RETHINK, REINVENT, REALIZE. - Accenture...rethink, reinvent, realize....

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RETHINK, REINVENT, REALIZE. デジタルイノベーションを拡大してビジネス 成長を促進する

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企業のリーダーは例外なく、成功するにはイノベーションをビジネスの中核に据える必要があることを理解しています。しかし、製品やサービスの開発/製造方法を大規模に見直すことは容易ではありません。

例えば、ある靴メーカーでは、ハイパー・パーソナライゼーションの需要の高まりを受けて、経営幹部が大きな課題に直面していました。それは、履き心地が良く、耐久性に優れ、迅速な納期をグローバルで実現できる、カスタムスニーカーを開発すること。

同社はこの課題に対応するため、ロボティクス、機械学習、3Dプリンティングによるオートメーションを採り入れた生産設備を導入しました。しかし、新技術を導入するだけでは十分ではありませんでした。完全に自動化された生産ラインの立ち上げに時間がかかり、オートメーションシステムにオペレーションを適応させることもできませんでした。その結果、大きな損失が生じ、プロジェクト開始から3年で生産は終了。もともと優れた企業なのですが、利益をもたらす方法でイノベーションを拡大することができなかったのです。

実際、このような企業は少なくありません。

イノベーションを拡大して成長を促進: 企業のリーダーがデジタル変革に対応する方法

2デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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現在、産業界の大手企業に求められているのは、幅広い目的でデジタル技術を採用することです。競合他社と差をつけるには、既存/新規のオペレーションのみならず、開発する製品やサービスにもイノベーションを適用しなければなりません。しかし、デジタル投資から期待どおりの収益を得ている企業は、ごく一部です。

その理由を特定するため、アクセンチュアは、革新的な大手企業における重要な移行段階に焦点を当て検証しました。つまり、企業がいつ、どのように、デジタル関連のPoCの成功から、試験的なプロジェクトの拡大へと移行し、成長と収益を実現させているかということです。

主要な産業分野の企業の経営幹部1,350人を対象としたグローバル調査によると、成功している企業はごくわずかで、大半は苦戦し、完全に失敗する企業もあることがわかりました。特に、業務効率化から、顧客への新たな価値の創出へと移行が難しく、苦戦しているケースが多く見られます。

調査対象企業が2016~2018年に、新たな体験や更なる効率化に向けてデジタルイノベーション拡大に投じた費用は1,000億ドルあまり。しかし、その78%は、期待どおりの利益を得られず、苦戦していました。

それでは、どのような企業が成功しているのでしょうか。期待を上回るRODIを達成していたのは、調査対象企業の内、わずか22%でした。デジタル変革を成功させ、他の企業を凌駕する成果を上げているこの少数の優れた企業を、アクセンチュアでは「優秀企業」と称しています。

また調査結果によると、優秀企業のイノベーションに関する組織的課題へのアプローチは、その他の企業とは大きく異なることがわかりました。優秀企業は、より戦略的に達成したい価値を見極め、イノベーションの取り組みが組織に及ぼす影響を正しく認識しています。彼らはより多くの試験的プロジェクトの拡大に成功していますが、重要なのは数ではなく、より効果的にイノベーションを拡大し、利益向上につなげている点です。

優秀企業は、より多くのPoCの拡張に成功していますが、重要なのは数ではなく、より効果的に拡張し、利益を拡大しているという点です。

3デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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目標に集中:優秀企業のメリット産業界では今、主要なビジネス部門にわたって、AIやロボティクスなど幅広いデジタル技術を採用する企業が増加しています。アクセンチュアの調査によると、優秀企業はその他企業と比べ、平均を上回るRODIを達成しており、投下資本収益率(ROIC)の業界平均をも上回っています。さらに、50%を上回るデジタル関連のPoCを拡大しています。

残りの78%の企業は、次のような状況です(図1参照)。

優秀企業業界平均のROICやRODIよりも高いRODIを達成し、50%を上回るデジタルPoCを拡張

第2群企業業界平均のROICやRODIよりも低いRODIを達成し、50%を上回るデジタルPoCを拡張

第3群企業業界平均のROICやRODIよりも低いRODIを達成し、50%未満のデジタルPoCを拡張

図1a:

優秀企業の後を追う第2群企業は、達成しているRODI

は業界平均のROICやRODIより低いものの、50%を上回るデジタルPoCを拡張しています。

• 最後となる第3群企業は、業界平均のROICやRODIよりもRODIが低く、拡張しているデジタルPoCは50%未満となっています。

組み立て製造業界 プロセス製造業界

4デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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期 待 を上 回るRODIを達成していた 産 業 界の企業

わずか

22%

図1b:期待されたRODIと達成できたRODI

優秀企業業 界 平 均 の R O I C やRODIよりも高いRODIを達成し、50%を上回るデジタルPoCを拡張

第2群企業業 界 平 均 の R O I C やRODIよりも低いRODIを達成し、50%を上回るデジタルPoCを拡張

第3群企業業 界 平 均 の R O I C やRODIよりも低いRODIを達成し、50%未満のデジタルPoCを拡張

組み立て製造

プロセス業界

24.2%

27%

7.4%

6.5% 10.5%8.3%

期待

達成

期待

達成

期待

達成

20.4%

24%

6.9%

6.2% 12%10.7%

期待

達成

期待

達成

期待

達成

5デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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つまり、78%の企業は優秀企業のような成功を収め

るに至っておらず、大幅な改善の余地があるという

ことです。アクセンチュアは、組織がイノベーショ

ンに際して直面する、6分野23の課題についてデー

タを収集し(P28-30「付録:調査方法」参照)、組

織的課題の重大さとRODIの相関関係を推計しまし

た。この分析により、さまざまな業界にわたって、

こうした課題を克服することで増大できる価値が明

らかになりました。航空宇宙企業や自動車企業な

ど、個別の部品から製品を組み立てる組み立て製造

企業は一般的に、課題に対応することで多大なメリ

ットを得ており、製薬会社や化学企業など、製品全

体を形成するプロセス製造企業でも、大幅に利益を

伸ばすことができます。数十億ドルの投資をいかに

活用するかが成功のカギを握っているのです。

図2:RODIの増加

組織的課題のカテゴリー

組織的課題があるにもかかわらず達成できる業界全体のRODI (a)

組織的課題を克服することで達成され得る業界全体のRODI (b)

伸ばし損なう業界全体のRODIの増分 c=(b-a)

