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東北大学大学院工学研究科フィールドデザインセンター PBLデザインスタジオ3 NTTスタジオ2 - STEALTH BOSAI - PROJECT BOOK ステルス防災 防災・減災の行動を日常にインストールする

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Page 1: - STEALTH BOSAI - ステルス防災STEALTH BOSAI PROJECT BOOK 2 プロジェクトの特徴 本プロジェクトの特徴は、以下に示す3点です。課題の当事者である「生活者」を、デザインプロセスの初期段階から継続的に巻き込みながら、

東北大学大学院工学研究科フィールドデザインセンター

PB L デザインスタジオ 3 NTT スタジオ 2

- STEALTH BOSAI -

P ROJ ECT B O O K

ステルス防災防災・減災の行動を日常にインストールする

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我々の一連の共同研究プロジェクトで明らかにしたいことは、

「デザインの力で社会課題にどう挑むか?」というメタなテーマです。

2018年度のプロジェクトでは、その中でも特に、

「社会課題に挑むためのデザインにおけるデータ活用」にフォーカスを当て、実践を進めました。

「主観」や「感性」に溢れたデザインという行為の中で、

「客観的」な事実を表現するデータは、どのように活用できるのか?

また、社会課題に対峙するためのデザインプロセスである

リビングラボ(生活者との共創的なデザイン)の中で、データはいかなる役割を持つのか?

本プロジェクトでは、このような問いに対する知見を探るため、

防災をテーマにしたデザインの実践を行いました。

近年、「デザインにおけるデータ活用」というテーマが、世界的にも非常に高い注目を集めて

います。その背景には、データの蓄積および活用に関する取り組みの活性化があります。

「データの蓄積」という点では、情報のデジタル化技術の進展に伴い、様々な分野で「デジタ

ル・アーカイブ」構築の動きが活発化しています。アーカイブとは、専用の保存領域に大量

のデータを安全に長期間保存・蓄積することであり、東日本大震災の記録や記憶を伝えるた

めに作られた「震災アーカイブ」は、その代表例です。

こういったデータの収集・蓄積という動きに連動し、蓄積したデータをいかに有効に使うか、

という「活用」に関する議論も活発化しています。また、同じような文脈で、国や自治体が持っ

ている各種統計データを公開し(オープンデータ)、それをサービスづくりや政策立案に活用

しようとする試みも増えつつあります。

こういった潮流の中で、新たなモノやサービスを創造する行為である「デザイン」の領域でも、

データ活用の重要性が謳われています。例えば、客観的なデータが示す根拠に基づきデザイ

ンを進める Evidence-Based Designといった概念も生まれています。このように、人の主観

や感性に大きく依存すると言われるデザインという行為において、データはどのように活用

できるのか?に関する理論やメソッドの構築や積み上げが期待されているのです。「デザイ

ン(創造的に解決策を探索する行為)」や「データ」が社会により広く普及する今後の世の中

において、デザインにおけるデータ活用に関する理論やメソッドの重要性は、より一層増し

ていくと考えられます。以上の経緯から、本プロジェクトでは、「防災」に関する社会課題

にフォーカスし、データを活用したデザインを実践しました。

はじめに

デ ザ イ ン × デ ー タ で 社 会 課 題 に 挑 む

なぜ今、「デザイン×データ」なのか?

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プロジェクトの特徴

本プロジェクトの特徴は、以下に示す 3 点です。

課題の当事者である「生活者」を、デザインプロセスの初期段階から継続的に巻き込みながら、

共にサービスづくりを進めました。これにより、課題の核心部分に迫ること、現場で実行性の

あるアイデアを創出することを狙います。このように、生活者をデザインの「パートナー」と

捉え、デザインの初期段階から巻き込みながら、共に仮説探索や発想を行うやり方を「リビン

グラボ」と呼びます。

生活者との共創

震災に関するデジタル・アーカイブを活用しながら、防災のためのサービスデザインを進めまし

た。より具体的には、東北大学災害科学国際研究所(IRIDeS)が構築・公開している「みちのく

震録伝 *1」と、多賀城市が構築・公開している「たがじょう見聞憶 *2」の 2 つの震災アーカイブ

を活用しました。

アーカイブの活用

*1) http://www.shinrokuden.ir ides.tohoku.ac.jp/ *2) http://tagajo.ir ides.tohoku.ac.jp/index

Studio(作り手の集中検討の場)と Salon(生活者との対話の場)の 2 つの場を構築し、Studio

と Salonを行き来しながら、デザインを進めました。これにより、生活者と作り手(デザイナ)

が対等な立場で、定期的に互いに意見や想いを伝えあいながらデザインを進めることを可能と

しました。生活者とデザイナの呼応的(Communicative)なデザインプロセスだと言えます。

S t u d i o - S a l o n の反復

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デザインとデータ

データを活用したメソッド

AckoffのDIKW モデルによれば、データ(Data)は、「それ自体では意味を持たない数字や記号等のシンボル」

のことを指します。そして、「データを人間が解釈して意味づけしたもの」が 情報(Information)です。

このようにデータとは単なる記号であり、デザインをする人(デザイナや生活者)が、何らかのデータを

目にしたとき、そこに自分なりの解釈を加えることで意味のある情報を得ることができます。

この視点で考えると、デザインにおけるデータの使い方は、以下の 5 つのパターンに分けることができそ

うです。このとき、リビングラボのような生活者との共創によるデザインにおいて特徴的なのは、「❺デー

タを引き出す」です。これは、データを生活者との「コミュニケーションの媒介」として活用する使い方

であり、データを用いて、(生活者が持つ)データを引き出すことができます。

本プロジェクトでは、防災サービスのデザインにおいて震災アーカイブのデータを活用するための具体的

な手法(メソッド)として、以下のようなものを適用しました。詳細は、別冊「リビングラボにおけるデー

タ活用ハンドブック」をご覧ください。

フォト・フィールドワーク

ビジュアルナラティブ

データサファリ( データのカード化 )

データマテリアルを通じた対話

デジタル・アーカイブに存在する過去の写真/動画を使っ

て、それと同じ風景や状況の場所を体験することで、対

象としている課題/分野/地域の「過去」と「現在」の

実際の姿を「身体で感じる」ワークショップ

大量のデータから注目すべき情報(事実や教訓、エピソー

ド)を、物語(ナラティブ)として視覚的に表現するワー

クショップ

大量のデータの中から、今後の検討において重要だと思

われるデータを抽出し、それを「カード化」するワーク

ショップ

データ・サファリやビジュアルナラティブのワークショッ

プで作成したアウトプットを、「対話の活性化のための素

材(マテリアル)」として使用し、生活者や当事者との対

話を行う手法

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震災アーカイブとは?

