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1. ガイダンスと導入 授業用ホームページ http://www.eonet.ne.jp/artichoke/ □ 授業概要・方法 毎回、プロジェクターで作品画像を提示しながら、1950年代から2000年代までの欧米の主な現代美術の傾向と理論を 把握し、次いで関西を中心とした現在の日本の現代美術を考察する。 □学習・教育目標および到達目標 1950年代以降の主な芸術運動、作家、作品についての知識ならびに現代美術論に必要な美学・美術史学の用語、概念、 方法論の習得。 □ 授業計画 第1回 09/22 ガイダンスと導入(プリント配付+機材の調整)    第2回 09/29 1950年代の美術(1)抽象絵画 第3回 10/06 1950年代の美術(2)パフォーマンス 第4回 10/13 1960年代の美術(1)ポップ・アート 第5回 10/20 1960年代の美術(2)ミニマル・アート 第6回 10/27 1970年代の美術  コンセプチュアル・アートとアース・ワーク  第7回 11/10 1980年代の美術(1)シミュレーション・アート         第8回 11/17 中間期のテスト 第9回 11/24 1980年代の美術(2)絵画の復活                  第10回 12/01 1990年代以降の美術(1)ジェンダー論       第11回 12/08 1990年代以降の美術(2)身体論     第12回 12/15 2000年代以降の美術(1)アートのグローバリゼーション 第13回 01/12 2000年代以降の美術(2)ネオ・ポップ 第14回 01/19 最終授業日のテスト □ 参考文献 大森淳史、川田都樹子、岡林洋編『アートを学ぼう』ランダムハウス講談社、2008年 末永照和監修『カラー版 20世紀美術』美術出版社、2000年 松井みどり『カルチャー・スタディーズ アート』朝日出版社、2002年 金悠美『美学と現代美術の距離』東信堂、2004年 その他、授業中に紹介 □ 試験方法 2回のテストの合計点を評価とする。それぞれ記述問題+画像選択問題を5問×10点で、 画像選択が間違っている場合、記述問題の得点は半減。 予め配布する用紙に試験対策のまとめを手書きで書き込んだ試験持込用紙のみ持込み可。 試験持込用紙も試験の答案用紙とともに提出。試験持込用紙は一種のレポートとして、評価の対象になる 場合があるが、配付プリントを書き写しただけのものは対象外。 実習や部活動等、公欠によってどちらかのテストを欠席した場合、これまでは欠席するテストの分の 持込用紙を提出した上で、受験したテストの点数を倍にすることによって対処してきた。 □ 成績評価基準 授業内容の理解度と論述における合理性及び独自性 □ 受講する上でのポイント ・黒板に書くものやプロジェクターで提示する文字情報は授業内容にとって補助的なものであり、重要なポイントは 画像を提示しながら述べる。よって、ノートは目ではなく、耳からとること。 ・プロジェクターで画像を提示する間は照明を暗くするので、ノートを取るための工夫が必要。 ・出席は取らないが、受講生は全授業出席していることを前提にしている。よって、公欠届けやそれに準じた書面の 提出がない欠席・遅刻・途中退出によって授業の進行や課題に対応できなくなっとしても特別なフォローはない ことを理解しておいてください。   ■ 2011年後期 現代美術論B 1 _______________________________________________________

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1. ガイダンスと導入   授業用ホームページ http://www.eonet.ne.jp/̃artichoke/

□ 授業概要・方法毎回、プロジェクターで作品画像を提示しながら、1950年代から2000年代までの欧米の主な現代美術の傾向と理論を把握し、次いで関西を中心とした現在の日本の現代美術を考察する。

□学習・教育目標および到達目標1950年代以降の主な芸術運動、作家、作品についての知識ならびに現代美術論に必要な美学・美術史学の用語、概念、方法論の習得。

□ 授業計画第1回 09/22 ガイダンスと導入(プリント配付+機材の調整)   第2回 09/29 1950年代の美術(1)抽象絵画第3回 10/06 1950年代の美術(2)パフォーマンス第4回 10/13 1960年代の美術(1)ポップ・アート第5回 10/20 1960年代の美術(2)ミニマル・アート第6回 10/27 1970年代の美術  コンセプチュアル・アートとアース・ワーク 第7回 11/10 1980年代の美術(1)シミュレーション・アート        第8回 11/17 中間期のテスト              第9回 11/24 1980年代の美術(2)絵画の復活                 第10回 12/01 1990年代以降の美術(1)ジェンダー論         第11回 12/08 1990年代以降の美術(2)身体論    第12回 12/15 2000年代以降の美術(1)アートのグローバリゼーション第13回 01/12 2000年代以降の美術(2)ネオ・ポップ第14回 01/19 最終授業日のテスト                