マネジメント層の連携 9.4% 17.8% 8.4%

技術基盤の構築 8.8% 17.2% 8.4%

スキル育成 9.7% 16.2% 6.5%

パートナーシップの管理 9.7% 15.7% 6.0%

デジタル領域の効果測定 10.6% 14.7% 4.1%

企業文化の育成 10.8% 14.5% 3.7%

RODI Cluster

組み立て製造企業は一般的に、課題に対応することで多大なメリットを得ており、プロセス製造企業も大幅に利益を向上させることができます。

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図3:業界別のRODIの増加

組織的課題 のカテゴリー

伸ばし損なう業界全体のRODIの増分

組み立て製造で伸ばし損なうRODIの増分

プロセス製造で伸ばし損なうRODIの増分

マネジメント層の連携 8.4% 6.1% 10.3%

技術基盤の構築 8.4% 10.3% 7.7%

スキル育成 6.5% 8.2% 4.8%

パートナーシップの管理 6.0% 6.4% 5.6%

デジタル領域の効果測定 4.1% 5.7% 2.3%

企業文化の育成 3.7% – * 6.7%

組織的課題のカテゴリーについて:マネジメント層の連携:デジタル価値の定義や、人材、アセット、エコシステムを活用してデジタル価値を創出する適切な方法について、上級管理職と中間管理職の連携が不足しているという課題。

技術基盤の構築:テクノロジーアーキテクチャに不備があるため、他部門や社外とのコラボレーションによるイノベーションの妨げになっているという課題。また、サービスと製品の複雑な統合の管理が困難になっているという課題。

スキル育成:デジタル技術やプラットフォームを通じて大規模に価値を特定し、説明し、刷新するために必要なスキルが不足しているという課題。

パートナーシップの管理:データがもたらすデジタル価値の構築および拡大方法について、パートナー間で共通の見解が不足しているという課題。

デジタル領域の効果測定:RODIを体系的に追跡するプロセスと指標が存在しないという課題。

企業文化の育成:収益化できるデジタル顧客体験の設計と開発を奨励する文化が醸成できていないという課題。

* 統計的有意差なし

7デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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マネジメント層の連携や技術基盤の構築に関する課題を克服することで、企業は大きな価値を引き出し、収益をほぼ倍増する機会を得られます。続いて、デジタルスキル育成やパートナーシップ管理という課題の克服が重要ということがわかります。また、企業文化の育成によっても、かなりの価値を得られることもわかります。

優秀企業を含むすべての企業が共通の課題に直面していますが、得られるメリットの規模は異なります。優秀企業は、高いRODIを達成していることからも分かるように、重要な課題の一部をすでに克服しています。それでも、さらにRODIを3.5%伸ばすことができます。優秀企業に該当しない企業にとっては、伸ばし損なっているRODIははるかに大きく、約3倍の9.9%に上っています。(図4参照)

図4:優秀企業とその他の企業の潜在的なRODIの増加

優秀企業にとっての潜在的なRODIの増加

その他の企業にとっての潜在的なRODIの増加

マネジメント層の連携 3.5% 9.9%

技術基盤の構築 8.4% 8.4%

スキル育成 4.8% 7.0%

パートナーシップの管理 6.0% 6.0%

デジタル領域の効果測定 1.3% 4.9%

企業文化の育成 3.7% 3.7%

マネジメント層の連携や技術基盤構築に関する課題を克服することで、企業は最大の価値を引き出し、RODIをほぼ倍増する機会を手に入れることができます。

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REALIGN THE BUSINESSすべての優秀企業が克服すべき4つの課題

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スキル育成と企業文化の育成に対応できなければ、その結果として、従来型のITに「デジタルという口紅」を塗っただけに終わる場合が多々あります。

イノベーション拡大に向けて何が障壁になっているのかコロンビア・ビジネス・スクールのビジネス学部助教授であるホルヘ・グーズマン(Jorge Guzman)氏は次のように述べています。「イノベーションが影響を及ぼすのは、導入対象である製品の直接的な利益だけではないことが分かっています。イノベーションは、特定の製品やサービスの純利益に加え、企業が未来に立ち向かう能力を変化させ、リスクはあっても潜在的収益性の高い新しいアイデアに挑戦できるよう後押しします。明らかな競争優位性をもたらす真に革新的なアイデアを見出したい企業は、それに見合ったリスクを覚悟する必要があります。すべての投資が効果を上げるわけではありません」

企業が新しいイノベーションを成功させるには、働き方を見直し、オペレーションのデジタル変革を実現すると伴に、進化し続ける顧客のニーズの先を読み、それを上回っていくことが求められます。これらの実現にあたっては、様々な課題が伴います。

調査対象となった組み立て製造企業およびプロセス製造企業の経営幹部は、PoCの成功を拡大させていく際の主な障壁として、4

つの課題を挙げています。

01. トップダウンでデジタル 価値を定義

最初の課題は、デジタル価値の定義に関して、経営陣の意見を一致させることです。顧客体験の改善や製品の刷新など、デジタル価値を高める意味は、人それぞれに異なる場合があります。しかし、提供したい顧客体験に関して企業のトップの意見が合わなければ、こうした衝突が連鎖的に組織に影響を与え、大きな問題となる可能性があります。

02. 中間管理職との連携

経営陣は、中間管理職がいかに試験的プロジェクトを構築、実行、拡張して効率的にイノベーションを進めるべきか、明確なビジョンを持っていなければなりません。時間や予算に厳しい制限がある中で、中間管理職同士、あるいは中間管理職と経営陣の間に軋轢が存在するなら、企業は掲げた目標に到達することはできないでしょう。

ある産業機器メーカーのCOOは、経営陣がデジタルのバリュープロポジション(提供価値)について合意できないことで、多くの意欲的なデジタル製品が中間管理職のところでストップしていると語っています。例えば、データ収集のため、クライアントに導入したマシンにセンサーを取り付けようとしましたが、収集したデータがどのように役立つかを未だに上級役職者は明確に理解できていないというケースも生じています。

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03. IT資産と人材プールの同期

多く産業機器メーカーは、従来型のITツールやソリューションの扱いに苦労しています。デジタルの専門家の多くは、企業や顧客向けのデジタル製品の設計、開発、拡張にはこれら従来型のツールは不適切で扱いにくいことに気が付いています。一方で、中間管理職や経営陣は必ずしも、新しいITやデジタル技術を活用できるわけではありません。その結果として、従来型のITに「デジタルという口紅」を塗っただけに終わってしまう場合が多々あります。

ブリュッセル自由大学ソルベイ・ブリュッセル経済経営学院のイノベーション&デジタルビジネス担当教授であるニコラス・ファン・ゼブロック(Nicolas van Zeebroeck)氏は次のように述べています。「新しい情報システムは常に、ビジネスプロセスに混乱をもたらすため、それを導入する企業には「組織変革」と「テクノロジー」の両方に投資することが求められます。現代のデジタル技術を活用するには、作業構造を新しく構築し、新たなビジネスモデルとイノベーション促進に向けた、迅速な調整が必要になります」

「新しい作業モデル、デリバリーモデル、ビジネスモデルを実現するには、スキル、文化、ガバナンスを新たに組み合わせ、組織を根本から変えていくことが必要です。組織改革への、こうした補完的な投資がなければ、テクノロジーによって目に見える成果を達成することはできません」

