AIDS UPDATE JAPAN Vol.2, No.1 【地方版】 関東甲信越ブロック › kyoten › newsletter...

12
エイズ Update ジャパン Vol.2, No.1 【関東甲信越ブロック版】 2000/10 <17 ごあいさつ 厚生省エイズ対策研究事業 HIV感染症の医療体制に関する研究班 分担研究者 新潟大学 荒川正昭 HIV 感染症、AIDS の予防と治療については、国民レベルの啓 蒙活動の推進、医療専門職の知識と技術の向上、患者のより良 い QOL をめざして、国を挙げて取り組んでいますが、感染者、 患者とも増加しつづけています。一方、治療法の進歩もめざま しく、HAART が導入され、発症の遅延、症状の軽減、さらには 生存率の向上がみられ、我国のAIDS 対策も新しい局面を迎えて いるといえます。 関東甲信越ブロックでは、感染症、患者とも、全国の70% 以上を占めており、私達関係者の役割は極めて大きいものと思 います。私達は、新潟県内の5拠点病院と1専門窓口は勿論で すが、関東甲信越地域全体にわたって、研究会、連絡会議など を介して、情報の交換、ネットワークの強化、医療水準の向上 などをめざして勉強しています。 新潟大学医学部附属病院では、拠点病院に指名されて以来、 院内措置として感染症管理室を設置し、第二内科の感染症研究 グループに所属する医師、レジデント、看護婦、カウンセラー が、一致協力して、感染者と患者のケアとともに、ブロック内 の各県拠点病院との交流を行っています。 現在、私が最も気になっていますのは、次代を担う若者の行 動であります。いくつかの調査によりますと、若者の間にはSTD が広く拡がっている結果が報告されていますが、この事実は HIV 感染が若者に拡がる可能性も示しています。このことは、 単に若者の問題ではなく、中高年を含めた日本人全体の問題で もあり、医療関係者の努力の域を越えている社会問題でありま す。来世紀に向けて日本人として、国際人として如何に生きる か、一人一人が十分考えてほしいものです。 前回の厚生省研究班(吉崎先生)に引き継いで白阪先生をチ ーフとした研究班が発足しましたが、私達も班の一員として参 加させていただきました。ブロック拠点病院として、皆様の役 に立つよう勉強したいと思います。 私達は、関東甲信越ブロックの皆さんからのメッセージを待 っています。我国の HIV 感染,AIDS の予防と治療のため,率直 なご助言をお願いいたします。 Contents ◆ごあいさつ ◆第13回 国際エイズ会議参加報告 長野県大町保健所 内野英幸 ◆カウンセラーから見た HIV 診療上の問題点 大阪府エイズ専門相談員 古谷野淳子 ◆「外国人労働者とエイズ - 国際的な流れの中で 日本の役割は?」 港町診療所 澤田 貴志 ◆甲信越ブロック カウンセリング講習会報告 ◆おしらせ・編集後記 … 17 … 18 … 21 … 23 … 26 … 28 AIDS UPDATE JAPAN Vol.2, No.1 【地方版】 関東甲信越ブロック [関東甲信越ブロック編集責任者] 新潟大学医学部第二内科 塚田弘樹 E-mail: [email protected] - u.ac 〒951 -8520 新潟市旭町通1-754 TEL.025 -227 -0726, FAX.025 -227 -0727

Transcript of AIDS UPDATE JAPAN Vol.2, No.1 【地方版】 関東甲信越ブロック › kyoten › newsletter...

Page 1: AIDS UPDATE JAPAN Vol.2, No.1 【地方版】 関東甲信越ブロック › kyoten › newsletter › 200010... · 2000-11-13 · 教授の著書「Inventing The AIDS Virus」を私は

