Snapdragonを搭載した DragonBoard が登場...DragonBoard 410c上には1GBのLPDDR3...

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APS MAGAZINE 39 38 APS MAGAZINE Volume.12 2016.3 39 38 Volume.12 2016.3 クアルコムジャパン株式会社 NEW PRODUCT INFO モバイルをリードするSnapdragon 高性能と高機能をローパワーで実現 QualcommのSnapdragonプロセッサとい えばスマホやタブレット向けのSoCとして広く知 られており、スマホで初めて1GHz動作を達成す るなど、モバイル向けSoCの世界を常にリードし てきた存在だ。 ちなみに「Snapdragon」とは、もともとは 小さな花々が連なった植物の名前で、花筒を 指で押さえたときに龍(dragon)が口をパチン (snap)と開ける様に似ていることからイギリ スでそう呼ばれるようになったとされる。つまり QualcommのSnapdragonプロセッサの名前 には、モバイルに求められる小ささの中に、速 さと強さとを兼ね備えた龍のイメージが込められ ていると考えることができるだろう。 Snapdragonプロセッサは、グラフィックプロ セッサやイメージシグナルプロセッサを内蔵する とともに、Wi-FiやBluetoothなどのコネクティ ビティ機能を搭載するなど、SoCとして見たとき にきわめて魅力的なスペックを備えている。 ただし、一般的なARMプロセッサとは違って これまでは汎用デバイスとしては提供されてこな かったため、組み込みの開発者がSnapdragon を使いたいと考えても難しかったのが実状だ。 Snapdragonの評価ボードが登場 組み込みやIoTに新しい流れを生む そうした状況が大きく変わろうとしてい る。Qualcommの代理店である米Arrow Electronicsが、ミドルレンジの「Snapdragon 410プロセッサ」を搭載した評価ボード 「DragonBoard 410c」を開発し、一般向け に販売を開始したからだ。日本国内ではアロー が窓口となって2015年11月に販売がスター ト。ボード本体の価格は11,000円と手軽に入 手できる(別途、ACアダプタと変換プラグが必 要)。 今までスマホやタブレットのような最終製品 の形でしか触れられなかったSnapdragon が、DragonBoard 410cを買えば誰でも使 えるようになったということで、新し物好きの ホビーユーザーを含めて業界で大きな話題と なっている。 ではQualcommとArrowはどのような狙い でDragonBoard 410cを企画したのだろう Android OS搭載のスマホやタブレットをグローバルにリードするQualcomm ® のSnapdragon™プロセッサがついに汎用SoCとして提 供されることになった。その第一弾がARM ® Cortex ® -A53クアッドコアベースのSnapdragon 410プロセッサを搭載した開発用ボード 「DragonBoard™ 410c」だ。2015年11月の正式発売から当初の予想を遥かに超える出荷数を叩き出し、業界でも話題になっている。ここ ではQualcommの取り組みと、DragonBoardを展開する代理店のアロー・ユーイーシー・ジャパン株式会社(以下、アロー)に話を聞いた。 か。Qualcommの須永氏は、その背景を次 のように説明する。 「さまざまなセンサや機器からデータを収 集し、ネットワークを介してクラウドにデータ を蓄積し、そうした大量データの分析を通じ て新たな知見や価値を生み出そうとするIoT に注目が集まっています。組み込みやIoTの 分野ではローパワー動作やシステムの最適 化といった技術が求められますが、それらは まさにQualcommが得意とする領域にほ かなりません。現在、さまざまな業界の方々 がIoT市場に参入を始めており、応用も進 みつつありますが、Qualcommが持つ最 先端の技術を活用していただくことで、省電 力はもちろんのこと、高品位な通信性能や 高度な画像処理を応用した、さまざまなシ ステムやサービスへとつなげていただきた いと考えています。まずは開発ボードとして DragonBoard 410cを企画し、どなたで も1台から購入できる体制をArrowと共に構 築しました 」。 さらに、アローの関口氏は次のように説明 する。