Sasol

南アフリカに本社を置くエネルギー/化学企業のSasolは、企業文化育成と価値の重視によってデジタル変革を促進し、デジタル技術を大規模に導入して競争力を保っています。同社は企業文化の変革に向けた重要な対策を講じており、「デジタル情報管理/リスク回避委員会」を組織して、戦略をサポートする新しいテクノロジーを効果的に活用しています1。また、デジタルロードマップを策定して組織の進化を主導するとともに2、イノベーションを促す雰囲気を作り出せるよう管理職を訓練するリーダーシッププログラム「LEAD Sasol」を立ち上げています3。デジタル化によって、2022年までに3億ドルの価値を獲得できるものと予測しています4。

またSasolは、社内チームがデータサイエンスを用いて、機器のメンテナンス、財務、人事、サプライチェーン管理、およびエネルギー効率の問題やプロジェクトに取り組むための最適な方法をゲーム形式で見つけ出す取り組みを推進5。こうした取り組みは、注文や在庫管理といった主要プロセスの自動化により顧客体験を改善する同社の取り組み「デジタルカタリストプログラム(Digital Catalyst Program)」を補完するとともに6、精油業務の信頼性を向上させる「コネクテッドプラント(Connected

Plant)」プロジェクトでのHoneywellとのコラボレーションを強化しています7。さらに、AGR Softwareとの提携による「デジタルウェル(Digital Well)」プログラムでは、最新の時間/コストモデリング手法によって、油田運営に向けたスクリーニング、分析、計画、パフォーマンス追跡を向上させています8。

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04. デジタルエコシステムでの成功 に向けて、社内のイノベーション を位置付け

製造企業は、社内で設計されたイノベーションと、外部のアジャイルなデジタルエコシステムを連携させる必要があります。さもなければ、イノベーションをサポートする能力に不安を持つ中間管理職や従業員が、エコシステムのエンジニアやイノベーターに自身の仕事を奪われるのではないかと疑心暗鬼になってしまいます。実際、アジリティの概念が経営陣を当惑させるケースは非常に多いとゼブロック氏は述べています。

ゼブロック氏は次のように述べています。「EUの大手企業の多くは、デジタル化が進む未来に備えるため、ときとして取り憑かれたようにアジリティを追い求めます。多くの場合、最初のステップとして、新しいアイデアやソリューションを発案するアジャイルチームやデジタル部門を設立します。しかしその大半は、こうした取り組みを社内外で拡大することに非常に苦労しています。多くの企業において、アジリティは依然としてチームに適用すべき概念ですが、率先して取り入れるべき経営陣においても、完全には統合および適用されていません」

ヒューレット・パッカード・エンタープライズ

ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)の「HPEネクスト(HPE Next)」の取り組みは、組織のアジリティと競争力を向上するため、オペレーション、サプライチェーン、製造、IT、および製品を徹底的に見直すことを使命としています1。HPEはこのために社内の報酬体系を刷新し、営業主導の報酬プランの数を400から25に削減しました2。また、ITシステムとプロセスを再編成し、10のERPで1,000のビジネスプロセスをサポートするという体制から、グローバル単一のERPで100のビジネスプロセスに対応するという体制に移行しました3。さらに、製造拠点を17カ所から7カ所に減らし、100カ所以上あった従業員拠点も8カ所の中央ハブに集約しました4。

またHPEは、中核事業を成長させるため、「パスファインダー(Pathfinder)」と呼ばれるプログラムを立ち上げ、ベンチャー投資や提携に年間1億ドルを計上しています5。2016年以降は、SimpliVityを含む10の買収を完了し、ハイブリッドITビジネスに向けたITインフラストラクチャプラットフォームを実現しています6。

HPEは今後4年で、セキュリティ、AI、機械学習、オートメーション、エッジコンピューティングといった分野の新製品やサービスの構築に、40億ドルを投じる見込みです7。2017年5月には、同社史上最大の研究開発プログラムとなる調査プロジェクト「ザ・マシン(The Machine)」にて、画期的なプロトタイプを発表しました。このメモリー駆動型コンピューティングプロジェクトの目的は、単一メモリーでデータを保管することにより高速な検索を実現する、ビッグデータ時代のコンピューティングのブループリントを作成することにあります8。

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優秀企業がイノベーション拡大のために講じている4つの対策

REINVENT READINESS:

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優秀企業がイノベーション拡張のために講じている4つの対策デジタルへの投資から最大限の利益を引き出している企業は、イノベーションに関連する課題への取り組み方が他社とは異なります。個々のPoCに対して1回限りの決断を下すのではなく、習慣的に適切な判断を下せるよう態勢を整えることで、成功を収めています。優秀企業は拡張の取り組みを最大化するために、構造や組織に反映され、その革新を支えるマッスルメモリー(体感的な記憶)を開発しています。

企業は以下の対策を講じることで、イノベーションの課題に、より効果的に対応し、優秀企業の仲間入りをすることが可能となります。

対策1: イノベーションを促す価値を定義

他社との違いとして、優秀企業は仕事を始める前に、取得したい価値を一貫して定義しています。優秀企業は、成功させようという組織の意欲が伴わないデジタル関連の試験的プロジェクトは大概失敗に終わり、その一番の原因は目標が明確に定義されていないことにあることを理解しています。目の前にあるチャンスを見極めつつ、経営目線で追求したい市場機会を絞り込んでいます。その上で上級役職者が中間管理職と連携し、「トップダウンでの価値創出」および「創出の途中で起こるイノベーションの行き詰まり」という2つの重要な課題を解決しながら、イノベーションの取り組みを主導し、期待どおりの成果を生み出しています。

例えば、鉱業会社のRio Tintoは、「マイン・オブ・ザ・フューチャー(Mine of the Future)」1と呼ばれるプログラムを立ち上げる際に、まずバリュープロポジションを定義しました。その結果、環境への影響を抑え、安全性をさらに改善しつつ、地中深くに眠る鉱物を高度な方法で採取できるようになりました。

Rio Tintoはイノベーションの取り組みを導く価値を定義した後、オーストラリアのパースにオペレーションセンターを設立し、必要な組織変更を行いました。これにより、鉱業場、港、鉄道網を1カ所から運用できるようになり、共有体験と全体的なシステム改善の機会が大幅に増加しました。また、データの収集と分析のために、最先端のデジタル技術を迅速に導入することが可能となりました。

最近では、このオペレーションセンターの責務に、同社の砕石工程の制御が加わりました。鉱業場に到着した岩石が大きすぎて砕石機を通過できない場合、オペレーションセンターのスタッフがリモート制御によって砕石アームを操作します。このアプローチは、作業場の安全性を高めるのみならず、人的ミスからメンテナンスコスト、スタッフの出張費の削減まで、大幅な効率向上をもたらしています2。

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企業が顧客のために対応を試みる内容と、その取り組みを支えるテクノロジーとの間に、分断が見られるケースが多々あります。このギャップは、内部変更の遅延や急増を招く可能性があります。その結果、未来に焦点を絞った人材と従来のIT人材を管理するという課題が浮上しています。