震災アーカイブとは、地震による災害の記録や教訓を伝えるためのデジタル・アーカイブのこ

とです。2011 年 3 月に起きた東日本大震災では、東北地方の様々な地域が甚大な被害を受けま

した。その記録や教訓を後世に伝えるために、被災自治体や国、研究機関、企業などが様々な

震災アーカイブを作成しています。そこでは、震災にまつわる写真、動画、記事、語り(インタ

ビュー記録)、研究報告書など、350 万件以上のデジタル・データが収集・蓄積されています。

災害時の避難行動や支援活動などで得た知見や教訓は、地震による災害が多い日本で蓄積すべ

き財産であると考えられます。そのため、こういった情報のアーカイブへの蓄積と活用が期待

されています。

みちのく震録伝

たがじょう見聞憶

みちのく震録伝とは、東北大学災害科学国

際研究所(IRIDeS)が、産官学の機関と連携

して、東日本大震災に関するあらゆる記憶、

記録、知見を収集し、国内外や未来に共有

する東日本大震災アーカイブのことです *3。

様々な記録や知見を収集・蓄積することで、

今後発生が懸念される低頻度巨大災害(東

海、東南海、南海地震など)への対策に活

用することを目的としています。

たがじょう見聞憶とは、宮城県多賀城市で

起こった東日本大震災の記録を収集、保管

し、体系的に整理したデジタルデータベー

スのことです。震災の記録を未来へ伝え、

今後の防災・減災に役立てることができる

ように、インターネットを通じて、各種デー

タを公開しています *4。

多賀城市は、東日本大震災において大きな津波被害を受けた地域であり、市域の約 3 分

の 1 が浸水し、188 名もの尊い命が失われてしまいました。たがじょう見聞憶は、この

経験を後世に伝えるためのプロジェクトとして、2014 年に立ち上がりました。

津波被害、復旧・復興の過程をとらえた画像・映像約 2 万点以上を公開しているととも

に、市民の方々など約180 人からの体験の語りも公開されています。

*3) http://www.shinrokuden.irides.tohoku.ac.jp/shinrokuden/

*4) http://tagajo.irides.tohoku.ac.jp/index

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スタジオテーマ

STEALTH BOSAIス テ ル ス 防 災 防災・防災の行動を日常にインストールする

日本は、世界的に見ても、自然災害が多い国です。しかしながら、仕事や家事に忙しい日々の生活の中で

は、防災の大事さは理解しつつも、そのための備えや行動を起こすことは後回しになってしまうことが多

いのではないでしょうか。このような、防災への「関心(意識)」と「行動」の間にあるギャップを埋めるた

めの新たなデザインコンセプトが「ステルス防災」です。

ステルス防災とは、防災・減災のための行動や備えを日常生活の中に “ステルス化”することです。ステ

ルスとは、「こっそり行うこと、秘密裏に行うこと」という意味です。すなわち、ステルス防災とは、防

災・減災のための行動や備えを、日常生活の中に(はっきりは見えない形で)埋め込み、特別な努力を

しなくても“いつの間にか/気がつけば ” 防災・減災ができてしまっていることを目指します。

一般に、防災・減災を促す活動は、「備えがないといざという時に大変!」というように、危機感をあお

ることで、防災意識を高めて行動につなげようとします。これに対してステルス防災は、防災・減災の

活動を日常生活に溶け込ませることで「行動の障壁を下げる/ゼロにする」ことを目指すもので、これ

までとは違う新たなアプローチと言えます。

今回のプロジェクトでは、ステルス防災の具体的なアイデアを、多賀城市の子育て支援施設「すっくぴー

ひろば」を利用している方々と共に検討します。

すくっぴーひろばは、乳幼児(0 歳から就学前のお子さん)

とそのご家族のための子育て支援施設です。施設では、お

たのしみ会などの定期交流イベントのほか、 子育てコン

シェルジュへの相談会や一時預かりなど、子育てに関する

幅広い支援が行われています。また、「赤ちゃんひろば」「こ

どもひろば」「ふれあいひろば」と、成長過程によってエリ

アが分けられていることも特徴のひとつです。

すくっぴーひろば(多賀城市子育てサポートセンター)

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多賀城市は、仙台市の北東、太平洋岸に位置しており、

まちの地形は東西に長く、それを 2 つに分けるようにし

て中心部を砂押川が流れています。また、東部や北部に

は史跡が点在し、海に近い南部の平野には工場地帯が形

成され、西部地区の平野には多くの田畑が広がっている

のが特徴です。

東日本大震災発生時には市の面積の 3 分の 1 が浸水し、

中でも国道 45 号線より東側のエリアでは、津波による

壊滅的な被害を受けました。

多賀城市エリアデータ

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スタジオプロセス

[ スタジオ概要 ]名称

PBL デザインスタジオ 3 NTT スタジオ2

スタジオマネージャー

山田 哲也 合同会社プロジェクトノード

主催

東北大学災害科学国際研究所

東北大学大学院工学研究科フィールドデザインセンター

NTT サービスエボリューション研究所

期間

2018 年 9 月 24 日 - 2018 年 12月18日(全12 回)

