C11-methionine PETの有用性 - Osaka Universitymedsci/MedSci-Sympo2015/...C11-methionine...

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難治性腫瘍に対する 新規がん免疫療法の医師主導治験と C11-methionine PETの有用性 千萬 1, 2 、種村 3 、片山一朗 3 下瀬川恵久 4 、畑澤 5 、金田安史 6 1 大阪大学医学部 附属病院未来医療センター、 2 同医学系研究科 呼吸器外科、 3 同情報統合医学皮膚科、 4 同 医薬分子イメージング学寄附講座、 5 同 核医学講座、 6 同 遺伝子治療学

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  • 難治性腫瘍に対する新規がん免疫療法の医師主導治験と

    C11-methionine PETの有用性

    李 千萬1, 2、種村 篤3、片山一朗3、下瀬川恵久4、畑澤 順5、金田安史6

    1 大阪大学医学部附属病院未来医療センター、2 同医学系研究科呼吸器外科、

    3同情報統合医学皮膚科、4 同医薬分子イメージング学寄附講座、

    5 同核医学講座、 6 同遺伝子治療学

  • 不活性化 HVJ-EHVJ

    HN

    F

    不活化センダイウイルス粒子:HVJ-E (Hemagglutinating virus of Japan Envelope)

    HVJ-Eの原材料であるHVJ(Hemagglutinating virus of Japan)は、

    パラミクソウイルス属のウイルスで、細胞融合を起こすため遺伝子導入ベクターとして開発された。

    ヒトに対しては病原性はない。

    HVJ-EはHVJを完全に不活化した粒子で、ヒトへの病原性は認めず、増殖能もない。

    自然免疫(NK細胞)と獲得免疫(細胞傷害性T細胞)を活性化する。制御性T細胞の機能を抑制し、活性化した抗腫瘍免疫を持続的に維持する作用を有する。

    癌細胞に直接作用し特異的な細胞死を誘導し、腫瘍抗原を免疫システムに提示させる作用を有する。

    Plasmid DNAや薬剤の封入が可能!

  • HVJ-Eは多彩な抗腫瘍作用を発揮する

    HVJ-E

    RNA断片

    IFN-

    IFN-, -

    抗腫瘍免疫活性化

    Natural killer

    (N K) 細胞

    細胞質内RNA受容体RIG-Iによる認識とMAVSの活性化

    転写因子:IRF1, 3, 7, etcの活性化

    癌細胞

    正常細胞

    Noxa TRAIL

    細胞死関連因子

    癌選択的細胞死誘導

    Ca-signal増強による癌細胞死誘導

    キラーT 細胞(CD8+ T cell)

    制御性T 細胞

    IL-6

    Lyn

    p50

    p65IB

    p50 p65

    P

    Receptor HVJ-E

    SykPKC

    AktIKK

    F0

    PI3K

    IL-18

    (Cancer Res. 2007, 2014,

    Clinical Cancer Res. 2012, 2013, Int. J. Cancer 2009, 2010, Mol. Ther.

    2014,

    Cancer Immunol. Immnother. 2008, etc.)

    (不活性化センダイウイルス粒子)

    癌細胞マクロファージ

    腫瘍組織

    HVJ-E

    樹状細胞

  • ヒト悪性黒色腫株 Mewo移植マウスでの治療効果

    0

    1000

    2000

    3000

    4000

    5000

    6000

    0 5 10 15 20 25 30

    day

    HVJ-E 200 mNAU

    HVJ-E 1000 mNAU

    PBS

    HVJ-E 1,000 mNAUの6回投与/2 weeks

    PBSHVJ-E 1,000 mNAU

    0

    .2

    .4

    .6

    .8

    1

    0 10 20 30 40 50 60 70days

    P

  • MSTO-H211 EHMES H2052

    胸膜中皮腫cell にはHVJ受容体(SPG, GD1a)が豊富に発現

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    10 20 30 40 50

    HVJ-E 初回腫瘍投与+ HVJ-E 皮下投与

    Control

    シスプラチン (5 mg/kg)

    Control vs HVJ-E p=0.046 、

    **Control vs シスプラチン p=0.126

    Time after tumor inoculation (day)

    Survival Rate

    *

    **

    HVJ-E(1,000 HAU)腫瘍内投与 (day 9)

    HVJ-E(1,000 HAU)皮下投与Biweekly

    ヒトMPM細胞担癌SCIDマウスに対するHVJ-Eの抗腫瘍効果

    (HVJ-E腫瘍内投与とbiweekly皮下投与)

  • HVJ-Eを用いた臨床研究; 治験 flow chart

    ScreeningCycle 1

    2 weeks 4 weeks observation

    Cycle 2

    腫瘍内投与6回 /2週間 3,000/10,000 x 2 cycle

    # 悪性黒色腫

    腫瘍内投与6回 /2週間 3,0000/60,000 mNAU(30,000 mNAUまで終了)

    42±7 42±7

  • 特有の症状はなく、レントゲンやCTでは肺を包み込む腫瘤や胸水の貯留として認められる。胸水により肺が圧迫され、呼吸困難になることもある。

    胸水産生量の増加と胸水吸収の低下による胸水貯留

    悪性胸膜中皮腫MPM: Malignant Pleural Mesothelioma

  • 化学療法抵抗MPMに対する医師主導治験 flow chart

    同意取得から4週間以内に治験薬投与開始

    Cycle 1

    休薬(2週間)

    安全性及び有効性の評価

    休薬(退院)(2週間)

    安全性及び有効性の評価

    投与(入院)(2週間)

