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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過 - 12 - 第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過 本件事故に至る経緯においては、先に生徒Bが■■■■■■■■(以下「P社」と いう。)での就労を開始し、その後、生徒AがP社での就労を開始した。そして、A 中学校は、先に生徒Bの就労について知り、学校としての対応を行った後に、生徒A の就労について知ったという経緯がある。そのため、生徒Aの就労についての事実経 過は、生徒Bの就労についての事実経過の影響を受けており、生徒Bの就労について の事実経過を前提とせざるを得ない。 そこで、第 1 章では、まず、第 1 節で生徒Bの就労の事実経過を述べ、その後に、 2 節で生徒Aの就労の事実経過を述べる。その上で、更に、第 2 章で桐生市立中学 校体育館における生徒Aの壁崩落死亡事故に関する事実経過について述べる。 なお、同体育館における生徒Aの壁崩落死亡事故に関する事実経過については、警 察及び労働基準監督署が詳細な捜査・調査を行っている。他方、本調査委員会が入手 することができる資料及び情報は限られており、詳細な調査は困難であった。そのた め、同事実経過の詳細については、警察及び労働基準監督署の捜査・調査に委ねるこ ととし、本調査委員会は、入手できた資料及び情報から判明した範囲で述べるにとど める。 第1章 中学生就労死亡事故に至る事実経過 本章では、本件事故の発生に至る事実経過を述べる。 第1節 生徒Bの就労の事実経過 生徒BがP社で就労するに至った事実経過及び就労後の事実経過は、以下のとおり である。 1)生徒Bの生活状況 (1) 生徒Bは、生徒Aの親しい友人であった。生徒Aの両親は、生徒Bについて、 「優しい、いい子」であると述べている。また、生徒Bの同級生は、生徒Bにつ いて、面白いタイプの生徒である旨を述べている。 (2) 生徒Bは、中学 1 年生の時は、■■■■■■■■■■■■■■■までは、出席 状況は良好であった。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

本件事故に至る経緯においては、先に生徒Bが■■■■■■■■(以下「P社」と

いう。)での就労を開始し、その後、生徒AがP社での就労を開始した。そして、A

中学校は、先に生徒Bの就労について知り、学校としての対応を行った後に、生徒A

の就労について知ったという経緯がある。そのため、生徒Aの就労についての事実経

過は、生徒Bの就労についての事実経過の影響を受けており、生徒Bの就労について

の事実経過を前提とせざるを得ない。

そこで、第 1 章では、まず、第 1 節で生徒Bの就労の事実経過を述べ、その後に、

第 2節で生徒Aの就労の事実経過を述べる。その上で、更に、第 2章で桐生市立中学

校体育館における生徒Aの壁崩落死亡事故に関する事実経過について述べる。

なお、同体育館における生徒Aの壁崩落死亡事故に関する事実経過については、警

察及び労働基準監督署が詳細な捜査・調査を行っている。他方、本調査委員会が入手

することができる資料及び情報は限られており、詳細な調査は困難であった。そのた

め、同事実経過の詳細については、警察及び労働基準監督署の捜査・調査に委ねるこ

ととし、本調査委員会は、入手できた資料及び情報から判明した範囲で述べるにとど

める。

第1章 中学生就労死亡事故に至る事実経過

本章では、本件事故の発生に至る事実経過を述べる。

第1節 生徒Bの就労の事実経過

生徒BがP社で就労するに至った事実経過及び就労後の事実経過は、以下のとおり

である。

1)生徒Bの生活状況

(1) 生徒Bは、生徒Aの親しい友人であった。生徒Aの両親は、生徒Bについて、

「優しい、いい子」であると述べている。また、生徒Bの同級生は、生徒Bにつ

いて、面白いタイプの生徒である旨を述べている。

(2) 生徒Bは、中学 1年生の時は、■■■■■■■■■■■■■■■までは、出席

状況は良好であった。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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しかし、生徒Bは、1年生の時、■■■■■■■■■■■■■■■■をしたこ

とがあり、■■■■■のことが 3学期に学校に発覚し、謝罪会(■■■■■■■

■■に謝罪をする会)が行われた。

生徒Bは、■■■■■のことで教員から■■■■■■■■■■■■■■■■と

いう暴言を受けたことがショックで、学校には「絶対行かねえ。」と思い、それ

からは学校に「行ったり、行かなかったり」になったと述べている。

生徒Bは、■■■■■の件で教員らから指導を受けた翌日である■■■■日と、

■■■■日から■■日まで、■■日から■■日までは、欠席している。

(3) 生徒Bの中学 2 年生時の生活状況については、2 学期頃から欠席が増加し、3

学期から遅刻が増加した。2学期は、出席■■日、欠席■■日、遅刻■■日、早

退■■日であった。また、3学期は、出席■■日、欠席■■日、遅刻■■日、早

退■■日であった。

学校の記録には、生徒Bの■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■の記載がある。生徒Bが■

■■■■■■■■■■■■後には、「1日学校反省」が行われ、後日、「謝罪会」

が行われたと記載されている。なお、学校の記録中の「学校反省」については、

学校は、「■■■■■■■をした生徒に対して学校の秩序維持のため教室以外で

行う指導です。生徒相談室などで、反省文を書いたり、空き時間の教師と学習す

るなどして落ち着いて過ごします。」と説明している。

(4) 生徒Bの中学 3 年生の 1学期の就労開始前の生活状況については、遅刻や早退

が多かった。なお、就労開始後も含めた 1 学期の出欠状況は、出席■■日、欠席

■■日■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■、遅刻■■日、早退■■日であった。また、

学校の記録には、■■の記載があり、■■■■■■■登校した日には、午前中は

相談室で学校反省をした旨の記載がある。

2)P社での就労の開始と就労の状況

生徒Bは、平成 24(2012)年 2月にP社での就労を開始した。

生徒Bが就労を開始した動機は、「金ねえな。でも遊ぶのはつまんねえな。仕事し

ようかなあ。」と思ったことであった。生徒Bは、仲のいい先輩に頼んで■■■■■

に話してもらい、P社で働くようになった。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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仕事の内容は、ビンやプラスチックなどの分別だった。日当は 5,000 円、時間は、

午前 7 時半から午後 5 時か 5 時半頃までであった。平成 24(2012)年 2 月から同年

年 5月 22日までは、毎週土曜日に働いていた。

生徒Bは、■■■■に対し、「現場に出たい。」と話したことがあったが、■■■

■■■■■■■■■と言われていた。

生徒Bは、仕事について、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■と述べている。

生徒Bは、仕事で貯まったお金は、卒業式に着る刺繍ラン(刺繍等による装飾のあ

る学ラン(学生服))を買うために使った。

3)生徒Bの両親及び A 中学校の対応

生徒BのP社での就労に関する両親及びA中学校の対応は、次のようなものであっ

た。

(1) 生徒Bは、学校では「■■■■やってしまった」という意識があり、次第に学

校に行きづらくなっていた。

生徒Bが親に、学校に行きたくないと言うと、親は、「行け。」と言っていた。

しかし、次第に「嫌ならいいよ。」という感じになった。

生徒Bが親に、「学校に何と言えばいいかな。」と聞くと、親が、■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■と言った。