エイズ Update ジャパン Vol.2, No.1 【関東甲信越ブロック版】 2000/10

<17>

ごあいさつ

厚生省エイズ対策研究事業

HIV感染症の医療体制に関する研究班

分担研究者 新潟大学 荒川正昭

HIV 感染症、AIDS の予防と治療については、国民レベルの啓

蒙活動の推進、医療専門職の知識と技術の向上、患者のより良

い QOL をめざして、国を挙げて取り組んでいますが、感染者、

患者とも増加しつづけています。一方、治療法の進歩もめざま

しく、HAART が導入され、発症の遅延、症状の軽減、さらには

生存率の向上がみられ、我国の AIDS 対策も新しい局面を迎えて

いるといえます。

関東甲信越ブロックでは、感染症、患者とも、全国の70%

以上を占めており、私達関係者の役割は極めて大きいものと思

います。私達は、新潟県内の5拠点病院と1専門窓口は勿論で

すが、関東甲信越地域全体にわたって、研究会、連絡会議など

を介して、情報の交換、ネットワークの強化、医療水準の向上

などをめざして勉強しています。

新潟大学医学部附属病院では、拠点病院に指名されて以来、

院内措置として感染症管理室を設置し、第二内科の感染症研究

グループに所属する医師、レジデント、看護婦、カウンセラー

が、一致協力して、感染者と患者のケアとともに、ブロック内

の各県拠点病院との交流を行っています。

現在、私が最も気になっていますのは、次代を担う若者の行

動であります。いくつかの調査によりますと、若者の間には STD

が広く拡がっている結果が報告されていますが、この事実は

HIV 感染が若者に拡がる可能性も示しています。このことは、

単に若者の問題ではなく、中高年を含めた日本人全体の問題で

もあり、医療関係者の努力の域を越えている社会問題でありま

す。来世紀に向けて日本人として、国際人として如何に生きる

か、一人一人が十分考えてほしいものです。

前回の厚生省研究班(吉崎先生)に引き継いで白阪先生をチ

ーフとした研究班が発足しましたが、私達も班の一員として参

加させていただきました。ブロック拠点病院として、皆様の役

に立つよう勉強したいと思います。

私達は、関東甲信越ブロックの皆さんからのメッセージを待

っています。我国の HIV 感染,AIDS の予防と治療のため,率直

なご助言をお願いいたします。

Contents

◆ごあいさつ

◆第13回

国際エイズ会議参加報告 長野県大町保健所

内野英幸

◆カウンセラーから見た

HIV 診療上の問題点 大阪府エイズ専門相談員

古谷野淳子

◆「外国人労働者とエイズ

- 国際的な流れの中で

日本の役割は?」 港町診療所 澤田 貴志

◆甲信越ブロック

カウンセリング講習会報告

◆おしらせ・編集後記

… 17

… 18

… 21

… 23

… 26

… 28

AIDS UPDATE JAPAN Vol.2, No.1 【地方版】

関東甲信越ブロック

[関東甲信越ブロック編集責任者]

新潟大学医学部第二内科 塚田弘樹

E-mail: [email protected]

〒951-8520 新潟市旭町通1-754

TEL.025-227-0726, FAX.025-227-0727

Page 2: AIDS UPDATE JAPAN Vol.2, No.1 【地方版】 関東甲信越ブロック › kyoten › newsletter › 200010... · 2000-11-13 · 教授の著書「Inventing The AIDS Virus」を私は

エイズ Update ジャパン Vol.2, No.1 【関東甲信越ブロック版】 2000/10

<18>

私は、もともと産婦人科の臨床医でした。保健

所に入って癌予防や癌患者の自助グループづくり

が出来れば、と思い 1986 年に福岡市の保健所に就

職しました。丁度その時、全国で保健所の HIV 相

談・検査体制がスタートした頃でした。その後、

1990年に希望で長野県小諸保健所に異動すると来

日外国人の HIV/AIDS 問題に遭遇しました。公衆衛

生に転換の出鼻から HIV/AIDS の強烈な洗礼を受

けました。現在、厚生省「HIV 感染症の動向と予

防介入に関する社会疫学的研究」班に所属し「人

の性行動と HIV」をテーマに取り組んでいます。

1996年に小諸から人口希薄な過疎地の大町保健所

に転勤した当初、何から手を付けて良いか当惑し

ていました。漸く若者をターゲットに「望まない

妊娠・性感染症・HIV 予防」をテーマに学校と地

域をベースに取り組み始めたところです。

さて、私は、今年の7月9日から7月 14 日まで

南アフリカ・ダーバンで開催された第13回国際

エイズ会議に出席しました。その中で印象に残っ

た話題を報告し今後の皆様の活動に少しでも参考

になればと願っています。

1.はじめに

ダーバンでの国際エイズ会議の開催が近付くに

つれて、南アフリカの地元紙は、Mbeki 大統領が

エイズを引き起こす原因は HIV ではないとのカリ

フォールニア大学の Duesberg 教授の説を信じる

発言とそれを改めさせようとする 5000 人の科学

者の動きを連日報じていました。実は、Duesberg

教授の著書「Inventing The AIDS Virus」を私は

数年前に読んだことがありノンフィクションとし

ては面白いとの印象でした。が、HIV/AIDS に関す

る研究成果や新しい知見が時時刻刻と得られてい

る今日、寝耳に水の騒ぎだと思いました。

私は、今回の会議において、昨年の夏、厚生省

の研究班で実施した「日本人の HIV/AIDS 関連知識、

性行動、性意識についての全国調査」の結果のう

ち「コンドームの使用状況とその背景」について

ポスター発表を行いました。

本報告は、公衆衛生と地域活動に関連した発表

と会期中に配布された沢山の資料から主なテーマ

を選んでまとめました。今回の会議では先進国の

経済大国の発想からはついつい見落としがちな視

点にしばしば気付かされました。公衆衛生の原点

に戻って考える機会を得たように思います。また、

人口の2-3割が HIV 感染している大流行の国と

我が国の感染率 0.02%(WHO推定)の状況とで

は次元が違うと言えますが、予防対策を講じる上

でも費用-効果の点でも焼け石に水の如き悪循環

の大流行の地域から学ぶ点も大であると思ってい

ます。

2.Voluntary counseling

and testing

(VCT:HIV 自発検査とカウンセリング)

わが国の保健所における HIV 相談・検査体制の

あり方がいつも問題となっております。今回、「治

療法が使えなくとも HIV 検査に行くべきか」とい

うテーマで VCT の試みとその成果などが発表され

多くの関心を集めていました。また、UNAIDS から

VCT の意義やアクセス、対象別考察などをまとめ

第13回国際エイズ会議参加報告

— 公衆衛生と地域活動からの報告 —

長野県大町保健所 内野英幸

Page 3: AIDS UPDATE JAPAN Vol.2, No.1 【地方版】 関東甲信越ブロック › kyoten › newsletter › 200010... · 2000-11-13 · 教授の著書「Inventing The AIDS Virus」を私は