一 方 で 、 組 み 立 て 製 造 と プ ロ セ ス 製 造 の 分 野 の 優 秀企業は、組織変革とデジタル変革の取り組みを融合させ、「双面型」の組織を構築しています3。管理職と従業員は、勾配がきつすぎる学習曲線にはすぐに対応できません。彼らは徐々に習熟を進めることで、次第に必要なコラボレーションと柔軟性に慣れていきます。このアプローチを採用しようという意欲の差を見ると、優秀企業はその他の企業よりも約10パーセントポイント高くなっています。

組み立て製造企業:優秀企業の62.2%は、この双面型アプローチの採用に意欲的であり、優秀企業以外の組み立て製造企業ではその割合は52.9%です。

プロセス業界:優秀企業の63.5%は、双面型アプローチの採用に意欲的であり、優秀企業以外のプロセス企業ではその割合は54.8%です。

優秀企業は双面型のアプローチにより、急速に成熟するデジタル技術を継続的に使用し、その中核を成長させるとともに、新しいテクノロジーを活用して、新たな取り組みを開発し拡大できるようになります。

その典型例を紹介しましょう。自動車部品メーカーのFaureciaは、自動運転車の乗員にパーソナライズされた高度なドライビング体験を提供する「スマート・ライフ・オンボード(Smart Life on Board)」という取り組みのために、成長機会の開拓にフォーカスしています。同時に、デジタル能力のギャップを埋めるために、買収という手段を用いています(詳細についてはP20ケーススタディを参照)。

双面型アプローチで組織変革とデジタル変革の取り組みを巧みに融合したいと考えている優秀企業の割合

62.9%

30

25

35

40

45

50

55

60

65

70

75

対策2: 対外的な価値向上と内部変革の両立を重視

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デジタル製品や新たなビジネスモデルを開発しています。DSFのエンジニアとアクセンチュアのチームは、Schneider Electricの複数の事業部門横断で協力し、予測保守サービスや資産監視スイートなどのデジタルサービス製品の新しいアイデアを生成および具体化しています。

Schneider Electricでは最近、具体的なリクエストを念頭に置き、伝送回線からブレーカーまで、配電設備の熱と湿度を監視する新しい方法を探していました。同社のチームは、特定の無線通信プロトコルと、これらの資産の温度を感知する小型の無線温度センサー技術を用いたソリューションを開発する必要がありました。

従来は、考案プロセスからイノベーションの本格化に進むまで、3年かかる場合もありました。DSFが任務を引き受けたことで、大規模なオペレーションに向けた運用モデルとともに、このソリューションをたった8カ月で開発し、事業化しました。このアジリティと即応性が、コネクテッド製品/サービス、ネットワークエッジでのコントロール、アナリティクス/アプリ/サービスにおける、迅速なデジタルイノベーションにつながりました4。

成功した試験的プロジェクトを拡大・本格化していく際に、優秀企業は、急速に進化するテクノロジーを人材および資産とともに大規模な組織に再統合することの難しさを認識しています。また、双面型のアプローチに沿って、新たな方法を統合し、デジタルエコシステムで成功できるように社内のイノベーションの態勢を整えるという第4の課題を最小化したいと考えています。そのため、組織を動かすエンジンを取り付け直すという重要なステップを講じて、組織の境界内で新しいデジタルイノベーションの種をまき、有機的に育てています。

優秀企業は新たな人材を採用しながら、その過程で既存の人材も統合およびリスキルします。新しいグループを常に企業の損益と関連付け、説明責任を持たせることで、大規模な組織にPoCを拡大する影響を事前に確認することができます。また適切な段階で、新しい製品やサービス、働き方を、組織に容易に統合することもできます。

例えば、Schneider Electricのデジタル・サービス・ファクトリー(Digital Services Factory、DSF)を例に見てみましょう。DSFは社内の開発部門であり、Schneider

Electr icの中核的な専門技術に基づいて、革新的な

経営幹部は、大規 模 な 組 織 にPoCを拡大する影響を事前に確認することができます。

対策3: 社内にイノベーション専門組織を創設

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最後に、イノベーションをどのように機能させたらよいでしょうか。成功させるためには、プロセスの促進に役立つ実現要因がカギとなります。これには、業務オペレーションを支えるためのソフトウェアアプリケーションから、データを取得して分析するプラットフォームに至るまで、あらゆることが当てはまります。アクセンチュアの調査によると、優秀企業に次ぐ第2、第3群企業の一部も、同じ種類の実現要因を適用し、イノベーションを促進していました。しかし、ニーズが最も高く、最も効果的な利用が見込まれる部門に支援をうまく割り当てることができているのは、優秀企業だけです。(図5aおよび5b参照)。

例えば、優秀企業の重要な実現要因の1つに、新しいパートナーの構築や既存の関係の再構築によって、エコシステムパートナーを再定義することがあります。このアプローチにより優秀企業は、製品設計や開発部門で必要となるデジタル人材を確実に確保し、活用できるようになります。人材プールとIT資産を同期させ、デジタルエコシステムで成功できるようにイノベーションを位置付けるという課題に対応することで、こうしたパートナーシップとプラットフォームは、適切な試験的プロジェクトの構築と拡張に必要な人材、テクノロジー、データの不足の解消に役立ちます。

世界的な家電メーカーのHaierは、部門間にわたるコラボレーションを推奨し、デジタルサービスプラットフォームの強みを活用して、大規模なイノベーションを成功させています。

2005年、他の優秀企業から示された展望に従い、Haier

のCEOであるチャン・ルエミン(Zhang Raiman)氏は、組織を数百のマイクロエンタープライズに分割し、国内家電の広範なデリバリープラットフォームに参加させました。その結果、ほとんど階層のない、フラットな環境が構築されました。各ユニットでは、リーダーがさまざまな部門にわたってプロジェクトを計画し、直接コミュニケーションを行い、迅速なイノベーションを後押ししています。こうしたマイクロエンタープライズとそのエンドユーザーコミュニティ間の直接的なやり取りも、大規模な組織にありがちな官僚主義に陥ることなく、イノベーションプロセスを促進しています。同時にこの幅広いプラットフォームは、全体像と細部に焦点を絞り、ビッグデータやスモールデータをリアルタイムで収集および分析し、この情報をマイクロエンタープライズに送出しています5。

清華大学経済管理学院の革新/創業/戦略担当助教授兼副議長であるツー・ヘンユアン(Zhu Hengyuan)氏によると、中国企業の多くは、こうした「反復的イノベーション」を得意だと言います。

優秀企業の重要な 実 現 要 因 の 1つに、新しいパートナーの構築や既存の関係の再 構 築 に よ って、エコシステムパートナーを再定義することがあります。

対策4: 各事業部門でイノベーションを実現

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図5a: 組み立て製造の主な実現要因(部門別)

優秀企業(優)、第2群企業(2)、第3群企業(3)