「QualcommはIoTや組み込みのマー ケットにもソリューションを展 開しようという大 きな戦略を2015年に打ち出しました。新し い流れを生み出そうとするQualcommの取 り組みに驚かれた方も多かったようです。その スタートに当たるのがDragonBoard 410c であり、IoTや組み込みのアプリケーションは 作りたいが基板設計を含めてプロセッサ周りに まで開発リソースを確保することは難しい、と いったお客様をはじめとして、64ビットアーキ テクチャをIoT市場に投入する新しいプラット フォームとして是非使っていただきたいと考え て開発した製品です」。 名刺サイズのボードに機能を凝縮 WLAN/Bluetooth/GPSを 標準で搭載 DragonBoard 410cでまず目を引くのはそ の小ささだ。名刺やクレジットカードとほぼ同じ 85mm×54mmと、きわめてコンパクトに設 計されている。搭載されているチップセットは、 ARM Cortex-A53クアッドコア、 最 大1350 万画素のカメラ入力に対応したISP(イメージ シグナルプロセッサ)、最新のAPIをサポートす るQualcomm ® Adreno™ 306 GPU(グ ラ フィックプロセッサ)などを搭載し、ローパワー とハイパフォーマンスとを両立したQualcomm Snapdragon 410プロセッサで、コア周波数 は1.2GHzである。なおARM Cortex-A53プ ロセッサはARMv8アーキテクチャを採用してお り、64ビットのAArch64命令セットと32ビット のAArch32命令セットの両方がサポートされて いる。 DragonBoard 410c上には1GBのLPDDR3 メモリと8GBのeMMCフラッシュメモリとが標準 で搭載されており、評価や試作には十分だ。ネッ トワーク機能としては、2.4GHzのWi-Fi(IEEE 802.11b/g/n)とBluetooth 4.1が 標 準 でサ ポートされているほか、GPS機能も備えているた めロケーションに応じたアプリケーションも開発 できる。 外部インタフェースとしては、USB 2.0×3 チャネル、40ピンの低速拡張コネクタ、60ピン の高速拡張コネクタ、マイクロSDカードスロッ ト、HDMI 1.3(映像および音声)などがサポー トされている。 「USBコネクタにマウスとキーボードを接続し HDMIコネクタにディスプレイを接続して電源 を入れるだけで、eMMCフラッシュにプリイン ストールされているAndroid 5.1(Lollipop) が起動し、Androidアプリが並んだスマホ やタブレットと同じような画面が表示されま す。Androidスマホから公衆網へのコネク ティビティとタッチパネル機能を除いたのが DragonBoard 410cであり、きわめて強力な 評価プラットフォームといえます」と、アローの 宇都宮氏は説明する。 DragonBoard 410cの基板サイズやコ ネクタ位置および仕様は、ARMのエコシステ ムで重要な役割を果たしているLinaroが定 めた「96Boards™」における「Comsumer Edition」に準拠しているという。つまり 96Boards用のメザニン・カード(中継基板) を使った拡張も可能だ。 ちなみに、アローから販売される国内正 規 品 は 技 適 マ ークを 取 得 済 み で ある。「余 談ですが、技適の認証機関の担当者から、 DragonBoard 410cは電波が安定していてと てもきれいなスペクトルをしていると教えてもら いました。さすがはQualcommといったとこ ろでしょう」(アロー 土佐氏)。 集合写真(左より) クアルコムCDMAテクノロジーズ マーケティング/ビジネス開発統括部長 須永 順子 氏 ※インタビューのみ参加 アロー・ユーイーシー・ジャパン株式会社 プロダクトマーケティング部 土佐 哲也 氏 アロー・ユーイーシー・ジャパン株式会社 プロダクトマーケティング部 技術グループ テクニカルスペシャリスト 宇都宮 善 氏 アロー・ユーイーシー・ジャパン株式会社 営業部 カスタマーサポートグループ 沙織 氏 株式会社チップワンストップ プロダクトマーケティング部 リーダー 鳥元 麻衣氏 アロー・ユーイーシー・ジャパン株式会社 営業部 カスタマーサポートグループ 竹村 佳子  アロー・ユーイーシー・ジャパン株式会社 プロダクトマーケティング部 部長 関口 慎悟 氏 図1:DragonBoard 410cの外観。 Snapdragonを搭載した DragonBoard が登場 ついにドラゴンが組み込み市場に舞い降りた!

