電力施設用ハイブリッド型 PLC...

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電力施設用ハイブリッド型 PLC の負荷容量の検討 平成 29 5 26 IEC TC 57 WG20 委員 (植田技術士事務所) 植田 正紀 (案) 植田技術士事務所 技術士(電気電子部門) 電気学会 IEEJ プロフェッショナル 植田正紀(うえだ まさのり) 290-0075 千葉県市原市南国分寺台 1728 TELFAX050-3311-4617 E-mail[email protected] URLhttp://www.ma-ueda.sakura.ne.jp

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電力施設用ハイブリッド型 PLC の負荷容量の検討

平成 29 年 5 月 26 日

IEC TC 57 WG20 委員

(植田技術士事務所) 植田 正紀

(案)

植田技術士事務所 技術士(電気電子部門) 電気学会 IEEJ プロフェッショナル 植田正紀(うえだ まさのり) 〒290-0075 千葉県市原市南国分寺台 1-7-28 TEL/FAX:050-3311-4617 E-mail:[email protected] URL:http://www.ma-ueda.sakura.ne.jp

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電力施設用ハイブリッド型 PLC の負荷容量の検討

目 次 1. まえがき

2. 検討概要とモデル

3. 信号の合成確率の求め方(参考)

4. E/U 比の分布と CPF 4.1 音声信号の E/U 比の分布 4.2 正弦波の E/U 比 4.3 ディジタル信号の E/U 比

4.4 複合 E/U 比の分布 5. 総合負荷容量 6.あとがき

添付資料 添付資料1 RMS 電力平均化の時間と瞬時電力変動 添付資料 2 文献[1]による過負荷レベルとピークファクタ 添付資料 3 音声とデータ信号の合成に関するベル電話研究所資料 添付資料 4 主な計算プログラムとプログラム例 添付資料 5 確率変数の変数変換

添付資料 6 音声 E/U 比の読取りと近似式の当てはめ

1 1 3 5 5 8 11 17 19 21

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電力施設用ハイブリッド型 PLC の負荷容量の検討

1. まえがき

IEC では、電力施設で使用する電力線搬送通信システムを「Power line communication systems for power utility applications」と呼び、宅内配線等を使用するものと区別している。 IEC TC57 WG20 では IEC 62488-3(Part 3:ディジタル PLC)の審議を開始しており、この中

で、ハイブリッド型電力線搬送装置(以下電力線搬送装置を PLC と呼ぶ)の定義をしようとしてい

る。ハイブリッド方式といってもヨーロッパのメーカの場合は信号数があまり多くないと考えられ、

定格出力については電圧和の原則を適用するものと予想される。しかし日本のハイブリッド PLC は

アナログ 8 通話路+ディジタル信号となるので、電圧和で扱うことはできない。このため、Part 3の作業進行に遅れないよう、日本のハイブリッド PLC の負荷容量についての考え方をまとめ、IEC及び JEC に反映させたい。 ハイブリッド型 PLC の出力電力は、Part 2 の Annex C に示した式 (C.1) に「ディジタル信号」を

追加し、次の形式になる。

図 1 に IEC 62488-1 に記載されているディジタル PLC の構成図を示す。ヨーロッパのメーカの

ハイブリッド型 PLC は、これに 1~2 通話路のアナログ通話路を加えたものではないかと予想され

る。 2.検討概要とモデル

(1) 検討概要

電力線搬送通信システムで伝送される主要な信号の種類としては、音声信号のほかに、正弦波信

号(遠隔監視制御信号、系統保護信号、パイロット信号など)とディジタル信号がある。各信号波

は共通の高周波増幅器を使用するため、増幅器の非線形性によって生じる不要波(高低調波、変調

積など)による漏話やスプリアスの影響を許容限度以下とする設計、すなわち増幅器の負荷容量の

Transition Coder

Speech or FAX + inband signalling

Data anisochronous,Out of band signalling

Data asynchronous or synchronous

Coder

Buffer

RFLineinterface

AF / RFConversion

Pilot

coderTeleprotection Command

TDM

-Mux

/Dem

ux

DPLC Modem(synchronous)

FDM

-Mux

/Dem

ux

図 1 ディジタル PLCの構成図(IEC 62488-1 Figure 49 より)

ディジタル信号の RMS ( ) ( )∑∫∑ ++=21

)(n

jjj

BnRMS

n

iiiRMS wqdffPfpP + (1-1)

IEC TC57 WG20 国内作業会資料(平成 29 年 5 月)

1

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評価手法が重要となる。多重通信路の合成負荷の評価法としては、ホルブルックとディクソンの理論[1]

があり、これに準じた手法が ITU-T G.223 に規定されているが、PLC の場合のような 12 通話路以

下の負荷については明確に示されていない。従来から、電話以外の正弦波信号等は、主信号の音声

信号に影響を与えない範囲に抑制して使用されてきたが、最近の PLC の利用形態では、電話以外の

信号が重要となっており、主客が替りつつある。 IEC では PLC の伝送情報に優先度を設定し、重要信号の S/N 比を向上させる電力配分という手

法を確立しており、PLC の特長と位置付けている。ハイブリッド PLC についても電力配分手法を

実現する必要がある。 本資料は、ハイブリッド PLC の正弦波やディジタル信号を、音声信号と同等のレベルに設定した

場合の負荷容量の評価法について検討し、その手法を提案するものである。

(2) 電話のみの場合の負荷容量算出モデル

多重通信路の負荷容量は、文献[1]において「増幅器が過負荷となることなく動作できる最大負荷

と等しいピーク電力の単一正弦波電力」と定義されており、次の式で表される。 )0(3log10 21110 dBmCCLNP vLC −∆+∆++= (2-1)

ここで、N はシステムの音声通話路数、 1vL は音声1通話路のRMS電力の長期平均値で、ITU-T G.223

により、-15 dBm0 とされている。 110log10 vLN + の部分は N 通話路の RMS 電力の長期平均値で

ある。 1C∆ は音声 N 通話路の RMS 電力の確率的増分(1%超過電力)であり、音量(RMS 電力)

の変動分布から求める。 2C∆ は多重通信路のピー

クファクタ(MPF: Multi-channel Peak Factor)を

デシベルで表したものであり、MPF は音声の瞬時電

圧(E)と RMS 電圧(U)との比、すなわち E/U比の確率分布から求める。音量の変動速度と E/U 比

の変動速度には大きな差があるため、 1C∆ と 2C∆ は

同じ確率分布から求めることはできず、文献[1]では

別々に算出している。(添付資料 1 参照) (3) ハイブリッド PLC の検討モデル

図 2 にハイブリッド PLC の負荷容量の検討モデ

ルを示す。文献[1]のモデルに従い、E/U 比の合成に

関する部分と、RMS 電力の合成に関する部分に分

けて計算し、最後に両者のデシベル和を求め、これ

とピーク電圧の等しい 1 波の正弦波の電力を総合の

負荷容量としている。図の二重枠は合成確率を畳み

込み積分により求める部分である。その他の部分の

合成は単純な電力和で計算することができ、確率的

には変数の線形変換によるは平行移動となる。複合

ピークファクタを本検討では CPF(Composite Peak Factor)と呼ぶことにする。

RMS 電力合成 :P RMS 電力

図 2 負荷容量の検討モデル

Fig. 2 Study model of load capacity

E/U 比の合成

0.1% 超過 CPF

V電圧 l ch

∑l

vv xf )(

S電圧m 波

∑m

mm xf )(

D 電圧 n 波

∑n

dd xf )(

複合分布

V電力 l ch

∑l

vv wp )(

S 電力

sPm

D 電力 dPn

電力和(平行移動)

負荷容量

dB 和

V: speech signal S: sinusoidal signal D: digital signal

: C

onvo

lutio

n

1% 超過 電力

: Pow

er s

umm

atio

n

2

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3.信号の合成確率の求め方(参考)

(1) 確率分布の畳み込み

合成信号電圧のピークファクタや音声通話路の合成 RMS 電力を求める場合は、各信号の確率分

布の畳み込み(合成積:Convolution)により計算する。(音声信号の RMS 電力の合成に関しては

JEC 5901 参考 3 参照)

互いに独立な確率変数 X と Y の確率密度関数をそれぞれ )(xf 、 )(yg とすると、その和

YXZ += の確率密度 )(zh は次の畳み込み積分で与えられる。

∫∞

∞−−= dxxfxzgzh )()()( (3-1)

累積分布は次式となる。

∫ ∫∞−∞

∞−−=

zdxxfxzgzH )()()( (3-2)

上記のように畳み込みは通常、密度分布によるリーマン積分形式で行うが、累積分布を使用して、

次に示すスティルチェス型積分により求めることもできる。a は積分範囲でのY の最大値である。

∫∞

∞−−= )()()( xdFxzGzH 、 1)()( ==>− aGaxzG (3-3)

x の密度分布 )(xf がわかっている場合は、 dxxfxdF )()( = として計算できる。負荷容量の計算

では、レベルの高い方から低い方に積分するので次式となる。

dxxfxzGzHa

a∫−

−= )()()( 、 1)()( ==<− aGaxzG (3-4)

式(3-3)と式(3-4)では、不等号の部分が逆になっているので注意を要する。また、スティルチェス

積分表示は連続型分布及び離散型分布のいずれの表現にも使用できる。 (2) 確率変数の線形変換と平行移動

確率密度関数 )(xf の変数 x を baxy += の変数に変換する場合、次式が適用される。

abyx −

= 、ady

dx 1= 、

aabyf

dydxxfyg 1)()( ×

== (3-5)