デジタル人材を確保するために再定義されたエコシステムパートナーシップ

360度のデータをリアルタイムで収集し、分析するためのデジタルサービスプラットフォーム

運用をサポートするためのソフトウェアアプリケーションとハードウェアオーケストレーション

ソフトウェア主導のハードウェアを構築するための柔軟なエンジニアリング/設計チーム

システムエンジニアとUXデザイナーが協力してスマートな製品やサービスを構築

オンタイムでのイノベーションを実現するための部門間コラボレーションと共同革新の新しいモデル

インテリジェントな新たな測定手法

汎用的かつ 専門的なITハードウェアのバックボーン

デザイン思考主導のビジョンとデジタルロードマップ

オープンイノベーションを促進するクラウドベースのプラットフォーム

コストを削減し、成長を促進するデジタル化プロセス

製品&サービス設計

生産&オペレーション

サプライチェーン&物流

営業、アフターセールスサービス

デジタル/物理的セキュリティ

継続的な顧客エンゲージメント

優 優 優 優 優 優2 2 2 2 2 23 3 3 3 3 3

優秀企業の実現要因 優秀企業以外の実現要因

18デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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図5b: プロセス業界の主な実現要因(部門別)

優秀企業(優)、第2群企業(2)、第3群企業(3)

360度のデータをリアルタイムで収集し、分析するためのデジタルサービスプラットフォーム

システムエンジニアとUXデザイナーが協力してスマートな製品やサービスを構築

オープンソース開発をサポートするデジタルプラットフォーム

サービスとしてのオペレーションと提供モデル

運用をサポートするためのソフトウェアアプリケーションとハードウェアオーケストレーション

コストを削減し、成長を促進するデジタル化プロセス

デジタルを有効に適用するために人と機械が協力

継続的なデジタル学習

エコシステムを関与させて顧客に関連する製品を共同で革新

広範かつプリエンプティブなセキュリティアーキテクチャ

オンタイムでのイノベーションを実現するための部門間コラボレーションと共同革新の新しいモデル

製品&サービス設計

生産&オペレーション

サプライチェーン&物流

営業、アフターセールスサービス

デジタル/物理的セキュリティ

継続的な顧客エンゲージメント

優秀企業の実現要因 優秀企業以外の実現要因

優 優 優 優 優 優2 2 2 2 2 23 3 3 3 3 3

19デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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Faurecia

自動車部品メーカーであるFaureciaは、モビリティソリューションをサポートする企業から、高度にコネクテッドな体験を顧客に届ける企業へと転換を進めています。ツーリングオートメーション、製造/物流、品質コントロールおよび管理プロセスにおける効率を改善するために、スマートファクトリーの取り組みを導入しています。また、最高デジタル責任者(CDO)の役職を創設し、デジタル・イニシアチブの向上を命じています1。2015年から2017年にかけて、イノベーションへの資金提供のために行われた効率改善によるコスト削減の金額は、5,700万ユーロから1億6,000万ユーロへと増加しています2。

2016年には、Faureciaは従来の機能を改革するために、デジタルエンタープライズ戦略を開始しました。その結果として、工場内の部品輸送のために無人搬送車を、予測保守のためにコネクテッド機器を、反復的なタスクを担う機械オペレーターを支援するために協働ロボットを導入しました3。また、

「Cockpit of the Future」および「Cockpit Intelligence Platform」を構築するため、Parrot、Clarion、Coagent Electronicsなどを買収しています4。「Cockpit

Intelligence Platform」だけでも、2025年にはSUV/CUV/プレミアム分野の20~30%、電気自動車の新規ユーザーの60~80%を獲得する見込みです(2017年にはそれぞれ5%と20%)5。また同社は、シリコンバレー、トロント、テルアビブ、上海、パリなどにおいて、学術研究機関の学者やスタートアップ企業の独自のネットワークを確立し、健康福祉、サイバーセキュリティ、ゼロエミッションの分野における新しいテクノロジーのプロトタイピングと産業化を促進しています6。

ツー氏は次のように述べています。「優秀企業はまず、最小限の製品やサービスを小規模な市場に投入し、イノベーションのバリューチェーン内の顧客やパートナーからフィードバックを収集します。このフィードバックに基づき、エコシステムの関係者と何度も次回の製品イノベーションに取り組みます。この方法で、製品やサービスを非常に素早くかつ持続的に進化させます」

「中国の企業は、状況に応じて適切な製品やサービスを発表できるよう、素早いイノベーションを重視しています」とツー氏。それが製造環境やサプライチェーン環境など企業内部の状況であろうと、新規市場の登場など企業外部の状況であろうと、関係ありません。

Haierは、自社の運用モデルを「Ren Dan He Yi」(人単合一)と呼んでいます。Renは中国語で従業員を、Danはユーザーの価値を、He Yiは統合とシステム全体の認識を示しています6。

20デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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優秀企業になるためのステップ

REALIZE YOUR POTENTIAL

21デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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テクノロジー主導のイノベーションの時代において、産業界の多くの企業は依然として、デジタルへの移行に取り組んでいます。企業が生き残り、成功するためには、優秀企業に迅速に追い付く必要があり、組織のあらゆるレベルにおいてトップダウンで、適切なツールとチームに最大限の効果を発揮させることが求められます。

朗報としては、調査対象の優秀企業の大半は、何年も前に下した決断によって現在のポジションを獲得していますが、他の企業もまだ優秀企業になるチャンスがあるという点です。4つの対策が、その戦略を示しています。優秀企業になろうとする企業は特に、獲得したい価値の分野や市場機会を特定、明示することで、メリットを得ることができます。また上級管理職は、CXOのリーダーシップの下、チームをつくり前に進めるようになり、成功した試験的プロジェクトの拡大・本格化を推進するために、企業がいかに態勢を整えているかを評価する、重要な役割を担います。

企業は大規模なイノベーションの前に、待ったなしでデジタルに関わるギャップを埋める必要があります。組織のあらゆるレベルで意向を徹底的に共有し、試行と拡大に全社一丸となって取り組まなければなりません。成功を収めるには、顧客のために革新的になろうと切望するのと同様に、自社内に対しても革新的な取り組みを進めることが重要です。

イノベーション拡大に向けて企業が自問すべき問い:

- 従来型の製品やサービスを危機にさらすことなく、イノベーション拡大の取り組みをどの程度サポートできるか

- プラットフォーム、テクノロジー、スキル、エコシステムパートナーの導入についてどのように考えているか

- 優秀企業と同様に、組織的なてこ入れ策を重視しているか

今こそ優秀企業になるための第一歩を

22デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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アクセンチュアの素材・エネルギー本部の成長に向けた方向付け、そのための戦略策定をリードしています。素材・エネルギー本部は、エネルギーのトランジション、デジタル、および循環型経済の登場によって破壊的に変化している、エネルギー、化学、天然資源、電力・ガス業界のお客さまを担当しています。こういった業界の企業が新しい時代へと方向転換しつつ、デジタル能力を活用して中核的なビジネス業務を最適化することで、破壊的変化により生じる課題を克服できるよう支援しています。