      □ 参考文献

大森淳史、川田都樹子、岡林洋編『アートを学ぼう』ランダムハウス講談社、2008年末永照和監修『カラー版 20世紀美術』美術出版社、2000年松井みどり『カルチャー・スタディーズ アート』朝日出版社、2002年金悠美『美学と現代美術の距離』東信堂、2004年その他、授業中に紹介

□ 試験方法2回のテストの合計点を評価とする。それぞれ記述問題+画像選択問題を5問×10点で、画像選択が間違っている場合、記述問題の得点は半減。予め配布する用紙に試験対策のまとめを手書きで書き込んだ試験持込用紙のみ持込み可。試験持込用紙も試験の答案用紙とともに提出。試験持込用紙は一種のレポートとして、評価の対象になる場合があるが、配付プリントを書き写しただけのものは対象外。実習や部活動等、公欠によってどちらかのテストを欠席した場合、これまでは欠席するテストの分の持込用紙を提出した上で、受験したテストの点数を倍にすることによって対処してきた。

□ 成績評価基準 授業内容の理解度と論述における合理性及び独自性

 □ 受講する上でのポイント

・黒板に書くものやプロジェクターで提示する文字情報は授業内容にとって補助的なものであり、重要なポイントは 画像を提示しながら述べる。よって、ノートは目ではなく、耳からとること。・プロジェクターで画像を提示する間は照明を暗くするので、ノートを取るための工夫が必要。・出席は取らないが、受講生は全授業出席していることを前提にしている。よって、公欠届けやそれに準じた書面の 提出がない欠席・遅刻・途中退出によって授業の進行や課題に対応できなくなっとしても特別なフォローはない ことを理解しておいてください。           

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20世紀後半の美術の流れ                   末永照和監修『カラー版 20世紀美術』より

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2. 1950年代の美術(1)抽象絵画

第二次世界大戦中に興り、戦後に世界を席巻する抽象絵画運動

フランス アール・アンフォルメル Art informel George Matieu 1921-Pierre Soulage 1919-Jean Fautrier 1898-1964Jean Dubuffet 1901-85 等々       アメリカ 抽象表現主義 Abstract Expressionism / アクション・ペインティング Action Painting                                    Jackson Pollock 1912-56Willem de Kooning 1904-97Adolph Gottlieb 1903-74Franz Kline 1910-62  Barnett Newman 1905-70 Mark Rothko 1903-70Morris Louis 1912-62  

日本 具体美術協会 GUTAI 1954 結成 

吉原治良 1905-72嶋本昭三 1928-村上三郎 1925-96元永定正 1922-白髪一雄 1924-吉原通雄 1933-96田中敦子 1932-2005金山明 1924-2006 等々

アール・アンフォルメル 1952 批評家 ミッシェル・タピエ 命名  「無定形の」形式にとらわれない制作の自発性 西欧の知性の中に潜んでいた無定形な思考や衝動を明るみに出す絵画

 アクション・ペインティング 1952 批評家 ハロルド・ローゼンバーグ 論文"American Action Painters" 「あるとき一群のアメリカの画家たちにとってキャンバスは、むしろ行為する場としての闘技場に 見え始めた。キャンバスの上で起こるべきものは絵ではなく事件eventであった。」

 モダニズム絵画 1960 批評家 クレメント・グリーンバーグ 論文 "Modenist Painting" 絵画のモダニズムの歴史は純粋性を目指している。 そして絵画の本質は、1. 平面性           2. キャンバスの形           3. 絵の具の特性        

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3. 1950年代の美術(2)パフォーマンス

具体美術協会 GUTAI 1954 結成 

1955 「真夏の太陽にいどむモダンアート野外実験展」芦屋公園      1956 吉原治良「具体美術宣言」「具体美術は物質を変貌しない。具体美術は物質に生命を与えるものだ。 具体美術は物質を偽らない。 具体美術に於ては人間精神と物質とが対立したまま、握手している。」 当時の評価当時の新聞の見出し「体当たり芸術」、「型破り芸術」、         「オドロキ美術展」、「総て偶然の思いつき」              一般の無理解と嘲笑