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Page 1: Snapdragonを搭載した DragonBoard が登場...DragonBoard 410c上には1GBのLPDDR3 メモリと8GBのeMMCフラッシュメモリとが標準 で搭載されており、評価や試作には十分だ。

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モバイルをリードするSnapdragon高性能と高機能をローパワーで実現

 QualcommのSnapdragonプロセッサとい

えばスマホやタブレット向けのSoCとして広く知

られており、スマホで初めて1GHz動作を達成す

るなど、モバイル向けSoCの世界を常にリードし

てきた存在だ。

 ちなみに「Snapdragon」とは、もともとは

小さな花々が連なった植物の名前で、花筒を

指で押さえたときに龍(dragon)が口をパチン

(snap)と開ける様に似ていることからイギリ

スでそう呼ばれるようになったとされる。つまり

QualcommのSnapdragonプロセッサの名前

には、モバイルに求められる小ささの中に、速

さと強さとを兼ね備えた龍のイメージが込められ

ていると考えることができるだろう。

 Snapdragonプロセッサは、グラフィックプロ

セッサやイメージシグナルプロセッサを内蔵する

とともに、Wi-FiやBluetoothなどのコネクティ

ビティ機能を搭載するなど、SoCとして見たとき

にきわめて魅力的なスペックを備えている。

 ただし、一般的なARMプロセッサとは違って

これまでは汎用デバイスとしては提供されてこな

かったため、組み込みの開発者がSnapdragon

を使いたいと考えても難しかったのが実状だ。

Snapdragonの評価ボードが登場組み込みやIoTに新しい流れを生む

  そうし た 状 況 が 大 きく変 わ ろうとして い

る。Qualcomm の 代 理 店 で あ る 米Arrow

Electronicsが、ミドルレンジの「Snapdragon

410プ ロ セ ッ サ」を 搭 載 し た 評 価 ボ ード

「DragonBoard 410c」を開発し、一般向け

に販売を開始したからだ。日本国内ではアロー

が窓口となって2015年11月に販売がスター

ト。ボード本体の価格は11,000円と手軽に入

手できる(別途、ACアダプタと変換プラグが必

要)。

 今までスマホやタブレットのような最終製品

の 形でしか 触 れられ な かったSnapdragon

が、DragonBoard 410cを買えば誰でも使

えるようになったということで、新し物好きの

ホビーユーザーを含めて業界で大きな話題と

なっている。

 ではQualcommとArrowはどのような狙い

でDragonBoard 410cを企 画した の だろう

Android OS搭載のスマホやタブレットをグローバルにリードするQualcomm®のSnapdragon™プロセッサがついに汎用SoCとして提

供されることになった。その第一弾がARM® Cortex®-A53クアッドコアベースのSnapdragon 410プロセッサを搭載した開発用ボード

「DragonBoard™ 410c」だ。2015年11月の正式発売から当初の予想を遥かに超える出荷数を叩き出し、業界でも話題になっている。ここ

ではQualcommの取り組みと、DragonBoardを展開する代理店のアロー・ユーイーシー・ジャパン株式会社(以下、アロー)に話を聞いた。

か。Qualcommの須永氏は、その背景を次

のように説明する。

 「さまざまなセンサや 機 器 からデ ータを収

集し、ネットワークを介してクラウドにデータ

を蓄積し、そうした大量データの分析を通じ

て新たな知見や価値を生み出そうとするIoT

に注目が 集まっています。組み込みや IoT の

分 野ではロー パワー 動 作 やシステム の 最 適

化といった技術が求められますが、それらは

まさ に Qualcomm が 得 意 とする 領 域 に ほ

かなりません。現在、さまざまな業界の方々

が IoT 市 場 に 参 入 を 始 め ており、 応 用 も 進

み つ つ あります が、Qualcomm が 持 つ 最

先端の技術を活用していただくことで、省電

力 は もちろん のこと、 高 品 位 な 通 信 性 能 や

高 度 な 画 像 処 理 を 応 用した、 さまざまなシ

ステ ム や サ ービス へとつ な げ てい た だ き た

いと考えています。まずは 開 発 ボ ードとして

DragonBoard 410cを 企 画し、ど な た で

も1 台から購入できる体制をArrowと共に構

築しました」。

 さらに、アローの関口氏は次のように説明

