神奈川県立生田高等学校の ICT 利活用の取組(Q&A · 1...

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1 神奈川県立生田高等学校の ICT 利活用の取組(Q&A) (1)学校概要について Q 生田高校はどのような特色をもつ学校なのか? 本校は落ち着いた校風で、生徒の進学意欲が高い学校です。ICT を利活用した教 育活動を行っていることが特色ですが、その他にも充実した自然体験学習が特色 です。海の生物観察会、ムササビ観察会、丹沢森林ボランティアなどを実施し、 生徒の自然科学に対する知的好奇心を高めています。また、本校は平成27 年度か ら、文部科学省の推進事業である「環境のための地球規模の学習及び観測プログ ラム(GLOBE)」の指定校になっており、科学部の生徒は国際会議で研究成果を英 語で発表しています。 Q 生田高校はいつから、どのような ICT 利活用教育に取り組んでいるのか? 平成28 年度から「ICT 利活用授業研究推進校」として ICT を積極的に利活用し、 生徒が主体的に学習に取り組む授業の充実を図っています。さらに、平成 30 年 度から「BYOD 導入モデル事業校」として BYOD を導入し、校舎内どこでもつな がる無線 LAN 環境のもとでスマートフォンやタブレット端末を学習活動の中で 積極的に活用しています。 (2)校内組織について Q 生田高校では ICT 利活用教育を推進するための組織はどのようなものか? BYOD を導入するために、平成 29 年度に情報利活用推進委員会を立ち上げまし た。また、令和元年度からはグループ業務を見直し、新たに ICT 利活用教育を推 進する研究開発グループを設置しています。なお、ネットワークの整備や機器管 理については別に管理運営グループが担当しています。 Q その組織は具体的に、どのようなことを行っているのか? 情報利活用推進委員会では、BYOD 導入にあたり運用ルールを作成したり、授業 での活用方法を提案したりしました。今年度設置された研究開発グループでは、 BYOD を活用した授業改善や研究授業、校内研修などに取り組んでいます。 (3)生田高校の ICT 環境について Q 生田高校は他の県立高校より、どのような点で ICT 環境整備が進んでいるのか? 本校は、これまでも「ICT 利活用教育推進モデル校(平成26・27 年度)」、「ICT 利 活用教育推進スーパースクール(平成 26~28 年度)」として県の指定を受け、さ らに平成28・29 年度はパナソニック教育財団の特別助成を受けました。その間、 タブレット端末やiPad、プロジェクタ、アクセスポイントなどを少しずつ整備し、 平成 30 年度からは校舎内のどこでもつながる無線 LAN を整備しました。さらに 令和元年 10 月には1・2年生の全教室にモニタを設置するなど、他校に先駆け て必要な ICT 環境の整備を行っています。

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神奈川県立生田高等学校の ICT 利活用の取組(Q&A)

(1)学校概要について

Q 生田高校はどのような特色をもつ学校なのか? A 本校は落ち着いた校風で、生徒の進学意欲が高い学校です。ICT を利活用した教

育活動を行っていることが特色ですが、その他にも充実した自然体験学習が特色です。海の生物観察会、ムササビ観察会、丹沢森林ボランティアなどを実施し、生徒の自然科学に対する知的好奇心を高めています。また、本校は平成 27 年度から、文部科学省の推進事業である「環境のための地球規模の学習及び観測プログラム(GLOBE)」の指定校になっており、科学部の生徒は国際会議で研究成果を英語で発表しています。

Q 生田高校はいつから、どのような ICT 利活用教育に取り組んでいるのか? A 平成 28 年度から「ICT 利活用授業研究推進校」として ICT を積極的に利活用し、

生徒が主体的に学習に取り組む授業の充実を図っています。さらに、平成 30 年度から「BYOD 導入モデル事業校」として BYOD を導入し、校舎内どこでもつながる無線 LAN 環境のもとでスマートフォンやタブレット端末を学習活動の中で