1=a の場合は、 )()()( xfbyfyg =−= となり、 y は x に対して平行移動となる。

22σ

21σ

23σ

図3 音声波の RMS 電力と正弦波の RMS 電力の変動

音声波の RMS 電力

正弦波の RMS 電力

2Sσ

時間 →

たとえば図 3 の場合、音声の RMS 電

力は大きく変動するが、正弦波の振幅は

ほとんど変わらないため、合成確率変数

は平行移動とみなすことができ、合成確

率分布は音声電力変動の分布に従うこ

とになる。音量の変動分布と RMS 電力

の変動分布も線形変換による平行移動

の関係となっている。 確率変数の変数変換については添付

資料 5 参照。

3

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(3) 累積分布による変数変換

確率密度関数 )(xf の変数 x を )(xy ϕ= として y の分布に変換する場合、各々の累積分布につい

て次式が成立する。 )()( xFyG = (3-6) 図 4 には線形変換と非線形変換の場合を示している。具体的には、図 4 に示すように 0~100%ま

での x の累積分布に、変換した変数を対応させることにより、各変量の p %超過確率を読み取るこ

とができる。(EXCEL の累積分布を表す列の隣に、変換した変数列を置くことにより対応させる。)。 ただし、平行移動以外の変数変換を行うと分布形は同じであっても密度が変わるので、変換した

分布を用いて畳み込みを行うときは注意を要する。(添付資料 5 参照) (4) 線形変換による畳み込み積分

たとえば変数が、‐2σ~0~+2σの範囲で、1σ当たり 1000 等分して数値積分を行う場合、

EXCEL の行番号は 1~2001~4001 となる。変数を x 、EXCEL の行番号を I とすると、

11000)2( +×+= xI という線形変換となっている。 )(xI ϕ= とすると次の関係が成立する。

∫ ∫′

′=

b

a

b

adIIgdxxf )()( 、 )(aa ϕ=′ 、 )(bb ϕ=′ (3-7)

この関係を利用して、EXCEL の行番号により、畳み込み積分を行うことができる。

(5) 積率(Moment)による検算

文献[1]には、繰り返し演算に伴う誤差を確認する方法として積率を使用することを推奨している。

平均値の回りの k 次の積率は次式で与えられる。

∫∞

∞−−= dxxfxS k

k )()( µ (3-8)

確率変数 x に対する 1 次モーメント ∫∞

∞−dxxfx )( は平均値を、2 次モーメント ∫

∞−dxxfx )(2

は分

散表すので、畳み込みの各段階において平均値と分散を計算すると、誤差の程度と計算プロセスの

正しさを確認することができる。

本検討では 1σ当たり 1000 ステップと

なる場合のみ扱っているが、たとえば 1σ当たり 2000 ステップとなる場合は、1000ステップの分布に変換しなければならな

い。

図 4 累積分布と変数変換

0 %

100 %

x

)(xy ϕ=

0%

累積分布

)()( xFyG =

線形変換

非線形変換 )('' xy ϕ= →

4

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4. E/U 比の分布と CPF

音声信号、正弦波信号及びディジタル信号の E/U 比の分布を求め、最後にこれを合成して複合

E/U 比の分布及び複合ピークファクタ(CPF)を得る。ここでは、i.i.d.変量〔4.3 (5) 参照〕の和に対

して「合成(combine)」、異種の変量の和に対して「複合(compound, composite)」、CPF と RMS 電力の

デシベル和に対して「総合(integrate)」という用語を使用する。

4.1 音声信号の E/U 比の分布

(1) 積分範囲と積分間隔

音声通話路数 n=1、4、16、64 に対する E/U 比の累積分布が文献[1] Fig.2 に与えられている(図

6 参照)。このうち、n=1 の分布をできるだけ正確に読み取り、これを畳み込むことにより、複数通

話路の合成分布を計算することにした。作成した n=1 の分布を 4 通話路分合成し、文献[1] Fig.2

の n=4 のカーブと比較することにより、作成した分布の精度を確認することができる。 1 通話路の音声信号の場合、E/U 比の分布の 0.001%値は、約 8.5σとなる(注)。 しかし、文献[1]

には、MPF 算出の確率としては、「Approximate operating limit 」と記載しているのみで、0.001(0.1%)以下としているが、具体的な数値を示していない。 同文献 Fig..3 によると、1 通話路の

Approximate operating limit は 0.001(0.1%)のカーブと一致しているのでこの値を使用する。

Fig..3 からこの値を読み取ると、約 8σとなるので、0~8σを積分範囲とする。

積分間隔は、計算上の都合から 1σ当たり 1000 ステップとした。

(2) 累積分布の近似式

文献[1] Fig.2のn=1のカーブの 0~4 σを 4区間に分け、さらに 4~8σを外挿することにより、

合計 5 区間とし、これに近似式を当てはめて、全体の累積分布を作成した。

1 通話路の 0~8σを 5 区間に区切って近似式を当てはめた結果を表 1 に示す。この近似式で計算

した結果と元の分布の比較を図 6 に示す。表 1 では Ix を媒介変数としている。近似式の詳細につい

ては添付資料 6 参照。 表 1 近似式適用表

計算区間 0~0.5σ 0.5~1σ 1~2σ 2~4σ 4~8σ

インデックス Ix 1~9(0.016) 1~5(0.008) 1~9(0.008) 1~5(0.004) ―

x 対 Ix 0625.00625.0 −= xIx 5.15.0 += xIx 375.0125.0 += xIx 375.0125.0 += xIx 84~=x

Ix 分割数 500 500 1000 2000 4000

近似曲線 累乗近似 累乗近似 対数近似 対数近似 線形近似

近似式 675.0−= Ixy 40.02269.0 −= Ixy

1177.0)(log0325.0

+−= Ixy e

0463.0)(log014.0

+−= Ixy e

03.0003625.0

+−= xy

(3) 合成音声波の E/U 比の分布

1 通話路の音声波の瞬時電圧を E とすると、n通話路の場合、一般式では下記のとおりとなる。

n=1 のピークファクタは )(5.1807.01

69.12 dBn

MPFn =+

+= となり。この値は 8.41σとなる。

(注) 1 通話路の MPF

5

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σµ

nnE

UE in

−Σ=/ (4-1)

E/U 比の確率分布は音声波を半波整流したものに対応しているが、実際の信号は半波整流したも

のの和ではなく、正負の信号の和となるため、μ=0 となる。(注) 1 通話路のσを 1 とすると、n 通話路の E/U 比は下式となる。

nE

UE in

Σ=/ (4-2)

図 5 は、文献[1] Fig. 2 の 1 通話路の場合の E/U 比の確率分布をイメージ化して示したものであ

る。本来ならば、±8σくらいの正負の変数全体の確率を扱うべきであるが、音声信号の波形は正側

と負側で対称であり、かつ電力としては同じであるため、文献[1] Fig. 2 では正の半波の確率を 2 倍

して示している。すなわち、図の右半分を累積値にて与えている。このデータから音声信号の合成

を行う場合は次の手順となる。

1 通話路の音声信号電圧を )(tv とし、その RMS 電圧が vσ 、範囲が 0~a で与えられているとす

ると、E/U 比は次式となる。

v

tvxσ

)(= 、 ax ≤≤0 (4-3)

(注) 中心極限の定理による正規分布への収束

limn→∞ ∫ ∞−

−=

−Σ ax

i ean

nE2

2

21πσ

µ

は、右辺の値が(1-0.00001)となるときの a の値が-0.001%ピーク電圧の MPF となる。

電圧の合成を行う場合は± a の範囲

で行う必要があるので、変数 x を次のよ

うに変換する。 xaxx 2)(2 +−== ϕ 、 axa ≤≤− 2

音声の E/U 比の分布は正の半波の累積

分布 )(xF として与えられているので、

これを dxxdFxf /)()( = として密度分

布に変換し、次式により正負の密度分

布をつくる。

)(21)( 22 xfxf = 、 )( 2

1 xx −= ϕ

畳み込みは i.i.d.変量の分布として次式

で行なう。(2ch 合成の場合)

∫− −=a

adxxfxzgzh 2222222 )()()(

式(4-1)の nUE / は、n が小さいときはバラツキが大きいが n が大きくなると次第に平均値の近くに分布するようになり、右の式に従って正規分布に収束する。正規分布で近似できる領域で

0.6

0.2

0.4

0.8

1.0

0 2 4 6 8 -2 -4 -6 -8

密度分布

正の半波を 2 倍 した累積分布 文献[1] Fig.2 の カーブに相当

両波の累積分布

図 5 音声波の E/U 比の分布(イメージ図)

σ

6

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ピークファクタを求めるときは、これを正の半波の累積分布に変換する。

∫=a

dzzhzH0 222 )(2)(

同様に、2 通話路の分布を畳み込んで 4 通話路の分布を求めることができる。 図 6 は文献[1] Fig.2 の一部である。1ch の累積分布に近似式を当てはめた結果を赤丸で示してい

る。また 1ch の分布を合成して 2ch の分布を作り、さらにこれを合成して 4ch の分布を作ってプロ

ットした結果を で示している。

4 通話路の E/U 比合成計算の平均値と 分散の値を表 2 に示す。表 2 の分散は

1通話路の E/U 比の分布を畳み込んだと

きの値であり、合成 E/U 比の分散はこれを

4 で割る必要がある。 図 7 に 4 通話路の合成密度分布を 示す。

表 2 4 通話路の平均と分散

数値計算結果 平均値 0.002 (0) 分散 4.005 (4) ( )内は理論値

-5.1 5.1 0

図 7 音声 4 通話路の合成密度分布

)(xfn

σ

図 6 音声 E/U 比の分布と 4 通話路までの合成計算結果

7

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(注) 式(4-7)の誘導

4.2 正弦波の E/U 比

(1) 正弦波の実効値(参考)

周期性のある電圧の実効値(RMS 電圧)は次式で表される。周期性のない音声信号や白色雑音に

ついても、式(4-4)のT を適当な時間にとることに より実効値を定義することができる。

∫=T

rms dttVT

V0

2)(1 (4-4)

T は周期である。 tVtV m ωsin)( = の場合は、

2

)sin(10

2 mT

mrmsV

dttVT

V == ∫ ω (4-5)

RMS 電力は、次式となる。

2

22 m

rmsrmsV

Vp == (4-6)

式(4-5) の正弦波電圧 tVx m ωsin= を確率変数とし

て扱うと、式(4-6)は2x に対する正弦確率分布の期待

値として求めることができる

2

)(2

2 mV

Vrms

VdxxfxP m

m∫− == (4-7) (注)