関東の美術界は黙殺                                  

「肉体そのものの無私な自発性を重視する具体の仕事は、論理や思弁をつねに追求する批評家に とっては、あまりにも即興的、偶発的な遊戯に見えたし、また作品の造形的な完成度を問題とする モダニズムの作家や論者にとっては、未成熟で幼稚な前衛としか映らなかった」           

            乾由明『原色日本の美術18 明日の美術』平凡社、1980年より

東京で関心を集めていたのはネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ 1960赤瀬川源平、荒川修作、篠原有司男、吉村益伸等々        社会批判的色合い          ↑                                             ↓    具体は1970 大阪万博にも参加             

海外での評価   ミッシェル・タピエが海外に紹介   1958 ニューヨー、トリノ、パリでグループ展      1966 批評家アラン・カプローがハプニングの先駆に位置づけ              

具体の再評価1976年の回顧展に始まる 多彩な活動と交流に注目・『具体』誌の刊行 1955~65 全12号

・海外との交流  タピエを通じてアンフォルメル、そして抽象表現主義と

・絵画・彫刻だけでなく、舞台芸術、パフォーマンス、テクノロジー そして書など、様々な表現との境界をなくす

・作品を制作した画家の身体性→「パフォーマンス」の誕生

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4. 1960年代の美術(1) ポップ・アート Pop Art

1) ポピュラーカルチャー(=大衆文化)を素材とテーマにしたアートの出現

1962年ニューヨークで開かれた「New Realist」展・・・直後からマスコミが「ポップ・アート」と呼ぶ

Andy Warhol 1928-87Roy Lichtenstein 1923-98James Rosenquist 1933-Tom Wesselman 1931-

抽象絵画やミニマル・アートと違って、「軽い」?、「楽しい」?、「明るい」?、「分かりやすい」?

批評家グリーンバーグ 1964「抽象表現主義以後」 ポップ・アートは気晴らしになるという程度。 趣味の歴史の中での新しいエピソードになるが、 しかし現代芸術の展開の中での真正な新しいエピソードにはならない。                  

2) 素材と技法素材:マンガ、映画、雑誌、広告、家庭用品(=大衆文化)技法:コラージュ、アッサンブラージュ、シルクスクリーン   イメージの反復、引用、機械的制作方法 制作の労力軽減

3) 反モダニズムのアートとして具象、機械的な制作方法・・・反抽象表現主義引用・・・反オリジナリティ大衆文化と芸術の境界を崩す・・・反純粋芸術

4) 素材+テーマである大衆文化について 大量生産、大量消費される商品 → 使い捨て文化を肯定?/批判?  

ウォーホル「なにもかも素敵だ」

5) 今の我々とつながる問題:マスメディアとリアリティの問題リクテンスタインのマンガの絵画とモダン・アートの絵画 網点(ベンデイ・ドット)の示すもの・・・印刷され大量生産されるイメージ、その影響力

ウォーホルの《惨劇》シリーズ

事故や自殺や暴力・・・マスメディアの中で商品化される死のイメージ

ウォーホル「誰もが15分間は有名になれる時がきっとある」「大衆は不幸な出来事が大好きだ」「ゾッとするような絵でも、繰り返し繰り返し見ていれば、なんの影響力もなくなってしまう」

◇ 参考文献 ルーシー・R・リパード『ポップ・アート 』( 宮川淳訳)紀伊国屋書店、1967年アンディ・ウォーホル『ぼくの哲学』(落石八日月訳)新潮社、1998年日向あき子『ANDY WARHOL, WHO HE? 天才ウォーホルを精神分析する』アートダイジェスト、1996年

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5. 1960年代の美術(2) ミニマル・アート Minimal Art

0) 批評家 クレメント・グリーンバーグ のモダニズム理論 絵画のモダニズムの歴史は純粋性を目指している。 そして絵画の本質は、1. 平面性           2. キャンバスの形           3. 絵の具の特性 

 1) ミニマル・アート 1960年代前半に登場   フォルム(=形態)を最小限 に切りつめたアート

Donald Judd 1928-94Tony Smith 1912-80Dan Flavin 1933-96Carl Andre 1935-Frank Stella 1936-

2)  様々な呼称が生まれるが、純粋性を追求するモダニズムの究極と見なされる「ABCアート」「プライマリー・ストラクチャー(=根元的な構造)」「スペシフィック・オブジェクト(=特殊な客体)」

