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日本外科代謝栄養学会周術期管理ワーキングループ 手術患者に対する ESSENSE プロトコールによる周術期管理 多施設共同前向き臨床試験 概要

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日本外科代謝栄養学会周術期管理ワーキングループ

手術患者に対する ESSENSE プロトコールによる周術期管理

多施設共同前向き臨床試験

概要

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研究背景:北欧から発信された ERAS(Enhanced Recovery After Surgery)protocol は、結

腸癌手術における周術期管理を論文化された諸策の組み合わせで、従来の慣習による周術期管理より

も早い回復を実現した。この ERAS の導入にて我が国の周術期管理も変化を遂げてきているが、その

誤った導入にて悪影響を及ぼすことも懸念されている。より深く ERAS を理解し、より満足度の高い

治療効果、身体的回復促進を得られるには工夫が必要である。

研究目的:ESSENSE4項目*を意識した周術期管理体制が、本当に術後患者の身体的回復を促進す

るか否かを検証する。

*ESSENSE4項目: ①侵襲反応の軽減

②身体活動性の早期自立

③栄養摂取の早期自立

④周術期不安軽減と回復意欲の励起

対象施設(対象患者):①食道切除、②胃全摘および胃切除、③大腸および直腸切除、④肝切除、

⑤膵頭十二指腸切除など、一施設で年間約 30 例以上の同一カテゴリーの手術がある施設の症例を対

象とする。

●除外基準・・・以下の患者はこの試験としての正当な評価ができないので対象患者には含

めない

①何らかの理由で日記記載不能

②歩行不可能

③術前に消化管狭窄のために経口摂取不可能

研究方法:研究は下記項目の介入効果を検証するが、一定期間、各施設での従来の管理方法を継続

した患者(対照群)の身体的回復や満足度調査を行う対照期間の後、介入として新たな管理を行った

患者(コホート群)に同様項目の評価を行う前向きコホート研究とする。

研究期間は合計1年間とし、そのうち前半の6ヶ月を対照期間、後半の6ヶ月を介入期間とする。

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介入事項:研究期間に下記推奨事項を全て取り入れた周術期管理を行う。

1. 絶食期間の短縮・・・①術前2時間までの清澄糖質水 400ml飲用

②術後第一病日からの経口摂取開始(少なくとも飲水開始*)

③毎日経口摂取量を記録(医師、看護師、管理栄養士等も参加してエッセ

ンス日記に記録)

2.早期離床の徹底・・・①術後第一病日の立位、歩行開始を確実に達成するプログラム策定

② 一日歩行歩数の記録(患者自身がエッセンス日記に記録)

3.術後鎮痛の徹底・・・上記1,2を促進するために十分な鎮痛を達成する。これを実現するため

には創痛を適切に評価する必要があり、そのために、目的指向性のある創

痛評価方法の Prince Henry Hospital Pain Scale を用いて患者自身が痛

みの程度をエッセンス日記に記入し、行動制限に対する痛みの関与を自覚

してもらう。

4.回復意欲の促進・・・エッセンス日記(患者-医療スタッフ相互記入式周術期回復記録)を患者、

外科系医師、麻酔科医師、看護師、管理栄養士、理学療法士等スタッフ間

情報共有のツールとして使用する。記入作業によって患者自身が自分の回

復度(裏返すと消耗度)を自覚し、またゴールを意識できるようになるこ

とを期待する。

*栄養摂取量や一日歩行歩数の評価としては個人差があるので、術前値を

比較として、術後に術前値の何%程度であるか、という観点で患者、スタ

ッフ間の設定目標とする。

評価項目(両期間共通):

① 血液生化学検査・・・術前(外来時)、術後3日目、1週間目、退院時と退院後1か月目

(下図のポイント)の採血(ALB, TLC, CRP, Na, T-Chol を含む血液生化学検査)

② 退院時患者満足度を含む回復度(QoR40)

③ 術後合併症数(Clavien-Dindo分類)

④ 術後在院日数

⑤ 退院後1か月以内の再入院数と再入院理由

⑥ 入院医療費

術前 術後3日目 術後7日目 退院時 退院後1か月

採血 〇 〇 〇 〇 〇

QoR40 〇

以上の項目を術式別に介入前と介入後で比較検討する。

Primary endpoint:満足を伴う身体的回復の促進

Secondary endpoint: 合併症数(減少)術後在院日数(短縮)、入院医療費(低減)

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試験期間:1年間。2014年 2月の JSPEN時に参加施設募集公開開始し、1ヶ月間の募集期間を

おいて、施設を確定したところで、趣旨説明の会を設定。その後、各施設での倫理委員会承認後、最

大3ヶ月以内に各施設のタイミングで研究(対照期間の評価記録)をスタートしてもらう。

研究成果の公表:研究成果は、に日本外科代謝栄養学会周術期管理ワーキンググループでまとめ、

国内外の学会、論文にて公表する。これらの公表に際しては、ワーキンググループメンバーの他、参

加施設として登録症例数の多い順番に施設代表者名を掲載する。

研究体制:日本外科代謝栄養学会周術期管理ワーキンググループ

連絡先事務局は学会事務局である春恒社内アドレス [email protected]