生徒Bは、平成 24(2012)年 5月 23日から、水曜日から土曜日まで、P社で

働くようになった。

(2) 平成 24(2012)年 5月 23日、生徒Bの父親がA中学校に電話を掛け、電話を

受けた教頭に、親戚がやっている魚屋で働かせたいと話した。

学校側は、校長・教頭・学年主任・担任で話し合い、その週は様子を見て、次

週の同年 5月 28日に生徒Bの両親と生徒Bと面談をすることにした。

第 2部第 1 章第 2節で述べるように、A中学校では、以前から、生徒が就労し

ている事例が複数あり、教員らが「職場体験」として捉えていた事例もあった。

また、教頭が足利市立■■■■■(以下「B中学校」という。)に在籍してい

た昭和 58(1983)年か昭和 59(1984)年頃に、保護者から生徒に親戚のところ

で仕事をさせて立ち直らせたいという申出があり、職場実習のような形で扱った

こともあった。

更に、校長も、市内の教職員が集まる会合(中学校生徒指導連絡会議等)で、

市内のいくつかの中学校において、「職場体験」のようなことが行われていると

いう報告がなされたという話を聞いたことがあった。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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こうしたことから、校長・教頭・学年主任・担任の間では、生徒Bの件につい

ても、「職場体験」のような扱いになるかな、という話をしていた。

しかし、平成 24(2012)年 5月 28日当日、生徒Bの父親が学校に、「都合が

つかなくなった。」と連絡したため、面談は、行われなかった。

(3) 平成 24(2012)年 6 月初め、担任が、クラスの生徒から、生徒BがP社で働

いているという話を聞いた。

担任は、同月 5日、生徒Bが友人たちと一緒にA中学校に来たため、生徒Bに、

「P社で働いているのか。」と聞くと、生徒BはP社で働いていることを認めた。

そのため、担任は、早急に三者面談を実施する必要があることから、生徒Bに

その旨を両親に連絡するよう伝え、同月 8日に生徒B及び生徒Bの両親と面談を

することが決まった。

(4) 平成 24(2012)年 6 月 8 日、担任と学年主任、生徒B、生徒Bの両親で、三

者面談を行った。

担任が、生徒Bの両親に、「生徒Bは、P社で働いているのか。」と確認した

ところ、生徒Bの両親は、生徒BがP社で働いていることを認めた。毎週水曜日

から土曜日まで働いているということであった。

担任が生徒Bに、進路希望について尋ねると、生徒Bは、「就職を希望する。」

と答えた。生徒Bの両親は、「高校に進学してほしい。」と話していた。

生徒Bの両親は、「生徒Bが高校に行く気がなく、■■■生活をしているよう

なら、働く体験をして世の中のことを考えた方がよい。やめたいと本人が言うま

で、期間を設けずに仕事をさせてほしい。」と話した。

そこで、担任は、生徒Bと生徒Bの両親に、体験としてやらせてもらう方法を

考えてみようかと話した。

生徒Bは、担任から、「学校に来ないよりは、『職場体験』という形でやった

方が生徒Bのためにもなる。」、「頑張れよ。」と言われたと認識している。ま

た、生徒Bは、担任から、「仕事に出たら出席にしてやる。」と言われたとも認

識している。

他方、担任は、出席の扱いについては意識しておらず、当時、どのような話を

したかは記憶していないと述べている。

賃金の話については、担任は、次のように述べている。担任が生徒Bの両親に、

「賃金はもらえない。」と話したところ、生徒Bの父親は、「ただで働く人はい

ないでしょう。」と言った。担任は、「『職場体験』なので、こちらからは賃金

は要求できません。」、「ただでもいいという考えでないと、『職場体験』を許

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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可することはできません。」と話した。最終的には、生徒Bの両親は、賃金を要

求できないことについて、了承した様子であった。

他方、生徒Bは、賃金の話については、「お金をもらうことについて、学校は

こだわっていなかったと思う。」と述べている。また、生徒Bは、「お金をもら

えないならそんな仕事はやらない。」と述べている。

担任は、生徒Bの両親に、「校長や教頭と相談してみる。」と話した。

(5) 平成 24(2012)年 6 月 11日の朝、担任と学年主任は、校長・教頭に対し、生

徒BがP社で働いているようだと報告した。

その際に、校長・教頭・担任・学年主任で話をする中で、「職場体験」という

ような形でやってみようかという方向になった。

担任は、校長に、P社に挨拶に行くよう頼んだ。

学校としては、以前にもA中学校で、事業者に挨拶に行った事例があったこと

や、お世話になっているのに黙って預ける訳にはいかないということ等から、挨

拶に行くことになった。

なお、同日、学年主任会で、学年主任が、生徒Bが水・木・金・土とP社で働

いていると報告した。

(6) 生徒Bは、担任から、毎日電話がかかってきて、「今日、仕事どうだった。」

と聞かれ、「今日、行ったよ。」等と話していたと述べている。

他方、担任は、生徒Bが働き始めた後は、時々、「元気かい。」と電話を掛け

る程度であったと述べている。

出席簿には、平成 24(2012)年 5 月 23日以降、毎週、水曜日、木曜日、金曜

日は、「欠席(■■)」と記載されている。

なお、月曜日、火曜日で欠席した日については、「欠席(■■)」(■■■■

■■■■■■■■■■■■)と記載されている。

(7) 平成 24(2012)年 6月 22日、校長と担任は、P社に挨拶に行った。手土産に

スイカを持参した。

生徒Bは、分別するものの回収に出ているとのことで、いなかった。

校長と担任は、P社社長に対し、「お世話になります。」と挨拶をした。

この時、校長と担任は、P社に対し、賃金が支払われているか否かの確認をし

なかった。

(8) 平成 24(2012)年 7 月 5 日、教頭は、市教委に対し、電話で、「生徒Bが 1

か月の『職場体験』をする。保護者からの申出があり、校長も承認している。水

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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曜日から土曜日まで、P社で行う。」と報告した。教頭は、P社に挨拶にも行っ