受講生

成田 峻之輔

菅井 理一

中村 千尋

中島 拓巳

高橋 昌希

鈴木 斉

Indra BHALLA

熊坂 和則

甘粕 裕明

小野寺 凜成

佐藤 和輝

濱口 菓

早坂 涼

甲斐 洋行

東北大学工学部 建築・社会環境工学科 1 年

東北大学工学部 建築・社会環境工学科 2 年

東北大学法学部 法学科 3 年

東北大学工学部 建築・社会環境工学科 3 年

東北大学大学院 情報科学研究科 応用情報科学専攻 1 年

東北大学大学院 工学研究科 技術社会システム専攻 1 年

東北大学大学院 工学研究科 都市・建築学専攻 1 年

東北大学大学院 工学研究科 都市・建築学専攻 1 年

東北大学大学院 工学研究科 都市・建築学専攻 1 年

東北大学大学院 工学研究科 都市 ・ 建築学専攻 2 年

東北大学大学院 工学研究科 都市・建築学専攻 2 年

東北大学大学院 工学研究科 都市・建築学専攻 2 年

東北大学大学院 工学研究科 都市・建築学専攻 2 年

東北大学大学院 工学研究科 ファインメカニクス専攻 特任助教

実施場所

Studio: 東北大学 Field Design Center

Salon: すくっぴーひろば(多賀城市子育てサポートセンター)

スタジオマスター

本江 正茂

柴山 明寛

赤坂 文弥

渡辺 浩志

井原 雅行

東北大学大学院工学研究科 都市・建築学専攻准教授

東北大学災害科学国際研究所准教授

NTT サービスエボリューション研究所

NTT サービスエボリューション研究所

NTT サービスエボリューション研究所

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2018.09.24 | スタジオ ①

Program[1] 多賀城駅周辺のフィールドワーク

Program[2] スタジオの趣旨説明 , マテリアル創出のためのワーク

オリエンテーション/ 敷 地 の 理 解 と 問 題 の 探 索

フィールドワーク, 全体 Kickoffワークショップ

参加者は 2 つのチームに分かれて、マップに記載されたルートに

従って現地調査を実施。マップ上のいくつかのポイントにおける

震災直後の写真も合わせて配布され、それと比較できるように、

同じ画角で写真の撮影を行いました。また、被害状況への理解を

深めるために、いくつかのポイントでは参考動画の視聴を行なっ

たほか、各自の心に留まったものを1 人 3 点写真に収めました。

次回のサロンにおいて、施設利用

者との対話材料として活用するマ

テリアル 創出のためのワークを実

施。右記の2 テーマ、計 3 チーム

に分かれてディスカッションと、

アウトプットを行いました。

[A] 災害ビジュアルナラティブ

「たがじょう見聞憶」などの災害アーカイブデータを閲覧し、

「伝えたい!」と思うような情報を物語として視覚的に表現する。

[B] 防災ノウハウカード

様々な文献から防災に関するアクションや知恵などを収集し、

重要だと感じた内容を厳選してカード化する。

[ 災害ビジュアルナラティブチーム A:甲斐 , 中島 , 濱口 ]

● 震災発生から復興までのタイムラインを載せることで、

  生活への影響をリアルに感じられるものを目指した。

● まずは興味を持ってもらうために、被災された方の証言を記載。

● 各証言のなかには子供にまつわるエピソードを入れ込み、

  すくっぴーひろばの利用者にも自分ごととして捉えてもらいたいと考えた。

[ 災害ビジュアルナラティブチーム B:BHALLA, 小野寺 , 鈴木 , 菅井 ]

● 大きな地図上に写真を配置し、視覚的に分かりやすくしたいと考えた。

● 普段の生活では実感しにくいが、多賀城駅周辺は実は海が近い等という、

  地形についての理解を促すような図を目指した。

● 渋滞に巻き込まれた車が津波に襲われてしまったという写真を使用し、

  逃げる方法やルートについても熟考する必要があると気づかせたかった。

[ 防災ノウハウカードチーム:早坂 , 甘粕 , 成田 ]

● 全体的に、家族に関わる内容をピックアップした。

● (1)1回はやろう、(2)ときどきやってみよう、(3)いつもやろう、

  (4) 起こった後にやろう、の4 つに分類して掲示。

● (2)ときどきやってみよう、の項目では、遊びながら学べる仕組みを紹介。

● 子供に教えるという体で親も学ぶことができるものにしたいと考えた。

スタ

ジオ

プロ

セス

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9 ST E A LT H B O SA I P ROJ ECT B O O K