主な研究財源は学会会計より予算立てを行うが、歩数計、説明会への旅費等は各施設での調達とする

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付録説明)

●回復支援用エッセンス日記(患者-医療スタッフ相互記入式周術期回復記録):別紙参照

患者自身に自信の体力の衰えを認識させ、回復のために必要な条件を認識し、また身体の回

復状況を医療スタッフ間でも共有認識とさせるためのツール

毎日、患者に記入させることでの教育的効果と、スタッフにも記入させることで「情報」の提供が

患者の回復意欲励起には必要であることを意識させる

(参考:保田尚邦、他. 消化器癌外科治療のクリニカルパスにおける自己判断式退院の目標. 外科

65(4): 461-463. 2003.)

患者退院時には回復支援日記は病院側で回収。持ち帰り希望患者にはコピーを渡す。

歩数計は各施設で準備する。学会からの提供はない。

●創痛評価:Prince Henry Hospital pain scale

Pybus DA, Torda TA. Dose-effect relationships of extradural morphine. British Journal

of Anaesthesia 54:1259-1262, 1982.

0点:咳をして痛まない

1点:咳をすると痛むが、深呼吸では痛まない。

2点:深呼吸をすると痛むが安静にしていれば痛まない。

3点:多少安静時痛はあるが鎮痛薬は必要でない。

4点:安静時痛があり、鎮痛薬が必要である。

●改訂水飲みテスト(modified water swallow test : MWST)

方法:冷水 3mLを、嚥下してもらい、その嚥下機能を評価する。

改訂水飲みテスト(modified water swallow test : MWST)判定基準

1a:嚥下なし、むせなし、湿性嗄声 or呼吸変化あり

b:嚥下なし、むせあり

2 :嚥下あり、むせなし、呼吸変化あり

3a:嚥下あり、むせなし、湿性嗄声あり

b:嚥下あり、むせあり、湿性嗄声あり

c:嚥下あり、むせなし、湿性嗄声なし、

呼吸変化なし、口腔内残留あり

4 :嚥下あり、むせなし、湿性嗄声なし、呼吸変化なし

5 :嚥下あり、むせなし、湿性嗄声なし、呼吸変化なし

追加空嚥下が 30秒間以内で 2回可能

判定不能:口から出す、無反応

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●術後患者満足度評価 QOR40

Tanaka Y,et al Validation of the Japanese version of the quality of recovery score QoR-40. J Anesth.

25(4): 509-15, 2011.

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

日付: 年 月 日

患者さんへのアンケート (QoR-40)

お名前: 番号: 病院番号:

第1部

この 24時間に、あなたはどのように感じましたか?

(以下の質問に5段階でお答え下さい:1=最も悪い状態、5=最も良い状態)

例題:この 24 時間、いつも楽に呼吸ができていた場合は、以下のように、

「5 = いつもそうだった」に○をつけて下さい。

全く 少し たいてい ほとんど いつも

なかった そうだった そうだった そうだった そうだった

楽に呼吸ができた 1 2 3 4 5

全く 少し たいてい ほとんど いつも

なかった そうだった そうだった そうだった そうだった

快適さについて

楽に呼吸ができた 1 2 3 4 5

よく眠れた 1 2 3 4 5

おいしく食べられた 1 2 3 4 5

ゆったりできた 1 2 3 4 5

感情について

だいたいにおいて、

良い状態だと感じた 1 2 3 4 5

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落ち着いて取り乱さないで

いられた 1 2 3 4 5

くつろいだ気分だった 1 2 3 4 5

この 24時間に、あなたはどのように感じましたか?

(以下の質問に5段階でお答え下さい:1=最悪だった、5=最高だった)

全く 少し たいてい ほとんど いつも

なかった そうだった そうだった そうだった そうだった

身体的能力について

普通に話せた 1 2 3 4 5

洗顔や歯磨き、ひげ剃りができた 1 2 3 4 5

身だしなみを

整えることができた 1 2 3 4 5

字を書けた 1 2 3 4 5

ひとりでトイレにいけた 1 2 3 4 5

患者さんへの支援について

医者や看護婦などの医療従事者

と話して、気持ちを伝えられた

(病院で) 1 2 3 4 5

家族や友人と話して、

気持ちを伝えられた 1 2 3 4 5

医者が治療や精神面で

支えてくれた(病院で) 1 2 3 4 5

看護婦が治療や精神面で

支えてくれた(病院で) 1 2 3 4 5

H 家族や友人の支えがあった 1 2 3 4 5

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指示や助言を理解できた 1 2 3 4 5

第2部

この 24時間、以下のようなことがありましたか?