たので、そろそろ報告しなければと考え、報告した。

この時、教頭は、市教委から、やめるようにとか、賃金を受領しないように等

といった指導を受けなかった。

(9) 平成 24(2012)年 7月 13日、担任が、様子を見るため、P社を再度訪問した。

この時には、生徒Bがいて、ペットボトルのようなものをトラックに積みおろ

す作業をしていた。

担任が生徒Bに声を掛けると、はにかみながら軽くうなずいた。

担任は、P社社長がいなかったため、従業員に挨拶をして帰った。

担任は、この時も、P社に、賃金が支払われているか否かの確認をしなかった。

(10) 平成 24(2012)年 7 月 20 日、生徒Bが放課後に通信票を受け取るためA中

学校に来た。

担任が面談をしたところ、生徒Bは、夏休みは月曜日から土曜日まで働くと話

していた。

なお、学校は、同年 6月 8日の三者面談後、生徒Bに対して、賃金をもらって

いるか否かの確認をしなかった。

第2節 生徒Aの就労の事実経過

生徒AがP社で就労するに至った事実経過及び就労後の事実経過は、以下のとおり

である。

1)生徒Aの生活状況

(1) 生徒Aの中学 1 年生の時の生活状況については、通信票で担任は次のように記

している。

ア いつも明るく元気よく学校生活を送ることができた。

イ 学級の係や園芸委員の仕事には責任をもって取り組むことができた。

ウ 部活動にはとても熱心で尐しでも競技力を向上させようと毎日がんばった

(以上 1学期)。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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エ 笑顔を絶やすことなく 2学期を過すことができた。

オ 行事にも積極的に参加し、特に合唱祭では大きな声で男子パートを引っ張っ

てくれた。

(2) 生徒Aは、あるクラスメイトから見ると、「面白くて明るい子」という印象だ

った。生徒Aは、クラスの生徒たちを笑わせてクラスを盛り上げていたムードメ

ーカー的な存在であり、クラスメイトから好かれていた。授業中も、生徒Aは、

面白いコメントをして他の生徒を笑わせるようなことはあったが、他の生徒に迷

惑を掛けるようなことはなかった。

生徒Aの両親から見ると、生徒Aは人を和ませる性格で、A中学校の同級生や

先輩、他の中学校の生徒を含め、友人が多かった。

(3) 生徒Aの中学 1年生の時の出欠状況は、次のようなものであった。

1 学期は、出席■■日、欠席■■日、遅刻■■日、2 学期は、出席■■日、欠

席■■日、遅刻■■日、3学期は、出席■■日、欠席■■日、遅刻■■日であっ

た。

(4) 生徒Aの中学 2 年生の時の生活状況は、次のようなものであった。

ア 生徒Aの 2年生の時の出欠状況は、1学期は出席■■日、欠席■■日、遅刻

■■日、2 学期は、出席■■日、欠席■■日、遅刻■■日、3 学期は、出席■

■日、欠席■■日、遅刻■■日であった。2学期から、遅刻が多くなった。

イ 生徒Aの両親から見ると、2年生の時には、生徒Aは、担任の指導が合わな

いと感じている様子で、担任に反発することが多かった。生徒Aは、担任が、

生徒たちが騒いでいて言うことを聞かなかったところ、■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■というエピソードを語っていた。

ウ また、2 年生の時、陸上部の顧問教員が代わった。生徒Aは、新しい顧問教

員のもとで、練習の方法が変わったこと等に納得できず、同顧問教員に反発し

ていた。■■■■■■■■■■■によれば、新任の顧問の指導方法に、多くの

部員が反発していた。

学校は、平成 23(2011)年 10月に、生徒Aが陸上部顧問教師に対し、こう

した納得できない気持ちから■■■■■について、「陸上部顧問教師に対する

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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■■■■■■■■■■、「謝罪会」を行った。生徒A及び両親は、この「謝罪

会」において、事実確認の上、陸上部顧問教員に謝罪をさせられた。

エ また、生徒Aの両親は、何度か学校から、生徒Aが■■■■■■■■■とし

て、連絡を受けたり呼び出されたりしたことがあった。

しかし、学校の言う■■■■の内容については、生徒Aの両親から見れば、

■■というほどのことではなかったり、■■■■■■■■■■■■■■のこと

であったりすることが多かった。

このような■■■■についても、謝罪会が行われたことがあった。

オ こうした「謝罪会」について、教員は、周囲が立ち会って、二度と同じよう

なことをしないように見守るという意味でやっていたと述べている。

しかし、生徒Aの母親は、こうした「謝罪会」では、いつも事実確認と謝罪

のみが行われ、生徒Aがなぜそういう行動に出たのか、どういう気持ちだった

のか等の経緯に触れられることはなかったと述べている。

また、学校の記録によれば、生徒Aが■■■■を行ったとされた翌日、一日

にわたる「学校反省」(別室指導)が行われた。生徒Aは、クラスの友達と一

緒にいられない別室指導を嫌がっていた。

カ 生徒Aは、度々教師から指導を受けることについて、「いつも俺ばっかり。」

と反発していた。数人で同じことをやっても、いつも自分だけが呼び出される

と感じていたようだった。

キ 生徒Aの両親は、平成 23(2011)年 11月の恵比寿講(毎年 11月 19日、20

日に足利市内の神社で行われるお祭り)の後、■■■■■■■と感じていた。

生徒Aの父親は、生徒Aの■■■■■■■頃から、■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ことがあった。生徒Aは、

生徒Aの父親に■■■■■■■■。

ク 平成 23(2011)年 12月、生徒Aは、■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ことがあった。

ケ その他、学校の記録には、生徒Aの■■■■■■■等の記載があった。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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コ 生徒Aは、3年生になる前の春休みには、■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■など、■■■■が増えた。生徒Aの両親は、この頃から、生徒

Aと向き合えなくなったと感じていた。

(5) 生徒Aの中学 3 年生 1 学期の生活状況は、次のようなものであった。

ア 生徒Aの 3年生の 1学期の出欠状況は、出席■■日、欠席■■日、遅刻■■

日で不登校傾向がみられるようになった。

イ 生徒Aは、平成 24(2012)年 4 月 9 日の始業式の日、■■■■■■■■登

校した。教員は、生徒相談室で生徒Aに指導を行い、帰宅して■■■■■■■

■■ように指導した。

翌日、生徒Aは、■■■■■■■登校した。

ウ 平成 24(2012)年 4月中旪頃から、生徒Aは遅刻をすることが増えた。

エ 平成 24(2012)年 4月 24日、学校は、生徒Aが■■■■■■■■■■■■

■■■■■■として、翌日は相談室で反省をさせた。

オ 生徒Aの両親は、平成 24(2012)年 5 月初め頃に、生徒Aへの対応につい

て話し合った。生徒Aの母親は、生徒Aの父親に、■■■■■■■■■■何も

ならない、まずは生徒Aと向き合ってからだ、という話をした。その後、生徒

Aの父親が■■■■■■■■■■■ことはなかった。

(6) 中学 3年生のときの生徒Aのクラスでの様子が分かる資料として、3年■組の

クラスメイトが中学校卒業に際して生徒Aに書いた■■■の手紙がある。その中

から、共通性の高い表現と内容を整理して下記にまとめた。

ア 生徒Aはクラスのムードメーカーでクラスの中心的な存在だった(5人)。

イ みんなを笑わせ、クラスを明るくしてくれた(8 人)