式(4-7)は変数 x の分散に等しく、その平方根は標準偏

差であるが式(4-5)の RMS 電圧に等しい。(このような

対応は平均値がゼロの場合に限る。) IEC 62488-2 Annex Cでは、正弦波のRMS電力をσ2単位で表している。

電圧ピークファクタは 2/ =rmsm VV 、電力ピークファクタは 2/2 =rmsm PV となる。

デシベルで表す場合は、下式のようにいずれも 3dB となる。

)(3)/(log10)/(log20)( 2 dBPVVVdBp rmsmrmsmrms ===

(2) 正弦波の瞬時電圧の確率分布

tax ωsin= の確率分布は次式で与えられる。

22

1)(xa

xf−

、 axa <<− (4-8)

図 8 に 1 波の正弦確率分布及び 8 波までの合成確率分布を示す。この分布は左右対称であるため

中心極限の定理により正規分布に収束する速度が速く、8 波の合成密度はほぼ正規分布に従ってい

ることがわかる。2 波の中心部分に密度が集中しているのは、プラス側とマイナス側の電圧が打消

し合って 0 及びその付近に密度が集中するためである。

8

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ク電圧を評価する場合にプラス側のみを扱い、その確率を 2 倍している。

22

2)(xa

xf−

、 ax <≤0 (4-9)

ただし、実際には半波整流を行うわけではないので、信号を合成する場合は正負の領域を含む式

(4-8) を使用しなければならない。 (3) 正弦波の E/U 比の確率分布

正弦波の瞬時値を tax 111 sinω= とし、その RMS 電圧を 1σ とすると E/U 比 2x は次のようになる。

ttaxx 11

11

1

12 sin2sin

ωσω

σ=== (4-10)

一般に σ2=a であるから、式(4-10) は常に t1sin2 ω となる。これは振幅が 2 の正弦波に等

しいので、その密度関数は次式となる。

2

2

222

1)(x

xf−

、 22 2 <<− x (4-11)

(4) 正弦波の合成確率

二つの正弦波の RMS 電圧を 1σ 、 2σ とするとき、合成瞬時電圧は次のようになる。

ttyx 22112221 sin2sin2 ωσωσσσ +=+ (4-12)

これを合成 RMS、 U=+ 22

21 σσ で割ったものが合成 E/U 比となる。

U

ttyxz 2211333

sin2sin2 ωσωσ +=+= (4-13)

密度分布による合成を行う場合は、式(4-13) を次のように第 1 項と第 2 項に分けて、それぞれの

項についてあらかじめ変数変換(事前変換)を行ってから、畳み込みを行うことになる。

図 8 正弦波の合成密度分布

a− a 0

)(xfn

1=n

2=n

4=n 6=n 8=n

図 8 におけるa は、正弦波の振幅の値であ

り、n 波の場合は na = となる。 4=n の場合

に両端の確率がゼロに近くなっているが、

IEC 62488-2 Annex C に記載しているよう

に、4 波以上になるとピーク電圧が重なる確

率が非常に小さくなることを意味している。 次の式(4-9) は正弦波を半波整流し、その正

側の確率を 2 倍したものに対応している。こ

れは、文献[1]の音声波の扱いに合わせたもの

である。文献[1]によると、音声信号波形はプ

ラス側とマイナス側が対称であるため、ピー

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Ut

Utz 2211

3sin2sin2 ωσωσ

+= (4-14)

(5) 独立同一分布の場合の E/U 比の合成 (参考)

互いに独立で同一分布に従う(i.i.d.:independent identical distribution)変量の場合は、取扱

いが容易になる。式(4-15)において、 σσσ == 21 とすると σ2=a であるから次式となる。

ttttyxz 2122

21

2211333 sinsinsin2sin2

ωωσσ

ωσωσ+=

+

+=+= (4-15)

すなわち、2 波の i.i.d.変量の場合の E/U 比の合成確率は、σの値に関わらず、 tωsin の確率分布

の畳み込みとなる。式(4-15)は、i.i.d.といいながら、周波数が異なっているが、正弦波の振幅確率は

位相が同期しない限り、周波数に関係なく与えられる。(周波数が異なる方が位相の独立性が保証さ

れる。) 本検討では、音声波、正弦波及びディジタル信号のそれぞれの合成は、全て i.i.d.変量の畳み込み

で行なっている。 (6) 合成正弦波信号のピークファクタ

正弦波のピークファクタは 2 であるが、これはピーク電圧と RMS 電圧の比であり、IEC 62488-1

ではこれを PAR(Peak to Average Ratio)と呼んでいる。またピーク電力と RMS 電力の比を PAPR(Peak to Average Power Ratio)呼んでおり、これは PAR の二乗となる。 合成正弦波のピークファクタは、数波の合成であれば、ピークが揃った瞬間の電圧とその RMS電圧の比として、計算で求めることができるが、数波を超えるとピークが重なる確率が小さくなり、

確率を考慮したピークファクタを求める必要がある。 表 3 に 8 波までの合成正弦波の超過確率の計算結果を示す。これは、IEC TC57 WG20 に日本か

ら提案した附属書に対する参考資料として、2014 年 5 月にジュネーブで開催された WG20 に配布

した「Exceedance probability of combined sine wave」の中の一部である。 表 3 合成正弦波の超過確率の計算結果

Table 1 Calculated results of the exceedance probability of combined sine waves Number of waves (n)

Variance (Theoretical)

Variance (Calculated)

Upper 1% value

Upper 0.1 % value

1 0.5 0.497 0.999 0.9999

2 1.0 0.993 3.74 3.97

3 1.5 1.490 7.03 8.52

4 2.0 1.987 10.0 13.8

5 2.5 2.483 12.7 19.2

6 3.0 2.980 15.2 24.2

8 4.0 3.974 20.7 33.7

10

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図 9 に、表 3 から求めた 1~8 波までの合成正弦波のピーク電圧、ピークファクタ等を示す。

4.3 ディジタル信号の E/U 比

(1) 信号モデル

ハイブリッド PLC のディジタル変調方式は各種考えられるが、小容量の場合で比較的ピークファ

クタが大きい方式の例として、64QAM 信号を OFDM 方式で伝送するモデルにについて検討した。

IEC 62488-1 では、PLC のディジタル変調方式として、QAM、OFDM、スペクトル拡散方式を紹

介している。ただし、スペクトル拡散方式は、配電線搬送では使用されるが、電力線搬送方式には

不適であるとしている。また IEC 62488-1 には次の記述がある。(p25) The two main modulation schemes currently used are QAM and OFDM. この検討モデルが実用的かどうかは別として、この検討結果から他の方式についても容易に応用

が可能であると考える。 ディジタル信号波と正弦波信号の違いは振幅が変動するかどうかであって、FSK など振幅が一定

の場合は、正弦波として扱うことができる。

(2) QAM 信号の電力分布

図 10 に 64QAM 方式の信号点の配置図を示す。また、図 11 には、OFDM 信号を 4 サブキャリア

ー分直交配列した場合の周波数スペクトル図を示す。

σ2

電圧和と確率的電力和の相違

0

10

20

1 2 3 4 5 6 7 8

① ① RMS 電力2σn

② ② PAR nnn 2/2 ==

③ ピーク電圧=n×1 ③

④ 0.1% PAPR

確率無視

⑥ 0.1% ピーク電力

⑤ PAPR=PAR2

(確率無視)

図 9 合成正弦波のピークとピークファクタ

波数 n

5

15

(確率考慮)

11

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64QAM の各信号点が等しく現れると仮定すると、各象限の電力は等しいので、第Ⅰ象限のみの

各信号点の電力を計算すると表 4 のようになる。ここでは振幅係数(C を 1 としている。) 表 4 64QAM 第Ⅰ象限の信号点電力

振幅 1 3 5 7 合計

7 12+72=50 32+72=58 52+72=74 72+72=98 280

5 12+52=26 32+52=34 52+52=50 72+52=74 184

3 12+32=10 32+32=18 52+32=34 72+32=58 120

1 12+12=2 32+12=10 52+12=26 72+12=50 88

合計 88 120 184 280 672

第Ⅰ象限の平均電力は 672/16=42 であり、ピーク電力は 98 となるので、ピークファクタは次式

となる。

図 11 OFDM の周波数スペクトル密度

図 10 64QAM のシンボル配置

64QAM

(Ⅰ) (Ⅱ)

(Ⅲ) (Ⅳ)

同相軸

直交軸

C 3C 5C 7C -C -3C -5C -7C

-3C

-5C

-7C

3C

5C

7C

振幅=22 73 +C

図 12 信号点の振幅

QAM 信号は、振幅と位相により情報を伝えるが、

増幅器の負荷に対しては振幅のみが問題となる。 高周波帯におけるQAM変調波の包絡線を )(~ ts とす

ると、その振幅は次式で表される。 )()(~

00 jbaCts += (4-16)

各信号点の電圧は、2

02

0 baC + となる。図 12 に

おいて、同相軸と直交軸の座標が 3C、7C の場合は

振幅(電圧)は22 73 +C となる。

12

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53.14298

==pf (4-17)

なお、16QAM、64QAM、256QAM など、 QAMM において、2bM = (b は偶数)の場合のピ

ークファクタが次式で与えられている。

113

+−

=bbpfb (4-18)

この場合の平均電力について次式が示されている。

( )132

−= MEa (4-19)

64=M の場合は 423)164(2 =− となる。

表 4 から信号点電力の確率分布を求めると表 6 のようになる。この密度分布図は図 13 のように、

不等間隔離散分布となる。

図 14 に 64QAM~4096QAM までの PAPR(dB 値)についての情報通信審議会資料を示す。この

資料でも各信号点はランダムに現れると仮定している。ピーク値と平均値の比を表す式も掲げてあ

るが、式(4-18)とは分母と分子が逆になっている。

信号点電力 度数 密度

2 1 0.0625 10 2 0.125 18 1 0.0625 26 2 0.125 34 2 0.125 50 3 0.1875 58 2 0.125 74 2 0.125 98 1 0.0625 合計 16 1.0