(以下の質問に5段階でお答え下さい:5=最も良い状態、1=最も悪い状態)

全く 少し たいてい ほとんど いつも

なかった そうだった そうだった そうだった そうだった

快適さについて

吐き気がした 5 4 3 2 1

吐いた 5 4 3 2 1

吐きそうになったが何も

出てこなかった 5 4 3 2 1

ゆったりできなかった 5 4 3 2 1

体がぶるっと震えたり、

ぴくぴく動いたりした 5 4 3 2 1

体が小刻みに震えた 5 4 3 2 1

ひどい寒気がした 5 4 3 2 1

めまいがした 5 4 3 2 1

感情について

悪い夢を見た 5 4 3 2 1

不安になった 5 4 3 2 1

腹が立った 5 4 3 2 1

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ゆううつになった 5 4 3 2 1

孤独を感じた 5 4 3 2 1

なかなか寝つけなかった 5 4 3 2 1

この 24時間、以下のようなことがありましたか?

(以下の質問に5段階でお答え下さい:5=最も良い状態、1=最も悪い状態)

全く 少し たいてい ほとんど いつも

なかった そうだった そうだった そうだった そうだった

患者さんへの支援について

とまどった 5 4 3 2 1

痛みについて

軽い痛みを感じた 5 4 3 2 1

激しい痛みを感じた 5 4 3 2 1

頭痛がした 5 4 3 2 1

筋肉が痛んだ 5 4 3 2 1

背中や腰が痛んだ 5 4 3 2 1

のどが痛んだ 5 4 3 2 1

口の中が痛んだ 5 4 3 2 1

ご協力ありがとうございました。

全ての質問に答えていただけたか、ご確認下さい。

ご質問がございましたら、 までご連絡下さい。

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参考:エッセンス日記(1ページ A5版サイズ、詳細は別ファイルにて配布)