ウ 生徒Aのおかげで自分も明るい気持ちになれた(1人)。

エ いつも笑顔で明るい人・やさしい人・おもしろい人(8 人)。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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オ 声をかけてくれた。話をきいてくれた。口下手な自分でも話すことができた

(7 人)。

カ プールの授業の時、生徒Aがかっこよかった。反抗できない自分には憧れの

ようなものがあった(2人)。

キ 男子とケンカしている時にかばってくれた(1人)。

ク 合唱コンクールの時に皆で「生徒Aの分もがんばろう」言い感動して歌った。

一緒にいると思うだけで安心した。生徒Aのことを思い出し、文化祭もクラス

が一つにまとまった(7人)。

ケ 一緒のクラスになれてよかった、たのしかった(6人)。

以上のように、生徒Aは、クラスのムードメーカーであり、男子、女子を問わ

ず人気者であった。笑顔を絶やさず、皆を笑わせ、クラスの雰囲気を明るく盛り

上げていた。また、生徒Aが亡くなった後の行事の際などには、生徒Aに対する

クラスメイトの思いが、クラスをまとめる求心力になっていた。

(7) 生徒Aの中学 3 年生の時の生活状況については、通信票で担任は次のように記

している。

ア 明るく元気で人との会話が大好きである。

イ 1 学期は校外の生活に興味がわき、気持ちが集中できなかった。

ウ 教室に入ってしまえば、クラスの生徒と話したり、遊んだりできる。

エ マイペースだが係の活動もできる。

2)P社での就労の開始

生徒AがP社での就労を開始した頃の経緯は、次のとおりである。

(1) 生徒Aは、平成 24(2012)年 5月中旪頃に、P社での就労を開始した。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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生徒Aが就労を開始した動機は、携帯電話を買うお金が欲しかったことであっ