する。「Qualcomm はIoTや組み込みのマー

ケットにもソリューションを展開しようという大

きな戦 略を2015年に 打ち出しました。 新し

い 流れを生み出そうとするQualcommの取

り組みに驚かれた方も多かったようです。その

スタートに当たるのがDragonBoard 410c

であり、IoTや組み込みのアプリケーションは

作りたいが基板設計を含めてプロセッサ周りに

まで開発リソースを確保することは難しい、と

いったお客様をはじめとして、64ビットアーキ

テクチャをIoT市場に投入する新しいプラット

フォームとして是非使っていただきたいと考え

て開発した製品です」。

名刺サイズのボードに機能を凝縮WLAN/Bluetooth/GPSを

標準で搭載

 DragonBoard 410cでまず目を引くのはそ

の小ささだ。名刺やクレジットカードとほぼ同じ

85mm×54mmと、きわめてコンパクトに設

計されている。搭載されているチップセットは、

ARM Cortex-A53クアッドコア、 最 大1350

万画素のカメラ入力に対応したISP(イメージ

シグナルプロセッサ)、最新のAPIをサポートす

るQualcomm® Adreno™ 306 GPU(グ ラ

フィックプロセッサ)などを搭載し、ローパワー

とハイパフォーマンスとを両立したQualcomm

Snapdragon 410プロセッサで、コア周波数

は1.2GHzである。なおARM Cortex-A53プ

ロセッサはARMv8アーキテクチャを採用してお

り、64ビットのAArch64命令セットと32ビット

のAArch32命令セットの両方がサポートされて

いる。

 DragonBoard 410c上には1GBのLPDDR3

メモリと8GBのeMMCフラッシュメモリとが標準

で搭載されており、評価や試作には十分だ。ネッ

トワーク機能としては、2.4GHzのWi-Fi(IEEE

802.11b/g/n)とBluetooth 4.1が 標 準でサ

ポートされているほか、GPS機能も備えているた

めロケーションに応じたアプリケーションも開発

できる。

 外部インタフェースとしては、USB 2.0×3

チャネル、40ピンの低速拡張コネクタ、60ピン

の高速拡張コネクタ、マイクロSDカードスロッ

ト、HDMI 1.3(映像および音声)などがサポー

トされている。

 「USBコネクタにマウスとキーボードを接続し

HDMIコネクタにディスプレイを接続して電源

を入れるだけで、eMMCフラッシュにプリイン

ストールされているAndroid 5.1(Lollipop)

が 起 動 し、Androidアプリが 並 ん だ ス マ ホ

やタブレットと同じような 画 面 が 表 示されま

す。Androidス マ ホ か ら 公 衆 網 へ の コ ネ ク

ティビティとタッチパネル 機 能を除い た のが

DragonBoard 410cであり、きわめて強力な

評価プラットフォームといえます」と、アローの

宇都宮氏は説明する。

 DragonBoard 410cの 基 板 サ イズ や コ

ネクタ位置および仕様は、ARMのエコシステ

ムで重 要 な 役 割を果 たしているLinaroが 定

めた「96Boards™」における「Comsumer

Edition」に 準 拠 し て い る と い う。 つ まり

96Boards用のメザニン・カード(中継基板)

を使った拡張も可能だ。

 ち な み に、 アロ ー から販 売 さ れる国 内 正

規 品 は 技 適 マ ー クを 取 得 済 み で あ る。「余

談 です が、 技 適 の 認 証 機 関 の 担 当 者 か ら、

DragonBoard 410cは電波が安定していてと

てもきれいなスペクトルをしていると教えてもら

いました。さすがはQualcommといったとこ

ろでしょう」(アロー 土佐氏)。

集合写真(左より)

クアルコムCDMAテクノロジーズマーケティング/ビジネス開発統括部長須永 順子 氏 ※インタビューのみ参加

アロー・ユーイーシー・ジャパン株式会社プロダクトマーケティング部土佐 哲也 氏

アロー・ユーイーシー・ジャパン株式会社プロダクトマーケティング部 技術グループテクニカルスペシャリスト 宇都宮 善 氏

アロー・ユーイーシー・ジャパン株式会社営業部 カスタマーサポートグループ中䑓 沙織 氏  

株式会社チップワンストッププロダクトマーケティング部リーダー 鳥元 麻衣氏

アロー・ユーイーシー・ジャパン株式会社営業部 カスタマーサポートグループ竹村 佳子 

アロー・ユーイーシー・ジャパン株式会社プロダクトマーケティング部部長 関口 慎悟 氏

図1:DragonBoard 410cの外観。

Snapdragonを搭載したDragonBoard が登場

ついにドラゴンが 組み込み市 場に舞い降りた!