3)  絵画よりも立体作品で展開   

フランク・ステラのミニマリズムの絵画 → 「シェイプド・キャンバス」→平面から立体へ

立体作品の素材・・・鉄鋼、H型鋼、銅板、蛍光灯、プレクシ・グラス等の工業用素材同一規格品の並置や反復                                     

    手仕事よりも工場に発注して制作・・・ポップ・アートとの類似性   

4) モダニズムの行き詰まりか、それとも新たな展開の始まりか

・芸術家/批評家ロバート・モリス「彫刻についてのノート」1966作品   183×183×183cmのトニー・スミスの《サイコロ》のサイズの重要性を指摘     ・批評家マイケル・フリード「芸術と客体性」1967でミニマル・アートの「theatricality 演劇性」を批判

5) ミニマル・アート以後 「サイト・スペシフィシティ(=場の特殊性)」をテーマにした立体

 ポスト・ミニマリズムRichard Serra 1939-

    鑑賞者の身体への訴えかけ、作品が置かれる場所の地形や歴史性  ◇ 参考文献 千葉成夫『ミニマル・アート』 リブロポート、1987年『ミニマル・アート』展カタログ、国立国際美術館、1990ジェイムズ・マイヤー編 『ミニマリズム』(小坂雅行訳) ファイドン、2005年

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6. 1970年代の美術 コンセプチュアル・アートConceptual Art とアース・ワーク Earth Work

1) Conceptual Art 概念・観念のアートの出現

1967 Sol LeWitt「コンセプチュアル・アートに関する一文」から拡がる 「コンセプチュアル・アートのおいてはアイデアないしはコンセプトが作品の最も重要な局面である。」

Joseph Kosuth 1945- アメリカJohn Baldessari 1931- アメリカLawrence Weiner 1940- アメリカHans Haacke1936-ドイツDenis Oppenheim 1938-オランダ

素材は言語・文字、写真、記録、情報

Lawrence Weiner のStatements 1968「使用中の絨毯から切り取った正方形」「海に投げ込まれた一個の染色見本」

「ひとたび私の作品を知ったなら、それはあなたのものだ。誰かの頭に潜り込んで、 それを持ち去る手だてはない」

コンセプチュアル・アートに先立つ オノ ヨーコ(1933-)のインストラクションPAINTING TO BE CONSTRUCTED IN YOUR HEAD (1) (1962)

Go on transforming a square canvas in your head until it becomes a circle. Pick out any shape in the process and pin up or place on the canvas an object, a smell, a sound, or a colour that came to mind in association with the shape.

PAINTING FOR BURIAL (1961)

On the night of the full moon, place a canvas in the garden from 1:00 AM till dawn. When the canvas is dyed thoroughly in rose with the morning light, dismember or fold it and bury.

The ways of burial:

1.) Bury it in the garden and place a marker with a number on it.

2.) Sell it to the rag man.

3.) Throw it in the garbage.

PAINTING FOR THE SKIES (1961)

Drill a hole in the sky. Cut out a paper the same size as the hole. Burn the paper. The sky should be pure blue.

PAINTING TO SHAKE HANDS(painting for cowards) (1961)

Drill a hole in a canvas and put your hand out from behind. Receive your guests in that position. Shake hands and converse with hands.

A + B PAINTING (1961)

Let somebody other than yourself cut out a part of canvas A. Paste the cut-out piece on the same point of canvas B. Line up canvas A and canvas B and hang them adjacent to each other. You may use blank canvases or paintings or photographs to do this piece.

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2) 批評家ルーシー・リッパードは「芸術の非物質化」と評する

 モダニズムの純粋化の究極の姿?  反フォーマリズム

 反「芸術」 反商業主義      脱美術市場(商品としての美術) ←→  ポップ・アート 商品のアート   脱美術館     ↓   パフォーマンス   プロセス・アート

   アースワーク/ランドアート/環境芸術へ展開

Earth Work / Land Art / Environmental ArtWalter de Maria 1935- アメリカRobert Smithson 1938-73 アメリカChristo 1935-ブルガリア   Richard Long 1945-イギリスWolfgang Laib 1950-西ドイツ   

Robert Smithson  「Site Specific 場の特異性」          作品が存在する場所との関係 → ミニマル・アートで浮上

Walter de Maria 《垂直な大地のキロメーター》1977・・・観念的なアースワーク

◇ 参考文献 トニ-・ゴドフリ-『コンセプチュアル・ア-ト』(木幡和枝訳) 岩波書店 、2001年ジェフリー・カストナー『ランドアートと環境アート』ファイドン、2005年ジョン・バーズレイ『アースワークの地平─環境芸術から都市空間まで』(三谷徹訳)鹿島出版社、1993年ニコス・スタンゴス『20世紀美術 フォ-ヴィスムからコンセプチュアル・ア-トまで』(宝木範義訳 )パルコ出版、1985年オノ・ヨーコ 『頭の中で組みたてる絵』淡交社、1995年