た。

生徒Aは、生徒Bに頼んで、P社に紹介してもらった。

(2) 平成 24(2012)年 5月 5 日、生徒Aと生徒Aの母親とで出かける機会があり、

その際に、生徒Aが母親に、話があると言った。

(3) 平成 24(2012)年 5月 6日か 7日、生徒Aが母親に、「アルバイトをしたい。」

と話した。

生徒Aの母親は、「そんなの無理だよ。大体、働けるようなところはないでし

ょう。」と話した。生徒Aは、「あるんだよ。」と言い、「P社で働く。」と言

った。

生徒Aの母親は、生徒Aに、「絶対駄目だよ。」と話したが、生徒Aは、「で

も、やるって決めたから。」と言った。

生徒Bは、生徒Aから、「(両親が)全然、行かしてくれねえんだ。」という

話を聞いていた。

(4) 平成 24(2012)年 5 月 8 日か 9 日、生徒Aは、両親に対し、「今週からP社

で働く。」、「もう断れない。」と話した。

生徒Aの父親が、「いろいろなところに迷惑を掛けてしまう可能性が高い。」

と話したところ、生徒Aは、「じゃあやめる。」、「行かないって言う。」と言

った。

(5) 平成 24(2012)年 5月 12日頃、生徒Aの自宅で、茶色い作業着が脱いで置い

てあった。生徒Aの母親が生徒Aに、「何これ。」と言うと、生徒Aは、「先輩

にもらったんだよ。」と言った。

また、その後、生徒Aの両親は、自宅に安全靴が置いてあるのを見付けた。

(6) 平成 24(2012)年 5月 19日か 20日頃、生徒Aと両親とで話合いをした。

両親が、P社に行っているのかと聞くと、生徒Aは、「1回だけ、どうしても

断れなくて、行っちゃった。」と言った。生徒Aは、「本当は、やりたいんだ。」

と言った。

両親は、「今やるべきことは中学校に通うことだ。」、「働くのはいつでもで

きる。」、「認めるわけには行かない。」等と話した。

生徒Aは、「いつも俺ばっかり。」、「何でも駄目、駄目って言う。」と言っ

た。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

- 23 -

しかし、最終的には、生徒Aは、分かったよというような様子だった。

3)就労開始後の状況と生徒Aの両親の対応

就労開始後の生徒Aの状況と両親の対応は、次のとおりである。

(1) 生徒Aの母親は、平成 24(2012)年 5 月から 6 月にかけて、生徒Aの母親の

■■や会社の同僚、生徒Aの友人の母親等に相談した。

友人の母親からは、P社について、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■等と言われた。

また、生徒Aの母親は、■■に相談した際、■■からも生徒Aが働くのをやめ

るように説得してもらえるよう頼んだ。

(2) 平成 24(2012)年 5 月 21 日か 22 日頃、生徒Aは、生徒Aの母親に、「平日

働きたい。」と話した。

生徒Aの母親は、生徒Aに、「駄目だよ。」と話した。しかし、生徒Aは、納

得していなかった。

生徒Aの母親は、仕事に行っている生徒Aの父親に、電話を掛けて話した。生

徒Aの父親は、生徒Aの母親に、説得するように言った。

(3) 平成 24(2012)年 5月 23日、生徒Aは、■■■■■■■■■■■■■■■床

屋に髪を切りに行った。

■■は、生徒Aに、働くのは、やめるように話してくれたようだった。

(4) 平成 24(2012)年 5月 24日、朝 6 時頃、生徒Aは、膨らんだ鞄を持って 2階

から降りてきて、「朝練があるから後輩の家に行く。」と言って出て行った。ま

た、1 階に置いてあったはずの安全靴がなかった。

生徒Aの母親は、「様子がおかしい。」と思い、生徒Aが行くと言っていた後

輩の家に電話をしたところ、「生徒Aは、来ていない。」とのことだった。後輩

の母親から、「もしかして、生徒A、仕事をしていないですか。」、「もしかし

たら、行っているかもしれないですよ。」と言われた。後輩の母親によれば、生

徒Aが後輩の家に行った時に、仕事をしているような話をしていたとのことだっ

た。

生徒Aの両親は、P社に様子を見に行ったが、なかなかP社の中に入ることが

できずにうろうろしていた。そうしたところ、社長と従業員 2人がいて、「何か

ありましたか。」と声を掛けられた。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

- 24 -

生徒Aの母親が、「子どもを探しているんです。中学 3年生の男の子なんです

けど。」と言うと、社長から、「じゃ、見付けたら連絡します。」と言われた。

その後、30 分もしないうちに、生徒Aから生徒Aの母親の携帯電話に電話が

あった。生徒Aは、「今、社長から、『お母さんとお父さんが探している。心配

している。』って言われた。」と話した。

生徒Aの母親が、「すぐ戻ってきて。」と言うと、生徒Aは、「もう、無理だ

から。仕事戻らなきゃ。」と言った。生徒Aの母親は、一度電話を切り、生徒A

の父親と二人でP社の中に入った。

中には、若い従業員が何人かいた。生徒Aは、缶の分別のような作業をしてい

た。

生徒Aの両親は、社長と話がしたかったが、従業員に聞くと、社長は、「夕方

にならないと戻ってこない。」と言われたので、一度家に帰った。

生徒Aの両親は、夕方に再びP社に行き、社長と話をした。生徒Aの両親は、

社長に対し、「中学生なので、学校に通うことが優先だと思う。」等と話した。

生徒Aの母親によれば、社長は、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■等と話したという。

生徒Aの両親は、「でも、まだ中学生なので。」、「学校を優先させたい。」

と話した。

生徒Aの母親によれば、■■■■「学校は行った方がいいと思うから、学校に

行くようには自分からも言います。」、「ただ、学校がない日には、缶の分別の

手伝いとか、そういう危なくない仕事を手伝いに来ているということは、悪いこ

とじゃない。」等と言ったという。

また、■■が帰ってきたときに、どこかの現場で何かやってきたというような

話をしていた。生徒Aの父親が、■■の話を耳にし、「それ何ですか。」と■■

に聞いた。■■■■「解体の現場をやっている。だけど、心配しないでください。

中学生は、表に出すようなことはないから。」と言った。

(5) 生徒Aの両親は、先に自宅に帰った。

午後 7時半過ぎに生徒Aが帰ってきて、話合いをした。生徒Aの両親は、生徒

Aに、「(P社に)行かないと言っていたのに、なぜ行ったのか。」と聞いた。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

- 25 -

生徒Aは、「やっぱり自分は、どうしてもやりたかった。自分だけができない

というのはおかしい。」、「学校に行っても自分の居場所はない。だったら、自

分が今、できることをやっていた方がいい。」と言った。

生徒Aの両親は、「でも、学校には、行かなければならない。社会人になるた

めに必要な勉強を教えてくれるところだから。」等と話した。また、義務教育に

ついて説明したり、働くことが違法だということも話したりした。

しかし、生徒Aは、「じゃ、どうして、やっている人がいるの。いけないのは

分かっている。でも、そういう場所がある。みんなは、働いている。どうして、

いつも俺だけ。何でも駄目だ、駄目だって。」等と言っていた。

生徒Aの父親が、「生徒Bは、会社にいなかったけど、どこに行っていたの。」

と聞くと、生徒Aは、「現場だよ。」と答えた。生徒Aの父親が「現場って何。」

と聞くと、生徒Aは、「アルミ缶の回収があって、それを現場って言っているん

だよ。」と言っていた。生徒Aの父親が、「どこに行くの。」と聞くと、生徒A

は、「コンビニだとか、飲料メーカーの配送センターのようなものがあって、そ

こにたくさん空き缶があるから、そっくり引き上げてくる。」と答えた。

(6) その後は、生徒Aの両親から見たところ、生徒Aは、毎週土曜日には、P社に

行っているようであったが、平日には、行っている様子はなかった。

自宅には、白い作業着と黒い作業着があった。生徒Aの両親が、「作業着は、

どうしたのか。」と聞くと、「買ってきた。」と言っていた。

また、自宅には、安全靴もあった。生徒Aの母親が、安全靴について、「スニ

ーカーとか、普通の厚手の靴でいいんじゃない。」と言うと、生徒Aは、「安全

靴じゃないと駄目だ。」と言っていた。

生徒Aの母親が、「何で。」と聞くと、生徒Aは、「結構危険で、色んなとこ

ろを歩くから、安全靴じゃないと駄目だって言われたんだよ。」と答えた。

また、作業着からは、強烈なにおいがしていたので、生徒Aの父親が、「何で

こんなに臭いんだ。」と聞くと、生徒Aは、「缶の中には、煙草の吸い殻とか飲

み残しとかそういうのがあって、ものすごいにおいの中でやっているんだよ。」

と言っていた。

(7) 生徒Aの両親は、生徒Aが働くことをやめさせたいと考えていた。当初、生徒

Aの両親は繰り返し、働くことをやめるように話した。

特に、生徒Aの父親は、強く反対したため、生徒Aは、強く反発していた。夏

休み頃には、生徒Aの父親と生徒Aとの会話は、ほとんどないような状況だった。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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生徒Aの母親は、次第に、「生徒Aは反発をしたい時期だから、逆にここで頭

ごなしに注意すると、何をするかわからず、かえって取り返しのつかないことに

なってしまう。」と考えるようになった。

生徒Aは、一時期家族から離れていってしまっていて、家族も悩んでいたが、

尐しずつ家族に心を開いてきてくれていた。そのため、生徒Aの母親は、「まず

は、生徒Aとしっかりコミュニケーションを取って、生徒Aが心を開いてくれれ

ば、そこから生徒Aが変わっていってくれるのではないか。」と考えていた。

また、生徒Aの母親は、生徒Aは、働き始めてから、■■■■■■■■■して

いた時よりは、成長が見られると感じていた。何かに向かって一生懸命やるとい

うことにより、顔つきも変わってきており、生徒Aの両親とも向き合えるように

なってきていると感じていた。

こうしたことから、生徒Aの母親は、いずれは働くのをやめさせたい気持ちを

持ちながらも、生徒Aの様子を見ていた。

ただ、生徒Aの両親が、「土日に大会や三者面談があるから、この日は、P社

に行けないよ。」という話をしても、生徒Aが、「休むと仕事がもらえなくなっ

てしまう。」と言うことがあった。生徒Aの両親は、「それは、違うよ。」と話

をした。このように、生徒Aが本当に就職したときのような責任の感じ方をして

いるような話をしてきたので、生徒Aの両親としては、「何か履き違えているの

ではないか。」という印象を持つこともあった。

(8) 生徒Aの母親は、学校に働いていることを話さなければいけないという気持ち

は持っていた。

しかし、生徒A自身が、「学校に働いていることを話すとみんなに迷惑が掛か

るから言えない。」と言って、気にしていた。

生徒Aの母親は、学校に話せば解決するとは思っていなかった。また、もし、

学校に話せば、大きな問題になったり、友達との間で問題が生じたりして、生徒

Aが両親から離れていってしまい、本当のことを話さなくなってしまうのではな

いかという不安を持っていた。

こうしたことから、生徒Aの両親は、学校に働いていることを話そうとは思わ

なかった。

(9) 生徒Bは、生徒Aの両親が反対をしていたことから、生徒Aが、何度か学校に

行くふりをして、鞄の中に作業着を入れて生徒Bの家に来て、着替えて仕事に行

ったことがあったと述べている。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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4)就労開始前後の学校での生活状況