Page 2: Snapdragonを搭載した DragonBoard が登場...DragonBoard 410c上には1GBのLPDDR3 メモリと8GBのeMMCフラッシュメモリとが標準 で搭載されており、評価や試作には十分だ。

APS MAGAZINE 4140 APS MAGAZINEVolume.12 2016.3 4140 Volume.12 2016.3

Android/Linux/Windows10に対応本体はチップワンストップで提供

 DragonBoard 410cで動 作 が 確 認さ れて

いるOSは、プリインストール のAndroid 5.1、

Debian 8.0 Linux( jessie)、および、Microsoft

Windows 10 IoT Coreの3種類である。

 このうちAndroidとDebianは96Boardsの

ウェブから、Windows 10 IoT Coreについて

は、マイクロソフトのウェブからイメージやイン

ストール手順、ドキュメント類がダウンロードで

きる。

 また、チップワンストップのウェブサイト内に

はDragonBoard 410cに関する日本語ポータ

ルページが作られているので、そちらを参照して

もよい。購入はチップワンストップを利用する。

2016年3月現在での価格は、DragonBoard

410c本 体 が11,000円、 専 用 のACアダプタ

が990円、ACアダプタの変換プラグが355円

である。このほかにオプションとして、USBを

UARTに変換する96Boardsアダプタが3,760

円、メザニン・カードとリンカキットモジュール

で構 成さ れ た96Boardsスターターキットが

5,030円で提供されている。(価格はいずれも1

個の場合で消費税および送料別)