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7. 1980年代の美術(1)シミュレーション・アート Simulation Art

 1) 1960年代の引用 quotation について

ポップ・アートを代表として1960年代に引用が注目される反オリジナリティ=反モダニズム

Pablo Picasso 1881-1973Alain Jacquet 1939-  

だが、引用はそれ以前から行われてきた

Édouard Manet 1832-83Raffaello Sanzio 1483-1520

  過去の作品の形式を参照  名作に対する敬意、オマージュ、あるいは批判

2)  1980年代の盗用/流用 appropriationについて

Sherrie Levine 1947- タイトル《After~(~に倣って)》Mike Bidro 1953-  タイトル《Not~(~ではない)》

タイトルによって示される流用行為              

再写真化(re-photograph)

模倣絵画の量的問題

3) 「シミュレーション(模倣・擬態)」という概念

  ジャン・ボードリヤール (1929- 思想家・社会記号学)  「シミュレーションとは起源<origine>も現実性(realite)もない実在(reel)でつくられたもの、   つまり(hyper reel)だ」

  現代の資本主義社会は模倣行為で成り立っている  商品は機能的価値よりも記号的価値が重要  さらに対応する実在を欠いた模倣(=シミュラークル)が蔓延している        ↓  アートも形式の模倣よりも模倣行為そのものが主題となっている

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3)  自ら過去の作品になる行為─シンディ・シャーマンと森村泰昌

Cindy Sherman (1954-) 多様な解釈を生む作品群

  《Untitled Film Still》のシリーズ   映画のワンシーンを思わせる   

  だが、オリジナルの映画は存在しない   ストーリーも存在しない

   空回りするかのような模倣行為・・・「オリジナルなきコピー」=シミュラークル               

 フェミニズムの問題も示唆   撮る作者=主体・・・自分   撮られるモデル=客体・・・自分

      主体 vs. 客体 の関係を解消     (男性) (女性) 

その他、絵画に描かれる身体の記号性

森村泰昌 (1951-)

1998「空装美術館」展作品を創る、でもなく、作品を研究する、でもなく、作品を着る、そして着こなす ・・・引用者森村の個性が強烈に介入

美術史的作品研究 + 作品になるという創造的アプローチ          ↓新たな作品解釈 =  森村の作品

三つの《モナ・リザ》1998について

◇ 参考文献 ジャン・ボードリヤール『シミュラークルとシミュレーション』(竹原あき子訳)法政大学出版局、1984年椹木野衣『シミュレーショニズム』洋泉社、1991年森村泰昌『踏みはずす美術史 ─私がモナ・リザになったわけ』講談社、1998年松井みどり『カルチャー・スタディーズ アート:“芸術”が終わった後の“アート”』朝日出版社、2002年

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9. 1980年代の美術(2) 絵画の復活

 1) 1980年代に入って、具象絵画のブーム

  アメリカ 1970年代の終わりから具象絵画が       Bad Painting、New Image Painting と呼ばれて注目される

      Julian Shnabel 1951-David Salle 1952-Eric Fiscl 1948-Robert Longo 1953-

  ドイツ    1982年、ベルリンで大規模な「時代精神 Zeit Geist」展      Georg Baselitz 1938-

Anselm Kiefer 1945-Sigmar Polke 1941-

  イタリア   トランス・アヴァンギャルディア Transavangardia      Sandro Chia 1946-

Enzo Cucchi 1950-Francesco Clemente 1952-

 それらに共通するのは、大画面、豊かな色彩、感情的な表現、     歴史、神話、物語、夢想などを喚起する具象画     抽象絵画やミニマル・アート、コンセプチュアル・アートから     人々の関心が移ってきた                                

      ↓    新表現主義 Neo Expressionism と総称されるように

2) ドイツの絵画 自国の文化や歴史をテーマに第二次世界大戦後の東西分断ナチスドイツの負の遺産と向き合う。政治色、社会批判あり

             ↑             ↓3) イタリアの絵画   トランス・アヴァンギャルディアと命名した批評家、アキーレ・ボニート・オリーヴァ 「形式においては伝統的で、非政治的かつ、何にもまして折衷的である」

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4) アメリカの絵画    抽象表現主義の復活?                             