生徒AがP社での就労を開始した前後の学校での生活状況は、次のようなものであ

った。

(1) 平成 24(2012)年 5 月 7 日、生徒Aは、遅刻して 5 校時から登校し、起きら

れないと訴えていた。この日から、遅刻が増加した。

(2) 平成 24(2012)年 5 月 8 日、生徒Aは、「学校がつまんね~、遊ぶやつがい

ね~。」と担任に話した。

(3) 平成 24(2012)年 5月 14日以降、生徒Aは、■■■欠席をするようになった。

生徒Aの母親は、生徒Aが休みがちになった頃、担任が心配をして、よく電話

を掛けてきたと述べている。生徒Aの母親は、担任は、親身になって心配してく

れていると感じていた。

生徒Aの母親は、こうした担任と母親とのやり取りの中で、担任から、「お父

さんが行っている会社に一週間ぐらい体験のようなことをするというのもあり

ますよ。」というようなことを言われたことがあったと述べている。

生徒Aの母親によれば、生徒Aの遅刻や欠席の理由は、ほとんどは、■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■ではなかった。

(4) 平成 24(2012)年 5月 15日、生徒Aは、遅刻して 2校時から登校し、「眠い。」

と訴え、前日の■■■■■クラブでの練習で疲れたし、寝不足だと話した。

■■■■■クラブについては、生徒Aの母親によれば、生徒Aは、P社で働く

ようになった後、■■■■■■■■先輩たちが何人か参加しているということで、

誘われたようだった。

(5) 平成 24(2012)年 5月 29日、生徒Aは■■し、友人と一緒に担任に不満を言

いに行った。生徒Aは、「いちいち指導されるのはいやだ。」、「働きたい。」、

「合唱はがんばりたい。」、「学校は時々来たい。」などと述べた。

担任は、「■■■■■■はダメ。学校は毎日来る。合唱は練習をしっかりやれ。」

と指導した。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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(6) 平成 24(2012)年 5月 31日、生徒Aは朝 6時に■■■登校し、■■■■■■

■■■■■■指導を受けた。給食時に戻り、友人と一緒に給食を食べた。部活に

は参加した。

(7) 平成 24(2012)年 6 月 7 日、生徒Aは■■であった。生徒Aは教員に対し、

「■■■■■自分を責める。居場所がない。」と話した。

(8) 平成 24(2012)年 6月 15日、生徒Aは、教育相談の教員に連れてこられ、昼

休みに 30分くらいスマイルルームでスクールカウンセラーと面談した。

スクールカウンセラーは、生徒Aが、学校外で■■■■■ことを話したと述べ

ている。また、スクールカウンセラーは、生徒Aが、「■■■■■■■」、

■■■■■■■■■■■■等と言い、腹を立てていると話したと述べている。

生徒Aは、「もう相談室には来ないよ。」と言って帰って行った。

スクールカウンセラーは、中学 2年生時に生徒Aは■■■■■■■■と感じた

こと、また、■■■■■■■■■■■■■を行った際に、生徒Aの感性豊かな■

■■■■■■■■と感じたこと、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■と考えていたことなどから、生徒A

は、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■と考え、■■■■■■■■

■■■と思っていたという■■■■■■■■■■■■■■■。

スクールカウンセラーは、生徒Aと話した後、担任に、生徒Aから聞いた話を

報告した。また、スクールカウンセラーは、担任に、生徒Aは■■■■■■■■

■ ■ ■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■と話した。そして、スクールカウンセラーは、生徒Aには「駄

目」という言葉を使わない方がよいと話した。

この「『駄目』という言葉を使わない方がよいと話した」という点について、

スクールカウンセラーは、「駄目」という言葉を使うのではなく、具体的に、「こ

れはやらない方がよい。」等と言った方がよいと話した旨を述べている。

担任は、スクールカウンセラーから、生徒Aには「駄目」と言ってはいけない、

約束をして守れたら、「守れたね。」という言い方をした方がよいという話を聞

いた旨を述べている。

また、担任は、このスクールカウンセラーからの報告の際に、スクールカウン

セラーから、もしかしたら生徒Aは、アルバイトをしているかもしれないという

話を聞いたと述べている。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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(9) 平成 24(2012)年 6 月 22日、生徒Aの母親とスクールカウンセラーが面談を

した。この時に、母親は、生徒Aが■■■■■クラブに通っているという話をし

た。

(10) 平成 24(2012)年 6 月 25 日、生徒Aは■■■■■し、■■■■■■ように

指導を受け、その後は学校に戻らなかった。

(11) 平成 24(2012)年 6月 28日、生徒Aが■■■■■■■■■■■■■■■■■

があり、生徒Aの母親は、学校に呼び出された。同月 30 日(土曜日)、同年 7

月 1日(日曜日)と、生徒Aは、自宅謹慎になった。

この時、生徒Aの母親は、生徒Aに「自宅にいなければならない。」と話し、

「(P社に)行けないことは、前もって電話しないといけないよ。」と言い、生

徒Aの母親の携帯を貸して、P社に電話させた。生徒Aは、「学校謹慎になっち

ゃったんで、今日は行けません。」と■■■言っていた。

ところが、その後、生徒Bから生徒Aに電話があり、■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■言われたとのことだった。

そこで、生徒Aの母親から■■■電話を掛け、「生徒Aから電話があったと思

うんですけど。学校謹慎になっちゃったんで、行ける状態じゃないので。」と話

した。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■電話を切った。生徒Aの母

親は、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。

なお、平成 24(2012)年 7 月 2 日、生徒Aは学校反省をさせられた。同月 3

日から同月 5 日まで欠席し、同月 6 日、5 校時より母親に励まされて登校した。

同月 9日、生徒Aは学校反省させられた。

(12) 平成 24(2012)年 7月 6日、生徒Aが図書室に行った際に、教育相談の教員

がスクールカウンセラーを呼び、スクールカウンセラーと生徒Aで約 20 分話を

した。

スクールカウンセラーは、生徒Aと、その後どうしているか、高校はどうする

のか等の話をした。生徒Aは、質問に答えるのみで自発的に話をしなかった。ス

クールカウンセラーは、生徒Aが大人不信になっていると感じた。

スクールカウンセラーは、面談後、担任に対して、生徒Aが■■■■■■■■

■■■■■いたことを報告した。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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(13) 平成 24(2012)年 7月 13日、生徒Aが■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■とのことで、生徒Aの母親は学校に