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手術患者に対する

ESSENSE プロトコールによる

周術期管理臨床試験について

- 説明・同意文書 -

この冊子は、手術を受けられる患者さんを対象とした、手術前後での管理方法に関

する臨床試験についての説明文書および同意書です。あなたがこの臨床試験に参加

するかどうかを判断するための医師の説明を補うものです。内容についてわからな

いことや心配なことがありましたら、遠慮なく担当医師や臨床試験コーディネータ

ーにお尋ねください。

よくお読み下さい

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目 次

1.説明文書について

2.臨床試験について

3.あなたの病気と治療について

4.臨床試験の目的

5.ESSENSE(エッセンス)プロトコールについて

6.臨床試験の方法

7.臨床試験への参加予定期間と参加していただく人数

8.本臨床試験への参加によってあなたが受ける利益

9.予測される不利益および副作用について

10.有害事象が起こったときの治療について

11.自由意思による臨床試験への参加といつでも同意の撤回ができること

12.臨床試験に参加しない場合の治療

13.臨床試験の参加後の中止について

14.補償と治療について

15.新しい重要な情報が得られた場合

16.臨床試験の実施および施設における審査について

17.個人情報の保護について

18.臨床試験参加中の費用について

19.本臨床試験に参加されている間のお願い

20.担当医師の連絡先および病院の相談窓口

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1.説明文書について

この説明文書は、新たな周術期管理方法の効果や安全性を調べる治験「手術患者に対

する ESSENSE プロトコールによる周術期管理臨床試験」について説明したものです。

担当医師による説明を補い、あなたに治験の内容を理解していただくためにご用意しま

した。お読みになって、わからないことや疑問点などがありましたら、担当医師または

臨床研究コーディネーターに遠慮なくおたずねください。

2.臨床試験について

当院では、よりよい医療を提供するとともに、新しい治療法や診断法などを開発する

研究を行っています。そのような研究の中でも患者さんに参加していただいて、新薬や

新しい治療法の効果や安全性を調べる試験を「臨床試験」といいます。私たちが現在使

用している薬や治療法は、このような臨床試験によってその効果が確認されてきました。

これは臨床試験に参加していただいた患者さんのご協力のたまものであり、病気の治

療方法が進歩するためには不可欠のものです。

3.あなたの病気と治療について

あなたの病気( )は手術を要する状態であることがわかっています。

現在、この手術の周術期管理は、日本の各施設でそれぞれ最良と考えられる方法で行わ

れています。手術前後には、それぞれ絶食期間が設けられていたり、安静期間やベッド

から起き上がる時期についても、それぞれの施設の条件に応じて最善の配慮が為されて

います。

しかし最近では、より早期からの食事再開や、より早期からの安静解除が患者さんの

回復を促進するという論文が出てきております。

今回ご紹介するこの臨床試験も、外科手術に対するより安全で、より早く身体的に回

復するために効果的な管理法を開発するための研究の 1つとして計画されました。

4.臨床試験の目的

今回のご紹介する臨床試験の目的は、 新たに組み合わせられた後述の周術期管理方法

(ESSENSE プロトコール)が、比較的大きな手術を受けられる患者さんの身体的回復

に対してどのくらい効果があるかを確認するとともに、安全性についても確認すること

です。

5.ESSENSE(エッセンス)プロトコールについて

ESSENSE(エッセンス)プロトコールとは、日本外科代謝栄養学会が提案している

周術期管理方法で、患者さんの手術による身体機能低下を最小限に食い止め、より早く

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元気になられることを期待して考えられたものです。

この元になっているのは 2005年にヨーロッパで発表された ERAS(イーラス)プロ

トコールと呼ばれる周術期管理方法で、欧米の病院から発表された論文をまとめて分析

すると、このプロトコールを実施することで術後合併症を減らし、術後の在院日数を短

縮させる効果があったと言われています。

(ERAS は Enhanced Recovery After Surgery の頭文字をとった略称です)

具体的な ERAS(イーラス)プロトコールとしては、手術前の絶食期間を極力短くす

ること、手術直後から経口摂取を再開すること、手術後に醒めやすい麻酔薬を使用する

こと、早期からリハビリテーションを行なうこと、傷の痛みは極力とること、など22

項目が含まれています。これらが日本でも採用されてきていますが、より分かりやすく、

実施しやすい形で構成し直したのが ESSENSE(エッセンス)プロトコールです。

(ESSENSE は、Essential Strategy for Early Normalization after Surgery with

patient’s Excellent satisfaction の頭文字をとった略称です)

ESSENSE(エッセンス)としては、医療スタッフが意識すべき4つの項目(1.生

体侵襲反応の軽減、2.身体活動性の早期自立、3.栄養摂取の早期自立、4.周術期

不安軽減と回復意欲の励起)を定義し、具体的に行うこととしては、術前術後の絶飲食

期間の短縮と疼痛管理の徹底、早期離床の徹底、ESSENSE 日記の記載を規定していま

す。

6.臨床試験の方法

本試験に参加することにご同意いただけましたら、まず初めに決められた検査を行い、

今のお体の状態が本治験の参加に適しているかどうかを調べさせていただきます。同意

いただく前の検査で代用できる場合は、そちらの検査結果を治験のデータとして使わせ

ていただくこともあります。ただし、これらの検査結果によっては、治験に参加できな

い場合もありますので、その際はご了承ください。

1)対象となる患者さん

この臨床試験に参加できる条件は以下のとおりです。

(参加できる条件)

① 食道切除、胃切除、肝切除、膵頭十二指腸切除などの手術予定

② 手術前に飲水が可能

③ 日記の記載が可能

④ 手術前後で歩行が可能

2) 試験方法

この臨床試験は、同じ手術術式に関し、各施設ごとにこれまで行ってきた最良の管理

方法で行う「対照期間6か月」と、その後 ESSENSE(エッセンス)プロトコールを採

用した管理方法を行う「介入期間6か月」を比較して、その管理方法の良し悪しを比較

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評価するものです(前向きコホート研究と言います)。

このため、ある時期の一人の患者さんにはどちらか一方の管理方法しか行われません。

つまり同時期の隣の患者さんと自分の管理方法が異なるということはありません。

対照期間に入院された患者さんに関しては、これまでその施設で行われていた最良と

思われる管理が行われるだけで、退院の際に満足度アンケートにお答えいただくことだ

けが新たにご協力いただく内容となります。その他に評価項目としては、通常行われて

いる採血検査の結果を利用させていただいて体の回復度合いを比較検討させていただき

ます。

新たな管理法を検証するためには、「何に比べて、何がどのくらい良いのか、あるいは

悪いのか」を知る必要があるため、比較対象として「対照期間」が必要になります。

介入期間に入院された患者さんには、下記 ESSENSE プロトコールに則った管理が為

されます。

【ESSENSE(エッセンス)プロトコール】

1.手術直前2時間前までに 400mlの清澄糖質液を飲む。

2.術後は翌日から少なくとも水分の摂取、可能であれば固形食摂取をはじめる。食べ

ることのできた熱量を日記に記載する。

3.手術翌日には、ベッドわきに立てるようにし、歩行訓練を始める。一日に歩いた歩

数を日記に記載する。

4.術後の傷の痛みは、咳をすることが可能なくらいまで確実に鎮痛薬を使用する。一

日で感じた痛みを日記に記載する。

5.毎日、患者さん自身と、医療スタッフが協力して身体状況を日記(ESSENSE 日記)