2018.10.05 | サロン ①

2018.10.10 | スタジオ ②

Program[1] サロンでのインタビュー内容のふりかえり/共有

Program[2] ファーストアイデアの発表

利用者との対話/問題の深掘り

インプットとアイデアの講評/問題の探索

利用者の方々と対話する

ファーストアイデア

はじめに、スタジオ①で災害ビジュアルナラティブチームがま

とめた資料を用いて、すくっぴーひろばの利用者とスタッフへ、

震災に関する情報を発表。

その後 3 つのグループに分かれて、スタジオ①で防災ノウハウ

カードチームの作成したカードの説明と、それをもとに日々の

防災活動等についてインタビューを実施しました。

前回のサロンで、利用者やスタッフとのインタビューを通して得られた意見を共有。特に、すくっ

ぴーひろばは多賀城市外の居住者も利用していることもあり、人によって防災への意識にばらつき

が大きいという課題が見えてきました。

各自のファーストアイデアの発表

とディスカッションを実施。

次回までの課題として、“防災とい

う意識を持ちすぎずに防災できる

ようなしくみ”を念頭に置き、チー

ムごとにアイデアの検討を進める

こととなりました。

(防災ごっこを保育所などで実施することは可能か?という質問に対し)近いことをやっている園はあるが、子供

には「防災の訓練だよ」と言っても通じない。どのように訓練を誘うかが鍵になるのでは。/防災バッグは車の中

に入れている。/震災後 2 年程度はバッグを用意していたが、今はできていない。/防災バッグは用意しているが、

メンテナンスは行なっていない。オムツのサイズは変わってしまうが、どうしても面倒に感じてしまう。/子供用

に絵本は用意しているが、重くかさばるため困っている。遊ぶものはほしいが ... /子供がアレルギーの時にはど

うしたら良いのか?/子供にすぐ「だっこして」と言われてしまうので、持ちやすいバッグを使うようにしている。

サバイバルお中元/浸水域サイクリングロード/すくっぴーストッ

ク/カーナビの浸水域に着色/お気に入りのおもちゃが浮き輪がわ

りに/長持ちキャンドル/非常用品保管用ボックス/ハンガーに豆

知識をプリント/防災用食品の活用方法が紹介されたオシャレな雑

誌/すくっぴー利用者による震災豆知識のレクチャ/エレベーター

ガチャ/ナマズ型ロボ/ “穴をほる”/地震時の行動フローチャート

利用者・スタッフからのコメント

参加者のファーストアイデア

スタ

ジオ

プロ

セス

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2018.10.18 | サロン ②

2018.10.31 | スタジオ ③

Program[1] 気づきの共有とアイデアの共有

Program[2] ファーストアイデアの発表

利用者との対話/アイデアの再評価と問題の深掘り

ディスカッション/アイデアの深掘りと問題の探索

フィードバック

アイデアの発展

チームごとにアイデアを発表。

より多くの利用者やスタッフの意

見を集めるために、アイデアシー

トには各アイデアへの印象を問う

4 つの項目を設け、シールでの投

票をしていただきました。

サロン②で出された「角度を変えてアイデアを再検討しよう」と

いう課題に対する、各自の検討方法とアイデアを発表しました。

これまで出たアイデアを踏まえ、各自ブレインストーミングを行い、アイデアを再検討しました。

しれっと防災対策!すくっぴー祭 A0 B1 C4 D2

すくっぴーストック

EV 使えないエコ Day

あわよくば防災カタログ

高級ブランド防災バッグ

ハイスペックおもちゃ

A3 B0 C0 D3

A0 B3 C0 D0

A0 B4 C4 D0

A2 B0 C2 D2

A0 B5 C5 D0

虫の知らせひも

ご当地ようかん

防災ウォーキング

ギフト定期便

防災カタログ

A0 B0 C3 D2

A0 B3 C2 D0

A0 B11 C0 D0

A0 B2 C5 D1

A0 B0 C0 D0

スーパー電柱

防災トレー

防災写真集

防災おもちゃ

防災お中元

A4 B0 C3 D0

A0 B2 C2 D1

A2 B0 C1 D0

A0 B0 C0 D3

A0 B5 C4 D7

子供の声の振動を電気に変えるデバイス/ゆりかご発電/おせちの 4 段目が非常食/避難経路ボードゲーム/パー

トナーようかん/避難所ラジオ体操/充電できるチャイルドシート/サバイバルゲームブック/オセロアクション

子供の自立を促す/間接的に防災知識を学ぶ/プレゼント/家族分備え

られる/子供の遊びを通じて大人が学ぶ/万一の際にも安心感を得られる

参加者のアイデアと利用者・スタッフによる投票結果

参加者のファーストアイデア

参加者から出たキーワード

A そうきたか!(意外性)  C 使いたい!面白い!(魅力)

B 実現できそう!(実現性) D 役立ちそう!(効果)

スタ

ジオ

プロ

セス

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2018.11.08 | サロン ③

利用者との対話/アイデアの再評価と問題の深掘り

フィードバック 2 回目(中間発表)

参加者と利用者、スタッフ混合で 3 つの班に分かれ、チームご

とにアイデアの発表とヒアリングを行いました。今回からは、ア

イデアを伝わりやすくするために、説明資料としてプロトタイプ

を持参。イメージの共有がしやすくなったことで、これまでと比

べて活発な意見交換がされるようになった一方、利用者間での発

言回数に差が見られるようになってきました。

[ チーム A:小野寺 , 鈴木 , 菅井 , BHALLA, 佐藤 , 高橋 , 成田 ]

❶ お菓子などを入れておける、収納付きぬいぐるみ

❷ 防災豆知識のイラストが描かれた子供用の食事皿

❸ 親子で一緒に防災知識を学べる紙芝居

❹ 中身を取り出すとスマホに通知が届くお菓子ボックス

❺ 最下段に非常食の入った防災おせち

[ チーム B:中島 , 甘粕 , 甲斐 , 濱口 , 早坂 , 熊坂 , 中村 ]

❶ 避難場所や危険箇所を巡って学ぶ防災お散歩マップ

❷ 防災グッズを移動販売してくれる防災キャラバン

❸ 写真等を一緒に入れられるタイムカプセル型防災箱

❹ 子供の動きを利用して発電・充電する玩具型ライト

利用者・スタッフからのコメント●おせちは年に一回触れるもの、という視点が良い。●スーツケースに防災グッズを入れるというのを見たことがあるが、 実際はスーツケースはいつ使うかわからないし、 ベビーカーを押して逃げるときにはスーツケースは持てない。 だからおせちのようにコンパクトなものだと嬉しい。●お菓子ボックスは、通知がきたとしても子供はお菓子を食べるのを やめないと思う。ただ、食べ物のありかを知るという点では良い。●食事皿とボックスは、ペアで使えてもいいのかもしれない。●実際に、震災の時は水が一番必要だった。 でも普段は、どこでもに売っていると思ってしまい、持ち歩かない。