表 6 信号点電力の確率分布

方式 b PAPR Pf PAPR (dB) 4 QAM 2 1 1 0 16 QAM 4 1.8 1.34 2.55 64 QAM 8 2.34 1.53 3.7 256 QAM 16 2.66 1.63 4.25

表 5 QAM 方式のピークファクタ

式(4-18) によると、b=2~16 の場合のピーク

ファクタは表 5 のとおりとなる。また式(4-18)

から、bが大きくなると、ピークファクタは 3 に近づくことがわかる。

図 13 64QAM の信号点電力密度分布

0

0.2

0.1

2 98 10

18 26 34 50 74 58

Den

sity

Power of constellation points

13

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(3) OFDM 信号の電力及び E/U 比の分布

64QAM 信号を 4 波のサブキャリアによって伝送する OFDM 方式を検討する。基底帯

(Baseband)における 1 シンボル当たりの OFDM 信号は次式で与えられる。[3]

∑−

=

=1

0

2 01)(

N

n

tfjnB eD

NtS π (4-20)

{ } { }[ ]∑−

=

+−+=1

000 )(2sin)(2cos1)(

N

ncncn tnffbtnffa

NtS ππ (4-21)

変調信号はスクランブラーによりランダム化されるものとし、各サブキャリアの振幅は独立和と

して、畳み込みにより計算する。

(情報通信審議会 情報通信技術分科会 ケーブルテレビシステム委員会(第2回))

図 14 QAM 信号の PAPR についての情報通信審議会資料

ここで、 N はサブキャリアの数、 0f は隣

接するサブキャリアの間の間隔、 nD は複素デ

ータシンボルである。 図 15 に 5=N の場合のサブキャリアを示

す。時間T は 1 シンボル区間を表し、各サブキ

ャリアには伝送すべきシンボルの振幅と位相

を含んでいることになる。 式(4-20) は基底帯における信号であるが、搬

送周波帯域においては次式のようになる。[3] 搬送周波帯域における信号は等価低域信号

又は複素包絡線と呼ばれる。

図 15 OFDM サブキャリアー

(シンボル長) T

14

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表 6 に QAM の振幅とその確率密度を示しているが、変数が離散不等間隔となっているので、こ

のままでは畳み込むことができない。 図 13 の横軸は信号点の電力を表しているが、この平均電力が RMS 電力となるので、この平方根

が E/U 比の分布となる。すなわち、図 13 の横軸の値を ip とすると 64QAM の等価低域信号の E/U比は次の式で表される。

42// ipUE = (4-22)

図 13 の電力の変数、2~98 は、E/U 比の変数としては 0.22~1.53 となる。 表 6 の信号点電力は、正の半波に対応しているので、畳み込みを行うためには、音声信号の場合

と同様に、マイナス側の半波の変数を構成し、これに確率を配分する必要がある。表 7 にプラス側

とマイナス側に展開した信号点の電力、E/U 比及びその確率密度を示す。

表 7 信号点の電力、E/U 比、確率密度

マイナス側

信号点電力 98 74 58 50 34 26 18 10 2

E/U 比 -1.53 -1.33 -1.18 -1.09 -0.9 -0.79 -0.65 -0.49 -0.22

確率密度 0.03125 0.0625 0.0625 0.09375 0.0625 0.0625 0.03125 0.0625 0.03125

プラス側

2 10 18 26 34 50 58 74 98

0.22 0.49 0.65 0.79 0.9 1.09 1.18 1.33 1.53 合計

0.03125 0.0625 0.03125 0.0625 0.0625 0.09375 0.0625 0.0625 0.03125 1.0

(4) OFDM 信号の合成 E/U 比の分布

ディジタル信号の確率密度は表 7に示すように±1.53σの間の不等間隔離散点に分布しているが、

これを 1σ当たり 1000 ステップの等間隔変量に変換する。離散点以外の変数に対する確率はゼロと

して扱う。ディジタル信号を密度分布で畳み込む場合は、離散分布であるため連続型分布の場合の

ような密度補正を伴う変数変換を行う必要はない。(注) 計算によって求めた 64QAM の 1 信号及び 2 信号合成のピークファクタ、並びに計算システムの

確認のための平均値及び分散を表 8 に示す。表 8 の 2 信号のピークファクタ及び分散は、単純に畳

み込んだときの値であり、合成 E/U 比のピークファクタは及び分散は、それぞれ nσ 及び2

nσ で割る

必要がある。

(注)離散密度分布の変数変換

X の確率分布を )(xPX とし、これを )(XgY = の分布に変換する。 [ ] [ ] [ ] ( ))()(Pr)(PrPr)( 11 ygPygXyXgyYyP XY

−− ======= ( ))()( 1 ygPyP XY−=

として対応させることができる。具体的には、図 16 の横軸に示す対応となる。

15

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0

0.01

0.02

0.03

0.04

0.05

0.06

0.07

表 8 ディジタル信号の合成計算の確認

ピークファクタ 平均値(理論値) 分散(理論値)

64QAM 1 信号 1.53 0 (0) 1.003 (1)

OFDM 2 波合成 2.16 2.1×10-17 (0) 2.006 (2)

OFDM 4 波合成 3.06 0.002 4.01 (4)

図 16 には 2 信号を合成した密度分布図を、また図 17 には 4 信号を合成した密度分布を示す。プ

ラスとマイナスの信号が打消しあって 0 となる確率が高くなっている。 前述したように、離散分

布であるため変数が変わっても密度補正をすることなく、横軸のように対応させることができる。

0

0.002

0.004

0.006

0.008

0.01

0.012

0.014

E/U 比合成⇒ 合成 E/U 比⇒

図 16 64QAM 信号の 2 波合成振幅密度分布

2/06.3− -3.06. 0

0 2/06.3 3.06

E/U 比合成⇒

合成 E/U 比⇒

図 17 64QAM 信号の 4 波合成振幅密度分布

4/12.6−

-6.12 0 0 4/12.6

6.12

16

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4.4 複合 E/U 比の分布

(1) 複合 E/U 比

ピークファクタはピーク電圧と RMS 電圧の比であり、これから直接合成ピーク電圧を求めるこ

とはできない。E/U 比に RMS 電圧を乗じて瞬時電圧に戻してから合成を行い、これを合成 RMS 電

圧で除することにより、複合 E/U 比の分布を求めることができる。

音声、正弦波、ディジタル信号電圧の E/U 比の確率変数をそれぞれ vx 、 sx 、 dx とし、その RMS電圧をそれぞれ vσ 、 sσ 、 dσ とすると、複合 E/U 比 cx は次のようになる。

222

dsv

ddssvvc

xxxx

σσσ

σσσ

++

++= (4-24)

式(4-25)は各信号が 1ch 又は 1 波の場合であるが、音声、正弦波、ディジタル信号の数が l 、m 、

n の場合は、次式となる。

222 . dsv

ndd

mss

lvv

cnml

xxxx

σσσ

σσσ

++

++=

∑∑∑ (4-25)

式(4-25) の合成確率分布を求め、 そのパーセント値から cx の分布の複合ピークファクタを計算す

ることになる。PLC 回線の場合、複合 CPF は 0.1%値を採用すれば十分であると考える。 各種信号の組合せについては様々なものが考えられるが、本検討では音声、正弦波及びディジタ

ル信号について表 9 の組合せについて合成を行なった。3 種類の信号は、それぞれ i.i.d.変量とし、

RMS 電圧が 1 の確率分布を単純に複合した分布をまず計算し、総合 E/U 比はそれを複合 RMS 電圧

で除して求める。

式(4-26) について、 1=== dsv σσσ とおくと、総合 E/U 比の変量は次式となる。

nml

xxx

nml

xxxx n

dm

sv

dsv

ndd

mss

lvv

c++

++=

++

++=

∑∑∑∑∑∑.

222 . σσσ

σσσ (4-26)

分子は全て確率的変量であり、音声、正弦波、ディジタル信号をそれぞれ l 、m 、n 個分を i.i.d.変量として畳み込んで合成し、更にそれらを畳み込んで複合分布を求めたのち、複合 RMS で割る

ことにより、複合 E/U 比の分布を得ることになる。

表 9 各種信号の複合

信号の種類 信号数 信号の変動範囲 備 考 音声信号 4 通話路 ‐32 ~0 ~ +32 ±8σ×4 正弦波信号 8 波 ‐11.312 ~0 ~+11.312 ±1.414σ×8 ディジタル信号 4 波 ‐6.12 ~0 ~+6.12 ±1.53×4 全合成信号 16 信号 ‐49.432 ~0 ~+49.432 ±49.432 複合 E/U 比 16 信号 ‐12.358 ~0 ~+12.358 358.1216/432.49 ±=±

(2) E/U 比の合成計算結果 図 18 は全信号の複合 E/U 比密度分布である。全範囲は‐12.4~+12.4σであるが、密度の大部分

17

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が±2σのが±2σの範囲に集中してい

ることがわかる。 図 7 の音声信号の E/U 比の分布と

比較すると、合成ピークファクタの値

が相対的に小さくなり、密度が中央に

集中する様子を見ることができる。 図 19は各信号別合成E/U比の分布

と総合 E/U 比の分布である。下部の

0.001 に対応する値が 0.1 %ピークフ

ァクタとなる。

図 19 信号別合成 E/U 比及び全合成 E/U 比の累積分布

0 2 4 6 1

0.001 5 3

0.005

0.01

0.02

0.05

0.1

0.2

0.4

1.0

0.002

音声 4 通話路 正弦波 8 波 ディジタル信号 4 波 全合成 E/U 比

E/U

図 18 全信号の合成 E/U 比密度分布

音声 1 通話路

18

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表 10 には、各分布の 0.1%値及び、計算の過程での積率(この場合、平均とと分散)について示

