いとかしていて、

安藤　確かに（笑）。

杉原　一方で女性は差別もされている

けれどタフで知的で生命力がある。結

局、男性が女性に振り回されているよ

うにも見える。作中、世界創造の神話

が二つ語られますけど、どちらも女性

が世界の起源なんです。母なる海じゃ

ないけれど、女性の存在の豊かさです

よね。そういうことをとてもこの戯曲

から感じたんです。だから翻訳は女性

の方にお願いしたいと思ったんですよ。

安藤　ああー、だから。

杉原　小澤英実さんにお願いしました。

この本の中には常に神と人間、男と女

というふうに対になるもの同士が、互

いに常に影響しあって存在していると

いう構造が明確にある。それが面白い

と思ったので、その部分をきちんと見

せていきたいなと思っています。

安藤　ここでは神でさえ男神と女神と

いう性別があるんですもんね。

杉原　そうですよね。

ピクニック気分で10時間

安藤　でもね、なにより10時間という

ことで、もう、すごいやる気ですから！

『東海道四谷怪談│通し上演│』も6

時間上演でしたけれど、あの時は、お

にぎり3つぐらいに水筒も持って覚

悟して観に行きました。でも6時間

という長さを全く感じませんでした。

それぐらい楽しみました。

杉原　ピクニックみたいな感じですね。

安藤　そうそう。この楽しみってなん

だろうと思いました。10時間の芝居っ

て、演じるのも観るのも、めったに体

験できないことですよね。一生に一度

あるかないか。だから喫茶店とかで、

「あの10時間芝居、観ました！」とい

われたら、その方とすぐ友達になれる

気がする（笑）。

杉原　客席と舞台との一体感はこうい

う作品でしか得られない独特の祝祭感

がありますね。僕はお祭り好きが高じ

て演劇を始めているので、そこが長尺

物の芝居が好きな理由かも。そういう

空間をつくれることが喜びだったりし

ます。

僕は長時間の作品をつくるということ

に関してはベテランの域に達している

ので（笑）、そこはみなさん、臆せず観

に来ていただきたいです。この10時間

の『グリークス』という作品を一緒に

楽しんでいただけたらと思います！

◉公演情報の詳細はスケジュール一覧

（P.9）をご覧ください。