利用者・スタッフからのコメント●お散歩マップは実現できそうだが、 実際には、子供を連れているとそんなに広い範囲は歩けない。●子供が通りやすいところ、ベビーカーを押しやすいところ、 という視点のものだと良いかもしれない。●普段散歩をするときには、近所を歩くことよりも、 自家用車でどこかへ行ってそこで遊ぶということのほうが多い。●(他の家族と一緒に散歩することはあるか?という質問に対して) 親のモチベーションが上がらない。 散歩だけでなく、イベントなどプラスでなにかが欲しい。 非常食を食べてみる会や、遊び場があるだとか ...。●ちょっと使える防災テクニックなどの小ワザだったら知りたい。

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2018.11.16

Program[1] これまでのアイデアの見直しと、パターンの考察

Program[2] 利用者・スタッフからのコメントの共有と分類

チームを再設定してリスタート/視点を変える

2nd season kickoff

「課題の持っている構造を見直し、メタ視点で見る」ことを念頭

に置き、前回まで検討してきたアイデアの見直しを行いました。

はじめに、事前に分析した10種類のステルスパターンと分類さ

れたアイデアを参考にして、他にどのような分類ができるかを

ディスカッション。「ステルスにする」とはどういうことか、ど

のようなパターンがあるかを考察していきました。

アイデ アの枠を超えて共通する

キーポイントを見つけるために、

利用者・スタッフからのコメント

を、ポジティブ、ネガティブ、その

他の 3 つに分類。その上で見えて

きた特徴や思考を付箋に書き出し

ていきました。

事前に分析したステルスパターン❶ 防災を魅力化する

(例: お得にする「防災付録付き雑誌」, おもちゃ化する「防災塗り絵」等)

❷ 普段の生活の中の要素に仕込む①(平時に機能する)(例: 普段使うものに仕込む(平時に情報提供/直接)「いないいないばあ皿」等)

❸ 普段の生活の中の要素に仕込む②(発災時に機能する)(例:普段使うものに仕込む(非常時に役に立つ)「防災トレー」等)

❹ 日常の余っている空間に防災を仕込む(例:余っている空間に仕込む「ひなまつりようかん」等)

❺ 防災を定期化する(例:イベントごとに仕込む「防災お中元」「毛布になるこいのぼり」等)

❻ 思わず行動してしまう仕掛け(例 : 子供の習性を利用する「こども発電」「なりきり看護師キット」等)

❼ 共有することで個人環境から隠す(例 : みんなで共有する「すくっぴーストック」等)

❽ 自動化して負担をなくす(例 :「安否確認機能付き非常食ボックス(通知の自動化)」等)

❾ 防災から来てくれる(例 :「防災キャラバン」 等)

とりあえず言ってみた(笑)(例 :「かんぱんマン」「ふえるメット」等)

参加者からの意見

[ 分類のしかたについて ]

防災を日常に近づけるのか、その逆かという見方ができる?/意識的か無意識

か/「防災のため度」を示す?/自ら行くのか寄ってくるのか?/空間か時間か

/本人がやるのか、周りの人がやればよいのか?/行動に対するコストの高さ

[ インセンティブの与え方 ]

それ自体が役に立つのか、スキルが身につくのか?/ママたちは、「面倒くさ

い」ことを避けたい/意識ではなく行為としての面倒くささにフォーカスす

る?/効果がいつ現れるのか、即時性があるかという軸も考えられるのでは?

参加者から出たキーワード

目に見えるメリットがほしい/頼るしかない/助けてもらいたい/今

すぐに問題になっていないことは考えたくない/「○○だともっとい

い」/自分からやるのは面倒だが、与えられれば嬉しい/缶詰のパン

への反応が非常に良い/単純なアクションが良い/子供を連れての移

動が大変/体験したことのないことに対してハードルが高い/飾り気

だけというのには食いつかない/いつもので十分/手軽に仕入れたい

スタ

ジオ

プロ

セス

Page 14: - STEALTH BOSAI - ステルス防災STEALTH BOSAI PROJECT BOOK 2 プロジェクトの特徴 本プロジェクトの特徴は、以下に示す3点です。課題の当事者である「生活者」を、デザインプロセスの初期段階から継続的に巻き込みながら、

13 ST E A LT H B O SA I P ROJ ECT B O O K

2018.11.28

2018.11.22 | スタジオ ④

Program[1] 進捗報告

Program[2] ファーストアイデアの発表

ディスカッション/アイデアの深掘りと問題の探索

すくっぴーひろばスタッフへのヒアリング

アイデア+プロトタイプ

すくっぴーひろばスタッフ 9 名にご協力いただき、利用者との対

話をスムーズに行うポイントを探るためのヒアリングを実施。

はじめに、2nd season kickoffで用いた利用者からのコメントリ

ストと分類を皆さんにご覧いただきました。その後、利用者の普

段の様子やスタッフとのやりとり、気にしているポイントなどと

いった、特性について話を伺いました。

前回決めたチームごとに、ピックアップしたキーワードや検討中のアイデアを発表しました。

他チームからの意見を踏まえて、

今後ブラッシュアップしていきた

いアイデアを検討しました。

何か新しいことをするとき、まずは一歩引いて、見て理解しようとする人が多い/子供の年代は近いが、親の年代

は様々/特にすくっぴーひろばでは、様々なエリアから利用者が集まるため、元々横のつながりを持っている人が

少ない/お子さんに関するテーマのほうが話が弾むことが多い/意見交換の機会はこれまであまりなかった/お子

さんと一緒だと話足りないことがあるため、付箋に意見を書くのもあり?/ママ限定のお茶イベントでは、お子さ

んが一緒のときとは異なる話題で盛り上がる傾向がある/転入してきた方ほど避難訓練に興味をもって参加してく

れる場合が多い/学生へ自分の知識や経験を教えるということが、会話の活性化のキーになっているのかも

[ 早い野性チーム ] 棚ランプ/寂しい冷蔵庫/赤ちゃん冷蔵庫

[ 遅い理性チーム ] ビンテージメニューカフェ/防災ボックス

[ スタジオマスター・マネージャーチーム ] 虫の知らせ/ 防災おせち

[ 早い野性チーム:小野寺 , 鈴木 , 濱口 , 甲斐 ]

違和感と気になる状態をピックアップ/「備蓄、防災知識」/冷蔵庫内の卵置き場のように備蓄置き場をつくる?