積極的に活用しています。

(2)校内組織について Q 生田高校では ICT 利活用教育を推進するための組織はどのようなものか? A BYOD を導入するために、平成 29 年度に情報利活用推進委員会を立ち上げまし

た。また、令和元年度からはグループ業務を見直し、新たに ICT 利活用教育を推進する研究開発グループを設置しています。なお、ネットワークの整備や機器管理については別に管理運営グループが担当しています。

Q その組織は具体的に、どのようなことを行っているのか? A 情報利活用推進委員会では、BYOD 導入にあたり運用ルールを作成したり、授業

での活用方法を提案したりしました。今年度設置された研究開発グループでは、BYOD を活用した授業改善や研究授業、校内研修などに取り組んでいます。

(3)生田高校の ICT 環境について

Q 生田高校は他の県立高校より、どのような点で ICT 環境整備が進んでいるのか? A 本校は、これまでも「ICT 利活用教育推進モデル校(平成 26・27 年度)」、「ICT 利

活用教育推進スーパースクール(平成 26~28 年度)」として県の指定を受け、さらに平成 28・29 年度はパナソニック教育財団の特別助成を受けました。その間、タブレット端末や iPad、プロジェクタ、アクセスポイントなどを少しずつ整備し、平成 30 年度からは校舎内のどこでもつながる無線 LAN を整備しました。さらに令和元年 10 月には1・2年生の全教室にモニタを設置するなど、他校に先駆け

て必要な ICT 環境の整備を行っています。

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Q 生田高校の ICT 環境整備の課題はなにか? A 本校では、生徒貸し出し用のタブレット端末は十分に準備され、校内の無線 LAN

環境も整備されました。また、現在1・2年生の全ての教室にはモニタが設置されています。今後は3年生の教室を含め、すべての教室にモニタを設置することや、iPad や Chromebook、WindowsPC など、それぞれの特性にあわせた管理が必要になると考えています。さらに、使用する学習アプリについても引き続き吟味し、必要があれば新たな導入を検討していきます。

(4)校内研修について

Q 生田高校では、どのような校内研修を行ってきたのか? A BYOD を活用した授業を行うために、ロイロノートや G Suite などの学習アプリ

の使い方に関する研修を行ってきました。現在は4月に転任者や新採用者を対象に研修を実施しています。また、本校は若手教員を中心に授業力向上委員会を月

1回程度開催しており、ロイロノートや G Suite の効果的な使い方について議論したり、無料の学習アプリについて情報交換したりしています。

Q 校内研修を行う上で、どのような工夫をしてきたか? A 実際に生徒と教師の立場になって ICT 機器や学習アプリを操作するなど、実践的

な研修となるように工夫しています。また、初めて ICT を活用して授業を行う際は、教員の不安を取り除くために、経験のある教員がチームティーチングとして授業に入って操作の補助をしています。

(5)ガイドラインについて

Q BYOD に向けて、生田高校ではどのようなガイドラインを作成したのか?

A 本校は BYOD 導入に向けて、「BYOD ガイドライン」と「生田高校ソーシャルメディアポリシー」を作成しました。基本ルールは、毎日スマートフォンを持参する、充電は自宅で行う、ウィルス対策は各自で行う、端末は自己管理することです。また、注意事項として、黒板の内容を写メで撮ることは可能だが、SNS 上での授業のつぶやきや動画の配信は禁止、学校情報の漏えいも禁止、学校のセキュリティシステムを破る行為は厳禁、その他、他人の ID の不正利用やハッキング行為、他人の悪口を SNS に投稿することは特別指導になることがあると明記し

ています。

Q ガイドラインはどのようにして作成したのか? A ガイドラインは、BYOD 導入のために立ち

上げた情報利活用推進委員会で作成しました。情報利活用推進委員会は、運用ルールや授業での活用方法について検討するため、教務から1名、生活指導から1名、各教科から1名の計 10 名をメンバーとしました。生徒の学習面や生活面の双方から運用ルールを議論し、ガイドラインを作成しました。