    投与(2週間)

    Cycle 2

    GEN0101 腫瘍内投与

    GEN0101 皮下投与

    GEN0101 投与量 30,000/ 60,000 mNAU

    # 悪性胸膜中皮腫

    28±10

  • MPMの治療効果判定について MPMは特異的な伸展を示すため(胸膜に沿ってびまん性に浸潤)、固形癌の治療効果判定に用いられるRECIST: response evalu-ation criteria in solid tumoursではなく、Modified RECISTによって効果判定を行うが、測定値の妥当性が問題となる。

    Performance Statusの良好なMPM患者では、他の画像診断では効果判定が困難な症例が多い。→ PETを用いた評価が行い易い可能性がある。5 mm以上の胸膜肥厚では16/16でFDGの集積を認めた(Kuribayashi et al. )。

    化学療法を施行されたMPM 50症例のうち,CTによる効果判定にて,CT-SDであった38症例中PETによる効果判定で,PET-PR 9例,-SD 16例,-PD 13例の3群に層別化され,PET判定が予後不良群の検出に有用であることが示唆された(Kuribayashi et al. )。

  • 腫瘍は治療後に一旦体積が大きくなるが、その後の体積の低下に先行して、代謝が低下するので、FDGやMETの集積で、その代謝を捕らえることが可能となる。

    この代謝が低下したところをPETで早期に診断することで、他の画像診断での評価よりも早期に予後を予測することが可能となる。

    治療後早期に効果をPETを用いて評価することで、予後不良な疾患での次の治療を早期に開始することが可能となる。

    PETを用いた抗腫瘍効果評価の有用性について

  • 悪性腫瘍組織における糖代謝は正常組織よりも数倍〜数十倍亢進している。

    FDGは腫瘍細胞に77%、マクロファージや肉芽組織/マクロファージに23%集積した(Kubota R et al JNM 1992;33:1972-1980) 。

    炎症細胞(マクロファージや白血球など)は糖代謝が盛んなため、FDGは炎症にも集積する。リンパ節炎、齲歯や歯周炎、甲状腺炎、肺炎、関節リウマチ、結核などの肉芽腫、サルコイドーシス、手術創といった炎症性の病変にFDGは集積する。

    FDGにおける異常集積は、腫瘍・炎症の鑑別診断が難しく、がん治療後に炎症が残存することが多く、FDGによるがん治療の効果判定は慎重に行う必要がある。

    PETによる抗腫瘍療法の効果判定

  • 11C-methionine PETを用いた抗腫瘍効果評価の有用性について

    PETで測定されるMETの集積増加は悪性組織のアミノ酸輸送、メチル基転移反応、蛋白質合成の増加を反映しており、放射線治療後などの炎症に影響される事が少ない。

    MET uptake correlated better than FDG with tumor proliferative activity in squamous cell head and neck cancer cell lines. Minn H. et al. J NuclMed. 1995

    腫瘍特異的ではないが、壊死と再発の鑑別は行い易い。生理的集積は、耳下腺、肝臓、消化管、骨髄などに認められる。

    免疫治療の効果判定においては、FDG-PETに比較して特異性は高いと考えられる。

    HVJ-Eのmelanomaに対する治療において、治療前後の体積の変化は少ないが、腫瘍細胞が消失し、T細胞、マクロファージ、形質細胞などの炎症細胞に置換されていたため、炎症細胞への取り込みの多いFDG-PETに比較し、viable tumor cell の評価に有用であると期待される。

  • MPMのFDG-PET画像(診断)

  • MPMでのC11-methionine PETの有効性

    No uptake of FDG is visible at the site of the disease.

    PET CT scan obtained 10 minutes after the administration of 11C-labeled methionine. Abnormal tracer uptake is present in the left mediastinal pleura. The maximum standardized uptake value (SUVmax) was 4.3.

    Giovanni L. Ceresoli et al. N ENGL J MED Nov. 2007

  • Panel C shows scans obtained after the patient had undergonetwo cycles of chemotherapy with pemetrexed and carboplatin. On the PET CT scan, which was obtained 10 minutes after the administration of 11C-labeled methionine, the tracer uptake in the same area as that shown on the pretreatment scan is normal. Visual analysis was confirmed by a reduction in the SUVmax to 2.2.

  • 多彩な抗腫瘍作用を有する不活化センダイウイルス粒子(HVJ-E)を用いた(悪性黒色腫、前立腺癌、悪性胸膜中皮腫に対する)医師主導治験を実施中(開始予定含む)である。

    HVJ-Eは悪性黒色腫に対する治療において、腫瘍細胞の壊死,細胞死, 抗腫瘍性マクロファージやT細胞の浸潤を認め、非常に強い抗腫瘍効果を有していた。

    HVJ-Eは細胞融合能を有し、内部にPlasmid DNAや薬剤を封入することができるため、HVJ-E単体での抗腫瘍効果だけでなく、他の治療効果のadd-onが期待できる(IL-12 etc.)。

  • MPMは胸膜をび漫性に浸潤するため、胸壁もしくは縦隔面と直交する最も長い腫瘍径(厚み)を最長径としたModified RECISTで効果判定を行うが、厚みが殆どない場合、再現性と妥当性が問題となる。

    PETを用いたMetabolic responseによる効果判定は、MPMにおいてより詳細な効果判定を行える可能性がある。

    マクロファージや脳組織への集積が高いFDG-PETに比較し、C11-methionine PETは、診断ならびにがん免疫療法の効果判定に有用なtoolになると期待できる。