[ 遅い理性チーム:BHALLA, 中島 , 熊坂 , 中島 , 中村 , 佐藤 , 早坂 ]

非常食を使ったメニューを提供する「防災カフェ」/防災食が備蓄されているため、非常時でも営業できる

[ スタジオマスター・マネージャーチーム ]

子供発電/防災ウイスキー(酒で発電できるデバイス)/ “ 虫の知らせ ” デバイス/自由に選べるおせちカタログ

スタッフからのコメント

スタ

ジオ

プロ

セス

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2018.11.30 | サロン ④

2018.12.07 | スタジオ ⑤

Program[1] 進捗報告

Program[2] ディスカッションとアイデアの発表

利用者との対話/プロダクトの精度をあげる

ディスカッション/最終プレゼンテーションの準備

アイデアを一緒に表現する

アイデア講評+プレゼン準備

2 つの班に分かれてヒアリングを

実施。今回は、利用者たちへ付箋

を配布し、そこに意見を書いても

らうという方法をとりました。

チームごとに、前回のサロンから得られた意見と、検討したアイデアの発表を行いました。

他チームからの意見を踏まえて、

最終講評会までの検討事項と方向

性を発表しました。

[ 早い野性チーム:小野寺 , 鈴木 , 濱口, 甲斐 ]

❶ 中に飲料水を入れておけるクッション

❷ 座面部分に水を入れられる風呂用椅子

[ 遅い理性チーム:熊坂,BHALLA,甘粕,中村,中島, 佐藤 ]

❶ ビンテージ系食材を使用した子供歴史カフェ

❷ 非常食などを入れておける特別なボックス

[ スタジオマスター・マネージャーチーム ]

❶ 防災訓練と同時に開催される防災コンサート

❷ 全国で発生した地震を知らせる虫型デバイス

❸ 下段に非常食や長期保存食品が入った防災おせち

[ 早い野性チーム ] 注ぎ口、材質、キャラクター、形質などを検討

[ 遅い理性チーム ] 祖父母や自治体から送られる手形付きの箱を制作

[ スタジオマスター・マネージャーチーム ] 長寿命おせち、WSを再検討

[ 早い野性チーム:小野寺 , 鈴木 , 濱口 , 甲斐 ]

水を入れられるキャラクター型クッションが人気だったことから、それに絞ってブラッシュアップしていく。

[ 遅い理性チーム:BHALLA, 中島 , 熊坂 , 中島 , 中村 , 佐藤 ]

基本的な設定は変えずに、非常時に役に立つものを入れておく箱の案を進めていくことに。

[ スタジオマスター・マネージャーチーム ]

おせち案には、上手く祖父母の存在を絡めたい。年齢別「クリエイティブ +b」ワークショップも 2 種類考案する。

利用者・スタッフからのコメント●水のクッションは、ジップロックだと開けられてしまうが、 突起がないものだと安全で良い。水を持ち帰るのには不便そう。●乳幼児は箱型のイスは座れない。(背もたれ、肘置きがないため)●カフェなどの仕切りのない店は、子供がどこかへ行かないか 気を張ってしまう。とにかく子どもに食事をさせることが重要。●可愛い箱や、足型がついた箱は、震災のときには持っていかない。 啓発的に、自治体などから配布されるのであれば良い。●コンサートは静かにしていないといけないのが辛い。 それよりも、ショッピングモールなどで開催されたほうが嬉しい。●乳幼児は、地震とは何かを理解していない。虫は自由研究向き?●食べ物関係は、7 大アレルゲンを避けたほうが良いと思う。●防災おせちには避難所では得られないものが入っていたら嬉しい。

スタ

ジオ

プロ

セス

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スタ

ジオ

プロ

セス

2018.12.18 | 最終講評会

利用者からの講評

[ 早い野性チーム:小野寺 , 鈴木 , 濱口 , 甲斐 ]

[ 遅い理性チーム:熊坂, BHALLA,甘粕,中村, 中島, 佐藤 ]

保 存 水 入 りクッション「飲めるアニマル」

ウォールポケット「アルバムかけちゃいました」

普段は手触りの良いクッション。災害時は保存水として活

用できます。動物柄で、赤ちゃんにも親しみやすいデザイ

ンです。必要な量だけを簡単に持ち運びでき、普段の生活

の中で無理なく備蓄することができます。

毎日使う鍵や財布、子供のためのアイテムに加えて、もし

ものときの懐中電灯なども入れられる壁掛けポケットです。

ポケットには写真も入れられます。持ち手が付いており、

バッグのようにサッと簡単に持ち出すことも可能です。

利用者・スタッフからのコメント●耐久性が不安。(子供が噛んでしまいそう)●「かわいい」「良いと思います!」「他の色や柄があってもいい」●ペットボトルは非常用として備えている。このクッションの 量だけでは足りないと思うが、その場しのぎ的に使えて良さそう。●身近に置けるからいいと思う。●注ぎにくそう。持ちやすいように取っ手などがあるといい。●詰め替えが可能でもいいかもしれない。

利用者・スタッフからのコメント●あったら便利。もらえるのであれば嬉しいし、使うと思う。●子供が小さいうちは抱っこしなければいけないため、 できれば紐の長さが変えられるか、背負えるようにしてほしい。●子供が下についてる紐を引っ張って遊んでしまいそう。●思い出も一緒に持ち出せるのは良い。●オムツなどはかさ張ってしまうため、もう少しマチがあると良い。●防水になってても良いかもしれない。