イメージの折衷的引用と多層的な意味、個人的な夢想、エロティシズム、政治性なし

美術市場における絵画の価値へと注意を引く   

5) 絵画市場の拡大とグラフィティ・アート Graffiti Art

ニューヨークの街の落書き(=グラフィティ)が絵画ブームにのってアート(市場)に参入する

本物のストリート・アーティストは間もなく消えるが、次の三人が残ったのはなぜか?Keith Haring 1958-90Kenny Scharf 1958-Jean-Michel Basquiat 1960-88

6) バスキアの神話化西欧の美術史上、初めて成功した黒人アーティストとしてセンセーション「プリミティブなピカソの再来」「黒人ゲットーの叫び」「アート界の野生児」

アンディ・ウォーホルと親交を結ぶが、アート市場の掟を破りひんしゅくを買う  27歳で薬物乱用で夭逝 → 悲劇の黒人アーティストとして神話化

バスキアの脱神話化の試み 中流階級出身、白人文化の中で育つ、言語や歴史についての知識豊富 黒人としてのアイデンティティーを求めるが白人の世界でしか自分を 肯定できない矛盾を抱える                             ex. ジュリアン・シュナーベルが映画《バスキア》(1996)を制作・監督 

◇ 参考文献                                 A.ジョーンズ、L.ディ・コペット『アート・ディーラー 現代美術を動かす人々』(木下哲夫訳) PARCO出版局、1988年ジーン・シーゲル編『 アートワーズ 現代美術の巨匠たち』( 木下哲夫訳)スカイドア、1992年菅原教夫『現代アートとは何か』丸善ライブラリー、1994年清水穣『永遠に女性的なる現代美術』淡交社、2002年レオンハルト・エメルリンク『ジャン=ミシェル・バスキア』タッシェン、2003年

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10+11. 1990年代以降の美術(1)+(2)  ジェンダー論 + 身体論

美術に関わるフェミニズム論の展開

1) 1970年代~

[美術史] 1971年美術史家 Linda Nochlin      論文「なぜ偉大な女性芸術家はいなかったのか?」

・美術界において女性が受けている抑圧を告発・美術史から排除されてきた女性芸術家についての研究と再評価始まる

[現代アート]  Judy Chicago 1939-       Guerrilla Girls 1985-       

2) 1980年代~ フェミニズムからジェンダー論へ

美術作品や美術史の言説における「女性らしさ」および「男性らしさ」というジェンダー(文化的性差)の意味とそれを作動させているイデオロギー構造の分析へと展開

[美術史] Griselda Pollock 『視線と差異』1988     絵画に映し出された視線、まなざしの問題     19世紀後半の印象主義の女性画家       Berthe Morisot 1841-95       Mary Cassatt 1844-1926

Gaze: 眼差し → 見る主体 と 見られる客体 が存在する。  見る者と見られる者の間にはなんらかの力関係が働いている・・・美術作品も例外ではない

ミシェル・フーコー『監獄の誕生─監視と処罰』(田村俶訳)新潮社、1977年 Panopticon 一望監視装置/全望監視装置 1791 哲学者ジェレミー・ベンサムが構想した合理的な監視システム 「見られることなく見るまなざし」

[現代アート]  Cindy Sherman 1954-          嶋田美子 1959-     

3) 1990年代~

性差の問題に留まらず、非西洋の文化や人種や民族及び性的マイノリティへの政治的な抑圧の構造へと問題は広がる       ポスト・コロニアリズム・・・植民地主義、帝国主義に関わる問題から諸文化を問い直す        

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フェミニズム、ジェンダー論、ポスト・コロニアリズムいずれも近代とともに確立された男性中心主義、西洋中心主義と結びついたモダニズムへの批判=ポストモダニズム批評

[現代アート]  Carrie Mae Weems 1953-      劉 虹 Hung Liu 1948-

4) 身体とイデオロギー

身体、特に女性の身体はいかに表象されてきたか? 