に記載し、自分の身体機能の衰え、回復状況を確認し、回復までに自分がすべきことを

整理する。

退院時の満足度アンケートと通常通りの定期的採血検査を受けてもらうことになりま

す。

3)臨床試験中の検査内容およびスケジュール

臨床試験参加期間は、原則として全入院期間と退院後1か月目の外来受診までです。

試験期間中は、下記のスケジュール表に従って、定期的にあなたのお体の状態を調べさ

せていただきます。これは、安全性の確認とともに、管理法の効果を確認するためのも

のです。ただし、あなたのお体の状態により、変更となる場合もあります。その場合は、

担当医師の指示に従ってください。

* 採血は、1回に約 10㏄、合計5回で 50㏄採血します。

* 血液検査では、アルブミン、総リンパ球数、C反応性蛋白、総コレステロール、ナ

トリウム濃度の5項目が含まれているものとします。

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<臨床試験評価のスケジュール>

手術前 手術後3日目 手術後7日目 退院時 退院後1か月目

血液検査 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

満足度アンケート

7.臨床試験への参加予定期間と参加していただく人数

本試験は全国約 30施設で、各術式に関して約 100人の患者さんの参加を予定してい

ます。試験の予定期間は 2014 年 4月頃から 2015 年 3月頃までです。

8.本臨床試験への参加によってあなたが受ける利益

ESSENSE(エッセンス)プロトコールの元となっている ERAS(イーラス)プロトコ

ールでは、海外の報告として、その導入により結腸癌術後の在院日数が短くなり、術後

合併症も減少したと報告されています。

日本国内においては、ERAS(イーラス)プロトコールに関しての有用性の報告は、

学会発表としては数多く為されてきていますが、ESSENSE(エッセンス)プロトコー

ルとしてのデータはまだありません。

あなたが本試験に参加され、介入期間の周術期管理を受けられて、対照期間の周術期

管理よりも効果があった場合、術後の体力回復が早くなり、社会復帰が早くなる、など

の可能性があります。

また、あなたは本試験へ参加することにより、新しい治療法の確立に貢献することが

できます。

あなたが本試験に参加され、対照期間の周術期管理を受けた場合、特に新しい管理方

法を受けることはありませんが、いつもより不利益をこうむるような管理をされること

はなく、その施設での現状として最良の治療を受けることになりますのでご安心くださ

い。

9.予測される不利益および副作用について

本試験への参加による予測される不利益として、一般診療で行われる治療に比べ、ア

ンケートへの協力が必要になる、検査回数が増加する、などの可能性があげられます。

また、ESSENSE(エッセンス)プロトコールに懸念される有害事象として、早期の

経口摂取再開による誤嚥、早期の活動開始によるめまい、転倒などがあります。

これらは、飽くまで予想される有害事象であり、すべての患者さんにすべてあらわれ

るというわけではありません。

一方、ここにあげた以外の予測外の有害事象があらわれる可能性もあり、また、副作

用によっては重篤で生命を脅かす場合があることも否定はできません。

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10.有害事象が起こったときの治療について

周術期管理法の違いによる有害事象は、個人差が大きく、どのような人にどんな有害

事象が起こるかは人それぞれで、治療開始前に完全に予測することはできません。有害

事象が起こったときは、ESSENSE(エッセンス)プロトコールを一旦中止し、あるい

は症状をやわらげる治療を行う場合もあります。

体調がいつもと違うと感じられた場合には、適切な治療を行いますので担当医師にご

連絡ください。

11.自由意思による臨床試験への参加といつでも同意の撤回ができること

本試験に参加するかどうかは、あなたに決めていただくことであり、強制ではありま

せん。本試験に参加されない場合でも、そのことにより不利益を被ることはありません。

担当医師はあなたと病状に合った最適の治療を実施します。

また、本試験に参加いただいたあとでも、理由に関係なく、中止を希望する場合や継

続が難しい場合にはいつでもやめることができますので、担当医師にご相談ください。

試験を中止した場合も、その後は担当医師が最適の治療を実施します。

12.臨床試験に参加しない場合の治療

本試験に参加されない場合の治療法として、このプロトコールに規定されている内容

を行う必要はありませんが、各施設での最良と思われる管理を、担当医師があなたの病

気の程度やお体の状態に合わせて行います。

13.臨床試験参加後の中止について

本試験参加に同意をいただいた後でも、以下のような理由で試験を中止する場合があ

ります。

② あなたから中止の申し出があった場合

③ 試験の実施中に有害事象が強く出た場合

④ その他、担当医師が試験の中止が必要と判断した場合

中止時には、安全性の確認のため検査を行います。また、有害事象により試験を中止

した場合も、その副作用がなくなるまでお身体の状態を調べさせていただくことがあり

ますので、ご協力をお願いいたします。

なお、途中で試験を中止した場合でも、そこまでの記録は今後の周術期管理の研究に

役立つ貴重な資料となりますので、使用させてくださいますようお願いします。

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14.補償と治療について

本試験の参加中または終了後に、本試験に参加したことが原因となって、予測しなか

った重篤な副作用などの健康被害をあなたが受けた場合には、適切に対処いたします。