している。括弧内には理論値を記載しているが、平均値と分散が理論値に近いことから、計算結果

はほぼ正しいと考える。分散は変数変換前と変換後について計算しているが、変換後のものは、半

波の分布を 2 倍して 0.1%値を読み取った分布に対応しており、0.1%値に対する最終的な確認となっ

ている。

表 10 積率による畳み込み演算の確認 (カッコ内は理論値)

0.1%値 平均値 分散(変換前) 標準偏差 分散(変換後)

音声 4ch の E/U 比 5.2σ 0.002(0) 4.005(4) 2.001(2) 1.0001 (1)

正弦波 8 波の E/U 比 3.05σ 0.147(0) 7.96(8) 2.82(2.828) 0.995 (1)

D 信号 4 波の E/U 比 2.64σ 0.002 (0) 4.01 (4) 2.02 (2) 1.002 (1)

全合成波の E/U 比 3.6σ 0.04(0) 16.1(16) 4.01(4) 1.007 (1)

表 10 の 0.1%値は、合成信号のピークファクタであるが、全合成波の E/U 比 3.6 は音声 5ch のピ

ークファクタよりもかなり小さくなっている。このことは、IEC 62488-2 Annex C に記載したよう

に、合成波のピークファクタに関しては、本検討の例では音声のピークファクタを適用すれば十分

であることを示している。このように信号数が増えると、合成信号のピークファクタが小さくなる

現象については添付資料 2 に記載されている。 以上の検討は、各信号の RMS 電圧が 1 の場合であるが、それ以外の場合は式(4-26)に従って音声

信号を基準としたレベルを設定することにより計算できる。ただし、1σ当たり 1000 ステップの原

則からはずれる変数変換を行う場合は、数値データで表された確率分布に対する変数変換を行う必

要がある。(添付資料 5 参照)

5. 総合負荷容量 (1) 電話 4 通話路の負荷容量の計算

JEC-5901 参考表 4 に電力線搬送電話端局装置の 99%等価音量の値が示されている。この値は文

献[1]が発表された頃の音量計(現在の音量計とは異なる)によって測定されたもので、この値に

2.2dB を加えると RMS 電力となる。電話 4 通話路の場合の負荷容量は式(2-1)より、次の式で求め

られる。 )0(3log10 21110 dBmCCLNP vLC −∆+∆++= (7-2)

ここで、 1VL は電話 1 通話路の長期平均電力で、-15 dBm となる。 110log10 vLN + は電話 N 通話

路システムの長期平均電力、N=4 の場合は dB9154log10 10 −=− となる。 1C∆ は長期平均電力

からの確率的増分であり、IEC 62488-2 Annex C の Table C.1 にて与えられており、10.0 dB となっ

ている〔4 通話路の場合、等価音量+2.2‐(長期平均電力)=‐1.2+2.2‐(‐9)=10.0 dB となる〕。

2C∆ は E/U 比の確率的増分であり、JEC 5901 参考表 1 によると 4 通話路の場合は dBMPF 5.18log10 410 = となっている。ここでは、本検討で求めた音声 4ch のピークファクタ

5.2(0.1%値)を適用することにすると、 )(3.142.5log20 10 dB= であり、電話 4 通話路の場合の負

荷容量は次のようになる。(JEC-5901 参考表 4 の値は 16.5 であり、4.2 dB 低い値となる。) 03.1233.141093log10 21110 dBmCCLNP vLC =−++−=−∆+∆++= (7-3)

19

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(2) 総合信号の負荷容量

1%超過確率の総合 RMS 電力は、音声電力確率分布の線形変換における平行移動となるので、

[ ]1110log10 CLN v ∆++ に正弦波信号及びディジタル信号の RMS 電力を加えて求める。総合負荷容

量は、これに 32 −∆C に相当する部分を適用して求める。 音声、正弦波、ディジタル信号波の長期平均 RMS 電力を vP 、 sP 、 dP とすると、総合負荷容量は

次式で表される。

)0(3101010log10 21101010

10 dBmCCPdsv PPP

LC −∆+∆+

++= (7-4)

ただし、 2C∆ の代わりに CPF(dB)を適用する。 音声 1 通話路の長期平均電力は‐15 dBm0 で

あるので、これを基準にすると、表 9 に示した各信号電力は次のようなる。 0(94log1015 10 dBmPv −=+−=

)0(68log1015 10 dBmPs −=+−= )0(94log1015 10 dBmP d −=+−=

)(1.116.3log20 10 dBCPF == であるから総合負荷容量は次のとおりとなる。

)0(1.1531.111033101010log10 110

910

610

9

10 dBmCPFCPLC =−++−=−+∆+

++=

−−−

この値は音声だけの場合の式(7-3)と比較すると、2.8 dB だけ増大している。合成信号数を増やすと

CPF は減少するが、全体の負荷容量は当然増大する。 (3) 総合負荷容量の簡易計算法

IEC 62488-2 Annex C では、音声波信号と正弦波信号を合成する場合、RMS 電力に関しては単純

に加算し、ピークファクタについては、音声のみの場合の MPF を適用することにしている。これは、

ベル電話研究所の見解に従ったものである。(添付資料 3 参照) 今回の計算例についてこの考え方を適用すると、 )(3.142 dBC =∆ であり次のようになる。

)0(3.1833.141033101010log10 2110

910

610

9

10 dBmCCPLC =−++−=−∆+∆+

++=

−−−

すなわち、合成ピークファクタ(CPF)を適用した場合よりも 3.2 dB だけ余裕を生じることになる。

このことから、ハイブリッド PLC に関しても、IEC 62488-2 Annex C の方法で計算して差し支えな

いものと考える。ただし、JEC 5901 及びそれに基づく Annex C の方法は、 2C∆ のパーセント値及

び音声通話路数の適用方法が異なっているため、計算結果が若干異なる。 (4) 安全率

IEC 62488-2 Annex C には、合成信号に対して音声信号の MPF を適用する場合、安全率を見込む

のが望ましいと記載している。本検討による電話 4 通話路の場合の MPF は 14.3 dB となっている

が、Annex C では 18.5 dB となっている。この差は、本検討ではピークファクタの値を 0.1%値で求

めているのに対し、文献[1]では、多中継の場合を考慮して厳しい値を採用しているのと、MPF の

20

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‐21‐

対象とする通話路数を、n でなく安全のためにNτ(=n/4)を採用しているためである。(nの値を

小さく見込む方が安全となる:文献[1]、642 ページ参照) ハイブリッド PLC の合成負荷に関しては、Annex C と同様の簡易計算法を使用すれば、既に安全

率が見込まれていることになる。 (5) 電力配分

IEC TC-57 では、電力線搬送システムの信号の重要度に応じて出力電力の配分を行うことができ

ることを伝統的に重要視している。ハイブリッド PLC についても、式(7-4)を利用して、電力配分を

行うことができる。 6.あとがき

以上の検討は、ハイブリッド PLC についての、IEC 62488-2 第 3 章 3.1.7 に規定する負荷容量(load capacity)の計算法について記載したものであり、PEP(Peak envelope power)については、これ

に回線設計から求められる増幅度を追加しなければならない。 今回の検討では各信号の合成は全

て iid変量として行ったが、振幅の大きい1波の正弦波がる場合など、特殊信号の組合せについては、

個別に計算する必要がある。また以上の記述は、文献[1]及び文献 2 に基づいて行った机上での検討

結果であり、一応この手法をハイブリッド PLC の高周波増幅器の設計に適用できると考えるが、な

お、IEC 及び JEC に規定するスプリアス及び漏話の試験により実証することが望ましい。

21

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添付資料

添付資料1 RMS 電力平均化の時間と瞬時電力変動 添付資料 2 文献[1]による過負荷レベルとピークファクタ 添付資料 3 音声とデータ信号の合成に関するベル電話研究所資料 添付資料 4 主な計算プログラムとプログラム例

添付資料 5 確率変数の変数変換 添付資料 6 音声 E/U 比の読取りと近似式の当てはめ

引用文献

[1] B.D. Holbrook and Dixon: “Load Rating Theory for Multi-Channel Amplifiers”, Bell Syst.Tech., J., (1939)

[2] “Transmission Systems for Communications (Fourth Edition)”, 1970, Bell Telephone Laboratories. 日本語翻訳版:庄司茂樹、甘利省吾監訳、ベル電話研究所、 “伝送システム” , ラテイス社刊

[3] 伊丹 誠「OFDM の基礎と応用技術」電子情報通信学会 Fundamentals Review Vol.1, No.2, 2007-10 [4] 電電公社 “電話回線の通話音量(その 1)― PCM 方式の設計と集中局区域内回線の音量調査 ―” 、「施設」Vol. 16, No.4

[5] 「ディジタル通信の基礎」:鈴木博、数理工学社 [6] 「ディジタル通信の基礎」:岡育生、森北出版株式会社 [7] 「基礎通信工学」:福田明、森北出版株式会社 [8] 「わかりやすい OFDM 技術」:伊丹誠、オーム社 [9] Power line communication systems for power utility applications Part 1: Planning of analogue

and digital power line carrier systems operating over EHV/HV/MV electricity grids

22

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1

音声波のE/U比とRMS電力の変動は、それぞれ別の方法で求めた独立変量の確率分布であり、

本来ならば両分布の畳み込みを行わなければならないが、両分布の変動速度に大きな違いがある

ため、その必要性がないことを文献 1 で述べている。すなわち、RMS の変動インターバルの中

には、MPF に相当するピークが必ず含まれると想定している。このことに関して文献[1]では次

のように記載している。

しかし同文献では、平均化に関しては「Average speech power in milliwatts」と記載してい

るのと、上記枠内に「a small interval」と記載しているのみで、具体的時間は明らかにしてい

ない。音量計(VU メータ)の時定数は 300 ms とされており、さらに外部機器に対して長時間

積分値を出力するとされている。 文献[2]によるとこの時間に関して次の記述がある。

〔旧電電公社による通話音量測定の積分時間〕

電電公社では、多重方式の設計に欧米諸国のデータを使用していたが、通話音量に影響する諸

要因は、我が国と外国ではかなりの差があるので、PCM 方式導入にあたり、1952 年に大規模な

通話音量の測定を行った、と述べている。このとき、測定の積分時間は 10 秒で行ったことが報

告されている。 以下の記事は、電電公社「施設」Vol. 16, No.4 に記載されている平均談話勢力の測定装置に

関するものである。

The amplifier is thus loaded with a constantly changing equivalent volume but because of the great difference in the time-scales of the two classes of variations the load may be regarded as a succession of equivalent volumes, each constant for a small intervals of time that nevertheless is long enough to include a representative samples of the resultant instantaneous voltage distribution. If the distribution function for equivalent volume is computed, and then corrected by the multi-channel peak factor, the fraction of such intervals during which the amplifier will be unsatisfactory from the standpoint of overloading may be determined.