[美術史] ケネス・クラーク『ザ・ヌード─理想的形態の研究』1956年   (高階秀爾、佐々木英也訳)筑摩書房、2004年

ヌード Nude と裸 Naked の違い裸体像(理想の身体) と 単に衣服をつけていない状態(不完全で無防備な身体)

[現代アート]  Laurie Toby Edison 1942-       John Coplans 1920-2003      Hannah Wilke 1940-93      Mary Duffy 1961-      澤田知子 1977- 

◇ 参考文献                                 リンダ・ノックリン「なぜ女性の大芸術家は現れないのか?」1971(松岡和子訳)『美術手帖』1976年5月号Griselda Pollock Old Mistresses: Women, Art, and Ideology, 1981.(Rozsika Parker との共著、萩原弘子訳『女・アート・イデオロギー』 新水社、1992年)Visison and Difference, 1988.(萩原弘子訳『視線と差異─フェミニズムで読む美術史』新水社、1998年)神林恒道・仲間裕子編著『美術史をつくった女性たち』勁草書房、2003年北原恵『アート・アクティヴィズム』インパクト出版会、1999年

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12. 1990年代以降の美術(3) マルチカルチュラリズム Multiculturalism とアートのグローバリゼーション 

1990年代以降、世界各地に急増する国際美術展・・・アートのグローバリゼーションを示す

■ヴェネチア・ビエンナーレ:最も古く、最も権威ある国際美術展 ①歴史1895年創設、国王ウンベルト一世成婚25周年記念事業1930年(#17)ムッソリーニ政権下、国別パヴィリオンと作家選定するコミッショナー制度開始1942年(#23)第二次世界大戦で開催中に中断1948年(#24)再開1950年代、サンパウロ・ビエンナーレやドクメンタ等、他に個性的な国際美術展が続々創設1968年(#34) パリの「五月革命」の余波で混乱。1970年賞制度廃止。入場者数減少、停滞期に入る1980年(#39)から主会場「ジャルディーニ」以外の企画展会場として「アペルト」加わる。1986年金獅子賞として賞制度復活1990年代、東欧、アジア、アフリカ、中南米といった先進国以外の参加が急増                  グローバル社会、マルチカルチュラリズムがテーマとなる1999年、2001年の総合ディレクター、H・ゼーマン    「芸術の枠から出て、戦争、革命、その他の死などあらゆる社会問題に開かれた展覧会」

Multiculturalism 文化多元主義 / 多文化主義  地域や民族や宗教によって異なる文化をいずれも対等なものとして尊重し、  その多様性を積極的に肯定しようとする考え方

 ②ヴェネチア・ビエンナーレの意義と問題・「現代アートのショーケース」・・・現代アートについての発表と議論の場・国際文化交流としてのアート・・・小国、遠い国の現代アートを知ることができる。・アートのオリンピック・・・強い政治性 ex.賞制度、国別パヴィリオンの有無・世界各地の都市で開催され始めた国際美術展のモデル・・・国際美術展のグローバリゼーション・ヴェネチア・ビエンナーレへの日本の参加の歴史は、日本の戦後の現代美術の歴史と重なる

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 ③ヴェネチア・ビエンナーレ 日本参加の歴史第 2回    1887 日本の初出品、例外的に陶器、七宝、漆器、香炉、根付、象牙彫りなどの工芸品出品第16回    1928 特別陳列「エコール・ド・パリ」に藤田嗣治展示第19回、第22回    1934、1049 アメリカ館に国吉康雄展示

 公式参加第26回 1952 コミッショナー梅原龍三郎 横山大観、小林古径、鏑木清方、福田平八郎、          山本丘人、吉岡堅二、安井曽太郎、徳岡神泉、梅原龍三郎、福田一郎、川口軌外

 授賞第28回 1956 コミッショナー石橋正二郎   棟方志功(※版画部門 国際大賞受賞)第33回 1966 コミッショナー久保貞次郎 池田満寿夫(※版画部門 国際大賞受賞)、第46回 1995 コミッショナー伊東順二 千住博(※優秀賞受賞)第47回 1997 北欧三国館で参加した森万里子が優秀賞受賞

■ 他の主要な国際美術展  サンパウロ・ビエンナーレ 1951-   ドクメンタ 1955- ドイツのカッセルで4年に1度  ミュンスター彫刻プロジェクト 1977- ドイツのミュンスターで、10年に1度  マニフェスタ 1996@ロッテルダム- 二年ごとにヨーロッパの異なる都市で開催   

■ 「ビエンナリゼーション」(G. Haupt)の問題    世界各地で開かれる国際美術展をまわるアーティスト、キュレーター、批評家、アート愛好家の    顔ぶれは同じ