プロセス業界の複雑なビジネス変革の定義と実行において25年を超える経験を有し、お客さまがその潜在的な価値を引き出せるよう支援しています。また、アクセンチュアの素材・エネルギー本部自体の戦略策定や、同本部の提供するソリューションやオファリングと人材アジェンダの決定、投資の優先順位の設定、買収の促進、戦略的関係構築などに従事しています。さらに、アクセンチュアのインダストリーX.0に関する各種取り組みのリードスポンサーを務めています。

持続可能性、循環型経済戦略、新エネルギーの取り組みの推進者であり、国連の「Sustainable Energy for All(万人のための持続可能なエネルギー)」の諮問委員を務め、家庭内のエネルギー管理方法を共同で考案。また、Cleveland Hearing & Speech Centerでボランティア活動を行っており、会長や役員を務めた経験もあります。

ニューヨーク市のコロンビア大学で電気工学の理学士号を取得しています。

産業分野の企業のデジタル改革に関するエキスパート。これらの領域のお客さまが中核業務をデジタル化し、事業革新を全面的に推進できるよう支援しています。

ハイテク、石油・天然ガス、電力・ガス業界の大規模企業向けの豊富なコンサルティング経験や、アクセンチュア自身の変革をリードすることで培った広範な戦略、チェンジマネジメント、デリバリーの経験を有しています。アクセンチュアのモビリティ事業を確立するため、能力開発プログラムと一連の合併買収を数年間にわたって主導し、現在はそのスキルを生かして、インダストリーX.0部門のために同様の活動を行っています。

インダストリーX.0事業が目的に確実に適合できるよう、戦略、能力、組織、文化を形成し、パートナーのエコシステムを管理しています。その目的とは、第4次産業革命としても知られる業界のデジタル改革で成功できるよう、お客さまを支援することです。

ダブリン大学で工学の理学士号を取得しています。

執筆者:

[email protected]

@DavidJAbood

[email protected]

@AidanQuilligan

デイヴィッド・アブード(David Abode)

素材・エネルギー本部 成長&戦略リード

エイダン・クイリガン(Aidan Quilligan) アクセンチュア インダストリーX.0 グローバル・リード

23デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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第4次産業革命とインダストリーX.0へのシフトに関し、アクセンチュアのデータモデル、主な洞察、ソート・リーダーシップを形作るグループを主導しています。

市場にとって新しいソート・リーダーシップの創出に23年間携わってきた、経験豊富なリサーチャー。アクセンチュアとお客さまに大きな影響を与える調査プログラムを中心に推進。その成果は、ハーバード・ビジネス・レビュー、スタンフォード・ソーシャル・イノベーション・レビュー、ヨーロピアン・ビジネス・レビューや、その他多くのグローバルなビジネス/リサーチ刊行物で発表されており、さまざまな賞や推薦を獲得しています。

フィナンシャル・エクスプレス誌でインドの若手有力政策立案者に選出された経験を持ち、インドの幅広いビジネス/ソーシャルステークホルダーと継続的に協力し、ビジネスと社会福祉の双方を育成する政策を推進しています。インドの保険規制諮問委員や、第12次5か年計画に関してインドのプランニング・コミッションのスキル/雇用分科会のメンバーを務めた経験もあります。現在は、起業家精神と言論・表現の自由の推進を目指して設立された、フォーラム・オブ・フリー・エンタープライズの運営評議員会に参加しています。

ムンバイ大学で統計学の学士号と経済学の修士号を、エラスムス大学で法律・経済学のヨーロッパ修士号を取得しています。

インダストリーX.0部門と協力し、同グループのソート・リーダーシップ調査の概念形成と実行の責任を担っています。

ソート・リーダーシップ・プリンシパルとして、アクセンチュアのインダストリーX.0のソート・リーダーシップ・アジェンダを策定し、その推進を支援しています。12年以上にわたるリサーチ経験を有し、デジタル改革、インクルーシブなイノベーション、運用の柔軟性、ITの未来、スキル育成といったテーマに関して、同グループの主なアイデア、モデル、洞察、見解の多くに貢献しています。モデルや診断ソリューション、洞察によって、アクセンチュアと顧客がより優れた賢明な判断を下すための支援しています。著作物は、ハーバード・ビジネス・レビュー、フォーチュン、ヨーロピアン・ビジネス・レビューといったビジネス誌や学術誌に掲載されています。

デリー大学ビジネスカレッジで財務の経営学士号を取得しています。

[email protected]

@raghavnarsalay

[email protected]

@aarohisen

執筆者:ラガフ・ナルサライ(Raghav Narsalay) アクセンチュア インダストリーX.0 グローバル・リサーチ・リード

アアロヒ・セン(Aarohi Sen) アクセンチュア インダストリーX.0 ソート・リーダーシップ・プリンシパル

24デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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執筆貢献者エリック・シェーファー(Eric Schaeffer)、フランク・リーメンシュペルガー(Frank Riemensperger)、スベニャ・ファルク(Svenja Falk)、トレイシー・カントリーマン(Tracey Countryman)、デイブ・ソヴィー(Dave Sovie)

諮問委員会以下の有識者による洞察力に満ちたご支援に謝意を表します。

コロンビア・ビジネス・スクール ビジネス学部助教授、ホルヘ・グーズマン(Jorge Guzman)博士

清華大学経済管理学院 革新/創業/戦略担当助教授兼副議長、ツー・ヘンユアン(Zhu Hengyuan)博士

ブリュッセル自由大学ソルベイ・ブリュッセル経済経営学院イノベーション&デジタルビジネス担当教授、ニコラス・ファン・ゼブロック(Nicolas van Zeebroeck)博士

プロジェクトチームプリーティ・バイラ(Preeti Bajla)、トーマス・カスタニーノ(Tomas

Castagnino)、アジャイ・ガーグ(Ajay Garg)、サチン・グッダード(Sachin Guddad)、スルビー・メータ(Surbhi Mehta)、ヴィンチ

ェンツォ・パレルモ(Vincenzo Palermo)、プラカール・サハラワト(Prakhar Saharawat)、アンシュル・シャーマ(Anshul Sharma)、

プラヴィーン・タンギュトリ(Praveen Tanguturi)、ジェフリー・ウィレス(Jeffrey Wheless)

謝辞マーク・アペル(Marc Appel)、マーティン・カウマン(Martin

Cowman)、フロリアン・ハインリックス(Florian Heinrichs)、フランシス・ヒンターマン(Francis Hintermann)、シネイド・ケネディ(Sinead Kennedy)、マーク・レイコック(Mark

Laycock)、ロドリゴ・リマ(Rodrigo Lima)、パディ・リンチ(Paddy Lynch)、ジョン・マクダーモット(John McDermott)、

ジェームズ・マーフィー(James Murphy)、アシュリー・ウィリアムズ(Ashley Williams)、ロバート・ザパルスキ(Robert

Zapalski)

アクセンチュア・リサーチ デイヴィッド・ライト(David Light)、レジーナ・マルカ(Regina Maruca)

25デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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7. Honeywell(2018年)、「Sasol To Use Honeywell Connected Plant To Improve Reliability Of Refining Operations」、2019年2月22日にhttps://www.honeywell.com/newsroom/pressreleases/2018/07/sasol-to-use-honeywell-connected-plant-to-improve-reliability-of-refining-operationsよりダウンロード