また、その健康被害に対して、補償を受けられることがあります。ただし、明らかに

本試験に関連がない原因により損害が発生した場合は、その限りではありません。

15.新しい重要な情報が得られた場合

あなたが本試験に参加されている間に、試験の内容に何か変更が生じた場合や、あな

たが本試験を続けられるかどうかの意思に影響する有害事象などに関する新しい情報が

得られた場合には、すみやかにお知らせいたします。その場合、試験を続けるかどうか

について、再度あなたの意思を確認させていただきます。

16.臨床試験の実施および施設における審査について

本試験は、試験の妥当性や方法について多くの専門医によって十分検討されています。

また、当院では、医師以外の委員および病院外の一般の方をメンバーに加えた試験審査

委員会により、本試験が科学的、倫理的に問題ないかどうかについて審査を受け、承認

を得ております。

17.個人情報の保護について

本試験を通じて得られたデータは、個人名が特定できない形で日本外科代謝栄養学会

への提出資料として使用させていただきます。当院の研究審査委員会が、あなたのカル

テや検査結果を拝見することがあります。あなたが試験参加同意書に署名されることに

よって、これらの行為についても了承したことになります。また、本試験から得られた

データを学会などで発表したり、論文として医学雑誌などに発表する場合があります。

いずれの場合も、お名前、住所、カルテ番号などが外部に伝わることはありません。

当院は、あなたの個人情報の保護には十分配慮し、法令を厳守いたしますのでご安心下

さい。

18.臨床試験参加中の費用について

あなたが臨床試験に参加している間の医療費は、特に試験に参加しない場合に比べて

増加するわけではありません。

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19.本臨床試験に参加されている間のお願い

本試験に参加される場合は、次のことを守ってください。

● 担当医師の指示にしたがって、定期的に来院してください。

ご都合が悪くなった場合には、なるべく早めにご連絡をお願いします。日程調整をい

たします。

● いつもと体調が違うと感じられた場合は、いつでも担当医師までご連絡ください。

● 住所や電話など連絡先が変更になる場合は、必ず担当医師までお知らせください。

20.担当医師の連絡先および病院の相談窓口

臨床試験について何か知りたいことや、何か心配なことがありましたら、担当医師にご

遠慮なくおたずね下さい。また、試験終了後の結果についてお知りになりたい方も担当

医師におたずね下さい。

<〇〇病院>

責任医師: 〇〇 〇〇(〇〇病院 〇〇科医師)

担当医師: 〇〇 〇〇(〇〇病院 〇〇科医師)

連絡先 :〒〇〇-〇〇〇〇 県 市

Tel: (代) Fax:

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臨床試験参加同意書

○○病院長 殿

【臨床試験名】手術患者に対する ESSENSE プロトコールによる周術期管理臨床試験

私は、上記試験について、説明文書を受け取った上で以下の説明を受け、よく理解しましたので、

試験に参加します。

1.説明文書について

2.臨床試験について

3.あなたの病気と治療について

4.試験の目的

5.試験内容について

6.試験の方法

7.試験への参加予定期間と参加していただく

人数

8.本治試験への参加によってあなたが受ける

利益について

9.予測される不利益および副作用について

10.副作用が起こったときの治療について

11.自由意思による試験への参加といつでも

同意の撤回ができること

12.試験に参加しない場合の治療

13.試験の参加後の中止について

14.補償と治療について

15.新しい重要な情報が得られた場合

16.試験の実施および施設における審査につ

いて

17.個人情報ーの保護について

18.試験参加中の費用について

19.本試験に参加されている間のお願い

20.担当医師の連絡先および病院の相談窓口

患者さんご自身でご記入ください 同意日: 年 月 日

氏名(署名):

*代諾者や立会人等の記載が必要な場合は適宜追加すること。なおその場合は被験者との続柄記載欄も

作成する。

医師 説明日: 年 月 日

医師署名:

協力者(補足説明を行った場合) 説明日: 年 月 日

協力者署名:

診療録保存用

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臨床試験参加同意書

○○病院長 殿

【臨床試験名】手術患者に対する ESSENSE プロトコールによる周術期管理臨床試験

私は、上記試験について、説明文書を受け取った上で以下の説明を受け、よく理解しましたので、

試験に参加します。

1.説明文書について

2.臨床試験について

3.あなたの病気と治療について

4.試験の目的

5.試験内容について

6.試験の方法

7.試験への参加予定期間と参加していただく

人数

8.本治試験への参加によってあなたが受ける

利益について

9.予測される不利益および副作用について

10.副作用が起こったときの治療について

11.自由意思による試験への参加といつでも

同意の撤回ができること

12.試験に参加しない場合の治療

13.試験の参加後の中止について

14.補償と治療について

15.新しい重要な情報が得られた場合

16.試験の実施および施設における審査につ

いて

17.個人情報ーの保護について

18.試験参加中の費用について

19.本試験に参加されている間のお願い

20.担当医師の連絡先および病院の相談窓口

患者さんご自身でご記入ください 同意日: 年 月 日

氏名(署名):