dBm 単位の平均電力はしばしば通話の長時間平均電力といわれる。この場合の長時間とは 10 秒以上の連続音声を意味し、平均には語間や音節間の自然な休止も含めるが考えをまとめたり、返事を待つためのような長時間の休止は含まない。一般の通話の最大電力はこの平均電力よりも18.6 dB 高い。(伝送システム、p245)

添付資料1 RMS 電力平均化の時間と瞬時電力変動

23

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2

添付資料 2

文献[1]による過負荷レベルとピークファクタ

Fig. 4 において、1~2 通話路及び 64 通話路以上において、カーブが平坦となることに関して、

文献 2 には次のように記載されている。

1938 年に行われたホルブルックとディクソンの実験によれば、音声ピークが真空管増幅

器の過負荷点を 1%超えてもシステムの品質は劣化しないことが示されている。各増幅器の

変動を考慮して、過負荷基準は伝統的に 0.001%の時間だけ基準レベルを超えてもよいと定

められている。ホルブルックとディクソンは実験により、この基準に近づけば等しい通話

レベルの 2 人の通話のピークファクタは単一の通話のそれと大体等しいことを確認してい

る。多数の通話に対するピークファクタは通話の数が増えるにつれて減る傾向にあり、N

が 64より大きくなればランダム雑音の特性に近づいていく。 (伝送システム p247)

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添付資料 3 音声とデータ信号の合成に関するベル電話研究所資料 [2]

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1

添付資料 4 主な計算プログラムとプログラム例

図表名 プログラム番号 ワークシート列番号 備考

図 6 4 通話路までの合成計算結果

1ch の累積カーブ

4ch の累積カーブ

V02M1W1 V02M2W2

B、D K、L

図 8 正弦波の合成密度分布 S01W3 B、C、E、F 図 6、 図 7 音声 4 通話路の合成密度分布 V02M1W1 M 図 13 64QAM の信号点電力密度分布 D01M1W1 F 図 16 OFDM信号の 4 波合成振幅密度分布 D01M2W2 N~R 図 17 全信号の合成 E/U 比密度分布 VSD03M3W3 C, D 図 18 信号別合成 E/U 比及び全合成 E/U

比の累積分布 音声全波密度 正弦波全波密度 ディジタル信号全波密度 音声半波累積分布 正弦波半波累積分布 ディジタル信号半波累積分布 全信号半波累積分布

V02M1W1 S01M2W2 D01M2W2 V02M1W1 S01M2W2 D01M2W2 VSD03M3W3

M N N~R K、L K、L N、R C、D

表1 近似式適用表

近似曲線

分布データの作成

V01W1 V01M1W2

表 2 4 通話路の平均と分散 VSD03M1 表 6 信号点電力の確率分布 D01M1W1 表 7 信号点の電力、E/U 比、確率密度 D01M1W1 K 表 8 ディジタル信号の合成計算の確認 D01M2W2 Option Explicit Sub Convolution() Dim ZT(100000), F(100000), G2(100000) , G1(100000), G4(100000), dffx(100000) As Single Dim ZT2, z2, z3, X, Fx, Y, BT, df,, K1, K2, K3, K4, M1, M2, M3 As Single Dim dFx(100000), dFy(100000), FFx(100000) As Single Dim I1, I2, Z, XX As Integer '音声波 EU 比の合成 Worksheets(1).Activate Range("D1:M100000") = "" For I1 = -8000 To 8000 ‘変数(-8~+8) I2 = I1 / 1000 Cells(I1 + 8001, 2) = I2 Next I1 For I1 = 1 To 8000 '累積分布プラス側 G1(I1) = Cells(I1, 3) 'C 列のデータは V01W2L 列より取得

Next I1 For I1 = -8000 To 0 '両波累積分布の生成

計算プログラム例 1 音声波の 2~4 ch 合成 〔V02M1W1〕

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2

X = Abs(I1) Cells(I1 + 8001, 4) = G1(X) 'マイナス側 D 列

Next I1 For I1 = 8001 To 16000 Cells(I1, 4) = G1(I1 - 8000) 'プラス側 D 列 Next I1 For I1 = 1 To 16001 G2(I1) = Cells(I1, 4) '両波読み込み Next I1 For I1 = 1 To 8000 dFx(I1) = G2(I1) - G2(I1 - 1) '両波密度分布生成 Cells(I1, 5) = dFx(I1) Next I1 For I1 = 8001 To 16000 '両波密度分布生成(プラス側) dFx(I1) = G2(I1) - G2(I1 + 1) '全体の密度分布(2 倍)

Next I1 Cells(15999, 5) = 0.00000375 Cells(16000, 5) = 0.00000375 For I1 = 1 To 16000 '全体の密度分布 dffx(I1) = dFx(I1) / 2 '全体を 2 で割る。

Cells(I1, 5) = dffx(I1) Next I1 For I1 = 1 To 16000 ' 平均と分散 X = -8 + I1 / 1000 M1 = M1 + X * dffx(I1) K1 = K1 + X * X * dffx(I1) Next I1 For I1 = 1 To 16000 '全体の累積分布 Fx = Fx + dffx(I1) '全体を 2 で割る。 FFx(I1) = Fx '全体の累積分布 Cells(I1, 6) = Fx

Next I1 '############### 2 ch ##################### For Z = 1 To 32000 For XX = 1 To 16000 If Z <= XX Then GoTo BBB BT = BT + dffx(Z - XX) * dffx(XX) BBB: Next XX ZT2 = ZT2 + BT ZT(Z) = BT '2ch 密度 Cells(Z, 9) = ZT2 '2ch 累積値 BT = 0 Next Z For I1 = 1 To 32000 '分散、平均値 X = -16 + I1 / 1000

K2 = K2 + X * X * ZT(I1) M2 = M2 + X * ZT(I1) Next I1 ‘############ 4 ch ################ BT = 0 For Z = 1 To 64000 For XX = 1 To 32000 If Z <= XX Then GoTo CCC BT = BT + ZT(Z - XX) * ZT(XX) CCC: Next XX G4(Z) = BT z2 = z2 + BT '4 ch 密度分布 Cells(Z, 10) = z2 '4ch 累積分布 J 列 Cells(Z, 13) = BT '4ch の密度分布 M 列 BT = 0 Next Z '================================ For I1 = 1 To 32000 '半波を 2 倍する。 z3 = Cells(I1, 10) z3 = z3 * 2 Cells(I1, 11) = z3 'K 列 Cells(I1, 12) = (I1 - 32000) / 2 / 1000 '4波の変数 ' Next I1 For I1 = 1 To 64000 '分散、平均値 X = -32 + I1 / 1000 K3 = K3 + X * X * G4(I1) '分散=4.005 M3 = M3 + X * G4(I1) '平均=0.002 Next I1 Stop End Sub

27

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3

Option Explicit Sub Convolution2() Dim ZT(100000), ZZT(100000), F(100000), FFx(100000), S1(100000), S2(100000), S3(100000) As Single Dim ZT2, Z2, Z3, Z4, X, fx, Y, BT, df, a, B1, S4(100000) As Single Dim dFx(100000), A1, A2, A3, M1, M2, M3, M4, M5, M6, k, K1, K2, K3, K4, K5, K6, K7 As Single Dim Pi, Z1, F2, F3, ZT3, Z5 As Single Dim I, I2, Z, XX As Integer '4 波と 8 波の正弦波の EU 比の分布を作る Worksheets(2).Activate Range("C1:M100000") = "" Pi = 3.14159 Worksheets(1).Activate 'シート 1 の密度分布を移す For I = 5656 To 0 Step -1 S1(I) = Cells(I + 1, 7) 'シート 1 の G 列より Next I Worksheets(2).Activate 'B 列に 2 波の密度を移す For I = 5656 To 0 Step -1 Cells(I + 1, 2) = S1(I) Next I ‘'############ 4 波の正弦波の合成 ############## For Z = 1 To 11312 '1414×8=11312 For XX = 1 To 5656 If Z <= XX Then GoTo AAA BT = BT + S1(Z - XX) * S1(XX) AAA: Next XX Cells(Z, 3) = (5656 - Z) / 1000 ' 4 波の変数/1000 S2(Z) = BT '4 波の密度 Z4 = Z4 + BT FFx(Z) = Z4 '4 波の累積 Cells(Z, 4) = Z4 Cells(Z, 5) = BT BT = 0 Next Z '======================================== '分散、平均、2 波の変数 For I = 1 To 11312 X = -5.656 + I / 1000 M4 = M4 + X * S2(I) K4 = K4 + X * X * S2(I) Next I For I = 1 To 5656 '正の半波の累積分布 Cells(I, 6) = Cells(I, 4) * 2 Next I