呼び出された。

(14) 夏休みに入り、平成 24(2012)年 7月 23日、生徒AはP社に行った。

生徒Aは、その後について、母親に、「毎日行くんだ。」と言っていた。

(15) 平成 24(2012)年 7 月 26 日に三者面談が行われることになり、生徒Aの母

親は、生徒Aに、同日は仕事を休むように言った。

しかし、生徒Aは、「じゃあ、抜けるから。」と言っていた。

生徒Aの母親は、生徒Aに、「夏休みなんだから、休めばいいじゃない。」と

話した。

しかし、生徒Aは、「駄目だって。抜けなきゃいけないから。」と言っていた。

5)就労の発覚と学校の対応について

生徒Aの就労が発覚した後のA中学校の対応は、次のとおりであった。

(1) 平成 24(2012)年 7月 25日、教頭は、夕方に車で足利市内のショッピングセ

ンターのところを通った際に、生徒Bと生徒Aが作業服を着て■■■■■■歩い

ているところを目撃した。

(2) 平成 24(2012)年 7月 26日、教頭は、担任に、生徒Bと生徒Aを目撃したこ

とを話し、生徒Aについて、「もしかしたら、働いているんじゃないか。」と言

った。担任は、ちょうど当日、生徒Aの三者面談があると言った。そこで、教頭

は担任に、生徒Aに事実を確認するように話した。

同日、担任と生徒A・生徒Aの母親とで、三者面談を行った。

初めは、担任が、「部活を最後までやれてよかったね。」等の話をし、その後

に卒業後の進路の話をした。生徒Aは、「卒業後は、働きたい。」と言った。生

徒Aの母親は、「できれば通信制の学校に通わせたい。」と言った。生徒Aは、

「通信制は、嫌だ。」と言っていた。

その後、担任は、「ショッピングセンターで教頭が生徒Aを見かけたらしい。

作業服のような格好をしていたようだけど。」と切り出した。

生徒Aの母親は、3)で述べたように、学校に知られることで、大きな問題に

なったり、友達との間で問題が生じたりしないかという不安を持っていた。しか

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

- 31 -

し、担任に言われてしまった以上、もう話すしかないと思い、生徒AがP社で働

いていることを話した。

担任が生徒Aに、「卒業後もP社で働きたいのか。」と聞くと、生徒Aは、「そ

れは、嫌だ。」と答えた。

担任は、いつから行っているのかと聞いた。

生徒Aの母親と生徒Aは、「5月の連休の次の土曜日から、10~15回くらい行

っている。夏休みに入ってからは毎日行っている。今日の午前中も行ってきて途

中であがってきた。あまり休むとクビになってしまう。」等と話した。

また、生徒Aは、「働いている時間は、朝の 7 時 30 分から 17 時で、休みは

12時から 13 時 30 分、10 時と 15時にそれぞれ 30分の休みがある。」と話した。

担任は、生徒Aに、どんな仕事をやっているのか聞いた。生徒Aは、「ペット

ボトルや缶の仕分けをしている。」等と話した。

担任が賃金について聞くと、生徒Aの母親は、5,000円と答えた。担任は、「5,000

円ももらっているのか。何に使うんですか。」というようなことを聞いた。

担任が、なぜこういうことになったのかと聞くと、生徒Aは、「お金が欲しい。

夏休みになると時間がある。生徒Bも行っている。携帯電話を買いたい。海にも

行きたい。自転車を買いたい。」などと言っていた。

生徒Aの母親は、上記のように、学校に知られることを望んでいなかったため、

早く終わらないかという気持ちで話をしていた。

生徒Aの母親は、学校に対して、生徒Aの両親が働くことを希望していると受

け取られるような表現はしていないと述べている。

また、担任は、生徒Aの母親の話については、「仕方なく行かせているという

感じだった。」と述べている。また、事後に報告を受けた教頭は、母親が面談の

際に、「すみません、すみません。」と言っていたと聞いた。

担任は、スクールカウンセラーからの指導により、生徒Aに駄目とは言えない

と考え、「働くことはまずい。」と言ったと述べている。

生徒Aの母親は、担任の反応は、あまりよくないですね、認めるわけにはいか

ないというような感じだったと記憶している。ただ、「働くことはいけないから、

やめてください。」と強く禁止するようなことは、言われなかったと記憶してい

る。

この三者面談では、「職場体験」として扱うという話は、出なかった。担任は、

生徒Aの母親に、校長や教頭に報告すると言った。

(3) 担任は、三者面談後に職員室に戻り、すぐに、教頭に対し、「生徒Aが働いて

いるのは、間違いない。連休明けから働いている。」等と報告した。教頭は、担

任の報告の内容を校長に伝えた。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

- 32 -

教頭は、保護者が希望していると聞いたわけではないが、子どもが仕事に行っ

ていて、親が「行かせている」ということは、保護者も「了解している」のだろ

う、と考えた。

校長、教頭、担任らの間では、生徒Bという前例ができてしまったので、「生

徒Aの場合も、生徒Bと同じような方向でやっていかなければならないね。」と

いう話をした。具体的には、両親の意向をまず聞いて、両親も希望しているのな

ら、同じように挨拶に行くということで相談していた。

もっとも、当日、夜 7時から家庭教育懇談会が予定されており、ゆっくり相談

をしている時間がなかったこともあり、具体的に、生徒Aの両親との面談を設定

しようという話までは出ていなかった。

(4) 教頭は、担任から聞いた内容をメモし、同日(平成 24(2012)年 7月 26日)、

市教委に電話で報告した。

報告した内容は、生徒AがP社に行っていること、同年 5月下旪から土曜日に

行っていること、時間が午前 7 時半から午後 5 時までであること、賃金を1日

5,000円もらっていること等である。教頭は、市教委から、「お金のやりとりは、

まずいですよね。」という指摘を受けた。

(5) その後については、いつ生徒Aの両親を呼ぶ等の具体的な話は、決まっておら

ず、A中学校から生徒Aの両親に連絡をしたことはなかった。夏休みに入ってお

り、担任は部活動で忙しく、生徒Aの両親と会う余裕がなかった。

6)面談後の経過

(1) その後、平成 24(2012)年 7 月 27 日、28 日、30 日、31 日、8 月 1 日から 4

日までは、生徒Aは、P社に行っていた。

(2) 平成 24(2012)年 8月 4日、生徒Aは友人らと花火大会に行った。生徒Aは、

花火大会の後、コンビニエンスストアーで■■■■■■■■■■■■■■■。■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■生徒Aの父親が迎えに

行ったところ、自転車がなかった。生徒Aに「自転車はどうしたんだ。」と尋ね

ると、生徒Aは、「自転車は、壊れたので置いてきた。」と言っていた。

(3) 平成 24(2012)年 8 月 5 日、生徒Aは自転車を取りに行ったが、なくなって

しまっていた。そこで、生徒Aは、近所の自転車屋に行き、働いて貯めたお金で

新しい自転車を買った。自分で働いたお金で買ったので、嬉しかった様子だった。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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(4) 生徒Aが帰宅した後、家族で話合いをした。生徒Aは、「将来、建築関係の仕

事に就きたい。」と言っていた。「P社の仕事は、長くは続けない。夏休み明け

くらいには、早く辞めたい。」とも話していた。

生徒Aの父親は、「高校も、今からならまだ間に合うかもしれない。P社にず

っと行っていれば、そのまま働くことになってしまうから。」と話した。

生徒Aは、高校進学は諦めている様子だったが、生徒Aの両親が、「まだやっ

てもいないのに、諦めるのは早いんだよ。」と話すと、考えている様子だった。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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第2章 桐生市立中学校体育館における生徒Aの壁崩落死亡事故に関す

る事実経過

第1節 建設工事請負契約について(前提事実)