エイズ Update ジャパン Vol.2, No.1 【関東甲信越ブロック版】 2000/10

<19>

た冊子や HIV/AIDS Care,Support and Counseling

に関する 80 の論文が入った CD-ROM も提供されま

した。発表された国々において対象もまちまちで

HIV 検査陽性率も数%から 20%台と差が見られま

すが、VCT の重要な点として risk reduction(リ

スク低減)情報の提供と confidentiality(機密

保障)の 2 点を共通に挙げていました。また、今

なお多くの人が VCT を受けることに抵抗があり、

VCT が普及するには HIV 感染者への偏見や差別の

ない社会環境をつくることが不可欠であることを

強調していました。わが国の HIV 相談・検査にお

いても検査結果の陰性・陽性にかかわらず予防カ

ウンセリングが重要です。中央アフリカ共和国で

は陰性者に3ヵ月後にもう一度VCTを薦めており、

予防教育の評価を行う上でもわが国でも活用でき

るのではないでしょうか。

3.STDs の予防・治療と

HIV 感染との関連

STDs は、HIV 感染の感受性(susceptibility)

を高め、HIV 感染者の感染性(infectiousness)

も増加させる可能性があります。今回発表の一つ

は、CDC の Harrell W Chesson が STDs 予防介入で

新規 HIV 感染者の抑制をすることが費用-効果面

にどのように影響するかを調査していました。

Bernoulian Model を用い HIV 感染における STDs

の関与度を分析していました。HIV感染リスクは、

男性から女性が 0.001(0.0005-0.0015)、女性か

ら男性が 0.0006(0.0003-0.0009)、STDs がある

人は HIV の感染性を 2-5倍、あるいはそれ以上高

めるといわれています。1996 年におけるアメリカ

の新規 HIV 感染者は 40,000-80,000 人、梅毒罹患

者 42,000 人、淋病罹患者 650,000 人、クラミジア

罹患者 3,000,000 人、性器ヘルペス罹患者

1,000,000 人と推定。梅毒、淋病、クラミジア、

ヘルペスの4疾患に起因する新規 HIV 感染者発生

の割合は 6.3%-12%とのことです。STDs の1ケー

スによって引き起こされる新規 HIV 感染者発生数

は、梅毒 0.02836、淋病 0.00066、クラミジア

0.00108、ヘルペス 0.00037 と梅毒が最も高くなっ

ていました。以上のデータから STDs に起因する新

規 HIV 感染者を計算すると 5,052 人となり、内訳

は梅毒が 1002 人、淋病 430 人、クラミジア 3249

人、性器ヘルペス 371 人となっています。結論と

して HIV 感染者の一人あたりの生涯治療費(多剤

療法含む)を 20 万ドルと計算し 1996 年に STDs に

よって引き起こされた新規の HIV 感染者に対して、

控えめに見積もっても約 10 億ドルの出費が生ず

ると述べていました。

(関連文献:Journal of Acquired Immune Deficiency Syndrome,

24:48-56, 2000)。

もう一つはアメリカの Thomas Farley 等の報告

です。STDs が HIV 感染に拍車を掛けることは周知

の事実ですがアメリカでは HIV 感染を防ぐための

STDs 治療体制が十分に確立していません。そこで

HIV 感染リスクとされる non-ulcerative(非潰瘍

生)の細菌性 STDs が何故治療に結びつかないか

調査したとのこと。調査は 4地点で STDs の治療を

求めているわけではない 18 歳-29 歳、1566 人を

対象に淋病、クラミジア、HIV 検査を実施。検査

結果は、クラミジア陽性率 11%、淋病陽性率 2.2%、

HIV 陽性率 0.98%で性差はなく HIV 感染者の淋病

感染率は 13.3%(HIV 未感染者は 2.1%)と有意

に高くクラミジア感染率は HIV 感染の有無で差が

ありませんでした。

non-ulcerative の STDs が治療されない理由は、

症状がないか、あるいはあっても軽微か一過性で

あるからとのこと。淋病の 54%、クラミジアの

75%は症状もなく未治療の状況でした。特に淋病

Page 4: AIDS UPDATE JAPAN Vol.2, No.1 【地方版】 関東甲信越ブロック › kyoten › newsletter › 200010... · 2000-11-13 · 教授の著書「Inventing The AIDS Virus」を私は

エイズ Update ジャパン Vol.2, No.1 【関東甲信越ブロック版】 2000/10

<20>

が HIV 感染と強く結びついており、対策として流

行地域で治療目的のための淋病スクリーニングを

提案していました。

4.予防介入

Trend in The Epidemic のセッションで

は、ウガンダ における HIV 感染率の減少の背景を

ケニア及び ザンビアと比較した結果を発表して

いました。1991 年と 1998 年の妊婦(15歳-24 歳)

感染率の比較では、ウガンダは 21.1%から 9.7%

と有意に減少をきたしたが、他の2国は上昇また

は不変。そこでその違いを性行動の比較から見て

みるとウガンダにおいては過去1年間に特定相手

以外との性交経験率が 5.1%(他の 2国は 22.2%)

と低く、一方、不特定相手とのコンドーム使用率

は 11%(他の 2国は 45%)で逆に他の 2国が高く

なっていました。ウガンダにおける HIV 感染率の

低下は、コンドーム使用に関係なく性交渉の相手

を選ぶようになった結果とのこと。会場から質問

が相次ぎウガンダの sexual network(性的交流)