Cortex-A53クアッドコアを搭載可能性を広げる64ビットのパワー

 DragonBoard 410cの 魅 力 の ひとつ が64

ビットアーキテクチャを備えたARM Cortex-A53

クアッドコアの存在だ。64ビットもの広大な仮

想アドレス空間が使えるほか、たとえば汎用レ

ジスタはAArch32では32ビット×13本が同時

に使えるのに対してAArch64では64ビット×

31本が使えるなど、コンパイラの最適化次第で

はかなりの性能向上が期待できる。

 「広いメモリ空間を扱えますからプログラミン

グの負荷が少なく、しかもデータの64bit化に

よってアプリケーションのパフォーマンスも向上

します。大規模データの取り扱いも効率化でき

るでしょう。高度なアプリケーションが増えてく

るであろう今後のトレンドにいち早く対応できた

と考えています」(須永氏)。

 IoTノードに64ビットアーキテクチャはオー

バースペックにも感じられるが、たとえばノードを

インテリジェント化しようとすればSnapdragon

410ぐらいのパフォーマンスが欲しくなると、宇

都宮氏は述べる。「高精細カメラを接続し、撮影

した映像データを画像処理し、さらに圧縮した

のち、ワイヤレスで上位のサーバーに送りたい、

といったアプリケーションには、Snapdragon

410クラスの性能が望ましいといえます」。

 DragonBoard 410cのもうひとつの魅力が

グラフィックス/イメージプロセッシングとコネク

ティビティだ。1350万画素のカメラ入力に対

応したISPを内蔵。また、Qualcomm独自の

GPUであるAdreno 306 も内蔵、CPU/GPU

と独立したビデオユニットでは1080pのHD動

画のキャプチャと再生が可能だ。コネクティビ

ティはWi-FiとBluetoothが標準でサポートさ

れる。IoTアプリケーションではノードで集めた

データをサーバー(クラウド)に上げるところが

課題のひとつに挙げられるが、DragonBoard

410cならUSBドングルなどのオプションを増設

しなくても簡単に構築できる。

パートナーとエコシステムを構築しSnapdragonの活用を磐石にサポート

 QualcommおよびアローではDragonBoard

410cをあくまでも開発評価用のプラットフォーム

と位置づける。「Snapdragonプロセッサを製品

やシステムに使いたいというお客様には、量産品

質が保証されるサードパーティ製のボードを紹介

したり、開発ノウハウを持つパートナーを紹介す

るなどして、お客様の開発をバックアップしていき

ます」(関口氏)。

 また、組み込み分野で求められる長期供給や技

術サポートについては、「組み込みマーケットにも

Snapdragonを広めていこうというQualcomm

の戦略に沿って、アローがお客様をしっかりとサ

ポートしていきます」と、土佐氏は明言する。

 最後に須永氏は、「Snapdragon 410プロ

セッサが搭載されているDragonBoard 410c

をAPSの読者の皆さんにまずは使っていただい

て、パワフルなコンピューティング機能やコネ

クティビティ機能を生かしながら、次世代ロボ

ティックス、カメラ、メディカル端末、自販機、

ゲームコンソールなど、さまざまなアイディアの

具現化に役立てていただければ嬉しく思います。

2016年5月に東京ビッグサイトで開催される

IoT/M2M展にQualcommも出展しますので、

多くの皆さんとお会いできることを楽しみにして

います」と述べ、DragonBoard 410cによって

広がるさまざまな可能性に期待を示した。

図2:DragonBoard 410cのブロック図。

クアルコムジャパン株式会社 | NEW PRODUCT INFO

龍、矢の如く降臨。高嶺の花であったQualcommが、ついにArrow

と共に身近になった。実績はもはや語る必要もあるまい。IoTの未来を

目指す組み込みの世界で、64ビット クアッドコアの龍を使いこなす猛者

の手腕に期待したい。

Technical NOTE

DragonBoard™ 410c 主な仕様

■SoC:Qualcomm Snapdragon 410

■CPU:ARM Cortex-A53 Quad 1.2GHz

■GPU:Qualcomm Adreno 306

     400MHz

■RAM:1GB LPDDR3 533MHz

■ROM:8GB e.MMC / MicroSD

■無線:IEEE 802.11b/g/n

    Bluetooth 4.1

■有線:なし (USB外付けEthernet対応可)

■ビデオ:HDMI 1080p @30fps他

■ISP:13MP

■USB:USB2.0 x3

■拡張性:

【高速】4L-MIPI DSI, USB, 2L+4L-MIPI CSI, USB

【低速】UART, SPI, I2S, I2C, GPIO

【アナログ】オーディオ入出力

■電源:6.5-18V(要別途アダプタ)

どこで買えるの? 1個でも買えるの?

チップワンストップなら1個からの小口販売対応

をはじめ、量産対応及びSnapdragon™410

プロセッサ組み込みに対する技術サポート等は、

アロー・ユーイーシー・ジャパンにて対応いた

します。

今後の成長が期待されるIoT市場向けのコアテ

クノロジーであるWLAN、Bluetooth、GPSを

搭載していることで、スマートフォン同様の無線

機能により広範囲のアプリケーションに応用でき

ます。まずは実際に手にして、評価を始めてみ

てください。

■購入からビルド方法など、DragonBoard™

410cのことなら全部揃う専用ページ

sp.chip1stop.com/dragonboard410c/

DragonBoard 410c って?

96Boards™仕 様に 基づくDragonBoard™

410cは、32ビットと64ビットの動作が可能なコ

ア当たり最大1.2GHzのクロック速度のクアッドコ

アARM® Cortex™-A53を備えたQualcomm®

Snapdragon™ 410プロセッサを搭載していま

す。DragonBoard 410cは、Android、Linux、

Windows 10 IoT Coreをサポートし、高度な処

理能力や、無線LAN、Bluetooth、GPSの全て

をクレジットカードサイズのボードに搭載して提供

しています。

また、Qualcomm® Adreno™ 306 GPUによ

り、最大13 MPのカメラをサポートする統合さ

れたISPや、H.264(AVC)による1080p HD

ビデオキャプチャや再生等、マルチメディアを含

む豊富な機能をサポートするように設計されてい

ます。

Snapdragon 410プロセッサ搭載DragonBoard 410c スタートガイド

「DragonBoard™ 410c」http://go.aps-web.jp/12-qualcomm

QRコードアプリで関連デモ動画を再生できます。

RaspBerry Piとの性能比較も面白い。DragonBoard 410cのことならチップワンストップの専用ページヘ。

販売代理店:アロー・ユーイーシー・ジャパン株式会社  www.arrowuec.co.jp/オンラインショップ(株式会社チップワンストップ) www.chip1stop.com/

クアルコムジャパン株式会社

https://www.qualcomm.co.jp/

Qualcomm、Snapdragon、Adreno及びDragonBoardは米国及びその他の国々で登録されたQualcomm Incorporatedの商標です。