*代諾者や立会人等の記載が必要な場合は適宜追加すること。なおその場合は被験者との続柄記載欄も

作成する。

医師 説明日: 年 月 日

医師署名:

協力者(補足説明を行った場合) 説明日: 年 月 日

協力者署名:

<〇〇病院>臨床試験支援室用

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臨床試験参加同意書

○○病院長 殿

【臨床試験名】手術患者に対する ESSENSE プロトコールによる周術期管理臨床試験

私は、上記試験について、説明文書を受け取った上で以下の説明を受け、よく理解しましたので、

試験に参加します。

1.説明文書について

2.臨床試験について

3.あなたの病気と治療について

4.試験の目的

5.試験内容について

6.試験の方法

7.試験への参加予定期間と参加していただく

人数

8.本治試験への参加によってあなたが受ける

利益について

9.予測される不利益および副作用について

10.副作用が起こったときの治療について

11.自由意思による試験への参加といつでも

同意の撤回ができること

12.試験に参加しない場合の治療

13.試験の参加後の中止について

14.補償と治療について

15.新しい重要な情報が得られた場合

16.試験の実施および施設における審査につ

いて

17.個人情報ーの保護について

18.試験参加中の費用について

19.本試験に参加されている間のお願い

20.担当医師の連絡先および病院の相談窓口

患者さん用

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患者さんご自身でご記入ください 同意日: 年 月 日

氏名(署名):

*代諾者や立会人等の記載が必要な場合は適宜追加すること。なおその場合は被験者との続

柄記載欄も作成する。

医師 説明日: 年 月 日

医師署名:

協力者(補足説明を行った場合) 説明日: 年 月 日

協力者署名:

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症例記録

施設 ID: 参加施設確認後番号賦与

患者 ID: 参加施設内 ID 性別: 男、 女 手術時年齢: 歳

身長: cm

術式名: (以下該当するものに〇、あるいは記入)

① 道切除、②胃全摘および胃切除、 ③結腸および直腸切除、 ④肝切除、

⑤膵頭十二指腸切除、 ⑥その他( )

術前飲食: 術前2時間前まで許可、不可

不可だった場合の理由( )

術後経口摂取再開日: 第一病日開始可 内容(飲水のみ、食事開始)、不可

不可だった場合の理由( )

術後離床時期: 第一病日の歩行可、不可→第( )病日から歩行開始

不可だった場合の理由( )

検査所見:

術前 3POD 7POD 退院時( )POD 退院後1か月

ALB (g/dl)

TLC (/μl)

CRP (mg/dl)

Na (mEq/l)

T-Chol (mg/dl)

体重 (Kg)

― ―

退院時 QoR40スコア:

第一部:快適さについて( )点、感情について( )点、身体的能力について( )

点、患者さんへの支援について( )点、

第二部:快適さについて( )点、感情について( )点、患者さんへの支援につい

て( )点、痛みについて( )点

退院日: 術後 第 ( )病日

入院医療費: ( )円

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術後合併症の有無と種類(Clavien-Dindo分類 ver 2.0):

無、 有 → 下記から該当するものを抽出し Grade を付記して下記欄に記入

脳卒中、反回神経麻痺、上腕知覚異常、切除部位の感覚異常(Phantom pain)、

虚血性心疾患、心嚢液貯留、徐脈性不整脈、上室性不整脈、心室性不整脈、

無気肺・喀痰排出障害、気管・気管支廔、肺廔、乳び胸、胸水、肺捻転、腹水、下痢、

嚥下障害、腸管廔、腸管虚血・壊死、胃管壊死、逆流性食道炎、麻痺性イレウス、膵液廔、

閉塞性イレウス、胃排出遅延、ダンピング症候群、胆汁廔、胆嚢炎、消化管縫合不全、

尿管損傷、尿道損傷、術後出血、Seroma(漿液貯留)、子宮膣吻合部漏出、

腹壁瘢痕ヘルニア、創し開、消化管吻合部狭窄、腹腔内膿瘍、骨盤内膿瘍、肺炎、縦隔炎、

膿胸、下肢リンパ管炎(リンパ腺感染)、感染性リンパのう胞(後腹膜膿瘍)、

感染性子宮頸管炎、子宮感染、卵巣感染、外陰部感染、創感染、インプラント感染、

膀胱損傷、尿失禁、残尿・尿閉、性交困難、勃起障害、頚管閉鎖(子宮閉鎖)、膣廔、

卵巣欠落症候群、頸部乳び漏、漿液漏、乳び腹水、皮下静脈炎(Mondor 氏病)、

血栓症・塞栓症、肩関節可動域制限、脂肪壊死、皮膚壊死(皮弁壊死)、皮下気腫、

上肢浮腫、下肢リンパ浮腫(四肢浮腫、リンパ浮腫、限局性浮腫)、

閉鎖・大腿神経障害(歩行障害)、創部疼痛、その他

それぞれの Grade I、II、IIIa、IIIb、IVa、IVb、V (資料参照)

1.合併症名 Grade ( )

2.合併症名 Grade ( )

3.合併症名 Grade ( )

4.合併症名 Grade ( )

5.合併症名 Grade ( )

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Q & A

Q1: 術前に飲ませる飲料はなにか指定はないのか?