が特異なこと、コミュニティーの中で個人の情報

が共有されていること等が結果に影響したのでは

ないかとウガンダの特殊性が指摘されました。発

表者は、今回の研究結果によればウガンダでは人

と人との性的交流が流行拡大に重要な役割を果た

しているものと答えていました。sexual network

と流行拡大を考える上で参考になる報告です。

ポスター発表でナイジェリアの Ajuwon が学校

を出た仕立屋見習の思春期女性を対象にエイズの

知識とコンドーム使用における peer education

(仲間教育)の効果を介入群(123 人)とコント

ロール群(173 人)とで比較していました。ナイ

ジェリアは 1999 年、大人の HIV 感染率は 5.4%と

上昇を続けており特に学校教育を外れた思春期の

女性がもっとも HIV リスクにさらされていると指

摘。介入群では 43 人に peer education コース、3

日間の研修を実施。8 ヵ月後にエイズの知識、過

去 6 ヶ月間のコンドーム使用率、性的強要などを

再調査。コンドーム使用が介入群で 39%から 63%

(コントロール群は 21%から 28%)と有意に増加

し peer education が学校から外れた思春期の若者

に受け入れやすく safer sex の実践スキルとして

活用が望まれると結んでいました。

5.母乳保育と HIV 感染

今回の会議では「母乳と HIV 感染」に

関していろんな発表や資料が配られ注目を集めま

した。プレナリーセッションにおいて、HIV の母

子感染は妊娠中 25%、分娩時 50%、母乳保育時期

25%となっており、人工乳に変えられない発展途

上国の事情を指摘、HIV 感染リスクを出来るだけ

低くするような情報を母親に与え安全な授乳法を

具体的に自己決定できるカウンセリングが大切で

あると結論していました。

WHO/UNICEF/UNAIDS が作成した HIV and Infant

Feeding の冊子には、乳児の授乳と HIV に関して

詳細に記載されています。母乳保育による HIV 感

染リスクは 15%と見積もり、混合乳を与えた場合

にも人工乳を溶かす水を衛生的に取り扱わないと

却って児の腸粘膜を損傷し HIV 感染を高めるとの

こと。乳腺炎や乳頭の亀裂があると感染リスクが

高くなり、初乳と成乳との感染リスクの違いは不

明ということです。現状では母乳投与時期と乳児

の HIV 感染リスクに関して確立した科学的なデー

タは殆どなく母乳による感染機序もまだ十分には

究明されていません。母乳カウンセリングを確立

するためにもこれらに関する科学的データの集積

が望まれます。結論としては母乳とならざる状況

では児が 3 ヶ月から 6 ヶ月過ぎれば出来るだけ早

い時期に母乳を止め他の栄養法に変えていくこと

Page 5: AIDS UPDATE JAPAN Vol.2, No.1 【地方版】 関東甲信越ブロック › kyoten › newsletter › 200010... · 2000-11-13 · 教授の著書「Inventing The AIDS Virus」を私は

エイズ Update ジャパン Vol.2, No.1 【関東甲信越ブロック版】 2000/10

<21>

が実際的といえましょう。また、母乳を安全に与

え HIV 感染を下げる方法を確立することが望まれ

ます。

一方、わが国においては当然のごとく人工乳保

育となるでしょうが、児の免疫力や母とのスキン

シップ、母乳に対する思い入れなど考えると一概

に発展途上国の問題と割り切れない微妙な点もあ

ります。また、授乳中の母親の HIV 感染予防を啓

発する上でも母乳感染の問題は重要と考えます。

6.まとめ

私の発表した「日本人のコンドーム使用状況」

に関して参加者の反応はそれほど高くはありませ

んでした。日本では今のところ HIV/AIDS の流行は

ないと思われており、その予防に成果を収めたわ

けでもなく、諸外国の研究者や活動家には

HIV/AIDSに関して日本に興味を持つものが少ない

印象を持ちました。また、単なる実態データだけ

ではもはや通用しません。地域をベースとした介

入研究を行い人に役立つ具体的な研究成果を示さ

ないと評価されません。因みに、UNAIDS(国連合

同エイズ計画)から「Social marketing: An

effective tool in the global response to

HIV/AIDS」や「Sexual behavioral change for HIV」

(http://www.unaids.org)の冊子が出来ておりこ

れらを参考に新しい予防活動に着手する必要があ

ることを痛感しています。

なお、本会議出席にはエ

イズ予防財団の第13回国

際エイズ会議派遣事業の助

成を受けました。

以上

私は現在大阪府で派遣カウンセラーとして HIV

感染症の患者のカウンセリングを行っている。こ

のカウンセリングの目的を私は、HIV によっても

たらされた身体、心、生活における様々な変化に

患者が再適応するプロセスを心理社会的側面から

援助することと考えている。しかし、「HIV に適応

することは動く標的を狙うようなもの」と言われ

るように HIV をめぐる状況は変遷著しく、特にこ

の数年はどんどん変わっていく課題に、患者自身

も我々援助に携わる者たちもなんとか食いついて

きた、というのが振り返っての正直な思いである。

今回 HIV 診療上の問題点というテーマを与えられ

たので、カウンセラーの視点からこれまでと現状

を概観して述べてみたい。

1、カウンセリングに反映される HIV 診療体

制の問題点

カウンセリングの中に持ち込まれた HIV 診療体

制の問題点は歴史的に3段階の変遷を経ている。

第1段階は診療拒否、それによるたらいまわしな

ど「感染者に医療が提供されない」という問題で

ある。第 2 段階では感染者が患者として受け入れ

られたとしても、医療現場におけるプライバシー

保護の不備や、偏見・差別意識に基づいた対応に

よって「安心して医療を受けることができない」

という問題。これは患者の自尊心の低下や医療不

信にもつながった。そしてそれがクリアされた後

は「必要十分な医療が保証されているかどうか」

カウンセラーから見た

HIV 診療上の問題点

大阪府エイズ専門相談員

古谷野淳子

Page 6: AIDS UPDATE JAPAN Vol.2, No.1 【地方版】 関東甲信越ブロック › kyoten › newsletter › 200010... · 2000-11-13 · 教授の著書「Inventing The AIDS Virus」を私は