最終講評会は、チームごとにパネルとプロトタイ

プを用意し、会場内に配置されたテーブルの上に

並べて発表するという方式で実施。利用者・スタッ

フの皆さんには、自由にテーブルを回ってお話を

していただきました。

尚、本プロジェクトの成果については、2019 年

3 月10日に仙台国際センターで開催された、仙台

防災未来フォーラム2019にて発表しました。

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スタ

ジオ

プロ

セス

[ スタジオマスター・マネージャーチーム:赤坂 ]

[ スタジオマスター・マネージャーチーム:赤坂 ]

[ スタジオマスター・マネージャーチーム:山田 ]

工作ワークショップ「親子のものづくり広場」

防災食ワークショップ「親子のキッチン」

おすそ分けしてもらう「長寿命おせち」

色々な素材を使用し、海のいきものを作って遊ぶワーク

ショップ。「じしんモジュール」を取り付けると、なんと作品

が動いたり光ったり!モジュールには過去の地震の揺れが

記録されているので、遊びながら防災についてを学べます。

防災食を使った、おいしくて新しいメニューを親子で作っ

て食べるワークショップ。3 〜 6 歳のお子さんとその保護

者が対象です。自宅での備蓄について考えるきっかけにも

なるよう、防災食のおみやげもあります。

「長寿命食」という名前のついた、防災食セットのついたお

せち。新年に実家でおせちを食べ、「長寿命食」は祖父母か

ら息子夫婦へ送ってもらうというしくみです。孫からお礼の

言葉を送ることのできるメッセージカードが付いています。

利用者・スタッフからのコメント●ある程度の知識のある子、年齢が上の子でないと理解が難しそう。●地震速報の音に子供が怖がってしまう。 速報自体は怖くないものだと思わせるものがほしい。 万一のときは仕方がないが、そうでないときには何かが起こった ということを分からせないものがあってもいい。 (音を聞いた後に、子供が寝られなくなってしまうことがあるため)●自由工作とか自由研究に使えるのはいい。

利用者・スタッフからのコメント●確かに、何に使ったら良いか分からない防災食の缶詰もある。●「(テーブルに置いてある)レシピの紙、もらってもいいんですか?」●市や保育所が備蓄している非常食で行っても良いのでは?●震災時に、子供にとって初めて食べるものだと、 抵抗感があるかもしれないが、この機会に一度経験できると、 慣れて食べてくれるかもしれない。●一緒に参加をすると、子が親の反応を見て学んでくれそう。

利用者・スタッフからのコメント●おせちを祖父母に買わせるというのは、抵抗感がある。●普段から、おせちを購入しているのは祖父母。 もらえるのは嬉しいが、先方に何も残らないのはどうなのか。 カードだけというのも申し訳ない気がする。●身内からもらうより、行政からのほうが背徳感がない。●自分で防災食を管理するのは手間がかかるが、 おせちだと 1 年毎に入れ替えが必要なのが分かりやすくて良い。

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総括

研究テーマに対する振り返り

今回のプロジェクトは、実はかなりチャレンジン

グでした。なぜならば、1つのプロジェクトの中に

2 つの研究テーマ(それぞれチャレンジングな!)

があったからです。1つ目は、「リビングラボのデ

ザインプロセスの中でデータをいかに活用するか」

というデザイン方法論研究としてのメタなテーマ。

2つ目は、「ステルス防災のデザイン」という防災

研究としてのテーマです。

テーマ1:リビングラボにおけるデータ活用

本プロジェクトでは、みちのく震録伝やたがじょ

う見聞憶などの、公開されている震災アーカイブ

を試行錯誤しながら活用しました。具体的な活用

の仕方は本冊子 p.3 の通りですが、この試行錯誤

の過程からは、データ活用に関するいろいろな学

び(findings)がありました。特に重要だった学びは、

「データが対話を活性化する」ことです。過去の事

実を示すデータがあることで、対話の参加者は、自

分の現状を第三者的に見つめ直したり(メタ認知し

たり)、忘れていた記憶を呼び起こしたりすること

ができます。これにより、生活者のリアルでパーソ

ナルな語りが促され、対話が活性化しました。こ

のことは、(過去の事実を示す)データが、(今を生

きる生活者が持つローカルな)データを引き出す、

という新たな発見でした。その他の findings は別

冊(データ活用ハンドブック)に掲載しています。

テーマ 2:ステルス防災のデザイン

本プロジェクトでは、「ステルス防災」というコン

セプトを具体化するための検討を進めましたが、

この過程では計60 以上のアイデアが議論されまし

た。それらの全てを振り返ってみると、防災・減

災をステルス化するためには、①日常活動に埋め

込む、②環境に埋め込む、③定期イベント(行事)