A1: 特に指定はしませんが、糖質以外の脂肪や蛋白、アミノ酸等を含むものは

胃排出が遅れる危険もあるので注意を要します。

Q2: ERAS では鎮痛方法は硬膜外を推奨しているが、この研究ではどうなのか?

A2: 硬膜外を推奨はしますが、他を認めないわけではではありません。近年は

抗凝固薬内服患者も増えており、硬膜外を必須とするわけにはいかない状況で

すので、ivフェンタニルや NSAIDSをうまく利用していく必要があろうかと思

います。方法は何であれ、結果として活動可能な鎮痛状況を目指します。

Q3: 麻酔方法の指定はないのか?

A3: 厳格に規定はしませんが、硬膜外麻酔、レミフェンタニル、プロポフォー

ル、デスフルラン等を用いた侵襲反応を十分に抑制しつつ覚醒の速いものが望

ましいと考えています。

術中の換気法に関しては、一回換気量を 10-12ml/kg 群に比較して、6-8ml/kgの

lung protective ventilation群で術後の肺合併症が有意に減少し、術後在院日数も短

縮するという論文もありますので、推奨されるものと思われます。詳細については外

科と麻酔科の先生の間で十分にご相談ください。

(Fuitier E, Constantin JM,et.al. A Trial of Intraoperative Low-Tidal-Volume

Ventilation in Abdominal Surgery. NEJM 369; 428-437. 2013).

Q4: 食道手術や胃全摘手術など上部消化管手術後の場合、第一病日からの経口摂取は、

吻合部への負荷の観点で、かなりハードルが高いと思われるが、これは絶対か?

A4: 食道の場合などは粥食などに執刀医側の抵抗が大きい場合もあり得ると

認識しています。貴施設の縫合不全の頻度とも照らし合わせご検討ください。

ただし、絶飲食にすることで嚥下機能の低下を招くことも危惧されることから、

なんらかの経口的摂取、嚥下訓練は望ましいと考えています。水3mlによる改

訂水飲みテストという方法(付録資料)で嚥下の評価も兼ねながら、水の摂取

を行うことは、唾液嚥下程度の吻合部への負荷でもあり、許容できるのではな

いかと思います。

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Q5: 術前の飲水や、術後第一病日からの経口摂取や歩行などができなかった場合はどう

するのか?

A5: できなかった場合は、その旨を症例記録用紙(資料参照)にその理由と

ともに記入していただければ、のちに最終結果を判定する際の参考にします。

最終段階で、上記項目が可能だった患者さんとできなかった患者さんでの回復

状態の比較も可能かと思います。

Q6: 早期離床は理学療法士が介入する必要があるか?

A6: 病院の事情で不可能な場合もあろうかと思います。可能な範囲で看護師、

医師等の協力で行っていただければよいのではないかと思います。飽くまで介

入方法を規定するのでなく、患者状態の結果を規定する研究とお考えください。

Q7: 経口摂取カロリーの計算は面倒で、難しいが、管理栄養士が必ず介入しなければな

らないか?

A7: 毎日毎食、管理栄養士が計算することは難しいと思います。ただし、シ

ステム作りとして、術後食の熱量はどのくらいであるかをあらかじめ管理栄養

士と整理し、それを看護師、医師に伝えた上で、経口摂取量を概算することは

できるのではないかと思いますし、それをするという努力、(カロリー表の作

成等)がこの臨床研究で求めている部分でもありますので、是非ご施設の体制

として患者が食べている食事量を熱量として把握するシステム、そしてそれを

患者も熱量として把握する環境作りをご検討ください。

Q8: この研究への参加期間の周術期データは、他の学会、研究会への発表することは

できるのか?

A8: まったく同じ主旨の研究内容としての発表であれば、発表は研究事務局

からの集計作業、発表が終わるまでお控えいただきたいのですが、違う主旨で

のご発表であれば問題はないかと思います。いずれにしろ発表を企画する段階

で、事務局へご連絡いただければ大変ありがたく思います。

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Q9: 介入事項が不明瞭なままで効果を期待するのは臨床研究としてやりにくいが・・・

A9: ERAS のように介入事項を規定せず、評価項目に注目して患者状態の達

成指標を求めるこの研究は、とっつきにくいかもしれませんが、敢えて言うな

らば「達成すべき状態を評価指標として明確にした周術期管理体制を作り上げ

る」という「介入事項」の効果を見る研究と言えます。