エイズ Update ジャパン Vol.2, No.1 【関東甲信越ブロック版】 2000/10

<22>

が第 3 段階の問題として浮上してくる。時々刻々

変わる治療指針や情報を踏まえているか、経験の

格差を埋める努力をしているか、科間連携ができ

ているか、患者の多様化による新しい課題に対応

しているか、といった治療の水準や質に関わる問

題に患者の関心は必然的に集まり、それに対する

疑問や不安がカウンセラーにもぶつけられるよう

になる。

例えば近畿地方という地域全体で見ると医療機

関により、またひとつの機関内でも診療科によっ

て、診療体制にばらつきがあるのが実情である。

十分に配慮された告知から始まり、安心して最善

の治療に乗ることができる人が多くなったのは確

かだが、その一方でいまだに拒否や嫌悪のメッセ

ージを医療者から受け取り、HIV 診療との出会い

が傷つき体験から始まる不運な例があるのも事実

である。これはその後の患者と医療、あるいは患

者と社会との関係構築を阻害しかねないできごと

であるにも関わらず、当の患者がそれに表立って

抗議することはなかなか難しい。拠点病院体制が

敷かれたことで、それ以外の医療機関が HIV に対

して無関心になったり、患者の人としての尊厳を

損なうような対応がどこかであっても放置される

ような事態になってはいないだろうか。専門機関

が整備されるのは喜ばしいことだが、同時に医療

全体が HIV 感染者を医療の対象として適切に処遇

する土台を持ってほしい。

2、インフォームドコンセントとチーム医療

次に個々の医療現場の日常的な診療場面に関し

て、日頃気になっていることを述べたい。それは、

インフォームドコンセントが適切に行われている

かどうか、それを支えるためにチーム医療がうま

く機能しているかどうか、という点である。

かつてウィルス量の検査が導入された時、その

目的や結果の意味が説明されなかったために、

「どこか悪化したから新しい検査をしたのだろう

か」という懸念を主治医に言えないまま 1 ヶ月間

胸中に不安を膨らませていた患者がいた。合併症

の検査結果の説明が不十分なために予後に対して

著しく悲観的になり、抑うつ状態に陥った患者も

いた。このように、必要な情報が要所要所で提供

されていれば患者が過度に動揺することもなかっ

たのに、と思われる例は多々ある。インフォーム

ドコンセントは、例えば HIV 抗体検査を行う時や、

治験に参加する時、手術前などの重大な場面にお

いてその必要性を議論されることが多い。しかし

日常の何気ない診療場面の中でも、新しく経験す

る検査や処置(とその際に行う感染対策)、投薬な

どに際して正確でわかりやすい説明があれば、患

者も納得して臨むことができる。診察場面で医師

や看護者に見せる態度以上に、ひとつひとつの検

査結果を重く受け止めている患者は決して少なく

ないと、カウンセリングを通じて感じている。

ここで更に、患者にとって脅威となる内容の事

実を告げなくてはならない場合や、患者に困難な

選択・決断を迫る場面でのインフォームドコンセ

ントについて考えたい。派遣カウンセラーとして

の仕事の中に保健所での抗体陽性の告知後カウン

セリングがある。その主たる役割は告知を受けた

人のショックや混乱など様々な反応を受けとめる

ことにあるが、そうしたカウンセラーが後ろに控

えているからこそ、初対面の来所者に落ち着いて

告知ができるのだ、と医師に言われたことがある。

一方医療機関では時折、様々な事情から病名未告

知であったために本人の治療への動機づけが得ら

れず、医療者-患者間の信頼関係も不確かなまま

両者が困惑しているような事例がある。このよう

な状況にカウンセラーが導入されるタイミングは

個々のケースによって異なるが、危機介入が常に

Page 7: AIDS UPDATE JAPAN Vol.2, No.1 【地方版】 関東甲信越ブロック › kyoten › newsletter › 200010... · 2000-11-13 · 教授の著書「Inventing The AIDS Virus」を私は