計算プログラム例 2 正弦波の 4~8 波合成 〔S01M2W2〕

For I = 1 To 5656 '半波の E/U 比の分布 Cells(I, 7) = (5657 - I) / 2 / 1000 Next I '’######## 8 波の正弦波の合成 ############# BT = 0 For Z = 1 To 22624 '1414×8×2=22624 For XX = 1 To 11312 If Z <= XX Then GoTo BBB BT = BT + S2(Z - XX) * S2(XX) BBB: Next XX Cells(Z, 9) = (11312 - Z) / 1000 ' 8 波の変数/1000 S3(Z) = BT '8 波の密度 Z5 = Z5 + BT ZT(Z) = Z5 '8 波の累積 Cells(Z, 10) = Z5 Cells(Z, 14) = BT '8 波の密度 N 列 BT = 0 Next Z '=================================== '分散、平均、8 波の変数 For I = 1 To 22624 X = -11.312 + I / 1000 M5 = M5 + X * S3(I) '=0.147 K5 = K5 + X * X * S3(I) '=7.96 Next I For I = 1 To 11312 '正の半波の累積分布 Cells(I, 11) = Cells(I, 10) * 2 Next I M6 = 0 For I = 1 To 11312 '半波の E/U 比の変数 Cells(I, 12) = (11313 - I) / 2.828 / 1000 X = (11313 - I) / 2.828 / 1000 'L 列 Cells(I, 13) = Cells(I, 14) * 2 '半波の密度 K6 = K6 + X * X * Cells(I, 13) Next I Stop End Sub

28

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4

Option Explicit Sub qam2() Dim I, X, Z As Integer Dim X1, X2, X3, d, Fd, FFd(1000), fx1(10000), f2x(100000) As Single Dim BT, f3x(100000), ACC, ACC2, ACC3, M1, M2, M3, K1, K2, K3, K4 As Single Worksheets(1).Activate 'Range("G1:L1000") = "" For I = 1 To 3061 X = I - 1531 Cells(I, 7) = X '信号点電力変数±1530 Next I For I = 1 To 3061 fx1(I) = Cells(I, 8) 'H 列(手動入力) Next I For I = 1 To 3061 X = (I - 1531) / 1000 '1 信号の平均と分散 M1 = M1 + X * fx1(I) 'M1=2E-17 K1 = K1 + X * X * fx1(I) 'K1=1.003 Next I '############# 2 信号畳み込み ################ BT = 0 For I = 1 To 6121 For X = 1 To 3121 If I <= X Then GoTo BBB BT = BT + fx1(I - X) * fx1(X) BBB: Next X ACC = ACC + BT Cells(I, 9) = ACC '累積分布 I 列 Cells(I, 10) = BT '密度分布 J 列 f2x(I) = BT '密度分布 BT = 0 Next I '======================================== For I = 1 To 6121 '2 信号の平均と分散 X = (I - 3061) / 1000 M2 = M2 + X * f2x(I) '平均=-0.002 K2 = K2 + X * X * f2x(I) '分散=1.997 Next I '############# 4 信号畳み込み ################ BT = 0

計算プログラム例 3 ディジタル信号の合成 〔D01M1W1〕

For I = 1 To 12241 For X = 1 To 6121 If I <= X Then GoTo CCC BT = BT + f2x(I - X) * f2x(X) CCC: Next X ACC2 = ACC2 + BT Cells(I, 11) = ACC2 '累積分布 K 列 Cells(I, 12) = BT '密度分布 L 列 f3x(I) = BT '密度分布 BT = 0 Next I '====================================== For I = 1 To 12241 '4 信号の平均と分散 X = (I - 6121) / 1000 M3 = M3 + X * f3x(I) '平均=0.003 K3 = K3 + X * X * f3x(I) '分散=3.99 Next I '半波の分布%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% For I = 1 To 6121 X = I / 1000 / 2 '半波の変数√4 で割る Cells(6123 - I, 13) = Cells(I, 12) * 2 '半波の密度 Cells(I, 14) = X '半波の変数 N列 Next I For I = 1 To 6122 '正の半波の分散 X = I / 1000 / 2 '半波の変数 K4 = K4 + X * X * Cells(I, 13) '半波の分散 K4=1.002 Next I For I = 6122 To 1 Step -1 '逆から累積 ACC3 = ACC3 + Cells(I, 13) Cells(I, 15) = ACC3 Next I Stop End Sub

29

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1

本検討における信号の合成は全てi.i.d.変量の場合で、かつRMS電圧を1として計算したが、

任意の振幅を持つ信号の畳み込みを行う場合、確率変数の変数変換の問題に直面する。今回の検

討のように、1σ当たり 1000 分割の原則が保たれている場合はあまり問題とならないが、以下に

は一般的な合成を行う場合について記載する。

1.変数変換公式

確率変数 x の確率密度分布を )(xf 、その累積分布を )(xF とする。これを )(xy ϕ= の変数に

変換したときの確率分布 )(yg を求める。 y の累積分布を )(yG とすると、 )()( xFyG = となる

ので、次式が成立する。(合成関数の微分法を適用)

)(,)()()()( 1 yxdydxxf

dydx

dxxdF

dyydGyg −=⋅=⋅== ϕ

密度は負の値をとらないので、変数変換公式は通常次式で与えられる。

)(,)()( 1 yxdydxxfyg −== ϕ (1)

baxxy +== )(ϕ の場合は線形変換となる。

2. 密度分布が関数で与えられる場合(正弦波の例)

tax ωsin= の確率密度関数は次式で表される。(正弦確率分布)

)(,1)(22

axaxa

xf <<−−

(2)

tax ωsin= の E/U 比は、 ttaxxy ωωσσϕ sin2sin)/(/)( ==== となる。 xy 2= とし

て変数変換を行う。 2/yx = であるから、 2/1/ =dydx であり、

( )22,

21

2/1

12

12

)()()(22

<<−−

=−

⋅=== yyy

xfdydxxfyg

ππ (3)

式(3)は振幅が 2=a の正弦確率分布に等しい。したがって、正弦波の E/U 比の場合、変数変換

の手順を踏まなくても、式(2)の振幅a を 2 として計算すればよいことがわかる。

変数変換を行っても、∫∞

∞−= 1)( dyyg は維持されなければならない。微分項により 2/1 となる

が、 )(1 yx −= ϕ を代入することにより、打消しあって全確率=1が保たれる。

RMS 電圧が 1σ と 2σ の二つの E/U 比を合成する場合は次式の計算をする。

合成 E/U 比=2

22

12211

22

21

2211 ,2222

σσσσ

σσ

σσ+=+=

+

+U

Ux

Uxxx

(4)

参考資料5 確率変数の変数変換

30

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2

式(4)の計算をする場合、U

12σ 及び

U22σ

を振幅として、式(2)のa に代入すればよいことが

わかる。 3. 数値データに対する変数変換の問題(音声波の例)

音声波の瞬時電圧を )(tv とし、その E/U 比を σ/)(tvx = 、その密度分布を 1x 、 1σ とする。 二つの音声波、( 1x 、 1σ )と( 2x 、 2σ )の確率分布をそれぞれ )( 1xf 、 )( 2xf とすると、合成

E/U 比は次式となる。

22

21

2211

22

21

2211 , σσσσ

σσ

σσ+=+=

+

+ UU

xU

xxx (5)

1x の確率分布が、数値データとして )( 1xf として与えられている場合、式(5)の合成確率を求め

る場合、U

x11σ とU

x22σの確率分布を求める必要がある。たとえば 1

111 )( x

Uxy ⋅==

σϕ として 1y

の分布に変換しようとすると、 11

1 yUx ⋅=σ

、11

1

σU

dydx

= であるから変数変換は次式となる。

)(,)()( 11

111

1 yxxfUyg −== ϕσ

(6)

この場合、 )( 1xf が式(2)のような関数で与えられている場合は 1x に )( 11

1 yx −= ϕ を代入すれ

ばよいが、 )( 1xf が数値データとして与えられている場合、どうすればよいか、という問題が生

じる。ただし、i.i.d.変量の場合で、 121 == σσ の場合は、式(5)は 2

21

22

21

2211 xxxx +=

+

+

σσ

σσと

なり、分子を i.i.d.変量として )(*)( 21 xfxf (*は畳み込みを表す)として畳み込みを行った後、

変数を2

21 xx +として対応させればよい。( 121 == σσ でない場合は、1σ当たり 1000 ステップ

の関係が保たれない。) 式(5)の場合のようにあらかじめ U で割って変換してから畳み込む場合を事前変換というこ

とにすると、i.i.d.変量の場合は、畳み込みを行った後に変換することが可能であり、事後変換と

いうことができる。 正弦波の場合も、2 波以上を合成して結果が数値データとなった後は、数値データに対する変

数変換という問題が生じる。 変数変換を伴わない場合は、1σ当たりの分割数が一定である限り、i.i.d.変量でなくても問題

なく合成できる。( 1== sv σσ とした音声波と正弦波の合成など)

4.変数変換に伴う問題

変数変換を行っても、累積分布との関係では、 )()( xFyG = により解決できる場合が多いが、

31

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3

畳み込みを行う場合は注意を要する。 YXZ += の確率分布を畳込み積分で求める場合、X とY 4. 数値データに対する変数変換法

(1) 整数分の1の変数に変換の場合

線形変換 baxy += において、a の値が整数又は整数分の 1 の場合は比較的簡単に変換するこ

とができる。式(4-26) は次式となるが、本検討の場合、分母は 4484 =++=++ nml とな

り、偶然ではあるが分母が整数となる。

4...