8. AGR Software(2018年)、「Sasol selects AGR’s P1™ and Cost Tracker™ for digital well planning」、2019年2月22日にhttps://www.agr.com/news/sasol-selects-agr-s-p1-and-cost-tracker-for-digital-well-planning よりダウンロード

Sasol1. Sasol(2017年)、「Sasol 2017 Integrated Report」、2019年2月22日にhttps://www.sasol.com/extras/IR_2017/pdf/integrated-report.pdfよりダウンロード

2. 同上

3. Sasol(2018年)、「Sasol Sustainability Report 2018」、2019年2月22日にhttp://www.integratedreport.sasol.com/sustainability/developing-and-retaining-high-performance-people.phpよりダウンロード

4. Sasol(2018年)、「Sasol Investor Report 2018」、2019年2月22日にhttps://www.sasol.com/sites/sasol/files/presentations_speeches/SWAN299%20Investor%20PresentationMay%20_%20June%202018%20v3%20small.pdfよりダウンロード

5. Katherine Knowles-MarchioneおよびMariah Kolpek(2018年)、「Sasol: Using Analytics and Data in the Cloud to Create and Deliver Cost Efficient Energy Around the World」、2019年2月22日にhttps://www.teradata.com/Blogs/Sasol-Using-Analytics-and-Data-in-the-Cloud-to-Cr#/よりダウンロード

6. Sasol(2017年)、「Sasol 2017 Integrated Report」、2019年2月22日にhttps://www.sasol.com/extras/IR_2017/pdf/integrated-report.pdfよりダウンロード

レポート本文1. Rio Tinto(2019年)、「Mine of the Future」、2019年1月

12日にhttps://www.riotinto.com/australia/pilbara/mine-of-the-future-9603.aspxよりダウンロード

2. Rio Tinto(2019年)、「What if Gamers could be Miners」、2019年1月12日にhttps://www.riotinto.com/ourcommitment/spotlight-18130_25596.aspx よりダウンロード

3. 詳細についてはこちらを参照:Frank Riemensperger およびSvenja Falk(2019年)、「Titelverteidiger: Wie die deutsche Industrie ihre Spitzenposition auch im digitalen Zeitalter sichert, Redline」

4. Tilak Mitra(2018年)、「How Accenture is reinventing digital transformation through Industry X.0」、2019年1月1日にhttps://www.manufacturingglobal.com/company/how-accenture-reinventing-digital-transformation- through-industry-x0#よりダウンロード

5. Eric SchaefferおよびDavid Sovie(2019年)、「Reinventing the Product: How to transform your business and create value in the digital age」、Kogan Page Publishing

6. 同上

参考文献

26デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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Faurecia

1. LinkedInプロフィール、「Gregoire Ferre - CDO/Head of the Digital Transformation Project at Faurecia」、2019年2月22日にhttps://www.linkedin.com/in/gregoire-ferre-214290/?originalSubdomain=frよりダウンロード

2. Faurecia(2018年)、「Capital Markets Day- Faurecia Transformation」、2019年2月22日にhttp://www.faurecia.com/sites/groupe/files/investisseurs/Investors%20Day%20-%20Presentation.pdfよりダウンロード

3. Faurecia(2016年)、「Registration Document 2016」、2019年2月22日にhttps://www.faurecia.com/sites/groupe/files/investisseurs/faurecia_ddr_2016_veng_1.pdfよりダウンロード

4. Faurecia(2019年)、「Clarion acquisition: Success of the tender offer」、2019年2月22日にhttps://www.faurecia.com/en/newsroom/project-acquire-clarion よりダウンロード

5. Faurecia(2018年)、「Capital Markets Day- Faurecia Transformation」、2019年2月22日にhttp://www.faurecia.com/sites/groupe/files/investisseurs/Investors%20Day%20-%20Presentation.pdfよりダウンロード

6. S&P Global Market Intelligence(2018年)、「Faurecia S.A. Analyst/Investor Day Transcript」(2018年5月15日)、2019年2月22日にhttps://www.capitaliq.com/CIQDotNet/Transcripts/Summary.aspx?CompanyId=423663 よりダウンロード

ヒューレット・パッカード・ エンタープライズ1. Paul Kunert(2017年)、「HPE hatches HPE Next – a

radical overhaul plan so it won’t be HPE Last」、2019年2月22日にhttps://www.theregister.co.uk/2017/06/13/hpe_changes/よりダウンロード

2. Steven Burke(2017年)、「HPE Reduces Internal Comp Plans From 400 To 25 As Part Of Sweeping ‘Next’ Overhaul」、2019年2月22日にhttps://www.crn.com/news/data-center/300094181/hpe-reduces-internal-comp-plans-from-400-to-25-as-part-of-sweeping-next-overhaul.htmよりダウンロード

3. Steven Burke(2017年)、「HPE Names New CIO To Oversee Massive Next IT Restructuring Initiatives」、2019年2月22日にhttps://www.crn.com/news/data-center/300094621/hpe-names-new-cio-to-oversee-massive-next-it-restructuring-initiatives.htmよりダウンロード

4. Steven Burke(2017年)、「HPE Reduces Internal Comp Plans From 400 To 25 As Part Of Sweeping ‘Next’ Overhaul」、2019年2月22日にhttps://www.crn.com/news/data-center/300094181/hpe-reduces-internal-comp-plans-from-400-to-25-as-part-of-sweeping-next-overhaul.htmよりダウンロード

5. Mark Cox(2018年)、「HPE focuses Pathfinder venture strategy on HPE edge and AI priorities」、2019年2月22日にhttp://www.channelbuzz.ca/2018/06/hpe-focuses-pathfinder-venture-strategy-on-hpe-edge-and-ai-priorities-26405/ よりダウンロード

6. Spencer Smith(2017年)、「Taking a look at the HPE hybrid IT strategy」、2019年2月22日にhttps://searchitchannel.techtarget.com/feature/Taking-a-look-at-the-HPE-hybrid-IT-strategyよりダウンロード

7. HPE(2018年)、「Hewlett Packard Enterprise Commits $4 Billion to Accelerate the Intelligent Edge」、2019年2月22日にhttps://www.hpe.com/us/en/newsroom/press-release/2018/06/hewlett-packard-enterprise-commits-4-billion-to-accelerate-the-intelligent-edge.htmlよりダウンロード

8. HPE(2017年)、「HPE Unveils Computer Built for the Era of Big Data」、2019年2月22日にhttps://www.hpe.com/us/en/newsroom/press-release/2017/05/ a-new-computer-built-for-the-big-data-era.htmlよりダウンロード

参考文献

27デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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業界 調査対象の割合航空宇宙・防衛産業 5%自動車 – 自動車付属品/自動車部品 8%自動車 – OEM 7%化学 9%消費財・サービス 11%消費者/エンタープライズ・テクノロジー 9%産業機械 10%ライフサイエンス