エイズ Update ジャパン Vol.2, No.1 【関東甲信越ブロック版】 2000/10

<23>

成功するとは限らない。事態が錯綜する前にもう

少し早くから関わることができれば、告知を困難

にしている要因を探り、その解決に向けて周辺状

況へのアプローチが可能であったかもしれないと

思うケースもある。

カウンセラーのみならず、ソーシャルワーカー、

薬剤師、栄養士などのパラメディカルの存在は、

医師が事実や判断を告げ、患者がそれを受け取り

応える、その連環とも言える診療のプロセスを異

なるタイミングで多方向から支えることができる。

それを端的に表すのが近年の抗ウィルス治療にお

ける、患者の服薬アドヒアランス維持への医療現

場の取り組みであろう。経済的な問題、生活実態、

性格、価値観、治療への動機づけなど様々な要因

を吟味しないまま、医師が HAART の効力を説

き、患者が「はい」と頷いたとしても現実に

服薬をきちんと継続できる可能性は乏しい。

インフォームドコンセントは、医師が実際に

患者にインフォームする前や後に、多方向からの

情報やサポートをもたらす他職種との連携によっ

て、より実効あるものとなると思われる。

しかし、こうしたチームとしての診療体制は言

うは易く実際は成り難きものであることを、派遣

という「外部者」の立場ではなおのこと実感して

いる。かと言って院内スタッフならばチームとし

てすぐにうまく機能できるかといえば、必ずしも

そうでもない。派遣カウンセラーとしてのわずか

数年の経験から敢えて言えば、最初の職種間の葛

藤や混乱は必然のプロセスと考え、とにかく事例

の難局に皆で呻吟し、長い経過を持ちこたえてい

く経験こそがチームを育んでくれるように思う。

HIV 診療はこのチーム医療への挑戦の絶好の機会

をもたらしてくれている。より多くの現場での実

践に期待している。

以上

現在、HIV感染者数が最も増加しているのは

アジアである。世界人口の 61%が集中するアジア

で感染の拡大に拍車がかかり、国際社会のエイズ

対策の焦点はアフリカからアジアに移っている。

中でも近年注目されて来ているのが、migrant(移

住労働者)をめぐる課題である。経済のグローバ

ル化が進む中で、国境を越えて外国で働く人口が

急増している。こうした人々は、情報へのアクセ

スがとぼしく基本的な医療を受

ける機会に恵まれず、HIVの感

染に最もさらされやすい立場に

有るとされている。

今年、9月 11 日から 13 日までマレーシアのク

アラルンプールで国連開発機構やNGOが音頭を

とってこの問題について対策を話し合う地域サミ

ットが開催された。サミットでは移住労働者を感

染の機会から守るために、各国が連携し出身国で

の十分な知識の提供と、就労している国での労働

条件や医療を受ける機会の保障が重要であること

が指摘された。

このサミットは日本

では殆ど報道されず社

会の関心も低かったが、

果たして日本には無関

係のことなのだろうか。

現在日本に在住する外国人の数は約180万人と

推定されるが、これは日本の全人口の約 1.5%に

「外国人労働者とエイズ

-国際的な流れの中で日本の役割は?」

港町診療所 澤田貴志

Page 8: AIDS UPDATE JAPAN Vol.2, No.1 【地方版】 関東甲信越ブロック › kyoten › newsletter › 200010... · 2000-11-13 · 教授の著書「Inventing The AIDS Virus」を私は

エイズ Update ジャパン Vol.2, No.1 【関東甲信越ブロック版】 2000/10

<24>

すぎない。一方で厚生省エイズサーベイランス委

員会に報告されたエイズ発病者の中で外国人が占

める割合は 1999 年までの合計で全報告者数の

27%(血液製剤による感染者を除く)である。こ

れは極めて高率である。

昨年5月に私たちは東

京HIV診療ネットワー

クと協力し、近畿~関東

の 14の拠点病院からよせ

られた 185 人の外国人感

染者について分析を行った。この結果、外国人感

染者の 87%を南アジア・東南アジア・アフリカ・

ラテンアメリカの開発途上国出身者であった。な

かでもタイ語圏及びスペイン・ポルトガル語圏の

出身者が多く全体の 59.4%を占める。この3群は

いずれも日本語も英語も不自由なケースが極めて

多く、通訳を介さなければ円滑なエイズ診療は不

可能に近い。また、62.3%が健康保険を所持して

おらず、この健康保険非所持者の間では医療への

受診が著しく遅れており、初診時のCD4が 50以

下のケースが 45%を占めた。

以上のことをまとめると、日本においてもアジ

アやラテンアメリカ・アフリカからの移住労働者

が感染し発病する率が極めて高く、こうした人々

の間では、言葉の障害や滞在資格の問題などによ

り情報の入り難さ、医療受診の困難さが深刻であ

ることがうかがわれる。サミットで話題となって

いる migrant(移住労働者)に対する対策は日本

でこそ重要なのである。

1999 年 4 月から施行された感染症予防法は、そ

の前文に人権の尊重と適切な医療の提供がしるさ

れている。このことは、現代社会における感染症

対策には、必要な医療を提供し感染者の意志を尊

重しながらすすめることが疾病のコントロールに

も最も効果的だと言う戦略的な知見に基づいてい

る。

特にHIVは困難な状況にある人々、社会の辺

縁に押しやられた人々がより危険にさらされやす

く、こうした人々への適切な支援が対策上不可欠

であることが明らかになっている。そこで、世界

的に性産業従事者や経静脈薬物使用者に対して、

その行為の是非を問わずに予防に必要な手段が提

供されている。同様のことは移住労働者にも必要

である。今回のサミットでは、合法的に働く契約

労働者であろうと、滞在資格を持たない資格外労

働者(エイズ対策に関る国際会議では不法就労者

という表現はしない)であろうと全ての移住労働

者に、エイズから身を守るための適切な情報と、

他の国民と同等の医療を受ける権利が保障される

べきであるとの論議がされた。この点については、

まだ充分な国際的なコンセンサスになっているわ

けではないが、今後この方向で論議が進んで行く

ことになるだろう。

日本で働く外国人労働者

のうち多数を占める超過滞

在者には国民健康保険の加

入が認められず、同等の医療

の提供は困難だと言う議論

がある。また、多くの外国人労働者がその出身国

に帰国後は抗レトロウイルス剤による治療を受け

られない現時点では、やみくもに同等の治療を始

める訳には行かないことも事実である。しかし、

ウィルスが社会的基盤の弱い人々を足掛りに広が

る以上、現在のように滞在資格のない外国人感染

者の半数近くがCD4が 50 をきるまで受診をで

Page 9: AIDS UPDATE JAPAN Vol.2, No.1 【地方版】 関東甲信越ブロック › kyoten › newsletter › 200010... · 2000-11-13 · 教授の著書「Inventing The AIDS Virus」を私は