平成 24(2012)年 7 月 3 日、黒保根中学校の耐震及び各所の改修工事を目的とし

た建設工事の請負契約が、指名競争入札の方式により、桐生市と■■■■■■■(以

下「Q社」という。)との間で締結され、翌 4日から同年 12月 10 日までが工期とし

て合意された。

上記建設工事のうち、解体工事に係る部分は、同年 7 月 31 日、工期を同年 8 月 5

日から同月 31 日までとして、Q社から■■■■■■■■(以下「R社」という。)

に下請に付された。なお、同年 7 月 30 日には、■■■■■■■■(以下「S社」と

いう。)とR社との間で、上記解体工事の再下請契約をすることが合意されていた。

これにより、黒保根中学校の耐震及び各所の改修工事を目的とした建設工事のうち

解体工事について、Q社が元請、R社が一次下請、S社が二次下請として関与するこ

とになった。

更に、生徒Aが勤務していたP社も上記解体工事に関与しているが、S社の下請と

して関与しているのか、S社に人材を派遣したものであるのかについて、関係各所か

らの明確な回答がなく、判明しなかった。ただし、元請業者が桐生市に提出する施工

体系図には、本来下請業者が全て記載されるから、下請業者の関係は施工体系図を見

れば一目瞭然であるところ、本件建設工事においては、Q社から提出された施工体系

図にはR社、S社までの記載しかなかった。

第2節 事故当日に予定されていた解体工事について

黒保根中学校の耐震及び各所の改修工事のうち、解体工事として予定されていたの

は、体育館の天井やコンクリートブロックの間仕切り壁の部分撤去と付属物置の撤去

であった。

このうち、事故のあった平成 24(2012)年 8 月 6 日に予定されていた作業は、体

育館のコンクリートブロック壁の解体とアルミ建具の撤去だった。なお、コンクリー

トブロック壁は、体育館の北東出入り口の西隣に位置する器具庫と更衣室の間仕切り

壁として設置されているものである。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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第3節 事故当日工事現場にいた生徒について

工事関係資料によれば、平成 24(2012)年 8月 6日、当該工事現場には、生徒A、

生徒Bの他に、もう一人の中学生がいたと記載されていた。ただし、関係各所からの

回答がないため、現場にいたとされる中学生の所属中学校や氏名等は不明である。ま

た、第 5節で後述するように、生徒A、生徒Bらが年齢を詐称して工事現場に入場し

ていたこと、工事現場には同年中学校を卒業した未成年者も入場していたことなども

考えると、工事関係者が中学生ではない未成年者を中学生であると誤解していた可能

性もある。

第4節 本件事故現場に生徒Aらが行くことになった経緯

平成 24(2012)年 8 月 5 日の夕方、生徒Bの携帯電話に■■■■■が電話を掛け

てきて、翌日解体現場の仕事に出られないかと生徒Bに打診してきた。これまで、生

徒Bは中学生であるという理由で解体現場には連れて行ってもらえなかったが、同日

の■■■■■によると、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ことで

あったので、生徒Bは、■■■■の出勤要請を受けて、翌日解体工事の現場に出向く

ことを了承した。

生徒Aが、誰からどのように連絡を受けて本件解体工事の現場に出向くことになっ

たのかは不明であるが、生徒Aも生徒Bと一緒に同年 8月 6日に解体工事の現場に出

向くことになった。

第5節 本件事故当日の状況

(1) 生徒Aと生徒Bは、平成 24(2012)年 8月 6日の午前 6時 35 分頃、会社の先輩

の運転する自動車に同乗して黒保根中学校に向かい、午前 8 時 30 分頃までには現

場に到着した。なお、会社の先輩の自動車には、他 1 人の従業員も同乗していた。

(2) 同日(平成 24(2012)年 8 月 6 日)は、解体工事の着工日であったから、生徒

Aと生徒Bが黒保根中学校の解体工事現場に入場するのは初めてだった。

Q社は、生徒Aと生徒Bが平成 5(1993)年生まれの 18 歳であるとの申告を受

けていた。ただし、誰が虚偽の申告をしたのかについては、P社やS社から聴き取

り調査を行うことができなかったため、判明しなかった。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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(3) 同日(平成 24(2012)年 8 月 6 日)、解体工は 9 人が予定されていたところ、

そのうちの 2人として、生徒Aと生徒Bも作業に従事することになった。生徒Aや

生徒Bは、安全用のヘルメットや■■■を着用して作業にあたった。ただし、生徒

Aや生徒Bが着用した■■■は、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■だった。

(4) 午前 8 時 40 分頃から昼休憩まで、生徒Bは、体育館のギャラリーに上がって、

他の従業員が取り外した窓ガラスを受け取って運び出す作業を行っていた。生徒A

も窓枠を運んで片付けたりする作業をしていた。なお、生徒Bがガラスの運び出し

作業をすることになったのは、生徒Bが■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■が

あったためである。

(5) 午前 9 時 20 分頃から、4 人の従業員が更衣室と器具庫の間のブロックコンクリ

ート壁の解体工事を始め、下から上にブロック壁を壊し始めた。

生徒Aは、壁を壊すときに出るガラを片付ける作業をするよう指示を受けた。

作業は昼休憩まで続けられた。

(6) 昼休憩のとき、生徒Aと生徒Bは初仕事の感想などを言い合っていたが、生徒A

は、「俺、頑張るよ」などと仕事に対する意気込みを見せていた。

(7) 生徒Aは、昼休憩の後も、ブロックコンクリート壁の撤去作業で出るガラの片付

け作業を行っていた。

(8) 午後 2 時 38 分頃、東側更衣室において従業員が解体作業を行っていたところ、

上部よりコンクリートブロック壁が崩落し、器具庫側に倒れた。そのとき、生徒A

は、器具庫でガラの片付けをしていた。

そのため、生徒Aは、倒れてきたコンクリートブロック壁の下敷きになった。

(9) ブロック壁の解体をしていた従業員が、生徒Aにのしかかっている壁を持ち上げ

る一方、生徒Bや他の従業員が、生徒Aの身体を引っ張り、生徒Aを壁の下から救

出した。

(10) 午後 2 時 40 分頃、R社の従業員が 119 番通報し、午後 2 時 42 分頃、110 番通

報した。

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第1部 中学生就労死亡事故事件をめぐる事実経過

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(11) 午後 2時 50 分、救急車が現場に到着したが、救急車での搬送にはならず、ドク

ターヘリの出動が要請された。

(12) その後ドクターヘリが事故現場に到着すると、午後 3 時 4 分、ドクターヘリに

搭乗する医師に生徒Aの救命措置が引き継がれ、午後 3 時 30 分頃には生徒Aは、

前橋赤十字病院に搬送された。

(13) 生徒Aは、前橋赤十字病院のICU室で集中治療を受けたが、平成 24(2012)

年 8 月 7 日午前 9 時 20 分、■■■■■■■■■■■■■■により死亡が確認され

た。なお、死因には、■■■■■■■も影響を与えたと見られる。