◇ 参考文献『ヴェネチア・ビエンナーレ 日本参加の40年』国際交流基金、毎日新聞社、1995年石井元章『ヴェネツィアと日本─美術をめぐる交流』ブリュッケ、1999年『12人の挑戦─大観から日比野まで』水戸芸術館現代美術センター、茨城新聞社、2002年吉見俊哉『博覧会の政治学—まなざしの近代』、中央公論社、1992年竹中悠美「ヴェネチア・ビエンナーレは何をもたらしたのか」、『アートを学ぼう』ランダムハウス講談社ジョン・トムリンソン『グローバリゼーション─文化帝国主義を超えて』(片岡信訳)、青土社、2000年

◇ 参考URLUniverses in Universe: Worlds of Arthttp://www.universes-in-universe.de/

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13. ネオポップ Neo Pop

メディアと流通によって、文化と資本主義経済がグローバル化する1990年代以降にバージョン・アップしたポップ・アート

アメリカJeff Koons 1955-Mike Kelly 1954-

日本中原浩大 1961-奈良美智 1959-村上隆  1962-

日本のネオ・ポップとしてオタク系文化との融合を代表する村上隆  2000~2001年 「SuperFlat」展開催 渋谷PARCOギャラリー、ロサンジェルス現代美術館他巡回

Super flat 宣言「・・・日本のいまはsuper flat。社会も風俗も芸術も文化も、すべてが超2次元的。この感覚は日本の歴史の水面下を澱みなく流れつづけ、とくに美術にわかりやすく顕在化してきた。現在では強力なインターナショナル言語となった日本のスーパーエンタテインメント、ゲームとアニメにとくに濃密に存在している。・・・私達のリアリティはどこにあるのか。 この本は「super flat」を、自分達の、つまり日本文化を潜在的に構築してきた、そして、いまもしつづけている大きな感性であり世界観として捉え直し、過去から現在、そして未来へとつながるオリジナルなコンセプトとして、提示していくためのものである。」

SuperFlat(=超2次元的)というキータームで日本の伝統美術と現代美術とサブカルチャーをつなぎ海外に日本のサブカルチャーを紹介     2006年 「Little Boy ─爆発する日本のサブカルチャー」展開催 ジャパン・ソサイエティー(N.Y.)

サイト「ハイカルチャーとサブカルチャーの境界を越え、アートに対する価値観を揺さぶる」

 村上隆ついての議論「村上隆はオタク文化を搾取している」という強い批判が起こる インターネット上やイベントでの討論で・オタクではない村上がオタクを剽窃している ・・・ オタクたちの閉鎖性・作品はオタクとしての魅力に欠ける ・・・ ※「萌え」要素の欠如・日本のオタクについて知識の乏しい海外の人々に誤解を生み出している・商業的成功を独占している 

  一方で村上を擁護  岡田斗司夫(アニメプロデューサー・オタク文化論)  宮脇洋一(海洋堂専務)といったオタク文化の代表者は村上に協力  オタクの文化的地位向上のためにアートを利用  東浩紀(哲学者・批評家)  《S.M.P.Ko2》は斉藤と同じ洞察を持つオタクについての批評である

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ルイ・ヴィトンとのコラボや「スーパーフラット・ミュージアム」という戦略におけるオタク的価値観および消費活動のアートへの導入       ↓子供服メーカーを著作権侵害で提訴した村上にとっての「アート」とは? 

           

◇ 参考文献村上隆『スーパーフラット』、マドラ出版、2000年ヤノベケンジ『KENJI YANOBE 1969-2005』、青幻社、2005年斉藤環『戦闘美少女の精神分析』、太田出版、2000年東浩紀『動物化するポストモダン オタクから見た日本社会』、講談社、2001年東浩紀編著『網状言論F改 ポストモダン・オタク・セクシュアリティ』、青土社、2003年川田都樹子「〈ポップ〉で〈キッチュ〉で〈クール〉なアート?─消費文化とアートの一つのエピソードとして」『「いま」を読む─消費至上主義の帰趨』(川田都樹子編)甲南大学人間科学研究所叢書、2007年岡田斗司夫『オタク学入門』、太田出版、1996年岡田斗司夫、唐沢俊一『オタク論!』、創出版、2007年椹木野衣『美術になにが起こったか1992-2006』、国書刊行会、2006年森川嘉一郎編『おたく:人格=空間=都市 ヴェネチア・ビエンナーレ第9回国際建築展-日本館カタログ』幻冬舎、2004年大塚英志『「おたく」の精神史 1980年代論』、講談社、2004年

◇ 参考URLカイカイキキ http://www.kaikaikiki.co.jp/c-murakami/東浩紀ポータルサイト http://www.hirokiazuma.com/

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