222

∑∑∑∑∑∑∑∑∑ ++=

++

++=

++

++= n

dm

svn

dm

sv

dsv

ndd

mss

lvv

c

xxx

nml

xxx

nml

xxxx

σσσ

σσσ

の単位が異なったり、1σ 当たりの分

割数に変更が生じるような変換を行

うと、そのままでは畳み込みを行なう

ことができない。 累積分布の値を知るだけであれば

図 1 の①の横軸の値を、変換した変数

に変えればよいが、変換にともない

EXCEL の 1 ステップ当たりの変数に

変更が生じる。たとえば 0~1σ の信号

を 0~2σ に変換する場合、②のように

変数を 2 倍するのみでなく、累積分布

も変数に合わせて変更しなければな

らない。累積分布が数値データの場合

は、累積値は離散点に対応しているの

で、これを任意の変数に合わせて変更

するのは容易ではない。 図 1①の信号を 2 波畳み込むと③の信

号が得られ、変数は 0~2σ となり、1σ当たりの分割数も保たれるが、分布

が異なるので、これにより変数変換に

代えることはできない。 図 1 には、各累積分布の 20%値が

どのように変わるかを示している。 0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

0 σ

0

0

2

2

20 % 値

20 % 値

図 1 2σ×1 信号と(1+1)σ畳み込み信号の違い

① 1σ×1 信号

③ (1+1)σ

② 2σ×1 信号

σ

σ

1

20 % 値

(0) (2)

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(2) 整数倍の変数に変換する場合

分子の密度分布を )( vxf 、 )( sxf 、 )( dxf とす

ると、これらの変数を 4 で割ったものに対する確

率分布を求めることになる。たとえば、 4/vx の確

率 )4/( vxg を求める場合、図 2 に示すように、

EXCELの )( vxf の列のデータを上から4個ずつ取

り出して合計し、 )4/( vxg の列に 1 個ずつ移す。こ

れを順次繰り返す。変数の数は 1/4 となるが、密度

の合計は元のままに保たれる。 図 3 に事前変換プログラムの例を示す。B 列の

64000 個のデータを 4 個ずつ順次読出して合計し、

C 列に並べて、16000 個のデータを作る。 本文の式(4-26)について、事前変換と事後変換を

行って比較したが、同じ結果は同じになった。

'音声波 EU 比の事前変数変換プログラム

Worksheets(3).Activate 'B 列←4 ch の累積分布、W1、M 列より For I1 = 1 To 64000 '±32σ CT = CT + 1 A = A + Cells(I1, 2) If CT = 4 Then Cells(I1 / 4, 3) = A CT = 0: A = 0 End If Next I1

図 3 整数分の 1 の変数変換

図 4のような、x の累積分布 )(xF について、

1x 、 2x 、 3x …の間隔を保ったまま変数を n 倍

(n は整数)にすることを考える。 )()()( 1−−=∆ iii xFxFxF であり、 1−ix から

ix までの密度を表す。したがって、 nxF i /)(∆を 1−ix から ix まで均等に配分すれば、この間の

密度分布を得ることができる。

図 5 に変数を 4 倍に変換する場合のプログラ

ムを示す。図 2 のプログラムでは、累積分布か

ら変換累積分布を得るが、図 4 のプログラムで

は累積分布から変換された密度分布を得る。

0 1x 2x 3x

)( 1xF∆

)( 2xF∆

)( 3xF∆

累積分布 )(xF

n 分割

図 4 n 倍の変数に変換

)( vxf の列 )4/( vxg の列

図 2 整数分の 1 の場合の変数変換

'######## 整数倍に変換(4 倍)######### CT2 = 1 For I1 = 1 To 5655 '累積分布 X1 = Cells(I1, 5): X2 = Cells(I1 + 1, 5) dX1 = X2 - X1: dX2 = dX1 / 4 A = 0 For I2 = 1 To 4 CT2 = CT2 + 1 Cells(CT2, 8) = dX2 Next I2 dX2 = 0 Next I1

図 5 整数倍の変数変換

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(3) 任意の倍数に変換する場合

たとえば、変数を 2.6 倍に変換するよう

な場合は、上記の方法は使用できない。こ

の場合は上記の(2)の方法にて26倍の密度

分布を作り、これを累積分布に変換したの

ち、上記(1)の方法にて 1/10 に変換すれば、

整数の操作により2.6倍の変数に変換する

ことができる。 逆に 1/2.6 の変数に変換する場合は、

1/26 の変数に変換したのち、10 倍の変数

に変換すればよい。 図 6 のプログラムでは、1 波の正弦波の

密度分布を累積分布に変換し、これを 26倍した変数に変換したのち、1/10 に変換

して、結果的に 2.6 倍の変換を行ったもの

である。 2.6 倍に変換したものを 1/2.6に変換したとき、元の分布に戻ることを確

認している。 変数変換は、レベルの異なる信号を畳込

む場合に問題となるが、今回の検討でこの

可能性があるのは正弦波の場合である。し

かし、正弦波の確率分布は数式で与えられ

ているので、変数変換は容易であり、今回

の場合は、全体を通じて面倒な変数変換の

問題を避けることができる。

Worksheets(3).Activate Range("C1:K100000") = "" Pi = 3.141592 For I1 = 1 To 1999 '1 波の正弦波の分布 X = (I1 - 1000) / 1000 BT = 1 / Pi / Sqr(1 - X * X) / 1000 Cells(I1, 2) = BT 'D 列:密度分布 Z2 = Z2 + BT '累積分布 Cells(I1, 3) = Z2 Next I1 '########### 26 倍の密度分布 ############ CT2 = 1 For I1 = 1 To 1999 '累積分布 X1 = Cells(I1, 3): X2 = Cells(I1 + 1, 3) dX1 = X2 - X1 dX2 = dX1 / 26 Cells(I1, 7) = dX2 A = 0 For I2 = 1 To 26 CT2 = CT2 + 1 Cells(CT2, 4) = dX2 '密度分布 Next I2 dX2 = 0 Next I1 For I1 = 51950 To 52000 '端数調整 Cells(I1, 4) = 0.000273824 Next I1 '############ 26 倍の累積分布 ############ For I1 = 1 To 52000 Z3 = Z3 + Cells(I1, 4) Cells(I1, 5) = Z3 Next I1 '######### 整数分の 1 に変換(1/10) ######### A = 0: CT = 0 For I1 = 1 To 52000 '整数分の 1 の変換(累積分布) CT = CT + 1 A = Cells(I1, 5) If CT = 10 Then Cells(I1 / 10, 6) = A 'F 列 CT = 0: A = 0 End If Next I1 For I1 = 1 To 5200 '密度分布に変換 Cells(I1, 7) = Cells(I1 + 1, 6) - Cells(I1, 6) Next I1 Cells(5200, 7) = 0 '終端調整

図 6 端数を伴う変換

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Ueda
タイプライターテキスト
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添付資料 6 音声 E/U 比の読取りと近似式の当てはめ

〔E/U 比 0~0.5 の読み取りと近似式の当てはめ〕

0625.00625.016

1−=

−= x

x II

x

インデックス 116 += xI x

近似式 675.0)( −= xIxF

実際の計算は、1σ当たり 1000 等分して計算するため、 1100016

+=xI x を媒介変数として近

似式を当てはめる。

0.622

0.5

0.4

0.31 0.354

0.267 0.246

0.224

1.0

0.5 9 0.227 0.4375 8 0.246 0.375 7 0.269 0.3125 6 0.298 0.25 5 0.337 0.1875 4 0.392 0.125 3 0.476 0.0625 2 0.626 0 1 1.0

変数(x) 横軸 Index(Ix) 累積確率 F(x)

ノギスを使って読み取った累積値

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Option Explicit Sub Ruiseki() Dim I1, I2 As Integer Dim dFx(10000), Tx, FFx(10000) As Single Dim FFC(10000) As Single Dim K1, Ix, X, Fx As Single Worksheets(2).Activate Range("D1:X1000000") = "" For I1 = 0 To 8000 '全体の変数 Cells(I1 + 1, 4) = I1 / 1000 Next I1 '############# (0~0.5σ)############## Ix = 1 For I1 = 0 To 500 Ix = Ix + 0.016 Fx = Ix ^ (-0.675) Cells(I1 + 1, 5) = Fx Cells(I1 + 1, 12) = Fx Next I1 '############# (0.5~1σ)############## Ix = 1 For I1 = 0 To 500 Ix = Ix + 0.008 Fx = 0.2269 * Ix ^ (-0.408) Cells(I1 + 1, 6) = Fx Cells(I1 + 1 + 500, 12) = Fx Next I1 '############# (1~2σ)############### Ix = 1 For I1 = 0 To 1000 Ix = Ix + 0.008 Fx = -0.0325 * Log(Ix) + 0.1177 Cells(I1 + 1, 7) = Fx Cells(I1 + 1000, 12) = Fx Next I1 '############ (2~4σ)############### Ix = 1 For I1 = 0 To 2000 Ix = Ix + 0.004 Fx = -0.014 * Log(Ix) + 0.0463 Cells(I1 + 1, 8) = Fx Cells(I1 + 2000, 12) = Fx Next I1 ############# (4~8σ)############### Ix = 1 For I1 = 1 To 4000 X = I1 / 1000 + 4 Fx = -0.003625 * X + 0.03 Cells(I1, 9) = Fx Cells(I1 + 4000, 12) = Fx Next I1

''############# (補正)################# For I1 = 1 To 8000 FFx(I1) = Cells(I1, 12) Tx = FFx(1) '仮集計値 Tx=0.98934 Next I1 For I1 = 1 To 8000 FFC(I1) = FFx(I1) / Tx '補正 Cells(I1, 13) = FFC(I1) Next I1 '############# (分散)################ For I1 = 1 To 8000 X = I1 / 1000 dFx(I1) = FFC(I1) - FFC(I1 + 1) '密度 dF(x) K1 = K1 + X * X * dFx(I1) Cells(I1, 14) = dFx(I1) Next I1 Cells(15, 3) = K1 End Sub 〔±8σの累積分布作成 V02M1W1〕

'音声累積分布の読み込み For I1 = 1 To 8000 'プラス側 G1(I1) = Cells(I1, 3) 'データは V01W2、L 列より取得 Next I1 '両波累積分布の生成 For I1 = -8000 To 0 X = Abs(I1) Cells(I1 + 8001, 4) = G1(X) 'マイナス側 'D 列 Next I1 For I1 = 8001 To 16000 Cells(I1, 4) = G1(I1 - 8000) 'プラス側 'D 列 Next I1 For I1 = 1 To 16000 '全体の密度分布 dffx(I1) = dFx(I1) / 2 '全体を 2 で割る。 Cells(I1, 5) = dffx(I1) Next I1 '平均と分散 For I1 = 1 To 16000 X = -8 + I1 / 1000 M1 = M1 + X * dffx(I1) '平均=0.0005 K1 = K1 + X * X * dffx(I1) '分散=1.034 Next I1

近似式の当てはめプログラム V01M1W1

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