に埋め込む、④日常活動に付随させる、⑤目的を

多重化して新たな行動をつくる、⑥魅力で覆う、

NTTサービスエボリューション研究所

赤坂 文弥

という 6 つのパターンがあることがわかりました。

このパターンは、StudioとSalonを繰り返しながら探

索的に検討することで初めて明らかになったことで

あり、日常の中に防災・減災のための活動や備えを

普及させていくことを検討する際のヒントになる、

重要な発見だと考えています。

実施したプロセスに対する振り返り

今回は、子育て支援施設で対話やワークショップを

行いました。そこには小さいお子さんがたくさんい

て、元気に楽しく遊んだり・泣いたりしています。

親御さんも、対話に入りつつもお子さんが気になっ

てしまいます。我々は、そんな方々に対してどのよ

うに話しかければいいのか、どのように振る舞えば

いいのか、ということを悩みながら、プロジェクト

を進めました。子育て施設に溶け込むかわいい服装

にしてみたり、お子さんが喜んでくれそうなプロト

タイプを作ったり、そんな工夫を重ねました。

このようなやり方は一見非効率に見えるかもしれま

せん。でも、私はここに次世代のデザイナの姿を垣

間見ました。今回実施したことは、「デザイナが社会

に出て、社会に関わりながら自分の在り方・態度を

変容させていく過程」そのものです。このように、

デザイナが自ら社会に入り込むアプローチでは、デ

ザイナは生活者と同等の立場になります。そして、

生活者からの親しみや信頼が得ながら、検討を進め

ることを指向します。このように、デザイナが生活者

と同じ場を体験し、同じ目線に立ち、同じ方向に目

を向けるアプローチは、生活者とのコラボレーション

(共創)のために、とても重要なことだと感じました。

こういったやり方・プロセスを自ら体験できた、す

なわち、「自分の身体を通して学ぶことができた」「一

人称視点で実践の内側から感じることができた」こ

とは、今回のプロジェクトに参加した全員にとっ

て、非常に意義深いことだったと思います。

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参加者の声

謝 辞

中村 千尋

法学部法学科 3 年

震災の被害を受けた県の大学に進学したからにはきちんと

震災に向き合って何事か成したいと考えていたことから参

加を決めました。個性的な学生や大人の方と一緒にター

ゲットの意見を取り入れアイディアを形にすることがで

き、達成感が得られました。

鈴木 斉

工学研究科技術社会システム専攻 1 年

デザイン思考に対する関心と、その実践を行ってみたいと

いう思いが参加のきっかけでした。活動の中で、共創のた

めの場作りの重要性を感じることができ、とても勉強にな

りました。( インタビュー難しかった ...!)

熊坂 和則

工学研究科都市・建築学専攻 1 年

私がこのスタジオに参加した理由は、企業と共同でものづ

くりをすることに魅力を感じたためです。実際に参加して

みて、限られた時間と予算の中でモノをつくりあげること

には苦労しましたが、その分遣り甲斐もありました。今後

は商品化するところまで提案できれば、と思います。

Indra BHALLA

工学研究科都市・建築学専攻 1 年

防災について、子育てに絡めて考えることで、これまでの

学習やワークショップなどとは異なる視点を知ることがで

きたほか、半年間に渡って提案を繰り返したことで、自分

や周囲の考え方の変化などを実感することができました。

小野寺 凜成

工学研究科都市・建築学専攻 2 年

参加理由は,実際にユーザーの声に触れたデザインをして

みたいということでした。参加して気付いたことは,まず

声を聞き出すだけでも工夫がいるし,琴線は隠されている

しで,考えることがとても多いということです。この気付

きは今後も忘れずにいたいと思います。

甘粕 裕明

工学研究科都市・建築学専攻 1 年

私は、防災・減災行動をお母さん達に紹介しつつ、声を聞

く中で、座学では分からない、実態や当時の経験等を伺う

ことができました。その結果、提案内容の深化だけでなく、

私自身の成長にも繋がりよい経験でした。

濱口 菓

工学研究科都市・建築学専攻 2 年

日々の行動が防災に繋がるような提案ができればとても画

期的なことだと感じ、参加しました。なかなか良い案にな

らず難しかったですが、アイディアを練ったり調べたりす

る中で、新たに学ぶことがたくさんありました。

甲斐 洋行

工学研究科ファインメカニクス専攻 特任助教

意見を出したり議論したりしやすい雰囲気の中,幅広い年

齢層・様々なバックグラウンドを持つ方たちと交流しなが

ら物を作るプロセスはとても刺激的で実り多かったです。

このスタジオは、「多賀城市子育てサポートセンターすくっぴーひろば」 に集まるお子様たちとそのご家族、そして徳永しの

ぶセンター長はじめスタッフの皆様の全面的なご協力によって実現できました。初回、普段からの黒っぽい服装で訪れた私

たちに、そんな格好じゃダメ!もっとカワイイ服で!靴下だけでも!とのアドバイス。次回、照れつつもカワイイ(つもりの)

集団に、確かに子供達の反応は変わりました。誰よりもシビアな顧客と渡り合うことの厳しさと面白さ。子供たちの反応は

見たい、しかしご家族には議論に集中してもらいたい……相反する状況設定にも柔軟にご対応いただきました。利用者の皆

様は、正直なかなか手強い相手でした。生半可なアイデアには一刀両断でも、生まれたてのアイデアには慈愛のコメント。「ス

テルス防災」のコンセプトが血肉化されたのは皆様のおかげです。本当にありがとうございました。

2019 年 3 月 スタジオ参加者一同

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東北大学大学院工学研究科フィールドデザインセンター

PBL デザインスタジオ3 NTTスタジオ 2

発行日:2019 年 3 月

発行元:東北大学大学院工学研究科フィールドデザインセンター

監修:本江 正茂(東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻)

デザイン・ディレクション:山田 哲也(合同会社プロジェクトノード)

写真:濱田 直樹(合同会社プロジェクトノード)

企画・編集・デザイン:小野寺 志乃(FabLab SENDAI - FLAT)

このスタジオは、東北大学災害科学国際研究所とNTTとのビジョン共有型共同研究

「安心なくらしを支える基盤技術 :

(1) 震災アーカイブを活用した社会課題解決型サービスデザイン手法の研究」の一環として実施されました。

フィールドデザインセンターの「PBLデザインスタジオ」は、社会のフィールドに存在する

正解のない具体的な課題に取り組むデザイン・プロジェクトを遂行します。

教員やメンターは一方的に教えるのではなく、プロジェクトの進行に応じて

参加者が考えてきたことや制作物に対して批評やサジェスチョンをあたえ、

時には同じ立場で課題解決に対して議論し、共に考えることで、

参加者が「意地悪な問題」にアタックするために

真に役に立つスキルやノウハウ、そしてマインドセットを身につけることを目標とします。

東北大学大学院工学研究科フィールドデザインセンター主催 PBL デザインスタジオは、

文部科学省次世代アントレプレナー育成事業

EDGE-NEXT プログラム EARTH on EDGE の一環として実施しました。

ステルス防災防災・減災の行動を日常にインストールする

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