エイズ Update ジャパン Vol.2, No.1 【関東甲信越ブロック版】 2000/10

<25>

きない状況では、感染症対策が成りたたないこと

も確かである。

一定期間に治癒させる治療法がな

く、感染力の弱いHIVに対して結核

と全く同等の公費負担制度を実施す

ることは現時点では実現困難であろう。しかし、

長期的なゴールとしては、結核と同様に全ての人

に最善の治療が提供されるように制度を整えるこ

とを念頭に考える必要があるだろう。また、当面

の対策として、まず現状でのより良い医療のモデ

ル作りを行い、それを可能とならしめる体制の整

備を急ぐべきであろう。

外国人が早期に受診できる環境を整えるために

は、まず、適切な通訳の育成と派遣のためのシス

テムの立ちあげが必要である。様々な社会的経済

的問題を抱えた外国人の状況を正確に聞きだし適

切な対策を考えるためには、経験をつんだ看護婦

やソーシャルワーカーが必要である。母国の文化

や医療事情の情報収集も必要であろう。

しかし、現状では外国人を積極的に診療し患者

数が増えれば、医療費未払いの事例が増え医療機

関の財政を圧迫する可能性が大である。こうした

状況下では広範な診療体制の確立は不可能である。

外国人自身に対する医

療費の支援ができなくて

も、外国人の診療によっ

て回収不能の未払いが出

てしまった場合に医療機関が一定の救済を受ける

制度が可能なはずである。東京・神奈川など一部

の自治体では、「行旅病人法」「外国人未払医療費

補填事業」といった形でこうした制度が機能をし

ている。先にあげた私たちの調査では、これらの

制度が機能している自治体にある病院の方

が、外国人感染者がCD4がより高いうち

に受診している傾向があることが示されて

いる。このことは、制度の存在により医療

機関側がより外国人がかかりやすい体制を

提供できている影響と考えることも出来る。現時

点では十分な情報がなく今後検証が必要であるが、

少なくともこのような現行制度で実施可能な対策

については、積極的に検討されることが望まれる。

特定の重点対象群に対す

る対策を充実させると言う

ことは、その集団への支援で

あるだけでなく、地域に住む

人口全体への対策としても重要である。感染者数

の増加にストップのかからない日本の全体状況の

なかで、外国人の問題は避けて通れないものであ

る。また、先の沖縄サミットで日本政府は感染症

対策への貢献を約束した。移住労働者に対する情

報や医療の提供がアジア全体で注目をあつめつつ

ある中で、国際的な貢献を果たして行くためにも

国内でより良いモデルを作ることが求められてい

る。

以上

Page 10: AIDS UPDATE JAPAN Vol.2, No.1 【地方版】 関東甲信越ブロック › kyoten › newsletter › 200010... · 2000-11-13 · 教授の著書「Inventing The AIDS Virus」を私は

エイズ Update ジャパン Vol.2, No.1 【関東甲信越ブロック版】 2000/10

<26>

昨年に引き続き新潟市で、荻窪病院 血液科カ

ウンセラー 小島賢一先生を講師に迎え「甲信越

HIV カウンセリング講習会(アドバンスコース)」

が開催されました。(「厚生科学研究費エイズ対策

研究事業 HIV感染症の医療体制に関する研究班」

と「新潟県」の共催)

今回は、アドバンスコースということで、昨年

行われた第一回目の講習会を受講した方が対象で、

日頃 HIV 診療に携わっている医師、看護婦、保健

婦、薬剤師、ケースワーカー、カウンセラーなど

18名が参加しました。

講習会の内容は、はじめに「HIV—最近一年の話

題から」と題し、抗 HIV 剤と副作用、検査関係ほ

か最近の HIV 関係の話題についてレクチャーを受

けました。その後、「外国人との通訳を通した会

話」と「妊産婦の抗体検査」に焦点を絞り、ロー

ルプレイを行いながら、カウンセリングのポイン

トを学習していきました。

参加者は、実際のロールプレイの中で、妊産婦

が抗体検査を受けるときの心の動きや外国人と通

訳を交えた会話の難しさを実体験し、今後、診療

に大いに役立つ有意義な講習会となりました。

[受講者アンケートより](回収数 14)

1.職業

ケースワーカー 4 名

助産婦 3 名

保健婦 4 名

薬剤師 2 名

医師 1 名

2.初級者コースは受講したか?

はい 11 名

いいえ 3 名

3.実務経験は?

あり 4 名

なし 10 名

4.カウンセリングを行なう上での問題点

経験不足 8 名

医師・看護婦等、他職との協力 8 名

プライバシーの確保 4 名

その他(医療者の偏見、人的資源)

5.他のどんな分野にカウンセリングが必要と思

うか

がん、神経難病等、難治性疾患を挙げたものが

多かったが、「疾患にかかわらずカウンセリング

は必要」と指摘する声も同数程度あった。

6.エイズ検査を受けやすいところはどこだと思

うか。

献血センター 6 名

甲信越 HIV

カウンセリング講習会報告

(アドバンスコース)

2000 年 9 月 9 日(土)・10 日(日)開催

Page 11: AIDS UPDATE JAPAN Vol.2, No.1 【地方版】 関東甲信越ブロック › kyoten › newsletter › 200010... · 2000-11-13 · 教授の著書「Inventing The AIDS Virus」を私は

エイズ Update ジャパン Vol.2, No.1 【関東甲信越ブロック版】 2000/10

<27>

保健所 3 名

一般診療所 2 名

拠点病院 2 名

7.カウンセリングを受けたいところはどこか?