(6)保護者・生徒向けの説明について

Q BYOD をスタートするにあたって、保護者に対してどのような説明を行ったのか? A 本校は平成 30 年度入学生から順次 BYOD を進めるため、まず、前年度の学校説

明会で本校を志望する中学3年生とその保護者に対し、入学後は教育活動で生徒

のスマートフォンを使う旨を説明しました。また、在校生とその保護者には、BYOD に関する案内文書とガイドラインを配付し、BYOD の取組についてご理解いただきました。

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Q 生徒向けにはどのような説明を行ったのか? A 1年生対象の ICT オリエンテーションを4月中に実施し、授業で生徒のスマート

フォンを使うことを伝え、ソーシャルメディアポリシーや BYOD の運用ルールに

ついて説明しています。また、年2回実施される携帯電話教室で、情報モラルについて指導しています。

(7)授業改善の取組について

Q 生田高校では ICT を活用してどのような授業が行われるようになったのか? A ICT を活用することで、板書の時間やプリント配付などの時間が短縮され、その

分できた時間をグループ学習や学習の振り返りに充てられるようになりました。生徒のスマートフォンを活用することで、自分の考えを相手に伝えたり、説明したりする活動が増え、生徒同士の学び合いが増えました。例えば国語では物語の感想をスマホから提出してそれぞれの意見を比較したり、理科ではシミュレーションソフトを使って実験結果を予測し、その理由をグループで話し合ったりして

います。

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Q 今後はどのような授業をめざすのか? A 生徒同士の学び合いが増えたことで、教師には生徒が知識を構築していくための

ファシリテーター的な役割がより一層求められています。今後は学習に生徒のス

マートフォンを使うことを前提に、生徒同士の学び合いを深め、生徒が学び合いの中で知識を構築していくための授業づくりに取り組みたいと考えています。

(8)個別の生徒の対応について Q スマートフォンを持っていない生徒に対してどのような対応をしているのか? A スマートフォンを持っていない生徒には、学校のタブレット端末を一日中貸し出

しています。なお、本校のスマートフォンの所有率は 99%を超えており、毎日借りる生徒は2人程です。

Q ガイドラインを守れなかった生徒についてはどのような対応をしているのか?

A ガイドラインを守れなかった生徒に対しては、担任や学年の教員が口頭で注意し、改善を促しています。場合によっては、特別指導となることもあります。

(9)生徒、保護者の声

Q ICT を活用した授業に対して、生徒からどのような反応があるか? A ICT を活用したグループ学習や協働学習が増えたため、生徒は主体的に学習に取

組んでいます。生徒からは授業で意見交換することや、友達と教え合うことが楽しいと肯定的な意見が多くあります。一方、充電がなくなるのが早いことや、学習アプリをダウンロードすると容量が少なくなるという声があります。

Q 保護者の反応はどうか?

A 保護者に対しては、6月に行う学級懇談会の中で、スマートフォンをどのように授業で活用しているのかを説明しています。保護者からは BYOD についての理解は得られていますが、家庭では勉強しているのかスマートフォンで遊んでいるのか分からないという声も聞きます。

Q スマホ利用時間が増えて、スマホ依存やスマホゲーム障害等の悪影響はないか? A 利用する時間が増えることで、スマホ依存や障害に対して懸念する声もあります。

本校では携帯電話教室(スマートフォン等の正しい利用方法)や保健だよりで、依存症やゲーム障害について正しい知識を与え、上手にスマホを利用する、賢くスマホと付き合うことを指導しています。

(10) 今後の方向性について Q 今後、ICT 利活用教育はどのように推進していこうと考えているのか? A BYOD を導入して2年目になりますが、生徒はスマートフォンを文房具の1つと

して学習に活用しています。BYOD の環境が整ってきたことで、今後は BYOD を活用して家庭学習を充実させ、生徒の学習時間を増やすことで学力向上につなげていくこと、また、教員の授業力を向上さることに焦点をあて、これからの時代を生き抜く人材の育成にさらに取り組んでいきたいと考えています。