(製薬/バイオテクノロジー) 8%医療技術 7%金属・鉱業 5%石油・ガス 7%その他の天然資源

(建築資材/林産物) 3%ユーティリティ

(電力/ガス/水/再生可能エネルギー) 10%

国 調査対象の割合オーストラリア 5.0%ブラジル 3.6%カナダ 1.7%中国 26.1%フィンランド 0.4%フランス 3.9%ドイツ 5.3%インド 3.7%イタリア 3.3%日本 6.1%ノルウェー 0.4%スペイン 1.6%スウェーデン 0.4%スイス 2.7%オランダ 1.0%英国 5.7%米国 29.1%

年間収益10億円を超える、幅広い組み立て/プロセス製造企業の1,350人の経営幹部を対象に調査を実施。

経営幹部の内訳

年間収益

最高幹部(CXO)

上級VP/EVP

VP/ディレクター

10~100億ドル

110~300億ドル

310~500億ドル

500億ドル超

付録:調査方法

22%

18%60%

Exec Profile

12%

4%

79%

Annual Revenue

5%

28デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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最高幹部(CXO)

上級VP/EVP

VP/ディレクター

10~100億ドル

110~300億ドル

310~500億ドル

500億ドル超

本調査では企業に対し、それぞれの社名と、2016~2018

年にかけて新たな体験提供と効率化を推進するデジタルイノベーションの拡大に投じた支出を尋ねました。

一 貫 性 の あ る 調 査 デ ー タ セ ッ ト を 用 い て 、 優 秀 企 業(Champion)、第2群企業(Contender)、第3群企業(Cadet)というグループを導き出しました。

• 優秀企業は、デジタルPoCの50%超を拡張し、調査対象の同業他社が達成している平均RODIや業界平均ROICよりも高いRODIを獲得している企業です。

• 第2群企業は、デジタルPoCの50%超を拡張し、調査対象の同業他社が達成している平均RODIや業界平均ROICよりも低いRODIを獲得している企業です。

• 第3群企業は、デジタルPoCの50%未満を拡張し、調査対象の同業他社が達成している平均RODIや業界平均ROICよりも低いRODIを獲得している企業です。

最後に、調査の具体的な質問を用いて、組織的課題とデジタルROIの関連を把握しました。さらに、優秀企業の優れたROIにつながっている主な差異と推進要因を、他企業と比較しました。

クリーンな調査データを用いて計量経済学モデルを構築し、組織的課題の重大度レベルと達成したRODIの相関関係を推計しました。

RODI = B1 * OrgChallenges + B2* OtherVariables + ε

備考:

B1は、各組織課題とRODIの相関関係をとらえるための6つの係数から成るベクトルです。

OrgChallengesは、後述の6つの課題グループに関するデータ情報を含む行列です。課題がデジタルROIに及ぼす影響を把握するため、6つの課題グループに1つずつ変数を含めています。

B2はOtherVariable行列に含まれる変数の影響を推計するための、3つの係数から成るベクトルです。

OtherVariableは、企業規模(従業員数で測定)、PoCの構築と拡張のために導入される安全対策のレベル、デジタル革命の推進能力から構成される、一連の制御変数が含まれる行列です。

調査で明らかになった、対応が求められる6つの課題グループは以下のとおりです。

マネジメント層の連携:以下を連携できていない:

• デジタル価値に関する上級管理職の意見• 従来型/既存のITアーキテクチャと、デジタル人材/資産プ

ールの要件• 社内のイノベーションシステム/アーキテクチャと、アジ

ャイルなデジタルエコシステム• 顧客に関連する体験に効率的に革新をもたらすチームを

構築するための、上級管理職と中間管理職

スキル育成:以下を行うためのスキルが不足している:• サポートしているバリューチェーンに、どのような破壊

的変化が生じているかを理解する• デジタルのビジネスケースを特定して説明する• デジタル技術とプラットフォームによるイノベーション• 顧客の洞察をPoCに統合する

技術基盤の構築:以下を行うためのテクノロジーアーキテクチャが不十分:• 複数のデジタル技術を結合• 関連するデジタル価値を迅速に変革• サービスチャネルと製品の複雑な統合を管理し、新時代

の体験を推進• ビジネスとエンタープライズ間の協力的なイノベーショ

ンを推進

付録:調査方法

29デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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企業文化の育成:以下を行うための企業文化が欠如:• デジタル技術の即効策を特定して実現• デジタルビジネスモデルを設計、開発、実現• 部門間にわたるテクノロジー主導のイノベーションを促進• 顧客に関連する収益化可能な体験のオンタイムでのイノベー

ションを推進

パートナーシップの管理:以下を行うための(サプライヤー、学術界、スタートアップ企業などとの)パートナーシップの欠如:• 顧客やそのニーズに関する高品質な統一見解を構築するため

に、詳細データを処理• 収益に影響を及ぼす、プロセスやオペレーション間のデジタ

ルギャップを解消• 売上に影響を及ぼす製品を迅速に共同で革新• デジタル人材の不足を解消

デジタル領域の効果測定:以下を行うためのプロセスや指標が不十分:• デジタル技術の投資を体系的に追跡• デジタル技術の投資に対するROIを評価

• デジタル技術の適用から適切な教訓を獲得

組織的課題とRODI間の主要な関係に基づくシナリオ分析の情報として、経済モデルから得た相関関連の結果を使用しました。

付録:調査方法

30デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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31デジタルイノベーションを拡大してビジネス成長を促進する

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アクセンチュアについて

アクセンチュアは「ストラテジー」「コンサルティング」「デジタル」「テクノロジー」「オペレーションズ」の5つの領域で幅広いサービスとソリューションを提供する世界最大級の総合コンサルティング企業です。世界最大の規模を誇るデリバリーネットワークに裏打ちされた、40を超す業界とあらゆる業務に対応可能な豊富な経験と専門スキルなどの強みを生かし、ビジネスとテクノロジーを融合させて、お客様のハイパフォーマンス実現と、持続可能な価値創出を支援しています。世界120

カ国以上のお客様にサービスを提供する48万2,000人の社員が、イノベーションの創出と世界中の人々のより豊かな生活の実現に取り組んでいます。

アクセンチュアの詳細はwww.accenture.comを、アクセンチュア株式会社の詳細はwww.accenture.com/jp

をご覧ください。

アクセンチュア・リサーチについて

アクセンチュア・リサーチはグローバルな組織が直面する最も喫緊の課題についてトレンドを形成し、データに基づく洞察を生み出します。革新的な調査技術とクライアント業界に関する豊富な知識を駆使し、世界20カ国300名のリサーチャーとアナリストによるチームが年間数百本のレポートや記事、意見書を発表しています。プロプライエタリ

データ、およびMITやハーバードといった大手組織との連携に裏打ちされた示唆に富むさまざまな調査がイノベーションの指針となり、クライアントのために理論と斬新なアイデアを実際のソリューションに変えることを可能にしています。

詳細についてはwww.accenture.com/researchをご覧ください。

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