拠点病院 8名

一般診療所 3名

保健所 2名

8.拠点病院に望むこと

・中核的活動、病診連携体制

(ネットワーク化、予防活動につながる情報提

供、地域保健との連携強化)

・メーリングリスト、パスワードが必要な専用

ホームページを作ってほしい

・どのような体制なのか、ホームページで公表

して欲しい

9.エイズをめぐる問題で聞きたい話は?

・全国・県内の取り組みの様子(各病院や機関)

・実際のカウンセリング風景を見てみたい

・情報の入手方法

・母子感染に関すること、出産後のケア

10.感想

・3 年まえにエイズ予防財団の研修をうけたが、

治療内容の変化、社会状況の変化を聞くことがで

き、このような研修への定期的参加の必要性を感

じた。カウンセリングについても、HIV感染者

に限らずどんな患者さんとの場面でもいえること

を振りかえることができた。

・前回より具体的な内容になり、入りやすかった。

助産婦としてかかわれる範囲はその人の一生の中

では短いと思うが、できる範囲でかかわっていき

たい。

・カウンセリング時の自分の欠点に気づいた。

・小島先生の実際のカウンセリングの様子を少し

でも見ること、感じることができ、とても参考に

なった。

・事例ひとつひとつについて改めて考えさせられ、

有意義だった。今後も継続して欲しい。

・もう一歩踏みこめるようにしてほしい。広くフ

ォローすると時間が足りなくなる。

・もっと多くのスタッフにも参加してもらい、カ

ウンセリングの輪とレベルアップの向上に臨みた

い。外国人の医療費等、色々なことがわかってと

てもよかった。

・前回はHIV感染者とまだ関わった経験がなく、

実感としてなかなか伝わらなかったが、今回は患

者さんと接した後なので、より自分たちの問題と

して考えることができた。

以上

Page 12: AIDS UPDATE JAPAN Vol.2, No.1 【地方版】 関東甲信越ブロック › kyoten › newsletter › 200010... · 2000-11-13 · 教授の著書「Inventing The AIDS Virus」を私は

エイズ Update ジャパン Vol.2, No.1 【関東甲信越ブロック版】 2000/10

<28>

ホームページ紹介

HIV診療関東甲信越ブロックのWEBページの

場所を移動しました。

http://medws2.med.niigata-u.ac.jp/kyoten/index.html

現在のコンテンツは、関東甲信越内拠点病院一覧、

今までの活動、部内ミーティング資料、エイズ UpDate

ジャパンバックナンバー等となっています。

部内ミーティング資料では、JAMA(Jornal of the

American Medical Association)ニュースファイルの

概要翻訳が掲載されています。

[編集後記]

■エイズ医療体制に関する研究班、通称、白阪班が立ち上が

り、HIV をとりまく医療環境の整備が包括的に再検討されよ

うとしております。従来の薬害 HIV 感染者の救済支援活動の

推進に加え、各地域特有の医療体制整備の上での問題、カウ

ンセリング体制の充実、在日外国人医療での諸問題、抗体検

査の普及・体制整備など新たな課題に取り組むべく、再スタ

ートをきりました。

■関東甲信越については、専門家も豊富な、全国のエイズ医

療をリードする使命にある首都圏のエイズ医療先進地域、お

よび、それほど患者が多くなく、HIV 感染者のプライバシー

が守られにくい周辺地域の二局分化が否めないところです。

医療レベルの地域較差、患者の決め細やかなケアの点で診療

に従事する人的資源の整備の必要性について、当ブロックで

の優先課題として活動していきたいと思います。

■さらに、若年者の感染者の増加に対し、抗体検査普及の第

一線にある保健所の役割は、検査前後のカウンセリング問題

とあいまって重要視されているところです。今回、長野大町

保健所で独自に地道な努力をされ、着実に成果をあげられて

いる内野先生からのご投稿は、いろいろな意味で、私たちに

考えるべきポイントを投げかけている、味わい深い一文であ

ります。国際エイズ学会参加経験から得た提言も、今後取り

組むべきグローバルな視点が盛り込まれております。ぜひ、

シリーズで第二弾もお願いしたいと思います。

今後の計画としては、次のようなページの作成を考

えています。

1.JAMA ニュースファイル翻訳ページの検索機能

付加

2.パスワード認証ページ上での掲示板

3.研究班の体制についての説明

みなさまからのご意見・ご要望をお待ちしています。

E-mail:[email protected]

FAX:025-227-0727

■古谷野先生には、チーム医療の一役をになうカウンセリン

グについて、ご執筆いただきました。近畿地区で多数の感染

者カウンセリングに携わってきたご経験ならではのご提言で

す。いずれも、班会議で新しく取り組んでいくことになる課

題の最先端をいく先生方の一文で、今後のエイズ医療の進む

べき道を示唆していると思います。

■在日外国人の医療については、エイズに限らず大きな社会

問題でもあり、当ブロックでは特に日常遭遇する確率が年々

高まっているといえます。今回は、港町診療所で積極的に外

国人医療に取り組んでおられる沢田先生にご執筆いただきま

した。日本にも外国人労働者が年々増加している現実とそれ

を取り巻く医療環境整備の難しさ、しかし何とかしなければ

ならない現状を痛感させられるご投稿です。ぜひ皆さんの意

見もお聞きしたいところです。

■カウンセリング講習会、歯科診療講習会など、急務の講習

会はもちろん、日々変化する診療について学べる機会も作っ

ていきたいと考えています。今後の活動についてのご意見、

今回の全国版、地方版を読んでの感想、ご不満、また、次回

へ向けての積極的なご投稿をお待ちしております。

どうぞ宜しくお願いいたします。

(新潟大・第二内科 塚田弘樹 記)